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ペンタックス K10D【第7回】
新ファームウェアを試してみた

Reported by 中村 文夫


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 K10Dの新ファームウェアが23日に公開された。バージョンは1.10。内蔵ストロボを利用して外部ストロボのワイヤレス発光が可能になったほか、操作性の部分に細かい改良が加えられた。

 全体的にそれほど大きな変更というレベルではないが、特筆すべきは、TvとAvモード時に電子ダイヤルで感度が変更できるようになったこと。今回のバージョンアップは、特にISO感度に関係する機能に改良点が多く、ISO感度にこだわるK10Dらしいバージョンアップだ。


ダイヤルでのISO感度変更

 カスタムファンクションの、「Tv時の電子ダイヤル」または「Av時の電子ダイヤル」設定で、ナンバー4か5を選ぶと、前後ダイヤルのいずれかの操作でISO感度をダイレクトに変更できるようになる。


「Av時の電子ダイヤル」で4を選ぶと前ダイヤル、5を選ぶと後ダイヤルの操作だけでISO感度の変更ができるようになる 例えば4を選ぶと、前ダイヤルの操作だけでISO変更が可能。この場合、F値は後ダイヤルで操作する。Svモードと違い、F値を固定したままシャッタースピードが変化する

Av時と同様に、Tv時も前ダイヤルの操作だけでISO感度の変更ができるように設定可能
4を選択すると、後ダイヤルの操作だけでISO変更ができる。シャッタースピードは前ダイヤルで操作。シャッタースピードは固定のままF値が変化する

 従来からあるSvモードでも、ISO感度はダイヤル操作だけで変えることはできた。しかし、Svモードと大きく違う点は、絞りまたはシャッタースピードが自由に選べること。

 もちろん、カスタムファンクションで前ダイヤルでプログラムシフトが作動する設定を選べば、Svモードでも絞りとシャッタースピードの組み合わせは変更はできるが、これはあくまでもプログラムシフト。シフトするとF値とシャッタースピードの両方が変わってしまう。

 これに対し、今度の新しい機能なら、任意のF値、あるいは任意のシャッタースピードをキープしたままISO感度が変更できる。撮影モードの名称はAv/Tvモードだが、中身は従来のSvモードがさらに進化したものといえるだろう。


ISO感度変更のショートカット

 さらに、前記の方法以外にもISO感度を変えるショートカットが追加された。従来ISO感度を変えるには、Fnボタンを押してメニュー画面を表示させ十字キーで「ISO」を選択。さらに十字キーでISO感度を設定するという3ステップの操作が必要だった。


OKボタンを押すとファインダー内と外部液晶パネルにISO感度を表示。前ダイヤルを操作するとISO感度が変更できる。また、グリーンボタンを押すとオートになる。ただしTvおよびAv時に、電子ダイヤル操作によるISO感度変更を選択しているとこの機能は作動しない
 これに対し新ファームウェアでは、OKボタンを押すとファインダー内と外部液晶パネルにISO感度を表示。この状態で前ダイヤルを操作するとISO感度が変更できる。ファインダーから目を離さずに操作ができるので、とても便利だ。この機能が作動するのは、P、Tv、Av、M、B、Xモード時。またP、Tv、Avモード時に、OKボタンを押したままグリーンボタンを押すとISO感度がオートに変わる。これらの機能はカスタムファンクションで設定するのではなく、カメラ本体の仕様変更なので、ファームウェアをバージョンアップすれば、自動的に使えるようになる。

 ただし、この機能はTv、Avモード時にダイヤルでISO感度を変更する設定を選んだときは作動しない。この理由は、1つのモード内に同じ操作部材を使ってISO感度を変える方法を混在させると、使う側が混乱する恐れがあるためと考えられる。

 確かに、各操作部の設定は細かくできた方が良いが、これだけ変更可能な項目が多いと、場合によっては機能が矛盾してしまうことがある。今後もバージョンアップによって機能が追加されることが予想されるが、このような混乱を少しでも避けるため、例えばPCと接続してカメラの設定を変更できるソフトがあっても良いのではないだろうか。*ist Dの時代にあったリモートアシストのような、PC側でカメラをコントロールするソフトウェアはK10Dには用意されていない。どうせなら機能設定とカメラコントロール両方の機能を兼ね備えたリモートアシストの新バージョンを期待したい。


自動増感したISO感度をリセット

 新ファームウェアでは、TAvモード時にグリーンボタンを押すと、オートISO感度の自動調整範囲の下限ISO感度が設定されると同時に、これに対して適正露出が得られるF値とシャッタースピードを自動的にセットするようになった。


従来「M時のグリーンボタン」だった表示が、「TAv、Mモグリーンボタン」に変更になった
例えば、シャッタースピードを速くしたり、絞りを絞りすぎてISO感度が高くなってしまったとき、グリーンボタンを押すとISO感度が自動調整範囲の下限に戻る

 これまでは、絞り込んだりシャッタースピードを速くしてISO感度が高くなりすぎてしまったとき、感度を元に戻すには前後ダイヤルを操作してF値やシャッタースピードを変更しなければならなかった。だが新機能では、グリーンボタンを押すだけで感度を下げられる。早い話が、グリーンボタン一押しでISO感度がデフォルトに戻る「お助けボタン」みたいなものだ。


