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ペンタックスK100D【第3回】
手ブレ補正の効果を検証する

Reported by 伊達 淳一


 今回はK100Dの最大のセールスポイントであるSR(Shake Reduction:手ブレ補正)にスポットを当ててみよう。

 レンズの焦点距離が長くなる(望遠になる)ほど、できるだけ速いシャッタースピードで撮影しないと手ブレしてしまう。一般にシャッタースピードが焦点距離分の1秒を“手ブレ限界のシャッタースピード”といい、これを下回ると手ブレしやすくなると言われている。例えば、焦点距離が50mmレンズならシャッタースピードが1/50秒を下回ると手ブレしやすくなるわけだが、APS-Cサイズのデジタル一眼レフの場合、同じ焦点距離のレンズで撮影しても35mm一眼レフより写る範囲(画角)が狭くなる=望遠になるので、レンズの実焦点距離ではなく、35mmカメラ換算の焦点距離で考える必要がある。

 こうした手ブレ限界のシャッタースピードを引き下げてくれるのが“手ブレ補正機能”だ。デジタル一眼レフの手ブレ補正には、“レンズにブレ補正のための光学系を組み込む方式”と“撮像素子を動かしてブレを打ち消す撮像素子シフト方式”とがあるが、K100Dに搭載されているSRは“撮像素子シフト方式”を採用している。撮像素子を磁力で動かす点がペンタックスならではの機構で、他社の撮像素子シフト方式よりも応答性が良く、構造もシンプルなのが特徴だ。SRをオンにすると、手ブレ限界のシャッタースピードを約2~3.5段分の引き下げる効果を期待できるという。

 K100DレンズキットのDA 18-55mm F3.5-5.6の場合、ズームワイド端の実焦点距離は18mmだが、35mmカメラ換算の焦点距離(実撮影画角)は18mm×1.5倍で27mmレンズ相当、つまり、シャッタースピードが1/27秒を下回ると手ブレする危険性が高くなる。しかし、SRをオンにして撮影すれば、1/27秒よりも約2~3.5段遅いシャッタースピードでも手ブレしにくくなる、はずだ。果たしてSRの2~3.5段分の手ブレ補正効果は本当なのだろうか? それを確かめるため、SRをオン/オフして手ブレの変化を調べてみた。

 わずかなブレでもハッキリとわかるよう、点光源を含んだ夜景を被写体としてチョイス。手ブレ限界のシャッタースピードから1段ずつシャッタースピードを遅くしながら、各シャッタースピードで10カット撮影している。撮影モードはマニュアル露出。両手でしっかりとカメラを構え、できるだけ手ブレしないように慎重にシャッターを切ったつもりだ。


DA18-55mmF3.5-5.6のワイド端(18mm)で撮影。赤枠内を切り出して比較している
DA18-55mmF3.5-5.6のテレ端(55mm)で撮影。赤枠内を切り出して比較している

SRの効果を検証(18mm)
赤枠で囲んだカットが手ブレが認められるカット
SRの効果を検証(55mm)
赤枠で囲んだカットが手ブレが認められるカット

 自分のタイミングで落ち着いてシャッターを切っているので、手ブレ限界と言われるシャッタースピードから1段下回った程度では、SRオフでも手ブレはしていない。しかし、手ブレ限界のシャッタースピードから2段から3段遅くなったあたりから、SRオフで撮影したカットは“軽微なブレ”が発生し始める。モニターで200%くらい拡大してやっとわかる程度のブレだが、SRオンではこうした微小なブレも見事に抑えられている。

 さすがに、手ブレ限界から4段遅いシャッタースピードになると、SRオンでも手ブレは避けられないものの、SRオフに比べればまだ手ブレしないで撮れるカットも1/3から1/2くらいはあるし、手ブレと判断したカットのなかには、2Lサイズ程度のプリントならまったく手ブレと気付かないような軽微なブレもある。

 手ブレ限界から5段以上遅いシャッタースピードでは、もはやSRオンでもオフでも手ブレは避けられないが、同じ手ブレでもブレの度合いはSRオンのほうが少なく、ブレのパターンもシンプルなカットが多い。

 このようにK100DのSRは、カタログスペック以上の手ブレ補正効果が期待できることがわかった。ただし、SRが搭載されているからラフにカメラを構えても大丈夫、というのは大きな間違いだ。撮像素子を動かせる範囲は決まっているので、大きなブレは防げないからだ。K100のSRに限った話ではないが、手ブレ補正というのは“手ブレを防ぐ機能”ではない。しっかりカメラを構え、それでもブレてしまう軽微なブレを補正してくれるアシスト機能なのだ。

 ところで、手ブレ補正ユニットを搭載したレンズであれば、手ブレ補正の効果をファインダーで確認できる(ファインダー像が安定する)が、撮像素子シフト方式の場合、ファインダーでは手ブレ補正の効果はまったくわからない。そのため、K100Dと同じように撮像素子シフト方式を採用するソニーのα100は、手ブレを検出する角度センサーの情報を、手ブレインジケータとしてファインダー内に表示している。カメラのホールディングが不安定だと、手ブレインジケーターのバーが多くなり、ホールディングが安定するとバーが少なくなるので、自ずとカメラをしっかり構えるような心理的効果がある。

