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キヤノン EOS 5D【第1回】
銀塩と同感覚で遊べる趣味のカメラ

Reported by 本田 雅一


 「長期リアルタイムレポート」どうかな? そう編集部から声をかけられた時、正直に告白すれば受けるべきか否か迷った。結局、こうして記事を書き始めているわけだが、おそらくはハイアマチュア層が対象であろうEOS 5Dのレポートに、自分がふさわしいものかどうか、自分自身でははかりかねるところもあったからだ。

 とはいえ、デジタルカメラもしょせんは道具。さまざまな使い方があっていい。というわけで、EOS 5Dの購入からのあれこれを気取らずに書き留めていくことにしたい。

 初回はEOS 5Dの購入を決断するに至った経緯や、自分なりの5Dに対するスタンスから書き始めることにしたい。


漠然とした不満からの解放

我が家のEOS Digital軍団。左から5D、20D、Kiss DN
 編集部の担当者は「本田さん、出たらスグ買いますよね」と、問答無用で購入するように考えていたようだが、さすがに写真を生業としているわけでもない筆者のこと。40万円近いカメラを問答無用で購入を決めたわけではない。いやホント、プライベートでの購入となると、誰でも家族との折り合いをなんとかして付けなければならないのは同じこと。本職用のPCを買う場合とはわけが違う。

 とはいえ、これまでEOS Digitalの新機種を、常に購入の第1候補として捉えてきたのは確かだ。理由はご多分に漏れず、EFレンズの資産を持っていたからだ。オートフォーカスの銀塩カメラへと移行する際、EOS 5から入ったのがきっかけだ。

 以来、EOS-1N、EOS 3ときて、EOS D30、D60、10D、Kiss Digital(以下、Kiss D)、20D、Kiss Digital N(以下、Kiss DN)と来ているから、プロ向けのEOS-1 Digital系以外はEOS Digitalをすべて購入してきたことになる。現在、手元には20D、Kiss DN、そして今回の5Dが残っている。

 つまり、20DとKiss DNの2台体制から1台を買い増したわけだが、従来の機種に大きな不満があったのか? と言えば、実はほとんど無かった。もちろん、もう少し液晶ディスプレイが大きければいいのにといった細かな不満はあるが、画素数や実効感度、ノイズ特性、描写、レスポンス、機能などにおおきな不満はない。

 本音を言えば、D30が登場する少し前や、Kiss Dを購入した時、ニコンがDXフォーマットでのレンズシリーズを順次リリースするとアナウンスした時などは、EFレンズを全部処分して乗り換えようかと思ったこともある。他にも、*ist DSを使った時にも、まったりとした使い心地ながら、ゆっくりじっくりと撮影できそうな雰囲気やLimitedレンズの描写にグラグラ来たこともある。

 しかし、20D、Kiss DNと、手堅く性能・機能ともに充実した機種が続いた事で、乗り換えの機会を失ってしまった。APS-Cサイズセンサーを使い始めた最初の頃は、画角面での不満はあったが、それもEF-Sレンズの登場で緩和され、EF-S 10-22mmなんていうなかなか高性能な広角ズームレンズが出たものだから「もうこれで最後にして、APS-Cサイズセンサーと共に過ごすか」と考えていた。

 ところが、キヤノンへの2本のインタビュー取材を前に、準備としてEOS 5Dを使い始めたのが敗因(?)だった。ハッキリとは感じていなかったいくつかの不満から、解放されるような気がしたのである。結局、7台目となるEOS Digitalを購入したのだから、物欲をリクツでは語れない。


誰にでも勧められる機種ではないが

 自分ではほぼ発売日に買ってしまったEOS 5Dだが、キヤノン製のデジタル一眼レフカメラが欲しいと思っている、すべての人にお勧めしたい……とは全く思わない。5Dは、完成度の高い20Dの機能や操作系をベースに、ピクチャースタイルや大型高解像度の液晶ディスプレイなどで強化した手堅い作りのカメラだとは思うが、カメラ自身のメカや作りの良さに惚れて買うカメラではないと思う。

