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富士フイルム FinePix S5 Pro【第1回】
Photokinaからずっと待っていました!!

Reported by 木村 英夫


 私の仕事+プライベートで最もよく使うカメラは「FinePix S2 Pro」だ。ニコンD100と同世代、と考えれば2世代くらい前のカメラという気もする。

 S2 Proの購入を決めた当時は、まだ中判カメラでのフィルムによる商品撮影も行なっていた。D100は事務所に導入されていたものの、まだまだ使えない仕事もあった。というのは、600万画素では「カタログ用の商品写真」はカバーできても、A4判を超えるようなサイズの画像を配置する「カラーパッケージ用の製品写真」に使うには、一眼レフでもデジタルでまだ不十分、と考えられていたからである。

 中判カメラでの製品写真撮影は、露出計による露出チェック、インスタントフィルムによるチェックを経たうえで、1カットに対して何枚か段階露光をする、という非常に効率の悪いものだった。

 そこでデジカメ、ということになるのだが「350dpiでこのサイズでは、解像度が不足する」というデザイナーの意見で、D100ではダメだったのだ。私からすれば「印刷のドットでよくわからなくなるのだから、何とかなるんじゃないの?」と反感を持ちながらも、1,000万画素オーバー機を検討することになった。

 ところが、今のように1,000万画素オーバー機が一般的にはなっていなかったため、コストパフォーマンスを考えた選択肢は1つしかなかった。FinePix S2 Proは、スーパーCCDハニカムの演算処理の関係で有効画素数600万画素ながら、1,200万画素出力である。「実際に1,000万画素超の解像度はない」という評価をあちこちでみかけたが、仕事上では何ら差し支えなく大サイズの画像を活用できた。

 前機種である「FinePix S3 Pro」が発売されたとき、購入を考えたこともある。しかし、ダイナミックレンジの拡大など、画像に関する改良は大きな魅力ではあったものの、私の仕事に対して大きく影響する箇所は変更されていなかった。ベースボディーがF80のまま、というのが最も残念で、買い換えの決意につながらなかった点だろう。

 EOS系のボディを仕事で使うことがあり、ファインダーの見えや出力画素数、価格のバランスなどから「次期仕事+プライベート用カメラはEOS 5D」と思って「5D貯金」を始めたこともあった。しかし30万円オーバーの価格のために、なかなか貯金が貯まらない。その間に、APS-Cフォーマットデジタル一眼用の魅力的なレンズが多数発売されたこともあり、大きく決意が揺らいでいた。D200も魅力的な選択ではあったが、撮影した画像の色調が今まで撮っていたFinePixと異なるため、見合わせた。

 Photokina 2006の出発前、知り合いの編集者から「富士フイルムからS4 Proが発表されるはずだからよくチェックしてきてください」といわれ、期待を胸にドイツへ向かった。その会場で見たものは「S4」ではなく「S5 Pro」! 期待を上回るカメラに、すぐ情報収集を開始。後日発売日が「1月下旬」と決まると同時に、予約を入れたのだった。

 そして1月31日の発売日と同時に入手。ひとまず今までのメイン機種「S2 Pro」と比べてみた。


S5 ProとS2 Proの化粧箱。S5 Proの方がひと回り小さくなり、機種名や製品写真が控えめに入っている
F80ベースでデジタル部が富士フイルム製のS2 Proは、バッテリー室のぶん背が高い。S5 Proは、D200ベースで縦横比が普通になった

 S5 Proの大きな特徴は、ベースボディがD200になった、ということ。従来のFinePix S一桁シリーズがF60やF80というフィルムカメラをベースに、富士フイルムでデジタル部を作り上げたモデルだったのに対し、S5 Proはベースがデジタルカメラとなったため、独自性がかなり薄れた。

 S1 ProからS3 Proまで引き継がれたサブ液晶は、一目でセッティングがわかると同時に、対応するボタンを押すことで、素早く設定の変更ができる。画像のクオリティー、サイズ、ホワイトバランスなど、撮影に関して重要なセッティングである。一般的なデジタルカメラにある「メニュー」によるセッティングと、ベースボディのF80にある「カスタム設定」の3箇所に設定する機能が分かれるため、友人からは「FinePixって、使い方がややこしくない?」と聞かれたことも数度あるが、これで慣れてしまえば便利なもの。S5 Proに替えることで不安なのがこれらの操作を覚え直さなければならない、ということだ。

 ただ、ISOやホワイトバランスなどは、ベースボディのD200同様、ボディ左側にあるボタンを押しながらコマンドダイヤルで調整できるので、メニューから呼び出さなければならない、ということはない(メニューからも調整は可能)。


S2 Proは液晶表示が3箇所あり、慣れると設定がわかりやすい。S5 ProはD200同様の液晶部を備える。背面液晶モニターが2.5型になった
S2 Proのサブ液晶

