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オリンパス CAMEDIA SP-550UZ【第5回】
もっと遠くを、天体を

Reported by 本誌:田中 真一郎


 「80km向こうの富士山」の次は、もう少し遠くを撮りたくなった。というわけで今回の被写体は、富士山からさらに37万9,920kmばかり向こうにある、「月」だ。

 望遠端で504mm(35mm判換算、以下焦点距離はすべて35mm判換算)、テレコンを使えば828.6mmというスペックを聞いたとき、実は真っ先に撮ってみたかったのが月だ。天体撮影に興味はあっても、望遠鏡やら冷却CCDカメラやらを揃えるまでの財力も、寒さに震えながら夜通し観測し続ける気力体力もない。会社からの帰り道に、大きな月を見ると撮りたくなるのだけど、SP-550UZさえカバンに入っていれば、そこそこ大きく写せそうだ。

 というわけで4月25日、上弦の月の夜中(日付はすで26日)に、三脚とSP-550UZ、テレコンという軽装で、家の近所の鶴見川の河川敷に出かけた。三脚は前回も使用した、スリックのカーボン三脚「813EX」だ。

 夜中の河川敷には街灯などなくて、ちょっと怖いし、吹きさらしで寒い。家のベランダあたりですませたいところだが、河川敷ならまったくの街中よりも周囲の光の影響が低そうだし、空が大きく開けていて建物などに邪魔されない。

 三脚にSP-550UZを据え付けて、まずはテレコンなしの504mmを試してみる。フォーカスはAF。測光方式はスポットにしたが、結局液晶モニターで写り具合を見ながら露出を決めたので、あまり意味はなかった。ホワイトバランスはまずはAWBで撮ってみたのだが、いまひとつしっくりこなかったので、晴天にしておいた。

 ノイズを避けたいので、感度はISO50にする。ノイズリダクションはデフォルトでオンになっているが、長時間露光によるノイズも避けたいので、マニュアル露出で絞りを開放のF4.5に。

 液晶モニターで写り具合を確かめながらシャッタースピードを探っていったところ、1/30秒でちょうどよくなった。もうすこし絞り込んでもよさそうだったので、F5.6の1/15秒にしてみた。もっとも後でPCで見てみると、F4.5でも5.6でもあまり変わらない。長時間露光を恐れずにF8を試してみればよかったかもしれない。

 AFはやはり合わないことがあったし、MFで無限遠を出しにくいのも前回同様。だが月の淵あたりではAFが合ってくれる。三脚のレバーを緩め、月の淵で測距できるようにカメラを振り、シャッターボタンを半押ししたまままたカメラを戻し、レバーを締める、という動作はなかなかつらかった。

※作例のリンク先のファイルは撮影した画像です。クリックすると、等倍の画像を別ウィンドウで開きます。
※作例下の撮影データは、露出時間/絞り/露出モード/感度/ホワイトバランス/実焦点距離を表します。


1/30秒 / F4.5 / マニュアル露出 / ISO50 / 晴天 / 84.24mm
まずはテレコンなし。これでもクレーターや海がはっきり見える
1/15秒 / F5.6 / マニュアル露出 / ISO50 / 晴天 / 84.24mm
すこし絞ってみた

 で、いよいよテレコンを着けてみる。メニューの「コンバージョンレンズ」をオンにするのを忘れずに。液晶モニターで見ると、明らかに迫力が違う。テレコンがあってよかった。

 ホワイトバランスを晴天にしていたのは、「日の光を浴びているんだから晴天にしておくのが近いだろ」という至極単純な発想からだが、筆者の感覚からはすこし黄色すぎるように見える。まあ、この晩、この時間の月はかなり黄色かったので、これはこれで正しいのだけど、「冷たい光を放つ(実際には反射してるだけ)天体」というイメージにはそぐわない。

 いくつかホワイトバランスをためしてみたけれど、どれもしっくりこない。「電球」はいい線をいっているが、青みがかりすぎて、冷黒調のモノクロ写真みたいになってしまった。なので、RAWで撮り、後でOLYMPUS Master 2で調整してみた。


