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リコー Caplio GX8【最終回】
旅を写すな、旅を撮ろう

Reported by ケニー・オブライエン


オプションのケーブルスイッチ「CA-1」(手前)と37mm径のケンコー製PLフィルターを装着したCaplio GX8。フィルターはフード&アダプター「HA-1」を介して装着する
 Caplio GX8を使いはじめてから、旅先での歩き方が変わった。簡単にいうと「被写体を求めて歩いている」ようになった。もちろん私の旅の場合、撮影のために歩いているわけではない。色々なものを見てまわるし、飲み食いもする。しかし、Caplio GX8を持っていると、面白そうな光景との出会いを頭のどこかで期待しているのだ。

 旅先では主にデジカメのケースをベルトに装着し、そのケースをシャツで軽く隠している。つまり、カメラを手に歩くことはなるべく避けているわけだ。撮りたくなったらすぐに取り出して、撮り終えたら収納する。防犯のためだ。

 さらに取り出しているときはストラップを必ず手首にかけている。光学ファインダーをのぞき込む撮影スタイルと違って、液晶モニターを見ながら手を伸ばし気味にする撮影スタイルは、かなり無防備だ。実際に知り合いはヨーロッパでの撮影中、デジカメを引ったくられている。なので、抑止効果のためにストラップはしたほうがいいだろう。

 16日からの三連休は予定通り中国の広州に行ってきた。気温は連日38度で、薄曇り。写真を撮るにはいい条件ではなかったが、いままで中国がらみではすべて雨にやられていることもあり、今回でやっと“中国雨男”返上となった。そんな広州で、Caplio GX8について私なりの総括としたい。


 まず、撮影画素数はもうこれで十分というのが実感だ。824万画素というのは思っていた以上に手ブレなどのミスがバレやすい。気楽に撮るなら500万画素くらいでもいいと思う。次のモデルで画素数アップを図るなら、それよりもCCDを大きくして画質を上げてほしい。「コンパクト機だからこの程度のノイズは仕方がない」という我慢はしたくないものだ。作画志向のコンパクト機なのでユーザーのわがままはとても多いと思うが、これでノイズが減れば私自身、当分デジカメを買い換えることはないだろう。

 手ブレについては2秒のセルフタイマーを活用してかなり防いでいる。動きのない被写体に限られるが、これがとても有効だ。某社の手ブレ補正機構付きのコンパクト機とほぼ同じ条件で撮影したとき、Caplio GX8はシャッタースピードが1/9秒だったにも関わらずブレなかった。一方手ブレ補正機構付きのほうは少しブレていた。セルフタイマーを使ったこともあるが、勝因はしっかりホールドできるボディだろう。ボディを“つまむ”ようにしか持てない薄型デジカメとちがって、がっちり握れるのは大きい。あとはバッテリー室のふたがブヨブヨしなければ完璧だ。

 広角レンズについては何度もしつこく書いてきたように、旅先では本当に重宝する。今回の広州では、ワイドコンバージョンレンズを1回だけ使いたくなった。下の作例で、塔を撮ったときだ。狭い境内にかなり高い塔が立っている。28mm相当でしゃがんで見上げて撮ったものだが、塔全体を収めるのは無理だった。ワイドコンバージョンレンズがあればもう少し下まで入ったと思うのだが、屋根を斜めにして変化を付けて撮ることで、個人的には気に入ったカットになった。薄曇りだったせいで光線が全体にまわっているのはしかたがないところだ。

※作例のリンク先は、撮影画像をコピー後、リネームしたものです。
※作例データのキャプションは、記録解像度(ピクセル)/露出制御モード/露出時間/レンズF値/露出補正値(EV)/ISO感度/ホワイトバランス/焦点距離(mm)です。


広州のシンボル、五羊彫像。広州の別称は「羊城」「五羊城」だ。広州に行ってこれを見ないのは、ニューヨークで自由の女神を見ないのと同じかもしれない
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/97秒 / 6 / 0 / 100 / オート / 10.6
地面に寝そべればもう少し入ったかもしれないが、寺の境内でそんなことをするわけにはいかない。境内の入場料は5元で塔に登るにはもう10元必要
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/90秒 / 4.7 / 0 / 100 / オート / 5.8

