DMC-TZ1が来て、ほぼ1週間。撮影枚数は約600枚ぐらいだ。今回はTZ1の一番の特徴である10倍ズームについてレポートしよう。
TZ1のレンズの焦点距離は35mmから350mmで、10倍ズームレンズを搭載したデジカメとしては最小クラスだ。
このレンズには2つの特徴がある。ひとつはレンズ自体の途中にプリズムがあって、光学系がL字型に曲げられていること。もうひとつはオートフォーカスにリニアモーターを使用していることだ。前者はコンパクトさに、後者は静粛さに貢献している。
TZ1は、あまりカメラを意識せずに旅行に持っていくことができて、350mmの焦点距離でも手ブレも起こさずに撮影することが目的であり、それは十分に達成されている。高倍率ズームレンズ搭載機は、ソニーのCD-Rマビカをはじめ、DMC-FZ1などを使ってきたが、テレ端にズームしたときの「おっ、ここまでアップにできるのか」という楽しさはTZ1でも十分に味わえる。
TZ1が来てからは、高いビルに登って目につく建物をアップにしたり、散歩の途中でみかけた高い建物の屋上部分をアップにして喜んだりしている。やや大きめとはいえ、従来の高倍率ズーム機に比べるとずっとコンパクトで、シャツはともなく上着のポケットには十分入る。散歩の時に持ち歩くのが苦にならずありがたい。
ちなみに、リニアモーターを使っているというオートフォーカス時はもちろん、ズーミング時も極めて静粛だ。静かな発表会場や、客の少ないレストランなどで使っても周りの注目を集めることはない。
また、TZ1を使っていて感じるのは、意外に建物の形がくずれないことだ。これはワイド端でもテレ端でもそうなのだ。かなり制約のきついレンズのはずなのに、その割には思ったほどゆがまない。発表時の資料をみると、TZ1に採用されているヴィーナスエンジン3には、従来の色収差に加え、歪曲収差の補正機能が組み込まれているようだ。それがどの程度、寄与しているのかはわからないが、レンズが固定されているカメラだけに、各焦点距離ごとに収差の補正をすることも可能だろう。これは、機会をみてもうちょっと調べてみたい。
■ ズーム速度はやや遅め
一方、いくつか気がついた点もあったので書いておこう。
最初に気になったのはズームの速度だった。静止画撮影時でワイド端からテレ端への移動に約5秒かかり、逆も同じだ。これはフレーミングしやすいようにやや遅めにしているのか、複雑なカムを使っているレンズの機構のせいなのかはわからないが、ちょっとのんびりしていると感じる。
ズーム速度は等速ではなく、ワイド寄りがやや遅く、テレ寄りが少し速い。テレからワイドへズームしていくと、最後にちょっと遅くなるのがはっきりわかる。ズームレバーは押し続けていると加速しているのだが、ワイド/テレの差があるので微妙に速くなったり遅くなったりするように感じる。
なお、動画撮影時はワイド端からテレ端まで約9秒かかるが、これは静粛性を重視しているからと思われる。カメラに耳を近づけても、静止画撮影時はわずかに聞こえる機械音が、動画撮影時はほとんど聞こえない。動画撮影時は機械音が入ることを怖れて、光学ズームを禁止しているカメラも多いがTZ1ではちゃんと使える。多少ズームが遅くとも、使えるというメリットの方がずっと大きい。これについては、また回を改めて紹介しよう。
テレ端を多く使っていて感じるのは、微妙なフレーミングの難しさだ。EVFを備えている機種に比べると、背面液晶だけのTZ1はフレーミングが難しい。顔に密着できないので、脇を締めて両手で支えていても、350mmの画角で狙ったものをギリギリに入れるのはつらい。建造物の突端とかは空の部分で調整できるのだが、銅像の顔の部分を前髪と顎の途中で切れるように入れてなどと考えると難しい。レンズ部がコンパクトで、左手でレンズの下を支えるという持ち方ができないのも影響している。
ちなみに、手ブレ補正モードをいつも使っている「モード2」(撮影時のみ)から、「モード1」(常時)にすることで、多少は軽減できる。しかし、モード切替より連写するほうが速いので、結局、何枚か撮って当たりを選ぶことが多い。まぁ、これはないものねだりであって、そういう用途のためにFZ7やFZ30、そしてデジタル一眼レフがあるわけだ。
旅行に持っていくことを考えた場合の一番の要望は、建造物を撮るときに、もう少しワイド側がほしいことだろう。こう思うことが一番多いのは、道を挟んで反対側の歩道から、建物の全景を撮ろうとしたときに入りきらないときだ。今の大きさのままで、テレ端はそのままでワイド端が28mmになれば言うことはない。それは無理にしても、28~280mmの10倍ズームというのも旅行用カメラとしての選択肢としてありなのではないかと思う。
■ EX光学ズームで3M時は12.5倍相当
最後に、「EX光学ズーム」という機構について書いておこう。これは簡単にいえば、テレ端撮影時の画像の中心部分をトリミングして出力するものだ。ワイド端からの見かけ上のズーム比は上がり、TZ1では「3M(300万画素)」モード時で12.5倍となる。35mm換算で437mm相当ということになる。
よくデジタルズームであるように、メニュー上に「EX光学ズーム ON/OFF」のように項目があるのかと思っていたのだが、そうではなかった。記録解像度の設定の際に最大解像度の5M以外を選ぶと自動的にEX光学ズームがONになる。
3Mモード時では、10倍から12.5倍の途中でも11倍の表記で3ステップ選ぶことができる。この場合でも出力される画像の解像度は2,048×1,536ピクセルで統一されている。高感度モードには使用できないことも考えあわせると、11倍表記の中間ステップの際はヴィーナスエンジン3が活躍していることが推測できる。
私自身は最大解像度で撮っておいて、トリミングするなら、できるだけ後でという主義なので、EX光学ズームの必要性は感じない。ただ、松下電器全体で推進しているSDメモリーカードによるリンクを活用し、プラズマテレビや液晶テレビで写真を見るという使い方をする場合や、トリミングって何という層には、あらかじめトリミングした形でSDメモリーカードに記録されていることはメリットとなるだろう。
さきほどの歪曲収差の件もそうだが、レンズが固定されているデジカメでは、光学部分とデジタルの部分が渾然一体となっており、はっきりと切り分けることが難しくなってきている。それはそれでデジタルによって、新しい機能が付加されることに期待を感じるのだが、一方で、ステレオソースをデジタルサラウンドで聞くときのような寂しさを感じるのは、歳のせいかもしれない。
※作例のリンク先ファイルは、JPEGで撮影した画像をコピーおよびリネームしたものです。
※写真下の作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出プログラム/露出時間/絞り値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/35mm判換算での焦点距離を表します。
●以下はすべて同じ位置から撮影。左がワイド端、右がテレ端。
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浅草の名物のひとつ。エンパイヤステートビルもどき。ワイド端