1/15秒 / F5.6 / マニュアル露出 / ISO50 / 晴天 / 138.5mm
テレコン使用。等倍表示すると甘くなるが、やはり迫力が違う
1/60秒 / F4.5 / マニュアル露出 / ISO50 / 自動 / 84.24mm

1/15秒 / F5.6 / マニュアル露出 / ISO50 / 曇天 / 138.5mm
1/15秒 / F5.6 / マニュアル露出 / ISO50 / 電球 / 138.5mm

RAWから現像してホワイトバランスなどを調整。さらにトリミングした

 さて、どうせなら満月も撮ってみたい。満月は5月5日だが、天候や諸般の事情でその日に撮影できるかどうかわからない。なので、満月にはちょっと早いが4月30日に再チャレンジしてみた。

 この日の露出はF8の1/60秒。満ちてきた月がいかに明るいかがわかる。前回より早い時間帯に撮っているせいかAWBでも月は白っぽくいい感じに写った。が、翌日に雨を控えていたからか、もうひとつシャープには写らなかった。また、月面の模様はよくわかるが、光がほぼ正面から当たっているせいで、平板な感じがする。月面の起伏は、下弦や上弦のときのほうがはっきり見える。


1/60秒 / F8 / マニュアル露出 / ISO50 / 自動 / 84.24mm
テレコンなし
1/60秒 / F8 / マニュアル露出 / ISO50 / 自動 / 84.24mm
テレコンあり、だが、メニューでコンバージョンレンズをオンにしわすれたので、Exifにはテレコンなしの焦点距離が記録されている

 SP-550UZだけでも、月はそこそこ写せることがわかった。やってみて面白かったというか意外だったのが、月は結構速く動いているということ。カメラのセッティングでトライアンドエラーを繰り返しているうちにも、どんどん月は動いていく。

 というわけで、カメラを三脚に固定し、インターバル撮影機能で月の動きを撮影して、Photshopで簡単に合成し、トリミングしてみた。SP-550UZのインターバルは、1~99分の間で1分刻みで設定できるので、インターバル1分で撮影した。15分間で月は画面を横断してくれた。



 ここまで来たら、今度は1億5,000万km向こう(平均)にある太陽も撮ってみよう。太陽の場合は素のカメラを向けることは厳禁。CCDを痛めてしまうかもしれない。なので減光フィルターを使うわけだが、一般的なND8(3絞り減光)やND4(2絞り減光)くらいではまるで足りない。9絞り減光してくれるケンコーのND400に、ND8とND4を重ねて計14絞りとした。

 もっともND400はあまり需要がないフィルターなので、お店にもなかなか在庫がない。55mm径のND400の調達が間に合わなかったので、たまたま手に入った82mm径のものをテレコン先端に逆向きに被せて使った。ND8とND4は55mm径のものがあったので、こちらはアダプターとテレコンの間に重ねて装着した。

 プロミネンスやら黒点やらがばりばり写るのかと思っていたら、現在の太陽はあまり活発でない周期にあるのだそうで、ピンポン玉のようにつるんとしたみたいなものしか写っていない。なーんだとがっかりしたが、極小期でも1つか2つは黒点があるはず、とのことなので、等倍でじっくり見てみると、向かって左側に黒点らしきものが見えた。

 というわけで、空気の澄む冬のほかに、数年後(予想では2010年頃)の、太陽が活発な時期が待ち遠しいSP-550UZである。


1/2000秒 / F8 / マニュアル露出 / ISO50 / 晴天 / 138.5mm
太陽が中心にないのは、太陽の縁でAFした後にカメラを動かすのが面倒で、そのままにしたから。左半球に黒点らしきものがある
太陽を撮影したときのSP-550UZを再現したもの。テレコンの先にND400をかぶせ、テレコンの後ろにND8とND4を装着


URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/jp/
  製品情報
  http://olympus-imaging.jp/digitalcamera/sp550uz/

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( 本誌:田中 真一郎 )
2007/05/18 00:35
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