 なんて事を書くと、5Dをけなしているように感じるかも知れないが、5Dを購入して損な気分にはなっていない。ただ、機能やデザイン、操作性などは洗練され過ぎていて、”毒”があまり感じられないのだ。メカ的な気持ちよさというのも、趣味で使うカメラには必要だと思うが、そうした部分も希薄だ。秒3コマの連写性能に不満はないが、ファインダー消失時間の長さやシャッター音の切れ味にはやや不満がある。ソフトタッチのレリーズも、もう少し浅いポイントで切れてくれると、スパッ! とカミソリで切れるような感覚を味わえるかもしれない。

 スペック的にはすばらしい製品なのだけど、優等生過ぎて愛を注げないといったところか。

 そんな5Dに対して熱くなれずにいた自分が、なぜそれでも5Dを選んだのか。それは、なんというかさまざまなレンズを通してのファインダー像を見て、安心感のようなものを感じたからだ。それはファインダー像の大きさでもあり、かつて銀塩カメラ時代に慣れ親しんでいた画角・被写界深度・歪曲収差のバランスなのかもしれない。

 フォーサーズマウントのように、各種ディメンジョンを再設計したものならば、あるいは違った感想を持つのかもしれないが、リクツでは17-85mmは28-135mmとほぼ同じ、28mmは50mmよりちょっと広め程度、と思っていても、う~ん、やっぱりちょっと違う。

 5Dのβ機を使っていると、そうしたモヤモヤが吹き飛び、懐かしい感覚が戻ってくる。普通、デジタル一眼レフカメラを買う場合、画質を最優先で考える人が多いのだろう。実際、5Dを使ってみると階調の滑らかさ、特にシャドウとハイライトに残る階調の粘りや、ノイズ感の少なさ、失われずに残るディテールなど、画質面でのアドバンテージはセンサーサイズ拡大分だけは存在すると思う。


シグマ 12-24mm F4.5-5.6 EX DG ASPHERICAL HSMとEOS 5Dによる作例(再掲)
 だが、それだけでAPS-Cサイズセンサー搭載中級機の約2倍という価格を肯定できるとは思わない。結局のところフルサイズセンサーである事を、どのように捉えるのか。画質向上という要素を重視して選ぶのか、それとも従来システムとの互換性で選ぶのか、といっった事を考えたとき、筆者の場合は“銀塩時代と同じような感覚で遊ぶ趣味のカメラ”として5Dの購入を決断した(シグマの12-24mmを使って“しまった”というのも大きい。見たことのないその画角は非常に印象的で、5Dを購入決断をする最後の一押しにもなっている)。

 こうした実に個人的な、きちんとした説明のつかないフィーリングで選んだため、幅広く誰にでも5Dはイイゾ! と紹介するつもりはないが、銀塩時代からのカメラユーザーは一度、その懐かしい感覚を店頭の5Dで思い出してみてはいかがだろう。


今後はKiss DNとの2台体制へ

5DとKiss DN
 というわけで、自分なりの自分と家族への言い訳を整えて購入した5Dは、個人的には初めて購入する「趣味のためのデジタル一眼レフカメラ」である。これまでは、取材に使うための一眼レフカメラと、趣味で撮影する(時間があまりないのだが)ためのカメラを兼ねていた。

 しかしKiss DN購入以降、20Dの利用頻度が極端に下がっていたこともあり、お仕事用はKiss DNに一本化。じっくり趣味として写真を楽しむ、あるいはプライベートでの写真を撮影するためのカメラは5Dを使っていこうと思う。

 もちろん、この2台に対する20Dのアドバンテージもある。1台だけを使うならば20Dだろうが、2台体制ならば(筆者の使い方では)やや中途半端。3台をハンドリングするのも大変なので、おそらくはKiss DNと5Dの2台体制へと自然に移行していく事になるだろう。

 そもそもの話だが、やや優等生に過ぎるEOS Digitalではなく、多少の特徴があるカメラを趣味用として使いたいとは思ってきた。前述した*ist DSは1カ月ほど使わせてもらったことがあったのだが、ファインダーの見やすさとLimitedレンズシリーズの質感や操作感、性能よりも感覚面を重視した絵作りにクラクラっと撃沈される寸前だった。

 果たして5Dと*ist DSを比べるのはムリがあるだろうが、心の中の位置付けとしては同じようなキモチで5Dを迎えている。

 というわけで、簡単なプリンタの評価サンプルや先日のEOS 5Dβ機サンプル画像程度しか、他人に写真をお披露目したことなどない筆者だが、やや緊張しながら連載を進めていくことにしたい。


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( 本田 雅一 )
2005/11/10 01:25
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