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キヤノン EOS 5D【第6回】
マニュアルフォーカス向けのスクリーンEe-Sを試してみた

Reported by 本田 雅一


 EOS 5Dはキヤノンのデジタル一眼レフカメラとしては、プロ向けのEOS-1系以外ではじめてフォーカシングスクリーンの交換が可能な製品だ。ボディと同時にスクリーンも購入したという人もいるだろうが、筆者の場合は購入時点で近くの店に置いていなかったため、そのままズルズルと標準のプレシジョンマットを使い続けていた。

 が、今週、やっと新スクリーンを入手。ピントの山が掴みやすいという「Ee-S」(スーパープレシジョンマット)をカメラ量販店で購入してきた。価格は2,450円。同時に「Ee-D」(方眼マット)も入手したかったのだが、こちらは店頭在庫、メーカー在庫ともになく、年内の入手は難しいという。


取り付けは付属工具で簡単に

 購入時、ものはついでと色々と販売店で5D用スクリーンについて取材をしてきた。

 5D購入者は20代から50代、60代まで幅広い年齢層に広がっているそうで、特に高年齢層への広がりが特徴なのだとか。このあたりは店による違いもあるだろうが、50代以上の男性の場合、交換スクリーンを同時に入手するケースも珍しくないという。

 個人的には真っ暗な状況で傾きや画角を測りにくい状況で撮影する機会(主にイベント基調講演会場など)も多いので、方眼スクリーンに興味を持っていたのだが、取材した店でも方眼スクリーンの人気がすこぶる高いという。

 EOS 5Dのファインダー像は、フォーカスフレームの枠が目立たない程度に見えるようになっているため、パースが強い構図で傾きを合わせようとすると、中央縦に並んだ3つのフォーカスフレームをアテにする必要がある。が、これが実に微妙というか、気をつけていても傾いてしまう事がある。まだ見ぬEe-Dだが、商品の出荷がされ次第、スグに入手したいと思っている。

 なお、話を聞いてくれた店員(EOS 5Dユーザーだった)によると、Ee-Dは標準のプレシジョンマットよりも、若干、ピントの山が見やすいという。実際には両者の表面処理は同じで、明るさもピントの深さも同じに見えるハズなのだが……。このあたりは自分で使っていないため確認できない。

 さて、購入してきたのはEe-Sの方だが、パッと見たところでは、標準スクリーンとの差はない。パッケージ内にはプラスチックのケースが入っており、その中にスクリーンを掴むための工具とスクリーンが入っている。

 スクリーンは工具で掴みやすいよう、斜めに入っており、スクリーンと工具の間には取り外したスクリーンを一時的に置いておく場所もあり、作業はすこぶるやりやすい。

 まずEOS 5Dのマウント部でスクリーンを押さえているクリップを外す。するとクリップ枠と一緒にスクリーンが降りてくるので、手前に見えるベロを工具で掴んで取り外し、購入してきたスクリーンをクリップ枠に再び入れ、クリップを元通りにはめればできあがり。


購入してきたEe-Sはプラスチックケースに入っていた
降りてきたスクリーン枠
スクリーンは工具で掴んで着け外しする

 作業自体はものの1分ほどで終わる……のは確かなのだが、ホコリに気をつけて作業したにもかかわらず、数カ所に黒い点(ゴミ)がファインダー内に見えるようになった。このゴミがなかなかやっかいで、ブロアで吹いても別の場所に移動したり、新しいゴミが付いたりと、何度か作業を繰り返す羽目になる。(もっともスクリーン交換とはこういうものとも言えるけれど)

 交換後はカスタムファンクションの00番を変更するのを忘れずに。スクリーンの明るさが変化するため、交換しただけでは露出が狂う(Ee-Sの方が露出オーバーになる)からだ。メニューからカスタムファンクションの00番を出すと、3種類のスクリーンの名前が表示されるので、それを選ぶだけだ。


して、噂の暗さはいかに?

 一眼レフカメラを使い慣れた人には釈迦に説法だが、一般にピントの掴みやすい、つまりボケ量が大きく見えるスクリーンはファインダー像が暗くなる。これはスクリーンを光が透過する際の拡散性を高めているからだ。レンズから入射する光が同じなら、拡散させるほど目に届く光の量は少なくなる。

 ではどの程度暗くなるかだが、体感的には半分以下の明るさに見える(人によって感じ方は違うかもしれないが)。キヤノンはF2.8よりも明るいレンズでピントの山を掴みやすいスクリーンとアナウンスしているため、ではジャストF2.8だとどうか?

