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ペンタックス K100D【第6回】
ピクチャーモードとデジタルフィルタ

Reported by 伊達 淳一


 今回は、K100Dのピクチャーモードとデジタルフィルタに注目してみよう。

 K100Dには、さまざまな撮影モードが備わっているが、ペンタックスならではのモードが“AUTO PICT”モードだ。いわゆるシャッターボタンを押すだけのお手軽簡単全自動モードだが、他社のフルオートモードと違うのは、撮影シーンをカメラが判別して、人物、風景、マクロ、動体の各モードから自動的に最適なピクチャーモード(シーンプログラム)を選んでくれる点。ファンダー内には選択されたピクチャーモードを示すアイコンが点灯するので、カメラがどのピクチャーモードを選んだのか確認できる。

 もちろん、百発百中で最適なピクチャーモードを選択してくれるとは限らないが、面倒なカメラ設定なしに少しでもいい写真を撮りたい、というユーザーには便利なモードだ。


撮影シーンに応じて自動的に最適なピクチャーモードを選んでくれる“オートピクチャープログラム”
モードダイヤルをSCNに合わせ、Fnボタンを押して、OKボタンを押すと、8種類のピクチャーモードを選択できる

 自分の意志でピクチャーモードを選ぶことも可能だ。K100Dに搭載されているピクチャーモードは、人物/風景/マクロ/動体/夜景人物/ストロボオフの6モードのほか、モードダイヤルをSCN(シーン)に合わせれば、夜景/サーフ&スノー/テキスト/夕景/キッズ/ペット/キャンドルライト/美術館の8モードを選択できる。つまり、全14モードのピクチャープログラムを搭載しており、デジタル一眼レフのなかでは非常にモードが充実しているのが特徴だ。

 もっとも個人的によく使うのは、絞り優先AEを始めとするP/A/S/Mの基本4モード。絞りやシャッタースピードは、単に光量を調節するだけでなく、ボケや動感をコントロールする写真表現にとって重要なパラメータだ。同じ明るさでも、撮影意図や被写体によって最適な絞りやシャッタースピードの組み合わせは違う。せっかく一眼レフで撮影するのなら、絞りやシャッタースピードはカメラまかせではなく、自分の意志で選択したいからだ。

 しかし、K100Dのピクチャーモードは、絞りやシャッタースピード、AFモード等を自動設定してくれるだけではなく、ホワイトバランスや画質調節パラメータも撮影シーンに応じて最適化してくれる。つまり、ピクチャーモードによって色や階調再現が微妙に違う可能性があるわけだが、残念ながらK100Dの使用説明書を読んでも、各ピクチャーモードでどんなホワイトバランスや画質調節を行っているのかは不明だ。そこで、風景とポートレート、夕景の各シーンを、いくつかの撮影モードで撮り比べ、描写の違いを探ってみた。


風景(使用レンズ:DA 18-55mm F3.5-5.6AL

※リンク先は撮影画像をリネームしたファイルです。


プログラムAE
画像仕上は“鮮やか”。黄色は色飽和しやすい色だが、ギリギリのところで破綻せずに済んでいる。ひまわりの黄色と青空の青の色彩コントラストが美しい。空の青をもう少し濃く再現するには、1/3EVほど露出アンダー目に撮影したいところ
風景
“木々の緑や青空などの輪郭・彩度を強調して鮮やかな色の画像に仕上げます”と使用説明書に書かれているとおり、青空やひまわりの彩度、コントラスト、シャープネスが高めになっている。ただ、少しでも露出オーバーになると色飽和しやすいので注意

マクロ
“近くにある花などを鮮やかに撮影できます”と書かれているが、このカットを見る限り、プログラムAEよりも彩度やコントラストは低め。色調も少しアンバーが強めだが、花の色にホワイトバランスが惑わされないよう太陽光に固定されているのかも

ポートレート(使用レンズ:FA50mm F1.4)

プログラムAE
単焦点の50mmレンズをF3.5まで絞り込んで撮影しているので、ピントが合っている部分はキリリとシャープな描写だ。画像仕上“鮮やか”だと、赤や黄色が鮮烈に再現される一方、色飽和しやすく、赤い服のディテールがつぶれ気味
人物
“人物撮影に適しています”としか書かれていないが、プログラムAEよりもわずかに絞りを開けて撮影されている。また、肌色部分のシャープネスが弱めになっているようで、肌の荒れが目立ちにくくなっている
キッズ
使用説明書には“動きの多い子供を撮影するのに適しています。肌色を健康的に仕上げます”と書かれていて、AFモードはAF.C。動きを止めるため、絞りを積極的に開けて高速シャッターで撮影している。肌色もやや黄色みが強くなっている

夕景(使用レンズ:DA16-45mm F4ED AL)

