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キヤノン EOS Kiss Digital X【第2回】
初撮りである

Reported by 北村 智史


舞台は新木場である

 EOS Kiss Digital Xを買った翌々日の日曜日。カミサンとムスメと3人で新木場に行ってきた。どうして新木場なのかというと、ディズニーランドに行きたいというカミサン&ムスメと、それに難色を示した筆者(理由はあえて書かないが)の中を取った結果であって、掲載用の撮影をすませてから舞浜に移動するのに便利な新木場を選んだ。思い出したように真夏モードの太陽の下、「疲れたからオンブ」を連発するムスメをなだめながらの、かなりまったりしたペースでの撮影である。

 カミサンには、プログラムAE(Pモード)で、ほかは全部自動状態にして、とりあえず好きに撮らせてみた。グリーンマークの全自動にしなかったのは、あとになって明るさの調整をしたいと思うようになったときに、切り替え操作がいらないからだ(全自動だと露出補正ができないので、プログラムAEに切り替える手間が必要になる)。

 カメラの露出というのはあくまでそのメーカーのオススメの露出にすぎなくて、それが自分の気持ちに合っているかどうか、とは別である。「カメラの露出が間違っているのを修正する」ケースもあるが、「オレはこんなふうに撮りたいんだよ」という気分に合わせて調整することもある。そのための機能が露出補正なのであって、相手が「ど」が付く初心者であるカミサンだからといって、露出補正ができない状態からスタートを切るのはよくない。そう思うんである。

 もっとも、コンパクト機でしか撮ったことのないカミサンには、まずは一眼レフに慣れてもらわないことには話にならない。撮って、見て、それからである。失敗して、口惜しい思いをして、考えたり悩んだりしながら少しずつうまくなっていくものなのだから、とりあえず「好きに撮ってみろ」である。

 と言っても、最近のカメラはお利口にできているので、そうそうひどい失敗をするようなことはない。使う側がヘマをやらかさないかぎり、ピントも露出もそれなりに合うし、ヘンテコな色再現になることもあまりない。心配なのは手ブレぐらいのものだ(一応、シャッター速度の表示がフタケタになったら感度を上げるように言っておいた。見てないと思うけど)。


初心者には全自動と考えがちだが、カミサンにはあとあとのことを考えてプログラムAEからスタートしてもらうことにした

全自動では、露出補正はもちろん、感度やホワイトバランス、測光方式、AFモード、測距点なども全部いじれなくなる。簡単と言えば簡単だが、コンパクト機以下の機能しかなくなってしまう プログラムAEだと、何もいじらなければ全自動と大差ない(感度はオートではなくなる)から難しくはない。それに、コンパクト機のユーザーだって、露出補正やホワイトバランスの切り替えぐらいやると思う

変わったところ、変わらないところ

 ま、早い話が放置しちゃってるわけで、こちらは安心して仕事に専念できる(ムスメという強敵を忘れてはいけないが)。

 撮りはじめて一番に気になったのは、液晶モニターの見づらさである。直射日光が当たる状態では何も見えないに近いし、手や身体の陰にしてもやっぱり見づらい。EOS 20Dの液晶モニターに比べると少し明るいような気もするが、ニコンのD200の液晶モニターに比べるとかなり暗い。予想していたことではあるが、実際に野外での見づらさを体験すると頭が痛くなる。


露出補正ボタンのすぐ下にあるのがドライブモード選択ボタン。ファインダーを覗きながら操作するというのを想定していないのかもしれないが、気を付けているつもりでもしょっちゅう押し間違う
 それから、これはよくなった点だが、ドライブモードの切り替えが、EOS Kiss Digital、Kiss Digital Nではボタンを押すだけで順番に(1コマ撮り→連写→セルフタイマー)切り替わる仕様だったのが、Kiss Digital Xでは、ボタンを押して電子ダイヤルまたは十字キーの左右キー操作で切り替わるように変更されている。

 初代はボタンが上面にあったから問題はなかったが、二代目は背面の露出補正ボタンの下にレイアウトされていたため、ファインダーを覗いたまま露出補正をしようとして、間違って連写に切り替えてしまうという誤操作が頻発した(露出補正をしたつもりでシャッターを押すと、ピー、ピー、ピー、ピー……と鳴りはじめたりしてあわてさせられることもあった)。それが、ボタンを押しただけでは切り替わらなくなったので、露出補正をしようとしてドライブモードを切り替えてしまうミスは起きにくくなった。

 ただ、ファインダーを覗きながらだと押し間違いやすいのは相変わらずなので、できればボタンの形を変えるなど(ボタンの中央に小さな突起を付けて触っただけで区別できるようにするとか)の工夫が欲しかったと思う。まあ、ドライブモードを押すと、液晶モニターが点灯するので(露出補正ボタンは押しても液晶モニターは点灯しない。もちろん、ファインダーを覗いた状態では、である。念のため)、わりと気付きやすいというのはある。

●液晶モニターの明るさ比較

 各機種の液晶モニターを同じ露出値で撮り比べてみた。輝度が標準の状態では、Kiss Digital XはD200よりシャッター速度で1段ぐらい暗い。EOS20Dはさらに1/3段ほど暗い。輝度を最大にすると、Kiss Digital Xは標準の状態よりぐっと明るくなって、D200との差は小さくなる。が、コントラストが若干低下する。


EOS Kiss Digital X(輝度:標準) D200(輝度:標準) EOS 20D(輝度:標準)

EOS Kiss Digital X(輝度:最大) D200(輝度:最大) EOS 20D(輝度:最大)

