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パナソニック LUMIX DMC-L1【第3回】
ライカDレンズの絞りリングについて

Reported by 中村 文夫


L1にオリンパス製Zuiko Digital 50mm F2 Macroを取り付けた状態。このレンズには絞りリングがない。どうやって操作するかは後述
 LUMIX DMC-L1(以下L1)に付属するライカDレンズ「Leica D Vario-Elmarit F2.8-3.5」は、アナログ操作がセールスポイントになっている。このレンズは絞りリングを備え、マニュアル操作の銀塩カメラのような感覚で使うことができる。デジタル一眼レフとしては非常に珍しい機構だが、期待したほど使いやすくない。マニュアル式カメラを長年使い続けてきた私としては、絞りリングで絞りを操作するこの方式に大賛成なのだが、どうしても馴染めないのだ。

 L1を普通に構えて絞りを操作しようとすると、絞りリングが手前にありすぎて、左手を持ち替えないと絞りリングに手が届かない。銀塩カメラで、こんな不便さを感じたことがなかったので、ライカRカメラを持ち出し比較することにした。

 R用レンズの絞りリングの位置も、フォーサーズ用レンズと同じように手前にあるが、L1のようにいちいち持ち替えなくても絞りリングの操作ができる。レンズだけを比べるとL1用レンズも同じに見えるが、問題は全体のバランスだ。L1用レンズはボディに比べると太くて長く、レンズの先端側を支えないとバランスが悪い。鏡筒の長い望遠レンズならまだしも、ふだん使いのズームレンズでは、これは大きな問題である。

 さらにL1とライカRボディを比べてみると、Rカメラはボディの厚みが薄く、絞りリングとボディの間に20mm以上の余裕がある。これに対しL1のボディは全体に厚みがあり、ボディ前側と絞りリングの間にほとんど余裕がない。重量バランスもさることながら、この部分の形状が操作性の悪さの原因になっているようだ。また同じライカでもレンジファインダー機の場合、絞りリングはレンズの先端側にあり操作性は非常に良い。

 L1ボディのベースを作ったオリンパスの場合、銀塩一眼レフカメラのOMシリーズの絞りリングはレンズの先端にあった。これだけ良い先例がありながら、なぜL1用のライカDレンズは、こんな形になってしまったのだろう。今のところ、パナソニックが発売しているレンズはこの1本だけ。次の製品でも絞りリング式操作を採用するのなら、ぜひリングの位置を前側に移動して欲しい。そうでないと、絞りリングを採用した意味がなくなってしまう。


L1に付属するライカDレンズは、絞りリングで絞りを変更できることがセールスポイントだ レンズが大きく重いため、普通に構えると左手を前側で支える形になる。そのため絞りを変更する際は、左手を持ち替えなければならず、操作性があまり良くない

ライカDレンズ(左)とライカR用レンズ。どちらも絞りリングは手前にある ライカDレンズを取り付けたL1。ボディと絞りリングの間に余裕がなく、回しにくい

ライカR3の場合、ボディと絞りリングの間に20mm以上の余裕があるので、絞りリングが回しやすい レンジファインダー機用のレンズは絞りリングがレンズの先端側にある。ボディとリングの間が離れているので操作しやすい

絞りリングのないレンズをL1に使う

 パナソニックのホームページに掲載されている交換レンズのロードマップによると、パナソニック製レンズが揃うのは来年以降だ。結局L1のユーザーは、これらの交換レンズが揃うまで、レンズ専門メーカーやオリンパスが発売する交換レンズに頼らざる得ない。だが問題は、これらのレンズに絞りリングがないことだ。そこでオリンパスからフォーサーズマウントのレンズを借用し使い勝手を試してみた。

 これらのレンズで絞り操作を必要とする絞り優先AEとマニュアル露出を使うためには、まずファンクションボタン1(FUNC.1ボタン)を押す必要がある。このボタンを押すと液晶パネルのF値表示が白から黄色に変わり、電子ダイヤルを回すとF値が変わる。ただし絞り優先AEのときは、シャッタースピードの表示が消えてしまう。

 実際の撮影では、いきなり絞りを決めるのではなく、シャッタースピードを見ながら絞りを変えることが多いが、このカメラではそれができない。またF値を変更した後3秒ほどすると、表示が元の白に戻りF値が変更できなくなる。ダイレクト露出補正をオンにした状態で、これに気付かずにダイヤルを回すと勝手に露出補正が作動してしまう。とにかく絞りリングのないレンズを使うときは、カスタムファンクションやファンクションボタンへの機能設定を慎重に行わないと、収拾がつかなくなりそうだ。

 それから、もうひとつ問題がある。L1の説明書には、絞りリングのないレンズを使って絞り優先AEやマニュアル露出を利用する方法は記載されているが、シャッタースピード優先やプログラムAEに戻す方法がどこにも見つからない。試行錯誤の末、F値を最小(F値を大きく)まで絞り込んで、さらにダイヤルをもう1段クリックすると元に戻ることが分かった。