中国人民の足は鉄道。駅はいつ行っても大混雑。切符はとりにくい。過酷な旅だ
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/6秒 / 2.5 / -0.7 / 100 / オート / 5.8

 夜景にも挑戦してみた。完全に暗くなってはいないが、上は広州駅前でのひとコマ。柱にボディを押しつけてセルフタイマーで撮った。旅先では鉄道を利用しなくても、駅には必ず立ち寄ることにしている。というのも、駅こそ旅の空気に満ちている場所だからだ。あまり治安がいいとはいえないので注意が必要だが、旅っぽい写真を撮るには絶好の場所だと思う。広州には昔からある広州駅と、主に深セン方面の列車が発着する広州東駅がある。広州東駅は現代的な建物で、撮ってはみたもののあまり面白い写真にならなかった。そこで広州駅を作例にしてみた。

 中国の大都市の駅は、いつ行ってもラッシュアワー状態だ。駅前には必ず広場があり、たくさんの人々が座り込んだり寝たりしている。駅舎と雑踏を両方写し込むには広角レンズがぴったりだろうと予想していたら、まさにその通りだった。日が暮れても日中の暑さがそのまま残るこの広場で待つのは、人ごとながら辛いものだろうと思う。何年たっても当時の感触を思い出せる写真が撮れたと思うが、これでもう少しノイズが少なければ大満足なのだが。

 専用のフード&アダプター「HA-1」と、それに装着可能な37mm径のケンコー製PLフィルターも持参してみた。しかし、青さを強調できるような空ではなかったのが残念。PLフィルターの効果はまったくなかったわけではなく、湿気でくすんでいた風景が少しだけ澄み、白かった空が少しだけ青みを増した。別の機会にも試してみたい。ケーブルスイッチの「CA-1」も買ったのだが、今回の旅では使うシーンがなく、ホテルの部屋で遊んだだけだった。まあそれほどCaplio GX8が気に入って、オプションをいろいろ買っていると思ってほしい。

 今回で本連載も終わりとなるが、Caplio GX8とはこれからも一緒に旅を続ける。このカメラと出会って、旅を写すだけではなく積極的に旅を撮るようになったのは収穫だった。撮ることを前提に風景を見ると、いままで見えなかったものも見えてくる。さらにCaplio GX8ならいままであきらめていた構図でもかなり撮れる。広角端28mmに慣れてしまうと、もう後には戻れない。

 8月はアルバニアのティラナに行く予定だ。初訪問だがCaplio GX8でどんな写真が撮れるかドキドキする。きっと現地での驚きを撮れることだろう。それではみなさんもデジカメといっしょにいい旅を。


灼熱の広州の夕暮れ。西日を写し込めたのは薄曇りだったから
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/9秒 / 2.5 / 0 / 100 / オート / 5.8
広州の住宅街でよく見る光景。街中どこでも物干し竿だ。
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/8秒 / 4.7 / 0 / 100 / オート / 5.8

柱の文字は「チャイ」と読み、取り壊し決定の印だ。古くて雰囲気のある街並みが次々に消えていくのだろう。この文字を見ると悲しくなる。現代中国の風景だ
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/189秒 / 4.7 / 0 / 100 / オート / 5.8
広州でいちばん古いキリスト教会を背にして。なぜ背にしたかというと大規模な工事中だったから
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/203秒 / 8.1 / 0 / 100 / オート / 5.8

中国では自転車を停めた場所が店だ。ライチは広州がある広東省の特産
3,264×2,448 / プログラムAE / 1/290秒 / 2.5 / 0 / 100 / オート / 5.8


URL
  リコー
  http://www.ricoh.co.jp/
  製品情報
  http://www.ricoh.co.jp/dc/caplio/gx8/


( ケニー・オブライエン )
2005/07/25 00:00
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