デジカメ Watch
最新ニュース

松下電器 LUMIX DMC-LX1【第6回】
「広角28mm」を検証:遠景編

Reported by 中村 文夫


今回の検証に使用した機材。上段左からMZ-M、*ist DL、下段がDMC-LX1
 前回は、近距離で撮影した結果をもとにLX1の画角について検証したが、今回は遠景で検証してみる。

 前回のレポートには反省すべき点が2つあった。それは、「撮影距離が近距離であった」ことと、「画角の基点があいまいだった」こと。

 前者については、比較に使用した*ist DLとLX1のCCDサイズの差を考慮しなかったことに問題があったようだ。近距離における画角変化は、フォーマットが大きいほど影響を受けやすい。これは焦点距離に対する撮影距離の比の変化が大きいからだ。コンパクトカメラはレンズの焦点距離が短いので、前回のような撮影距離でも画角はそれほど変化しないが、一眼レフのレンズは焦点距離が長いので、近距離だと画角の変化が目立ってしまう。つまり前回の検証方法では、一眼レフのほうが画角が狭くなっていた可能性が高い。

 後者についてだが、今回のレポートを執筆するにあたり、まず画角について改めて調べてみた。写真用語辞典(日本写真学会写真用語委員会編・写真工業出版社刊)によると、「理論的には、レンズの像側主点から画面の対角線に張る角度。実用的には、無限遠の被写体に対して、画面枠がレンズの中心に張っている角」とある。

 ふつう画角といえば、撮影者が被写体に向き合ったとき、どれくらいの範囲が画面に写るかを角度で表したものと思われがちだ。だがこの辞典によれば、レンズから画面(デジカメの場合はCCD)に対する角度であるという。像側主点(第2主点)から画像側に伸びる直線を被写体側に伸ばせば、ここでいう画角と同じになるので、実用上の問題はないようだ。

 だが写真辞典に載っているこの定義が、多くの誤解を生む原因になっていることも事実のようだ。以下に書くことは知り合いのレンズ設計者からの受け売りである。「画角はあくまでも写る範囲を示すものだから、被写体側に生じる角度でなければならない。そうでないと魚眼レンズなどは成立しなくなってしまう」。確かにそう言われてみると、画角が180度ある魚眼レンズでは、画面上に像側主点が存在することになる。どう考えても画面は像側主点より後ろにないと像は結ばない。つまりこの設計者の言う通り、画角とは被写体側に生じる角度と考えるべきだろう。


外観からレンズの第1主点の位置を知ることはできないが、少なくとも一眼レフのほうが被写体側に近いだろう
 第1主点の位置はレンズの外から見ても分からない。ただLX1と*ist DLを比べた場合、*ist DLのほうが被写体に近い位置に第一主点があることは確か。つまり私が前回行なった方法だと*ist DLのほうが画角の基点が被写体に近く、そのため画面に写る範囲が狭くなってしまったと考えられる。

 カメラ業界でレンズの画角をカタログなどに記す場合、最大画角を示す意味で対角線画角を用いることが多い。だがここで問題になるのが画面のアスペクト比だ。今回松下電器に確認したところ、デジカメの画角を35mm判に換算する場合、アスペクト比の違いに関わらず対角線画角を基準にしているという。

 つまりLX1が16:9のアスペクト比のときに28mm相当と謳っているのは、対角線画角が35mmフルサイズの画角と同じであることを意味している。だが、いくら対角線画角が同じでも、アスペクト比が違えば単純な比較は困難だ。そこで短辺と長辺の画角に分けて考えることにしたい。この方法で比較すると、16:9の短辺の画角は3:2のアスペクト比を持つ35mm判より狭くなり、長辺は広くなる。

 もともと人間の眼の視野は上下より左右が広い。さらに眼球は横に2つ並んでいて、上下より左右のほうが移動量が大きい。つまり写真の場合でも画面が横に長いほうが肉眼の視野に近く、強い臨場感を得ることができる。要するに16:9の画面は、アスペクト比を人間の視野に近づけ、迫力を感じさせることに意義を見出している。言い換えれば画面の横方向の視野を広くすることに重点が置かれているわけで、短辺の視野は、それほど重視されていない。

 私が前回、16:9の画角をテーマに選んだ理由は、28mm相当とされている16:9の画面が、35ミリ判のそれより広く感じられたことにあった。今回の実験は、対角線画角が同じであれば、16:9の画面は3:2に比べ長辺の画角が広くなり、短辺が狭くなるという当たり前の結果に終わったが、長辺(水平方向)の画角が大きければ、人間の視覚は、より視野を広く感じるということが証明できたのではないかと思う。