F値を変更する際は、FUNC.1ボタンを押し、液晶モニターの右脇にある電子ダイヤルを回転させる シャッターダイヤルをA位置にセットし、FUNC.1ボタンを押すとF値表示が白から黄色に変わる。この状態で電子ダイヤルを回すと絞り優先AEになり、絞りの変更が可能になる

絞り値を変更する際は必ずFUNC.1ボタンを押して、F値表示を黄色に切り替えなければならない。このときシャッタースピード表示は消えてしまう。ファインダー内表示も同様である。最小絞りを選び、さらに電子ダイヤルを1クリックするとプログラムAEに戻る シャッターダイヤルをA位置以外にセットし、FUNC.1ボタンを押すとF値表示が白から黄色に変わる。この状態で電子ダイヤルを回すとマニュアル露出になり、絞りの変更が可能になる

絞り値を変更する際は、その都度FUNC.1ボタンを押して、F値表示を黄色に切り替えなければならない。最小絞りを選び、さらに電子ダイヤルを1クリックするとシャッタースピード優先AEに戻る

 フォーサーズのメリットは、他社製レンズが一切の制約なしで使えることにある。またパナソニック製レンズの新製品が登場するのは、ずいぶん先の話だし、レンズの種類も限られている。フォーサーズを採用した時点で、自社でカバーし切れない焦点距離は他社に補ってもらうことを決めたわけだから、パナソニックはこの点にもっと気を遣うべきだ。

 いずれにしても、付属のライカDレンズと他社製レンズを同時に使うと、同じ撮影モードでも違う操作方法を強いられる。こうなったら発想を転換して、ライカDレンズの絞りリングをA位置にしたら、絞りリングのないレンズを装着したとボディ側が判断する機能を追加できないものだろうか。そうすればライカDレンズでも、ボディ側の電子ダイヤルで絞りが変えられるようになる。せめてこの機能がカスタムファンクションに入っていれば、このような混乱は避けられるはずだ。


シャッターダイヤルにも改良の余地あり

 今回は苦言が多くなってしまったが、実はもう少し言いたいことがある。それはシャッターダイヤルをA位置にセットする際、時計回りの回転方向でしか設定できないことだ。L1のシャッターダイヤルは1/3ステップで速度の設定ができるので、ほぼ360度に渡ってクリックが刻まれている。さらにダイヤルの直径が大きく、一気にA位置にダイヤルをセットできない。たとえば人差し指と親指を使って1/1,000秒からA位置までダイヤルを回転させようとすると、途中で5回くらい指を持ち替える必要がある。

 さらに一般的な撮影では低速よりも高速シャッターの方が使用頻度が高く、A位置を解除しシャッター優先AEやマニュアル露出に変更するときも、余計な動作が増えてしまう。このダイヤルは機械式でなく中身はただのスイッチだから、高速側とA位置との間にある回転防止装置はなくても大丈夫なはず。ダイヤルがエンドレスで回転すればもっと使いやすくなるだろう。

 またダイヤルが大きいため知らぬ間にダイヤルが動いてしまい、絞り優先AEにセットしたつもりが、マニュアル露出で撮影していたという事故も起こりやすい。やはりA位置にはロックが必要である。このほかドライブモードレバーや測光モードレバーも、勝手に動いてしまうことがありロックが必要だと思う。

 とにかくアナログ操作をセールスポイントとしてアピールしておきながら、実際に使ってみると、どこか完成度に欠けるというのが、私の率直な印象である。まあパナソニックにとってはデジタル一眼レフの第1号機なので、まだ肩の力が抜けていない部分があるかも知れないが、絞りリングの位置の問題を除けば、マイナーチェンジやファームウェアのバージョンアップで解決できるレベルだ。せっかくレンズ交換式デジタル一眼レフの新しいスタイルを提案したのだから、製品をより使いやすくする努力に期待したい。


この位置からダイヤルを右に1クリック回転させると、シャッターダイヤルがA位置にセットできる この位置からA位置にセットするためには、ダイヤルをほぼ360度右に回転させなければならない。左回転でA位置にセットできた方が能率が良い

シャッターダイヤルのA位置にはロックがない。ドライブモードレバーや測光モードレバーにもロックがなく、勝手に動いてしまうことがある

●追加訂正

 前回のレポートで、「AF/MFの切り替えは、ボディ側のスイッチで行なう方式」と書いたが、あとでよく調べてみたら、カスタムファンクションで設定変更できることが分かった。

 具体的には「AF+MF」をオンに設定。AFで合焦後、ピントリングを操作すればマニュアルフォーカスが利用できる。この設定はデフォルトだとオフになっている。そのため見落としていたようだ。


カスタムファンクションの「AF+MF」をオンにすると、AFで合焦した後、スイッチの切り替え操作なしでMFが利用できるようになる


URL
  パナソニック
  http://www.panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/l1/
  ライカD交換レンズロードマップ
  http://panasonic.jp/dc/l1/product/leica02.html
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm
  レンズ交換式デジタルカメラ機種別記事リンク集(LUMIX DMC-L1)
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/dslr.htm#l1


( 中村 文夫 )
2006/08/09 15:46
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