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ソニー サイバーショット DSC-T9【第8回】
痒いところが少ないカメラ

Reported by 元麻布 春男


 この連載をはじめて2カ月、DSC-T9を購入して3カ月が経過した。この間、近所はもちろん、2回の海外取材、スキー場、大阪出張など、いろんなところへ持ち出してみた。

 仮に今、T9が壊れたとしたら、代わりにほかのカメラを選ぶのではなくまたT9を選ぶかもしれない、と思うくらい気に入っている自分にちょっと驚いている。短いサイクルで新製品が投入されるデジタルカメラの世界で、1四半期以上前の製品を再び選ぼうと考えるのは、かなり珍しいことだ。高感度と光学式手ブレ補正を両立した上で、携帯性に優れた薄型ボディを実現するという点で、いまだに他社の追随を許していないからだろう。

 正直に言うと、購入した当初はかなりとまどった。それまでサブカメラとして使っていたカシオのEX-Z30と正反対のコンセプトのカメラだったからだ。Z30に限らずカシオのカメラの多くは、さまざまなオート機能はちょっと弱い。その代わり、徹底的にカスタマイズの利くカメラだ。ホワイトバランス、ズーム位置、露出補正値、ISO感度、など大半の撮影パラメータについて、電源再投入時に以前の設定を覚えているようにするか、しないかといったことまで設定できる。なんというか「痒いところは結構あるが、ほとんどのところに手が届く」というカメラであり、慣れるととても使い勝手が良い。

 それに対してT9は、基本的にオート任せにするカメラだ。個人的に、オート任せ路線のカメラは富士フイルムのFinePix F401以来で、勝手の違いにとまどった。しかし、T9をしばらく使っていると、それほど痒いところがないことが分かってきた。手の届かない部分も結構あるが、痒くなることが少ないから、掻かなくていいカメラだったのだ。それがわかって、T9を使うのがグンと楽しくなった。

 もちろんT9とてパーフェクトではない。USBコネクタが標準のミニBだったらとか、バッテリがあと一息持てば、といったマイナーな問題は否定できない。あるいはなぜ動画のフォーマットがPSPと違うのとか、あまりに赤目現象が頻発しすぎる、といったもう少し深刻な問題まで、言い出せばキリがない。が、それでも壊れたらもう1台買い直すか、と思うほど愛着がわいている。

 T9の前のモデル、DSC-T7は1cmを切る厚みを実現した、実にソニーらしい、力の入った製品だった。しかし、ソニーらしさが突っ走ってしまい、実用性を置き去りにしてしまったような部分も見受けられる。それに対してT9は、ソニーらしさと実用性がきわどいところでバランスしている。これがヒットになった最大の要因だろう。


DSC-T7
DSC-T30

 ソニーというのはある意味で特殊な会社で、必ず製品に「らしさ」が求められる。たとえば同じサイバーショットでも、Wシリーズは実用性が勝ちすぎているせいか、わが国での評価はパッとしない。実用性が高いということは、本来決して悪い製品ではないハズなのだが、それだけでは評価されないのである。

 この連載を締めくくるにあたって、ちょうどTシリーズの新製品、DSC-T30が登場してきた。DSC-T30はT9のいわば改良型で、CCDの画素数アップ、バッテリ駆動時間の延長を実現した製品だ。反面、外形寸法は拡大しており、特に厚みが増している。言い換えれば、T9よりさらにもう一匙分、実用性を高めた感じだ。そのバランスで売れるのかもしれないが、筆者としては逆、T9に対しさらにソニーらしさをもう一匙追加した製品が欲しかった。


San JoseからSan Franciscoへ向かう通勤列車(Cal Train)の車中で。急行列車(Baby Bullet)のユレは本機のW手ブレ補正も歯が立たなかったが、いい感じのブレになった。ヘッドセット、ケータイ、スマートフォン、ThinkPadと、モバイラーがフル装備なのは洋の東西を問わない
オート(ISO320相当)
San FranciscoのNob Hillから見た金融街。中央のトランスアメリカピラミッド(先端が三角形に尖ったビル)は、ドゥービーブラザースの「運命の掟」のジャケットでもお馴染み
オート(ISO80相当)

レンズとストロボの位置が近い本機では、赤目現象は起こるべくして起こる。ストロボのプリ発光による赤目軽減機能は、言葉の通じないペット相手ではほとんど無力だ。本機で改善の必要を感じる部分の1つである
オート(ISO160相当)
六本木ヒルズから見た建設中の東京ミッドタウン(旧防衛庁跡地)。ガラス越しの撮影となるため風景モードを選択した(ISO80相当)

六本木ヒルズの裏、けやき坂付近の交差点。手前にとめてある赤いスクーターも含め、どこか日本離れした色合いを感じる
オート(ISO80相当)
麻布十番のスーパーで、ご主人様の買い物が終わるのを外で待つ犬。まるで置物のように微動だにしない
オート(ISO100相当)

わが家の近所の桜並木。暗渠の上が遊歩道になっている
オート(ISO80相当)
今では「ヒルズ」といえばココ、の表参道ヒルズ。新緑というには、まだ春浅い印象
オート(ISO80相当)


URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/DSC/DSC-T9/index.html
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm


( 元麻布 春男 )
2006/04/07 20:05
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