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富士フイルム FinePix F11【最終回】
画質をはじめ高い完成度が魅力

Reported by 本誌:折本 幸治


 発売以来、ほぼ2カ月強が過ぎたFinePix F11。使ってみて印象に残るのは、とにかく「撮れなくて困ったことが少ない」点につきる。これまで、コンパクトデジカメだと常に手ブレにおびえていた夕刻や屋内での撮影がとてもラクで、その安心感はISO400のフィルムを詰めたコンパクト機を思わせる。あらゆるシーンで「撮ってみようかな」という気になるのが、いつも持ち歩くコンパクトデジカメとして一番うれしいところ。絞り/シャッター速度優先AEなどの機能についても、「使いこなしたい」という意欲につながった。

 改めて、画質には満足している。やはり他機種と比べてもISO400~800時のノイズの目立たなさは驚異的で、個人的には常用するに十分なレベルだ。コントラストと彩度が高くなる「F-クロームモード」も意外に被写体を選ばず、「少し趣を変えようか」というときに遊びでよく使う。富士フイルムの狙いどおりなのだろう、被写体に合わせてフィルムを換えているような気になるから面白い。次機種では「F-アスティア」や「F-センシア」といった彩度を抑えるモードも使いたい。

 気になるのは、窓のサッシや空に向いた木の枝など、輝度差のある被写体の輪郭に紫の縁取りが生じること。いわゆるパープルフリンジで、ワイド端開放F2.8では結構太くて目立つ。条件にもよるがF8以上に絞るとである程度は解消するものの、あまりにも絞ると、今度は全体的に輪郭が緩く見えることもある。ほかにもレンズ関連では、望遠端の開放F値がF5と物足りない点もあげたい。

 もっとも、増感しても気にならないので、「撮れなくて困る」ということはない。屈曲光学系レンズにおける望遠端の明るさを考えると、「もったいないなあ」としばしば感じる。あと、広角端での歪曲収差。こればかりは「ズームレンズなので」とあきらめるしかないのだろうか。

 購入当初は少々特殊な操作系に戸惑ったものだ。各機能の呼び出しは大きく分けて、十字キーの上下左右、十字キー中央の「MENU/OK」ボタン、十字キー右上の「Fボタン」に分類されている。そのうち「Fボタン」からは、記録解像度、ISO感度、F-カラー(F-スタンダード、F-クローム、モノクロ)の設定を呼び出せる。普段使っていない人がFinePix F11を手渡されて悩むのは、このFボタン(Fメニュー)の意義らしい。私の場合もFメニューのうちISO感度以外をよく使うとはいえず、「ISO感度を普通のMENUに、あるいはFメニューにホワイトバランスとかA/S/Mの切替を入れてほしい」と思っていた。どうせなら、自分のよく使う項目をFメニューに追加できればありがたいが、そうしたボタン類のカスタマイズはできないカメラだ。

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたファイルです。
※作例データは、記録解像度(ピクセル)/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/ホワイトバランス/焦点距離を表します。


2,848×2,136 / 1/500秒 / F5 / -0.3EV / ISO80 / WB:オート / 8mm 2,848×2,136 / 1/100秒 / F4.7 / -1EV / ISO200 / WB:オート / 20.1mm

2,848×2,136 / 1/250秒 / F5 / -0.67EV / ISO80 / WB:オート / 12.2mm 2,848×2,136 / 1/160秒 / F2.8 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 8mm

 しかし、必要に迫られたせいもあり、今ではいろんな設定をものすごい速さでこなせるようになった。個人的には、こうした操作系を使いこなすのもまた、カメラ趣味の醍醐味の1つだと思う。それでもいまだにまごつくのが露出補正だ。ダイレクトに補正を行なうボタンが切にほしいところ。といっても背面の大部分を2.5型の液晶モニターが占めているせいで、これ以上のボタンの増設は難しいだろう。

 さてFinePix F10/F11といえば、「あのぼってりとしたボディデザインがどうも……」という意見をよく聞く。確かに薄型ボディが主流の今、流行の逆をいくデザインだ。私も当初は「太いし重い、高級感もそれなり。原稿中はデザインに触れない方向で」と決め付けていた。

 実際に使ってみると、太さからくるグリップのよさはなかなか心地よく、やはりこれくらい厚みがあると安心感は高い。ここまで太くしたのなら、いっそもう少し凸部を大きくしてはどうだろうか。現在でもコート以外にすっきり収まるポケットを持った服が見当たらないので、個人的には、もうすこしグリップを強調したデザインでも構わないと思う。あと、グリップにラバーを装着する案も検討してほしいところ。冬場は冷たい上、表面がサラサラで少々滑りやすい。

 とまあ、細かい注文はあるものの、基本的にはオート優先思想のFinePix F10のよさを受け継いでおり、総じて完成度の高いFinePix F11。液晶モニターもきれいで見やすい。十字ボタンの上に割り当てられている「液晶輝度UP」機能も思ったより便利。電池も2日の旅行なら、途中の充電なしで十分だ。もっとも、いざ充電しようとすると、なにかと悪評のマルチコネクターを旅行先に持参しなければならないが……。

 とにかく、コンパクトデジタルカメラで画質を購入条件にあげるなら、選択を妨げる要因は少ない。強いてあげればシェアの低いxDピクチャーカードぐらいか。それでもカメラとしての品質を考えると、メディアの1枚や2枚を理由に選択肢から外すのはもったいない。室内撮りの多い人なら、メディア中心の機種選びから頭を切り替えても損はないと思う。

 ここまでくると、次はより一層の「高機能化」と「高級コンパクト化」に期待したい。まず、本当の意味でのマニュアル露出の追加。そのためには現在の操作系を見直す必要がありそうだが。さらに、売れ筋の3倍ズームは残しつつ、別に単焦点レンズモデルのラインナップがあればマニアが喜ぶ。目標としてはF1.9レンズのデジタル版「NATURA」だ。でもスタイルは「NATURA CLASSICA」がいいかも。FinePixシリーズには、S9000やS5000といった高機能モデルもあるため、F系列に求められるコンセプトから外れるとは思うが、せっかくの高画質なので、このまま細かく進化を続けてほしい。


2,848×2,136 / 1/320秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 16.1mm 2,848×2,136 / 1/100秒 / F2.8 / -0.67EV / ISO200 / WB:オート / 8mm

2,848×2,136 / 1/200秒 / F5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 24mm 2,848×2,136 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 8mm

2,848×2,136 / 1/60秒 / F3.7 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 14.1mm 2,848×2,136 / 1/80秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 8mm


URL
  富士フイルム
  http://www.fujifilm.co.jp/
  製品情報(FinePix F11)
  http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/finepixf11/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm


( 本誌:折本 幸治 )
2006/01/11 01:06
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