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ニコン D50【第2回】
Wズームか、18-200mmか

Reported by 本誌:田中 真一郎


 D50がやってきてほぼ1週間。到着直後の高揚がおさまり、落ち着いてD50を眺めてなお「カッコいいカメラだな」と感心する。巨匠ジウジアーロの手になるというグリップと軍艦部の三角形の意匠は、初めて採用されたD2Hでは見慣れないせいもあってか、どこかぎこちなく、すわりが悪いように思えたし、D70/D70sに至っても「D100のボディに無理やり三角をはめ込んでみました」感は拭えない。D50では曲面との組み合わせが絶妙なのか、まったく違和感なく収まっている。内蔵ストロボの造形にまで三角の意匠を採用したことも貢献しているだろう。

 ちなみに購入直後に充電してから300ショットほど、内蔵ストロボは3ショット程度しか使っていない状態だが、バッテリの目盛りは1つ減っただけ。ニコンデジタル一眼の「あまりによくもつので充電を忘れるバッテリ」はD50でも継承されているようだ。


左がD50、右がD70。D50では内蔵ストロボの切り欠きも三角形になっている AF-S DX 55-200mmを装着したD50

 さて今回は、Wズームキットを構成する望遠ズームレンズ「AF-S DX ズームニッコール ED 55-200mm F4-5.6G」(以下、AF-S DX 55-200mmと記述)を取り上げよう。

 APS-Cサイズの撮像素子を搭載する、ニコン曰く「DXフォーマット」のカメラ専用のレンズとしては6本目だが、望遠系のDXレンズはこれが初めてとなる。イメージサークルをAPS-Cサイズ専用とするのは広角でこそ効果的、という話を以前聞いたことがあるのだが、55-200mmの小型軽量ぶりはやはり専用設計のおかげなのだろうか。

 同様の焦点距離をカバーするAPS-C専用のズームレンズは、ペンタックスとシグマからも発売されている(キヤノンのEF55-200mm F4.5-5.6 II USMはAPS-C専用ではない)。あまり意味はないが、微妙な仕様の違いが興味深いので、参考までに主な仕様を掲載しておく。

 AF-S DX ズームニッコール
ED 55-200mm F4-5.6G
smc PENTAX-DA
50-200mm F4-5.6 ED
シグマ 55-200mm F4-5.6
画角(度)28.5~831.5~8.125.5~7.1
構成枚数(群/枚)9/1310/119/12
EDガラス(枚)210
絞り羽根(枚)968
最小絞り(F)22~3222~3222
最短撮影距離(m)0.951.11.1
フィルター径(mm)525255
最大径×全長(mm)約68×7966.5×78.571.5×87.1
重量(g)255255310
備考超音波モータークイックシフト・
フォーカス・システム
 
価格42,000円オープン
(実売30,000円前後)
25,000円


 小型軽量かつ低価格であるにも関わらず、AF-S DX 55-200mmのフォーカス駆動には「SWM(超音波モーター)」が奢られている。同社の従来のSWMとは違う新開発の小型ユニットだそうだが、フォーカス動作の印象は「ねっとり」。のんびりと合焦するのだ。同じユニットを搭載しているAF-S DXズームニッコールED 18-55mm F3.5-5.6G(以下、AF-S DX 18-55mmと記述)ではそのような印象はないのだが。

 またAF-S DX 55-200mmでは、フォーカス動作時に擦過音らしきノイズが聞こえてくるのも、超音波モーター搭載レンズらしからぬ意外なところ。マニュアルフォーカスリングがお飾り程度のもので、距離指標もないのはAF-S DX 18-55mmと同じだ。


タムロン AF18-200mmを装着したD50
 さて、ここで気になるのが最近発売された18-200mmをカバーする高倍率標準ズームレンズだ。1本でWズームキットの焦点域をカバーすることができ、開放F値もあまり変わらない。

 18-200mmレンズはタムロンとシグマの2社から発売されているが、Wズームキットが実売価格139,800円なのに対し、タムロンの「AF18-200mm F/3.5-6.3 XR Di II LD Aspherical[IF]MACRO」が実売49,800円、シグマの18-200mm F3.5-6.3 DCが実売50,800円。D50単体が実売89,800円だから、合計金額はWズームキットとほぼ同じだ。それで18-55mmと55-200mmを付け替える手間が省けるのだから、これは18-200mmを買ったほうがお得だと考えるのが人情というものだろう。

【お詫びと訂正】記事初出時、タムロン18-200mmの実売価格を誤って記述しました。ただしくは49,800円前後です。お詫びして訂正させていただきます。

 はたしてそうなのだろうか? まずはAF-S DX 18-55mm、AF-S DX 55-200mmと、18-200mmの写りの違いを見てみよう。ここでは貸し出し期間の関係からタムロンの製品(以下、AF18-200mmと記述)を使用した。なお、タムロンはズームリングの回転方向がニッコールレンズと同じで、他のニッコールレンズと一緒に使っても違和感がない。シグマの回転方向は逆である。