 デジタルカメラはフィルムカメラに比べて愛着がわかない、という人が多いようだが、私にとっては重要な仕事道具で愛着もわくもの。20万円オーバーのカメラだけに、カメラのロゴも気になる。前モデルのS3 Proが「FinePix」のロゴをペンタ部に単にシルク印刷をしたもの、ということで、今回のS5 Proも単なるシルク印刷では? と心配していたが、新しい富士フイルムのロゴを、少し彫って色入れしたもので、長期間の使用でロゴの色が落ちる心配はなさそうだ。


S5 Proのペンタ部のロゴは富士フイルムの新しいロゴ。少し彫り込まれたところに色入れされている S2 Proのペンタ部のロゴは「FinePix」。シルバーの浮き出し文字だ

 ファインダーの倍率、視野率など、カメラとして重要な部分が今までより大幅に向上したS5 Proだが、数少ないスペックダウンの点として、ダブルスロットの廃止がある。S1 Pro、S2 ProがCF/Microdriveとスマートメディアのダブルスロット、S3 ProがCF/MicrodriveとxDピクチャーカードのダブルスロットであるが、S5 ProはCF/Microdriveの1スロットのみとなった。

 私のS2 Proでは、ほとんど活躍の場がなかったスマートメディアだったが、カメラには常に64MBくらいのスマートメディアを入れていた。CFをカードリーダーに入れたままうっかり忘れて撮影に出る、ということが何度かあったが、こんなときに「お守り替わり」のスマートメディアに助けられた。これからはうっかりできない、というのが心配点のひとつだ。D200ベースのため仕方がないところだろう。


S5 Proの対応メディアは、CFまたはMicrodriveのシングルスロット
S2 Proは、CFと今や懐かしいスマートメディアのダブルスロット

 大きな改善点の1つに、リチウムイオンバッテリの採用がある。S2 Proでは、単三電池4本を使用するので、単三型ニッケル水素充電池を常用していた。ところが、しばらく撮影していると急に電池が切れる、ということが起こった。電池の残量表示が少なくなってから使えなくなるまでの時間が短いというのが実感だった。またS2 Proの場合、内蔵ストロボを使うにはCR123Aを2本入れておく必要がある。このCR123Aの持ちも悪いような気がする。


S5 Proは専用のリチウムイオンバッテリ「NP-150」を使う
S2 Proは汎用性の高い単三電池4本での駆動。ただ、内蔵ストロボを使いたい場合は別にCR-123A 2本が必要になる

 S5 ProのベースとなったD200は、バッテリーの持ちが良くないという評判だが、残量表示がきめ細かく、バッテリーの劣化までチェックできるので、予備バッテリーさえ用意しておけばS2 Proより管理しやすいように思える。

 単三電池は出先で入手可能という汎用性が魅力だが、どうしても単三が使いたくなったら別売りの縦位置グリップ「MB-D200」(D200と共用、ただしS5 Proでは単三電池での作動は保証外)を考慮するのも1つの方法かもしれない。


S2

 FinePix S2 ProとS5 Proの両方に「カラー」、「コントラスト」、「シャープネス」の3項目のセッティングがある。S2 Proでは、「ハード」、「スタンダード」、「オリジナル」の3段階でセットできるようになっていたが、S5 Proでは5段階(ミディアムハードとミディアムソフトが追加)となり、さらに細かくセットできるようになった。S2 Proで普段、風景などを撮影するとき、3項目とも「ハード」としていたが、S5 Proはどうしようか、ひとまず比較で撮影してみた。

 撮影したのは夕景。S2 Pro、S5 Proともオートホワイトバランス(AWB)で撮影してみた。レンズはAF-S VR Nikkor 18-200mm F3.5-5.6で、20mm域で撮影した。


  • 作例のリンク先のファイルは撮影した画像です。別ウィンドウで4,256×2,848ピクセルの画像を開きます。

  • 作例下の露出時間/絞り値/感度/露出補正値を表します。



S5 Pro ハード
1秒 / F8 / ISO100 / -0.67EV
S2 Pro ハード
1/2秒 / F8 / ISO100 / -0.5EV

S5 Pro ノーマル
1秒 / F8 / ISO100 / -0.67EV
S2 Pro ノーマル
1/1.5秒 / F8 / ISO100 / -0.5EV

S5 Pro オリジナル
1.3秒 / F8 / ISO100 / -0.67EV
S2 Pro オリジナル
1/1.5秒 / F8 / ISO100 / -0.5EV

 S5 Proは、露出補正が1/3EVステップに変更された。そのため、このカットではS5 Proの設定を-2/3EVで撮影した。S2 Proの方が夕日の赤みが薄いのは、AWBが強めに効いているからだと思われる。S5 Proの方が本来の色味を活かしたAWB設定なのだろう。S2 Proで撮るときは、このケースではホワイトバランスを「晴れ」にした方がベターだろう。さらにS5 Proのカラーモードを「ハード」にしたものは、大変美しい発色をしてくれている。派手めではあるが、是非これからも使ってみたい。



URL
  富士フイルム
  http://fujifilm.jp/
  製品情報
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixs5pro/
  富士フイルム FinePix S5 Pro関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2006/12/08/5218.html


( 木村 英夫 )
2007/02/09 01:18
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