 ここで提案だが、デジカメの画角を35mm判に換算する場合「ヨコ28mm/タテ30mm相当」のように、長辺と短辺の画角を併記することはできないだろうか。問題の根本は、アスペクト比の違いを無視して対角線画角線にだけ頼っている点にある。こうすれば永年フィルムカメラを使い慣れたユーザーも混乱せずに済むはずだ。


検証結果

 まずは千葉市の稲毛海浜公園にある展望台から幕張方面を撮影。LX1で撮影した画像の焦点距離はすべて最広角側の6.3mm。デジタル一眼レフカメラの18mmで撮影した画像とLX1の16:9の画像を比べると、LX1のほうが長辺画角が広く、短辺が狭く写っている。また今回は念のためにフィルムカメラでも撮影したが、デジタルとの差はほとんどなかった。

※作例のリンク先は撮影画像をコピーしたものです。
※作例下の撮影データは、機種名/記録解像度(アスペクト比)/露出時間/レンズF値/露出補正値/ISO感度/実焦点距離を表します。


DMC-LX1 / 3,824×2,160(16:9) / 1/400秒 / F4.5 / -1EV / ISO80 / 6.3mm *ist DL(18-35mm) / 3,008×2,000(3:2) / 1/500秒 / F8 / -1.5EV / ISO200 / 18mm

MZ-S(18-35mm) / 1,800×1,226(3:2)

 次にLX1でアスペクト比3:2で撮影。このときの画角はデジタル一眼レフの20mmの画角(写真右)に近い。つまり35mm判に換算すると約30mmに相当することがわかる。またLX1の短辺の画角は、ほぼ16:9のときと一致している。


DMC-LX1 / 3,248×2,160(3:2) / 1/400秒 / F4.5 / -1EV / ISO80 / 6.3mm *ist DL(18-35mm) / 3008×2,000(3:2) / 1/500秒 / F8 / -1.5EV / ISO200 / 20mm

 下の写真は焦点距離16mmで撮影した*ist DLの画像をトリミングし、LX1の広角端16:9に合わせたものだ。長辺画角は*ist DLの16mmよりやや狭く、約17mmに相当するのではないだろうか。以上のことから、LX1の16:9の画角を長辺/短辺別に35mm判に換算すると、ヨコ25.5mm/タテ30mmに相当するといえるだろう。


*ist DLに12-24mmズームを装着、焦点距離16mmで撮影した画像をLX1の16:9の画面に合わせトリミングしたもの

 念のため中距離で検証したのが以下の写真だ。ズームレンズを使用したので、中間の焦点距離が少しずれてしまったが、おおよそ同じ結果になった。


DMC-LX1 / 3,840×2,160(16:9) / 1/500秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO80 / 6.3mm *ist DL(18-35mm) / 3,008×2,000(3:2) / 1/750秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 18mm

DMC-LX1 / 3,248×2,160(3:2) / 1/500秒 / F4.9 / 0EV / ISO80 / 6.3mm *ist DL(18-35mm) / 3,008×2,000(3:2) / 1/750秒 / F8 / 0EV ISO200 / 19mm

*ist DLに12-24mmズームを装着、焦点距離15mmで撮影した画像をLX1の16:9の画面に合わせトリミングしたもの

 中距離と遠距離が混在するシーンでもテストした。ピントは画面中央の丸い形に剪定された木に合わせている。


DMC-LX1 / 3,840×2,160(16:9) / 1/400秒 / F4.5 / 0EV / ISO80 / 6.3mm *ist DL(18-35mm) / 3,008×2,000(3:2) / 1/500秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 18mm

DMC-LX1 / 3,248×2,160(3:2) / 1/400秒 / F4.5 / 0EV / ISO80 / 6.3mm *ist DL(18-35mm) / 3,008×2,000(3:2) / 1/750秒 / F8 / 0EV / ISO200 / 21mm

*ist DLに12-24mmズームを装着。焦点距離16mmで撮影した画像をLX1の16:9の画面に合わせトリミングしたもの


URL
  松下電器
  http://panasonic.co.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/lx1/
  気になるデジカメ長期リアルタイムレポートバックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/backno/longterm.htm


( 中村 文夫 )
2005/11/11 17:14
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2005 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.