プログラムAE
画像仕上は“鮮やか”。トワイライトの紫がかった空が印象的に再現されている。手前のイルミネーションにピントを合わせたので、背景のビルはわずかにアウトフォーカス気味。この明るさなら十分手持ちでも撮影できる
夕景
「夕焼けや朝焼けの写真を美しく仕上げます」と書かれているとおり、夕焼けの赤みが強調されている。トワイライトの空が赤紫寄りに再現されているので、プログラムAEよりも少し暖かみのある写真に仕上がっている


 このようにピクチャーモードで撮影すると、絞りとシャッタースピードの組み合わせが変わるだけでなく、オートホワイトバランスの特性が変化したり、特定の色だけ誇張されたり色相が変化する。彩度やコントラスト、シャープネスも微妙に変わる。K100Dの画像仕上は“鮮やか”と“ナチュラル”の2種類しかないが、ピクチャーモードをうまく利用すれば、“鮮やか”とも“ナチュラル”とも違った絵作りを楽しめる。

 ちなみに、従来のPENTAX PHOTO Laboratory 2.1(PPL2.1)は、画質モードでナチュラルと鮮やか以外にも、ピクチャー:人物、ピクチャー風景、ピクチャー:マクロ、ピクチャー:動体、ピクチャー:夜景人物も選択できた。つまり、ピクチャーモードで撮影していないRAWでも、ピクチャーモードの絵作りでデジタル現像することができた。

 しかし、K100Dに付属しているPENTAX PHOTO Laboratory3(PPL3)では、画像仕上でナチュラルと鮮やかしか選択できず、例え、ピクチャーモードで撮影したRAWであっても、そのピクチャーモードの絵作りでデジタル現像できないのだ。この点に関しては、PPL3はPPL2.1よりも退化している。内部処理がSILKYPIXエンジンになった都合かもしれないが、完全にカメラ内処理と同じでなくてもいいので、ピクチャーモードを反映した画像仕上をPPL3にも用意してほしいと思う。


PPL2.1では、ピクチャーモードの仕上げを選択できた PPL3では、鮮やかとナチュラルしか選べない

 ところで、ピクチャーモードにすると、画像仕上は“鮮やか”、ホワイトバランスは“オート”に固定される。また、AFモードとストロボ発光モードも各ピクチャーモードで設定された値に自動設定され、撮影者が設定を変更できないようになっている。ただし、カメラが自動設定してくれるのはこれだけで、感度やドライブモード、測距点の選択方法などは、撮影者が選択したモードが引き継がれる。露出補正やストロボ調光補正も可能で、他社のシーンプログラムに比べるとかなり撮影者の自由度が高い仕様だ。

 ただ、ドライブモードや自動感度の設定範囲くらいは、各シーンに応じて自動設定(必要に応じて設定の変更は可能)してくれたほうが親切だと思うし、露出補正やストロボ調光補正なども、初期値にリセットしてくれたほうがうっかりミスを防げると思う。

 もうひとつ、K100Dというか、ペンタックスのデジタル一眼レフには不可解な仕様がある。それは感度AUTOだ。明るさに応じて、自動的に感度を可変してくれる機能で、カスタムメニューで自動的に増感される感度の上限も設定できるなど、初心者だけでなくベテランユーザーにとってもなかなか便利な機能だ。ところが、露出補正をかけると、感度AUTOに設定していても、強制的にISO200で撮影される仕様なのだ。

 例えば、薄暗くなってISO800まで自動感度アップしているシーンで露出補正をかけると、いきなりISO200になってしまうので、シャッタースピードがガク~ンと落ちて、なにが起きたのか理解しがたい状況に陥ってしまう。仮にISO800に自動感度アップしている状態で+0.3EVだけ露出補正をかけたとしたら、約1.7段弱もシャッタースピードが遅くなってしまうのだから、この仕様を知らなかったらまさにパニックだ。露出補正は“基準露出レベルのシフト”と考えて、ちゃんと自動感度アップした状態で露出補正が効くように早急に改善してほしいものだ。これでは、せっかく便利な感度AUTOも魅力半減だ。


 次に、K100Dのデジタルフィルタ機能にスポットを当ててみよう。デジタルフィルタ機能とは、撮影した写真をカメラ内で後処理する機能で、白黒/セピア/カラー/ソフト/スリム/明るさの6種類のフィルターが搭載されている。コンパクトデジカメにはよくある機能だが、使ってみると意外に作画に利用できるフィルターもある。ただ、デジタルフィルタが適用できるのはJPEGで撮影した写真だけで、RAWには対応していないのは、RAW派のボクとしてはちょっと残念かも。

 撮影した写真を再生しているときにFnボタンを押して、左方向キーを押すとデジタルフィルタが呼び出せるほか、MENUボタンを押して再生メニューからも機能を呼び出せる。露出不足になってしまったときに便利なのは“明るさ”フィルタで、±8段階の明るさ調整が行なえる。パソコンでレタッチするのが面倒なときや、PictBridgeなどダイレクトプリントするときに利用すると重宝する。

