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キヤノン EOS Kiss Digital X【第5回】
EOSの高感度はやっぱりすごい

Reported by 北村 智史


雨なので水族館なのである

 このところ、撮影のたびに天気が悪い。曇りの日より降られることのほうが多いぐらいで、予定が消化できずにしんどい思いをしている。カメラを持っているときで晴れたのは、ムスメの誕生日に舞浜方面に出かけたときぐらいのもので、そのときは晴れはしたものの、京葉線が止まってひどい目にあった(新木場駅で2時間半待ってようやく乗れたタクシーは渋滞のせいで、JRの2駅分に1時間以上かかってしまったという不幸さである)。

 今週も火曜、水曜の某誌のロケ(デジタル一眼レフ9機種で合計2,300カットほど)はおおむね曇り、若干薄陽、雨少々という天気で、木曜は雨。なのに、長期レポートは原稿も作例も手付かずのままという、アオザメ状態(こういうときは笑ってごまかすのが基本でありますね)。

 まあ、そういう次第でアウトドアでの撮影はあきらめて、屋内でなんとか……と考えた結果がオサカナ。水族館で高感度撮影にトライしてみることにしたわけである。


実用的な高感度画質

今回使ったレンズは、EF 17-40mm F4 L USMとEF-S 10-22mm F3.5-4.5 USMの2本。USM(超音波モーター)仕様なので、音は静かだしフルタイムMFも使える
 EOS Digitalの高感度でのノイズの少なさには定評があるが、新しいEOS Kiss Digital Xは10メガである。画素数が増えれば1画素あたりの受光面積は小さくなるのが道理で、その分感度面ではつらいことになっているはずだ。

 もちろん、技術の進歩もあるから、画素数アップが必ずしも感度や画質の低下につながるとはかぎらない。なので、実際のところどうなのかは撮ってみないことにはわからないのである。

 結果はごらんのとおり。画素数が増えたにもかかわらず、画質が落ちたとか、ノイズが増えたという感じはまったくない。さすがにISO800相当や1600相当になるとそれなりにザラツキは目立ってくるし、ディテールもアマくなるが、それもピクセル等倍で見れば気になるという程度で、感度を上げなきゃ撮れないシチュエーションだとわかる写真であれば、誰も文句は言わないだろうと思えるレベルである。

 低感度での画質なら、ニコンD200のほうがいいと個人的には思っているが、こと高感度での画質のよさではキヤノンにかなうメーカーはないと言っていい。やっぱりEOS Digitalの高感度はすごい。


十字キーの上キーを押すと感度設定画面が表示される。素早く切り替えられるので、感度の上げ下げが簡単に行なえる 感度設定範囲はISO100からISO1600まで。1段刻みである

AF性能も優秀

 作例写真のデータを見ればおわかりいただけるように、水族館というのはけっこう暗い。明るい水槽もないではないが、暗い水槽のほうがずっと多い。魚が棲んでいる環境がそうだからだ。なので、暗いのが普通である。今回撮ったマグロの水槽は、F4のレンズだとISO1600で1/60秒ぐらい。ISO100の感度なら1/4秒という低速シャッターになってしまう暗さである。

 もっとも、ISO100ならEV6程度だから、スペック的には問題はない(EOS Kiss Digital Xの測距可能な輝度の下限はEVマイナス0.5である)。が、これぐらいの低輝度でコントラストの低い被写体という条件になると、カメラによっては音をあげてしまう。シャッターボタンを半押ししても、レンズが行ったり来たりするだけで、ピントが合ってくれないケースが出てくるのである。

 それがEOS Kiss Digital Xにはほとんどない。まったくないわけではないが、ほかのカメラならダメだろうなぁと思えるような暗さでも、ススッとピントを合わせてくれる(今回はUSM搭載レンズを使ったので、実際にはほぼ無音である)。まあ、中にはピントのアマいコマもあったりはするが、条件が条件だけに文句は言えない。

 ただ、ファインダー倍率が0.8倍と低いうえに(35mmフィルムカメラに換算すると0.5倍相当なのだ)、キヤノンのフォーカシングスクリーンと筆者の目との相性がよろしくないものだから、ピントの山のつかみづらさは抜群である。ねらったポイントと違うところにピントが合っていても、ファインダー上では確認しきれないことも少なくない。お値段が違うので同列に比較するわけにはいかないが、ニコンD80のファインダーがうらやましくてしかたがない。

 ついでにもうひとつ。暗い場所で撮っていると、液晶モニターがまぶしいのをどうにかしてもらいたい。前に書いたとおり、EOS Kiss Digital Xの液晶モニターは明るいほうではない。晴天の野外では見づらくて困るぐらいである。

 問題は、撮影時の情報表示である。薄いグレー(ちょっと青っぽく見えるが)の地に、黒文字でシャッター速度や絞り値をはじめとするさまざまな情報を表示してくれているのだが、これが暗い場所ではすごくまぶしい。