※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。


【18mm 開放 F3.5 / AF18-200mm】 【18mm 開放 F3.5 / AF-S DX 18-55mm】

【18mm F5.6 / AF18-200mm】 【18mm F5.6 / AF-S DX 18-55mm】

【35mm 開放 F4.5 / AF18-200mm】 【35mm 開放 F4.8 / AF-S DX 18-55mm】

【35mm F5.6 / AF18-200mm 】 【35mm F5.6 / AF-S DX 18-55mm】

【55mm 開放 F5 / AF18-200mm】 【55mm 開放 F5.6 / AF-S DX 18-55mm】 【55mm 開放 F4 / AF-S DX 55-200mm】

【55mm F8 / AF18-200mm】 【55mm F8 / AF-S DX 18-55mm】 【55mm F5.6 / AF-S DX 55-200mm】

【85mm 開放 F4.5 / AF18-200mm】 【85mm 開放 F4.8 / AF-S DX 55-200mm】

【85mm F8 / AF18-200mm】 【85mm F5.6 / AF-S DX 55-200mm】

【135mm 開放 F6.3 / AF18-200mm】 【135mm 開放 F5 / AF-S DX 55-200mm】

【85mm F8 / AF18-200mm】 【85mm F8 / AF-S DX 55-200mm】

【200mm 開放 F6.3 / AF18-200mm】 【200mm 開放 F5.6 / AF-S DX 55-200mm】

【200mm F8 / AF18-200mm】 【200mm F8 / AF-S DX 55-200mm】

 AF18-200mmと他の2本では、同じ焦点距離でもずいぶん画角が違っているが、これはAF18-200mmがインナーフォーカスであるのに対し、残りの2本が繰り出し式だからであろう。

 各焦点距離の開放の画像を比べてみると、55mm以下ではAF18-200mmが、55mm以上ではAF-S DX 55-200mmが優れているようだ。総じてAF18-200mmの画質は10倍以上の高倍率ズームとは思えないほど高く、ニコン純正の2本を凌ぐ場面も少なくない。なお、最終的にWEB掲載用に縮小したり、2L程度までの大きさでプリントするなら、どちらも十分な画質と言えるし、1段絞り込めばどのレンズも十分クリアな描画になる。

 というわけで写りでもWズームキットの旗色は今ひとつよろしくないのだが、それでも18-55mmと55-200mmの組み合わせには、18-200mmにないメリットがあると筆者は考えている。

 たとえば重量。自宅の料理用ハカリでの計測ではあるが、AF-S DX 55-200mmの重量は257g、AF18-200mmが389g。AF-S DX 18-55mmが205gだった。18-55mmと55-200mmを一緒に持ち歩くほうが、AF18-200mm1本を持っていくよりも荷物の総重量は重いということになる。しかし、たとえば55mmより長い焦点域を使わないことがわかりきっている場合、AF-S DX 18-55mmだけ持っていけば205gで済むのに対し、AF18-200mmは389gを持ち歩かなければならない。高倍率ズームとしては軽いとはいえ、AF18-200mmの重量が、D50の小型軽量というメリットをスポイルする場面もある、ということは考慮する必要があるだろう。

 また、タムロンにしてもシグマにしても、超音波モーターは採用されていないので、フォーカス動作時の音が大きい。望遠側での全長が広角側の2倍近くにまで伸びてしまうのが気になる、という人もいるかもしれない。

 AF18-200mmは確かに便利だし、レンズ交換の機会が減るということはローパスフィルタにゴミが付くチャンスを減らせるということでもある。AF18-200mmの重量が気にならないとか、すこし重いほうが高級感があっていい、という意見もあるだろう。

 それでもなお筆者には、D50の軽快さを生かせるAF-S DX 18-55mmやAF-S DX 55-200mmのほうが、D50には好ましく思える。1日持って歩くと、たかだか200g弱の違いが効いたりするものだ。子どもと一緒に行動するならなおさら。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報(D50)
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/slr/d50/
  製品情報(AF-S DX ズームニッコール ED 18-55mm F3.5-5.6G)
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/lens/dx/zoom/af-s_dx_ed_18-55mmf35-56g.htm
  製品情報(AF-S DX ズームニッコール ED 55-200mm F4-5.6G)
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/lens/dx/zoom/af-s_dx_ed_55-200mmf4-56g.htm
  タムロン
  http://www.tamron.co.jp/
  製品情報(AF18-200mm F/3.5-6.3 XR Di II LD Aspherical[IF]MACRO)
  http://www.tamron.co.jp/lineup/a14/


( 本誌:田中 真一郎 )
2005/07/07 00:03
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