2,560×1,920 / プログラム / 1/100秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm
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突端の台座部分。ライトアップ用の照明器具などが見える。テレ端
2,560×1,920 / 風景 / 1/500秒 / F7.1 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 350mm
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同じビルを別の角度から。正面から撮ると35mmの画角では収まりきらない。ワイド端
2,560×1,920 / プログラム / 1/800秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm
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塗装がはげた様子がよくわかる。こういうときは望遠鏡を見ているようで楽しい。テレ端
2,560×1,920 / プログラム / 1/500秒 / F7.1 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 350mm
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厩橋から蔵前のNTTドコモを望む。ワイド端
2,560×1,920 / 風景 / 1/1,000秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm
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屋上に載った携帯電話用のアンテナ類がよく見える。右手は橋の照明。テレ端
2,560×1,920 / 風景 / 1/640秒 / F7.1 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 350mm
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厩橋から隅田川上流を望む。プレジャーボートと遊覧船がすれちがっている。ワイド端
2,560×1,920 / 風景 / 1/640秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm
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首都高速の向こうに金色に輝くのはフィリップ・スタルクによる炎のオブジェ。テレ端
2,560×1,920 / 風景 / 1/800秒 / F4.2 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 350mm
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浅草寺の五重塔。ワイド端
2,560×1,920 / 風景 / 1/640秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm
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水煙の構造がよくわかる。テレ端
2,560×1,920 / 風景 / 1/500秒 / F7.1 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 350mm
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東京は桜の時期だった。細かいものがたくさんあるような被写体は、ちょっとうるさい感じになって苦手。ワイド端
2,560×1,920 / プログラム / 1/500秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm
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こういう風にアップ気味の方がよい感じに撮れる。テレ端
2,560×1,920 / プログラム / 1/800秒 / F4.2 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 350mm
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上野公園にある野口英世像。ワイド端
2,560×1,920 / 風景 / 1/1,000秒 / F5 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 35mm
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ぎりぎりの構図で顔を撮ろうとして手こずった。5枚撮ったうちの1枚。テレ端
2,560×1,920 / プログラム / 1/60秒 / F4.2 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 350mm
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路地ながら立派なショーウィンドウを作って展示されている御神輿。ガラスの写り込みが多く、偏光フィルターがほしいところ。ワイド端
2,560×1,920 / 風景 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 35mm
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テレ端でもマクロモードでは最短1mの撮影ができる。近づけない場合の細かい部分を撮りたいときに便利。テレ端
2,560×1,920 / プログラム / 1/40秒 / F4.2 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート / 350mm
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■ URL
松下電器
http://panasonic.jp/
製品情報
http://panasonic.jp/dc/tz1/
気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm
■ 関連記事
・ 松下電器、光学10倍ズームの“旅カメラ"「LUMIX DMC-TZ1」(2006/02/14)
( 本誌:伊達 浩二 )
2006/04/05 02:13
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