安心して使えるオートホワイトバランス

 まだ第2回なのに文句ばかり書いていると編集担当に愚痴られるので、褒めるべきところをまじめに褒めておこう。

 まず、AFの速さ。キットレンズのEF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USMだと無限遠から最短撮影距離までのピントリング(というか、レンズの前枠)の回転角はほんの45度ぐらいしかないからというのもあるだろうが、とにかく速い。シャッターボタンを半押しすると、スッとピントが合う。スーッ、ではない。ほんとにスッと合うんである。

 しかも、迷わない。ピントが検出できなくてレンズがうろうろすることもないではないが、ピントが合わせられるときは、ほぼ百発百中で迷わずに合う。昼の明るいうちならどんなカメラでもまず迷わないが、夕暮れどきになってもAFが迷わないあたりは、さすがキヤノンという感じ。もっとも、左右の端の測距点なんかは暗くなってくると迷うケースも出てくるが、中央の測距点に関しては、速いうえに迷わない、拍手喝采もののAFだと思う。

 もうひとつ、オートホワイトバランスのよさ。ターゲットユーザーがエントリー層なのだから、オートホワイトバランスが当たらないようでは困るのだが、実はオートが当たらないカメラは少なくない。晴天の日中でも外れることがあるぐらいで、筆者も作例撮りをするときは、オートとプリセットの晴天(とか太陽光とか昼光とかである)を切り替えながら撮っていたりするが、キヤノンのカメラは例外。ほとんどオートのままで撮れてしまう。

 まあ、画面の大半があまり明るくないブルー系の被写体(ビルの壁とか看板とかね)で占められる場合に多少アンバー気味にコケたり、ごく淡い色調の明るい被写体(桜なんかが代表例)で色あいが薄く再現されたりするケースはあるものの(あと、街の夕景・夜景のような複数の人工光源のミックス光が存在する場合なんかもあやしくなる)、そういった「コケて当たり前」的条件以外はほぼ問題なくオートで撮って大丈夫。カミサン用デジタル一眼レフにKiss Digital Xを選んだ理由のひとつが、これ。オートホワイトバランスのよさなのである。


EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USMのピントリングの回転角はとても狭い(無限遠から至近までだいたい45度ぐらい)。これは無限遠の状態 最短撮影距離(0.28m)。回転角の狭さもあり、AFはものすごく速くて快適

今週のカミサン

「あれ……?」
「どした?」
「シャッターボタン押してるのにピントが合わない」
「レンズのスイッチ、MFに切り替わってない?」
「ん、ちゃんとAFだよ」
「もしかして、電源入ってない?」
「あ……」

 修業が足りない以前の問題だな、こりゃ。


作例


  • 作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです
  • 写真下の作例データは、使用レンズ / 記録解像度(ピクセル) / 測光方式 / 露出方式 / 露出時間 / 絞り値 / 露出補正値 / ISO感度 / ホワイトバランス / 実焦点距離(カッコ内は35mm判での画角に相当する焦点距離)を表します


EF-S 18-55mmは、単品での実売価格が2万5000円ぐらいの低価格レンズで、つくりもチープ。でも、シャープさはなかなかのもの
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/40秒 / F4 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 18mm(29mm相当)
夢の島熱帯植物館の中。画面左上の明るい部分の表現がちょっとよろしくないが、シャドー部のノイズの少なさは立派だと思う
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/25秒 / F3.5 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 18mm(29mm相当)

F8まで絞ると、四隅まで安定したシャープな画質になる。Lレンズ好きの筆者としては、25,000円でこの写りはみょうに口惜しい
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/200秒 / F8 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 18mm(29mm相当)
これも夢の島熱帯植物館。昔の評価測光はあやしさ抜群だったが、最近はすごく安定してきていると思う。被写体が白っぽければちょこっとプラス補正でOK
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/80秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 18mm(29mm相当)

ピクチャースタイルの「スタンダード」は、Kiss Digital Nの「パラメーター1」に近い仕上がり。彩度とコントラストがやや高めで、くっきりした画面になる
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/160秒 / F10 / -0.3EV / ISO100 / WB:オート / 25mm(40mm相当)
マリーナに停泊中のヨット。暗い部分が多いので、2/3段のマイナス補正している
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/200秒 / F10 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 55mm(89mm相当)

オートホワイトバランスだと青空がくすんでしまうカメラもあるが、キヤノンのは安心してオートで使える。エントリーユーザーにはオートホワイトバランスの性能がいいことはとても大事だ
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/320秒 / F11 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 18mm(29mm相当)
空の青を強調するために、ピクチャースタイルを「風景」にして、露出もマイナス1段補正。かなりウソくさいが、印象的な青になったと思う
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/320秒 / F14 / -1EV / ISO100 / WB:オート / 34mm(55mm相当)

筆者個人としては、「風景」の青空よりも「スタンダード」のほうが好み(条件によっては「スタンダード」でも、けばく見えてしまうこともあるが)。まあ、RAWで撮っておけば撮影時に悩む必要もないんだけど
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/200秒 / F10 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 55mm(89mm相当)
マリーナの近くにはビキニ環礁での水爆実験の被害者となった第五福竜丸が展示されている。かなり暗かったが、ISO100で何とかブレずに撮れた
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/10秒 / F3.5 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 18mm(29mm相当)

9月というのに陽射しが強くて日なたは歩く気になれないほど。というわけで日陰で涼みがてら撮った1コマ
EF-S 18-55mm F3.5-5.6 II USM / 3,888×2,592 / 評価測光 / プログラムAE / 1/200秒 / F9 / -0.7EV / ISO100 / WB:オート / 18mm(29mm相当)


URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  製品情報
  http://cweb.canon.jp/camera/eosd/kissdx/
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  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#kdigix
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( 北村 智史 )
2006/09/15 02:02
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