 確かに暗い。暗いのだが、使いづらいほどではない。これならいいだろう。ということで一安心。しかし、EOS 5Dと共に売れまくっているのがEF 24-105mm F4L IS USMだ。ということで(明るいレンズはさておき)F4のレンズを装着してみる。

 うぉおおお、こ、こ、これは暗い! 屋外での撮影時には問題なさそうだが、室内での撮影時にはピークの白がグレーになるため、コントラストが下がったように見えて、かえってピンの山を掴みにくい。試しにF3.5-5.6のズームレンズも付けてみたが、テレ端のF5.6は屋外でも晴天時はともかく曇りの日は辛そうだ。

 暗いズームレンズではAF専門で使ってファインダー像の暗さは我慢。明るい単焦点レンズを使う場合は積極的にマニュアルフォーカスを活用。といった具合に割り切って使えば、Ee-Sを付けっぱなしでも不自由はないと思う……なんて感想を書こうと思っていたのだが、これはアテが外れてしまった。


 F4ならばAF中心での撮影なら困らないが、F5.6になると暗い室内ではそもそもフレーミングが難しいほどファインダー像が暗く見える。ここまで来るとAF、MFの問題でもないので、素直に標準スクリーンを使うのがいいだろう。

 よって、誰にでも勧められるかと言えば、付けっぱなしで活用できるユーザーの幅は狭そうだ。主な撮影が単焦点を用いた撮影ならば、使っていて気持ちいいと思う。オススメだ。またその日の撮影場所や持って行くレンズによって、マメにスクリーンを変えるという人も、持っていると楽しいかもしれない。

 しかし、ズームレンズでの撮影がほとんどというユーザーは、入れ替えてもかえって不便なので、単に物欲を満たす以外の目的では購入しないことを勧める。

 EOS 5Dに標準で付属するプレシジョンマットは、それまでのEOSシリーズのスクリーンに比べると素通し感が和らぎ、ピントは(比較的)見えやすくなった。ファインダー像が大きいということもあり、標準スクリーンでもさほど大きな問題は感じない(見やすいかと言えば、純粋なMF機に比べれば落ちる)。まぁ、だからこそ“標準装備”ということなのだろうけど。


撮影結果とほぼ同じ程度にボケてくれるファインダー像

F1.4 / 1/20秒 / 絞り優先AE / ISO100 / オートホワイトバランス / 露出補正なし / EF 50mm F1.4 USM
 もっとも、明るいレンズでの使いやすさは確かにいい。EF 50mm F1.4 USMを装着してファインダーを覗いてみると「こりゃぁ、楽だ」と思わず声を上げたくなるほどピンの山が見える。このあたりは実際の画像を見ていただければと思う。

 例ではプロジェクタのレンズ鏡筒左、1番目の溝のあたりを目安にフォーカスを合わせた。Ee-AとEe-Sでやや構図が異なるが、背景のボケを見れば違いは歴然としている。


Ee-A装着時のファインダー内
Ee-S装着時のファインダー内

 して、そのまま絞り開放で撮影してみると、ファインダーで見えるボケと実際に撮影した結果のボケが、ほぼ同じに見える。厳密には、若干ながら撮影画像の方がボケが大きいが、これだけ映りとファインダー像が近ければボケ具合の目安にもなる。

 せっかく5Dを持っているのだから、近いうちにマウントコンバータを介して色々な嘆賞点レンズで遊んでみようと思っているが、同じように他社製レンズでフルサイズセンサーの絵を楽しみたいという人も多いだろう。普段使いにはかえって不便なEe-Sだが、古いMFレンズの描写を5Dで楽しむならば、是非とも手元に置いておきたいアイテムだ。

 さて編集部から「今週、どんなものを撮影したのかもお願い」と言われたのだけど、今週は仕事でしか出かけていない。ということで、松下電器のLet's NOTEシリーズを作る神戸工場に出かけた時の写真を、蛇足ながらお見せしたい。

 見学会の余興? で工場の中でも“達人”と言われる方が、Let's NOTE W4の組み立て実演をやってくれた。たった1人で部品の山の中から手動のドライバーで1台のPCを組み立てる時間は15分もかからない。せいぜい10分ちょっと。“達人”は異なるトルク指定のネジも、カンだけで締め分けるのだとか。

 興味深いと言えば、PC開発のためだけに作ったという10m距離での測定が可能な大型の電波暗室。電波を遮断し、反射による測定の影響を避けるよう設計された巨大電波暗室の中は、一種独特の雰囲気。PCにシャワーを浴びせかけ、防水性をテストする装置の様子も圧巻だった。

 詳しくはPC Watchでレポート予定なので、そちらもよろしくお願いします。なお、お仕事用で暗い場所ということもあり、全部、ISO1600、プログラムAE、オートホワイトバランスでの撮影。レンズはEF 24-105mm F4L IS USMで、露出補正はしていない。キャプション内のデータは絞り、シャッター速度、焦点距離だ。


F5.6 / 1/200 / 105mm
F4.0 / 1/40 / 105mm

F5.0 / 1/50 / 28mm
F5.6 / 1/60 / 35mm

F4.0 / 1/60 / 105mm


( 本田 雅一 )
2005/12/16 17:56
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