前後ダイヤルの機能入れ替え

 さらに、Pモード時に前後ダイヤルの機能を入れ替えることも可能になった。また、AF測距点の選択を「セレクト」に設定している状態でAFボタンを押すと、測距点を中央に戻す機能もカスタムファンクションに追加された。


Pモード時に前後ダイヤルの機能が入れ替えられる
カスタムファンクションのAFボタンの機能で測距点中央を選び、測距点セレクト状態でAFボタンを押すと測距点が中央に戻る

ストロボ関連

内蔵ストロボを使って外付けストロボのワイヤレス発光が可能になったほか、グリーンボタンの一押しでストロボ光量補正が±0に戻る
 光量補正画面を表示させた状態でグリーンボタンを押すと補正値が±0になる機能。内蔵ストロボを使って外付けストロボをワイヤレス発光させる機能も加わった。そのため、これまでのように外付けストロボを2台用意しなくても、ワイヤレス発光が利用できるようになった。

 また、どちらのストロボをメイン光にするかも、カスタムファンクションで選ぶことができる。なお、ワイヤレスコントロールができるのは、同社のPTTL調光対応クリップオンストロボ「AF360FGZ」または「AF540FGZ」で、AFレンズか絞りリングにA位置のあるレンズを組み合わせた場合のみ。ハイスピードシンクロは利用できない。


ワイヤレスモード時に、内蔵ストロボのマスターとコントロール発光の選択ができる

 このほか、機能として現れない部分ではバルブで5分以上の長時間露光を行なった場合に画像にムラが生じる症状と、低温でバルブ露光したときに電池残量なし表示がすぐに出る症状が改善されている。


さらなるファームウェアの改善に期待

 以上がファームウェアのバージョンアップによって追加された機能だが、K10を2カ月近く使ってみて、ぜひ欲しいと思った機能が3つある。
 第一の機能は、手ブレ補正設定のショートカットだ。レンズ内にROMを内蔵していないレンズをK10Dに取り付けた場合、レンズの焦点距離を手動でインプットする必要がある。

 カメラのメインスイッチをオフからオンにしたときは、最初に焦点距離をインプットする画面が表示されるので問題ないが、スイッチがオンになった状態から測光スイッチをオンにしたときは、この画面は表示されない。したがってメインスイッチがオンの状態でレンズ交換をすると、焦点距離距離インプット画面が出ないので、設定を忘れ失敗することがある。


焦点距離のインプットメニューは、撮影メニューのいちばん最後にある。メニューボタンを押してメニュー一覧が表示された状態で十字キーの上を押せばすぐに呼び出せるが、階層が深いことに変わりはない FnメニューのISO感度設定の代わりに、手ぶれ補正の焦点距離インプットを入れて欲しい

 ROM非内蔵レンズを取り付ける度に焦点距離設定画面を表示させる画面が出るようにならないものか。またインプット画面の階層が深く使いにくい。例えば、Fnボタンにこの設定を割り当てることはできないものだろうか。今回のバージョンアップによって、ISO感度設定にはショートカットが新設された。これを焦点距離のインプットに入れ替えても構わないはずだ。

 次の要望は、Mモードで光学プレビューをしたときの後ダイヤルの機能だ。あまり知られていないが、絞りリングをA位置以外にセット、あるいはA位置のないレンズを使用したとき、Mモードで光学プレビューを行なうとボディ上面の液晶パネルとファインダー内に露出の過不足を示すバーグラフが表示される。この状態で絞りリングを回してF値を変更するか、あるいは前ダイヤルでシャッタースピードを変更すると適正露出が得られる。もちろんグリーンボタンを押せば一発で適正露出が得られるが、プレビューを併用する方法ならバーグラフを見れば露出補正量が即座に分かり、露出補正を多用するときは意外と便利。

 だが問題は、プレビューレバーを操作した状態で前ダイヤルを回す方法だ。人差し指はプレビューを押さえるために使っているので前ダイヤルは中指で回すしかない。この体勢には人間工学的にかなり無理があり指がつりそうになる。実は*ist Dも同様の機能を装備しているが、このときだけ前後ダイヤルの機能が入れ替わるので親指で後ダイヤルを回すことができる。なぜK10Dも同じ仕様にしなかったのだろう。


レンズの絞りリングをA位置以外にセットし、Mモードで光学プレビューを作動させると、外部液晶パネルとファインダー内に露出の過不足を表示するバーグラフが出る
この表示を見ながらシャッタースピードと絞りを調節すると適正露出が得られるが、プレビューレバーと前ダイヤルを同時に操作することは非常に難しい

 今回は最初のバージョンアップということで、旧レンズユーザーに対するサービスまで手が回らなかったのかも知れないが、次回はこのあたりの機能にも気を配って欲しい。

 最後の要望はMモード時に露出補正が使えるようにすること。マニュアル露出と露出補正は類似した機能で、同時に使用するメリットはないように思える。だが、これが使えるとハイパーマニュアルで、グリーンボタンを押したときに、即座に露出補正した露出が得られる。フィルムカメラのZ-1ではOKだったのにK10Dで使えないのは残念だ。

 いずれにしてもK10Dの機能は非常に複雑だ。人それぞれ使い方が違うので、開発側も大いに悩んでいることだろう。少しづつで構わないから、より高い完成度を目指してバージョンアップを続けて欲しいものだ。



URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/35mm/k10d/
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(K10D)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#k10d
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm


( 中村 文夫 )
2007/01/26 18:46
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