 カメラを構えたときには自動で消えるし、「DISP.」ボタンを押せば消すこともできなくはないが、消したら消したで情報表示がファインダー内だけになってしまうので不便である。ソニーα100やパナソニックLUMIX DMC-L1などのように、黒地に白文字のほうが暗い場所では目に優しいと思うし、欲を言えばオリンパスE-330やE-500のように配色の切り替えができるともっといい。ファームウェアのアップデートでやってもらえたらすごくうれしいのだがどうだろうか。


撮影情報を表示する画面。薄いグレー地なので、暗い場所ではまぶしく感じる LUMIX DMC-L1の撮影時の画面。黒とダークグレーが基調で、昼間でも見やすいし、暗い場所でも目に優しい

今週のカミサン

 ムスメの誕生日に浦安市舞浜2-11に1泊しての帰途の電車の中でのこと(夜9時すぎまで遊んでいたせいで、ムスメはホーンテッドマンションに乗ってる途中で沈没した)。2日間で撮った写真を液晶モニターで見ながら、

「あ、電池ないって言ってる」
「予備のと交換しなよ。持ってきてるだろ?」
「バッグのどこかのポケットに入ってるよ」
「どこに入れたかおぼえてないの?」
「うん。忘れた」
「そんなの忘れるなよなぁ」
「忘れちゃったんだもん。あ、落ちた」

 ちなみに、カミサンは2日間で400カットほど撮ったらしい。カミサンもEOS Kiss Digital Xもよく頑張ったと思う。で、その翌日である。とっても自慢そうな表情で勝ち誇ったように、予備の電池を見せながら、

「ほぉら、ちゃんとあったよ」

 ……って、えらそうにいうことかい。


作例

  • 作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
  • 写真下の作例データは、使用レンズ/記録解像度(ピクセル)/露出モード/露出時間/絞り値/露出補正値(マニュアル露出の場合は省略)/ISO感度/ホワイトバランス/実焦点距離(カッコ内35mm判換算での焦点距離)を表します。
  • 一部の作例については、作例データの一部項目を別の行で強調表示しています。


●ISO感度

 ISO800相当以上になると、ノイズとディテールの劣化が気になりはじめるが、暗めの単色の被写体でこのレベルなら文句なし。水の青さを出すのにホワイトバランスをプリセットの蛍光灯にしている。手持ちなのでフレーミングがバラついているのはご容赦いただきたい

共通データ:EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / F4 / ISO1600 / WB:蛍光灯 / 10mm(16mm相当)


ISO100 ISO200

ISO400 ISO800

ISO1600

●そのほか


ここのテントデッキは晴れた日の夕方はすごくきれい。でも、雨だし……
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F8 / ISO100 / WB:オート / 10mm(16mm相当)
ISO1600だと、やはり荒れた感じにはなるが、ウロコの再現などはなかなかのもの。水槽から離れて撮ると、ガラス(アクリル)のキズとかまで写ってしまうのが要注意ポイント
EF 17-40mm F4 L USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/100秒 / F4 / ISO1600 / WB:オート / 17mm(27.2mm相当)

感度を下げ忘れてISO1600のまま撮ってしまったカット(ホワイトバランスも蛍光灯のままだったりする)。ISO1600でこの写りなら上等だ
EF 17-40mm F4 L USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/500秒 / F4 / ISO1600 / WB:蛍光灯 / 40mm(64mm相当)
ISO400相当ならほとんどノイズを気にせず撮れる。ほかのカメラだとこうはいかないが、EOSだとISO100でブレそうなときは一気にISO400相当まで上げてしまうという使い方ができる
EF 17-40mm F4 L USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/40秒 / F4 / ISO400 / WB:オート / 40mm(64mm相当)

被写体の大きさを見せたいなら、比較対象物をいっしょに写すのがいい。小さな子どもなんかだと、マグロの大きさが際立つのでグッドだ
EF-S10-22mm F3.5-4.5USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/60秒 / F4 / ISO1600 / WB:蛍光灯 / 10mm(16mm相当)
マグロはけっこう速いので、水槽から少し離れて流し撮り。感度を下げ目にしてシャッター速度を遅くして撮るとスピード感が強調しやすい
EF 17-40mm F4 L USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/25秒 / F4 / ISO800 / WB:蛍光灯 / 40mm(64mm相当)

こちらはISO1600で流し撮り。画面中央の白っぽい縦の帯は水槽のアクリル(分厚いところでは26cmもあるらしい)のつなぎ目
EF 17-40mm F4 L USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/60秒 / F4 / ISO1600 / WB:蛍光灯 / 40mm(64mm相当)
お目当てのマグロのお食事タイム。けっこうワイルドで見ごたえがある
EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/60秒 / F4 / ISO1600 / WB:蛍光灯 / 10mm(16mm相当)

こちらもお食事中の1カット。普段は畳んでいる腹ビレや背ビレ(前のが折り畳み式の第1背ビレ、後ろの第2背ビレは出っ放し)が見られるとお得な気がしてしまう。我先にエサに群がるので被写体ブレしやすいのが難点
EF 17-40mm F4 L USM / 3,888×2,592 / マニュアル露出 / 1/80秒 / F4 / ISO1600 / WB:蛍光灯 / 40mm(64mm相当)


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/kissdx/
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  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#kdigix
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( 北村 智史 )
2006/10/06 16:57
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