 しかし、K100Dには、そうした手ブレの状態を示すインジケータはなく、SRオンを示すアイコンがファインダー内に表示されるだけだ。したがってK100Dを使うときは、自ら手ブレしないようしっかりとカメラを構える心がけが重要だ。できればα100と同様、ブレの状態を表示するインジケータが欲しいところだが、それが無理ならせめて撮影後に手ブレ補正が有効に働いたのか、それとも手ブレしてしまった可能性が高いのかを、クイックビュー表示で確認できる機能を付けてほしいと思う。


 さてテスト、テストばかりで、つまらない写真ばかり載せてしまったので、今回はしっかりと、実写サンプルも公開しよう。相変わらず梅雨が明けず天気が悪かったが、SRの効果を試すにはかえって好都合。夕暮れ時から夜の浅草をスナップしてきた。

 画質モードはすべてRAWで撮影。前回、画像仕上“鮮やか”でも“ナチュラル”でも画質が良くなっていることを確認したので、JPEGで撮影してもいいのだが、やはりRAWで撮っておいたほうが現像ソフトを変えることで絵作りの違いを楽しめるし、ホワイトバランスを変更しても画質劣化は最小限に抑えられるのが魅力。だから、連写を要求されない撮影では、できるだけRAWで撮るようにしていて、それで今回も迷わずRAWを選んでいる。

 ただ、今回掲載したのは、PENTAX PHOTO Browser3でRAWから抽出したJPEGだ。画像仕上は“鮮やか”で撮影したので、鮮やかで撮影したJPEGと同等の描写だ。前回、RAWに埋め込まれているJPEGは、ファイルサイズから推測して“★★(スタンダード)”相当の画質と思われると書いたが、PPB3の撮影情報を見ると“★(エコノミー)”と表示されている。JPEG圧縮率がもっとも高い画質モードなので画質評価には不向きなので、RAWをフルオートモードでデジタル現像したJPEGを載せようと思っていたのだが、エコノミーでも意外と細部までしっかりとした描写に驚いたので、今回はJPEG抽出したものをそのまま載せている。

 撮影はすべて手持ち。別の記事のために小型三脚を携行していたのだが、SRの効果と高感度の実力を試すため、三脚で撮影したいな~と思うシーンもあえて手持ちで挑んでみた。ISO800で撮影した写真はそれなりにノイズも浮いているが、強引なノイズリダクションをかけて解像感が喪失してしまうよりも自然な描写だと思う。


※サムネールのリンク先は、RAWファイルから抽出したJPEGファイルです。
※サムネール下のデータは画像サイズ/焦点距離/露出モード/シャッター速度/絞り/露出補正/ホワイトバランス/感度です。


3,008×2,000ピクセル / 43mm / 絞り優先 / 1/60秒 / F11 / 0EV / オート / ISO400
3,008×2,000ピクセル / 18mm / 絞り優先 / 1/25秒 / F8.0 / 0.3EV / オート / ISO400

3,008×2,000ピクセル / 55mm / 絞り優先 / 1/13秒 / F5.6 / -0.3EV / オート / ISO800 3,008×2,000ピクセル / 33mm / 絞り優先 / 1/13秒 / F5.6 / 0EV / オート / ISO800

3,008×2,000ピクセル / 55mm / 絞り優先 / 1/8秒 / F5.6 / 0EV / オート / ISO800
3,008×2,000ピクセル / 21mm / 絞り優先 / 1/50秒 / F4.0 / -0.3EV / オート / ISO800

3,008×2,000ピクセル / 26mm / 絞り優先 / 1/20秒 / F4.0 / 0EV / オート / ISO400 3,008×2,000ピクセル / 26mm / 絞り優先 / 1/50秒 / F4.0 / 0EV / オート / ISO800

3,008×2,000ピクセル / 18mm / 絞り優先 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / オート / ISO400 3,008×2,000ピクセル / 26mm / 絞り優先 / 1/13秒 / F8.0 / 0EV / オート / ISO800

3,008×2,000ピクセル / 31mm / 絞り優先 / 1/13秒 / F6.3 / 0EV / オート / ISO800 3,008×2,000ピクセル / 31mm / 絞り優先 / 1/30秒 / F6.3 / 0EV / オート / ISO800

3,008×2,000ピクセル / 28mm / 絞り優先 / 1/10秒 / F5.6 / 0EV / オート / ISO800 3,008×2,000ピクセル / 18mm / 絞り優先 / 1/6秒 / F5.6 / -0.3EV / オート / ISO400

3,008×2,000ピクセル / 18mm / 絞り優先 / 1/15秒 / F4.5 / 0EV / オート / ISO400
3,008×2,000ピクセル / 55mm / 絞り優先 / 1/8秒 / F5.6 / -0.3EV / 白熱球 / ISO1600

3,008×2,000ピクセル / 20mm / 絞り優先 / 1/5秒 / F4.5 / 0EV / 白熱球 / ISO800 3,008×2,000ピクセル / 18mm / 絞り優先 / 1/6秒 / F4.5 / 0EV / 白熱球 / ISO800


URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
  製品情報
  http://www.digital.pentax.co.jp/ja/35mm/k100d/

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( 伊達 淳一 )
2006/07/28 01:31
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