 また、作画に利用できそうなのが“カラー”フィルタ。基本9色×各2段階の18種類に画面全体の色調調節が可能で、アンバーのフィルターをかけて夕焼けの赤みを強調したり、パープルのフィルターをかけてトワイライトの雰囲気を演出するのに効果がある。効果が薄いときはデジタルフィルタを適用したカットに、もう一度デジタルフィルタを重ねてかけることも可能。また、デジタルフィルタを適用して保存すると、新しいデータが作られる仕様で、オリジナルのデータはちゃんと残っているので安心だ。


意外に便利なデジタルフィルタ

●明るさ


再生時にFnボタンを押して、左方向キーを押すとデジタルフィルタが呼び出せる
MENUボタンを押して再生メニューからもデジタルフィルタは呼び出せる

上下方向キーで明るさフィルタを選び、電子ダイヤルで明るさを調節する
新規保存を選んでOKボタンを押せば、明るさが補正された画像が保存される

明るさフィルタ適用前のオリジナル
明るさフィルタで明るさを調整した写真

●カラー


カラーフィルタの設定画面。基本9色×各2段階の18種類に画面全体の色調調節が可能

カラーフィルタ適用前のオリジナル。あまり夕暮れの赤みが感じられない
カラーフィルタで赤紫に色調を調整した写真。トワイライトの雰囲気が出てきた

カラーフィルタ適用前のオリジナル。夕焼けの赤みが全然足りない

カラーフィルターでアンバーを強調した写真。ちょっと夕焼けっぽくなってきた
アンバーのカラーフィルターを二重にかけた写真。金色に光る海がキレイだ

●その他のデジタルフィルタ


デジタルフィルタ適用前のオリジナル
スリム
縦方向に伸ばしてみた。もう少し細かく調整できないとバレバレ
スリム
横方向に伸ばしてみた。わずか1段でこれだけ変化してしまう

白黒
単純に白黒に変換されるだけで、カラーフィルタ効果などはない
セピア
どこか懐かしさを感じる色合いだ。色調の調節機能はない
ソフト
紗をかけたようなソフト効果が得られる。3段階に調節可能だ
ソフトフィルタの調節画面

レフコンバーターA

レフコンバーターAを装着したK100D。1×と2×に倍率を変えられる。2×では画面の周辺がケラレてしまうが、ピントの山はよくわかる。猫撮りだけでなく、チューリップ撮影にも欠かせないアイテムだ
 K100DのSCNモードには、“ペット”というモードが備わっているが、アイコンを犬から猫に変えられるなど、犬派、猫派に対する心遣いも感じられておもしろい。ちなみに、ボクは猫派で、猫を撮るのが好きなのだが、できるだけ猫の目線で撮りたいので、地面にはいつくばってローレベルで撮影することが多い。こんなときに必須のアクセサリーが“アングルファインダー”だ。ペンタックスでは“レフコンバーターA”という商品名なのだが、これが他社に比べて値段が高い!

 キヤノンやニコンなら実売で2万円前後、オリンパスでも25,000円前後、かつてのミノルタなら実売1万円を切って買える。ところが、ペンタックスのレフコンバーターは実売で3万円を軽く超えているのだ。

 なんとか他社のアングルファインダーをK100Dに流用できないものかと試してみたが、そのままではどうやってもハマらない。なかにはファインダー部分の溝をわずかに削って、ミノルタ製のアングルファインダーを装着した強者もいるようだが、大昔に似たようなことを試みて痛い目にあったことがあるので(要は不器用)、それは避けたいところ。

 これまで何度も買おうと思って、その高値にためらっていたのだが、すべてのレンズで手ブレ補正が効くというK100Dのためなら、と思い、意を決して3万円余をレフコンバーターに投資することにした。確かにK100Dは値段が手頃だし、今なら1万円キャッシュバックキャンペーンもあるのでかなりお得だが、アングルファインダーの購入を前提にして考えると、ちょうどキャッシュバックキャンペーンの1万円で他社との差額がチャラになる計算だ。

 おまけに、レフコンバーターの使用説明書に掲載されているボディは、なんとスーパーA!! ボクが大学生時代に使っていたカメラだから、かれこれ20年以上も前に作られた製品だ。いい加減、開発費や金型代も元が取れているのだろうから、せめて他社並みに実売価格を下げてほしいと思う。


レフコンバーターAを使用して撮影した猫写真

近所で飼われているコマちゃん。今年の春生まれで、K100Dを購入して初撮りがこれ。今は成長してもはや大人(大ネコ?)の顔になっている
ペットモードで撮影。でも動き回る猫をピタリと止めて撮影するのはむずかしいので、結局、逃げない猫を撮影することになる


URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/35mm/k100d/

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( 伊達 淳一 )
2006/08/18 00:52
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