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ニコン D2X【第6回】
純正とサードパーティの中望遠マクロを比較する

Reported by 三浦 健司


 前回に引き続き今回もニコン純正レンズとサードパーティのマクロレンズを比較してみる。

 今回は、中望遠マクロのニコン「Ai AF Micro Nikkor 105mm F2.8D」(以下、ニコン105mmマクロ)、トキナー「AT-X M100 PRO D 100mm F2.8」(以下、トキナー100mmマクロ)、タムロン「SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 (MODEL 272E)」(以下、タムロン90mmマクロ)、シグマ「MACRO 105mm F2.8 EX DG」(以下、シグマ105mmマクロの比較だ。

 今回のテストはD2Xにマクロレンズを装着して、外部ストロボのSB-800でストロボ撮影をして露出傾向を調べてみた。

 このテストの主要な意図は、ニコン純正レンズによる撮影ではストロボ撮影が安定していても、サードパーティのレンズを使うと露出がアンダーになったり、オーバーになったりするケースがあるかどうかを調べるためだ。過去にもレンズによって、焦点距離で大きく異なる露出傾向を見せる製品もあった。

 この原因は、各社とも正式にコメントしていないので何ともいえないが、各所からの話を総合すれば、レンズに内蔵された距離エンコーダのステップ数の違いにより引き起こされているようである。

 実際のテストでは、D2Xのホワイトバランスは「フラッシュ」。絞りは開放、F11、最大絞りの3種類。SB-800のモードは「TTLオート」にした。

 評価の基準は、実践的な使い方で露出にバラツキがないことである。


※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。

※作例データのキャプションは、画像解像度(ピクセル)/露出時間(秒)/レンズF値/ISO感度/露出補正値(EV)です。


【F2.8 / ニコン105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 3.5 / 100 / 0
【F11 / ニコン105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 11 / 100 / 0
【F40 / ニコン105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 40 / 100 / 0

【F4 / トキナー100mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 45 / 100 / 0
【F11 / トキナー100mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 11 / 100 / 0
【F45 / トキナー100mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 45 / 100 / 0

【F4 / タムロン90mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 4 / 100 / 0
【F11 / タムロン90mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 11 / 100 / 0
【F43 / タムロン90mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 43 / 100 / 0

 気になる結果だが、露出傾向は、ニコン105mmマクロ、トキナー100mmマクロ、タムロン90mmマクロともにほぼ同じだ。この3本のレンズのクセは開放とF11の露出結果が近似していて、最大絞りがややアンダーになることだ。特筆したいのは、ニコンとトキナーのあまりに近似した撮影結果だろう。


【F2.8 / シグマ105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 2.8 / 100 / 0
【F11 / シグマ105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 11 / 100 / 0
【F32 / シグマ105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/200(秒) / 32 / 100 / 0

 また、シグマ105mmマクロは、全体に露出傾向がアンダーだ。露出の明るさの変化パターンも、前者のレンズとは異なり、開放→F11→最大絞りと、順々にアンダーになっていく。このようにレンズのクセがやや異なるが、+1/3程度の露出補正をすれば前者の撮影結果に近くなる。

 現代の中望遠マクロは、100mm付近の焦点距離なのだが、D2XのようなDXフォーマットによって焦点距離が1.5倍増しになる。そのためデジタル時代の中望遠マクロは、銀塩時代の望遠マクロ的な性格のレンズになっている。ということで、その焦点距離を活かしたボケ味は誰しもが気になるところだろう。

 まずはニコン105mmマクロ、トキナー100mmマクロ、タムロン90mmマクロ、シグマ105mmマクロの4本のレンズの開放絞りよるボケ味の結果を見ていこう。


【F3.3 / ニコン105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/90(秒) / 3.3 / 100 / 0
【F3.8 / トキナー100mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/80(秒) / 3.8 / 100 / 0

【F3.8 / タムロン90mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/80(秒) / 3.8 / 100 / 0
【F2.8 / シグマ105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/80(秒) / 2.8 / 100 / 0

 これについては、作例を見ていただけばわかるように、いずれのレンズも優劣つけがたい。この中では筆者はわずかだがトキナー100mmマクロがきれいに背景がボケるように思う。ニコン105mmマクロは、背景のボケに気持ちだが二線ボケ的なエッジが感じられる。

 続いてF11のボケ味だ。


【F11 / ニコン105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/10(秒) / 11 / 100 / 0
【F11 / トキナー100mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/10(秒) / 11 / 100 / 0

【F11 / タムロン90mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/10(秒) / 11 / 100 / 0
【F11 / シグマ105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1/5(秒) / 11 / 100 / 0

 ここではニコン105mmマクロ、トキナー100mmマクロ、タムロン90mmマクロのそれぞれが似たようなボケ味になる。シグマは、背景がほかの3本よりもボケないので、やや被写界深度があるように見える。

 最後は最大絞りでのボケ味を見ていこう。


【F38 / ニコン105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1(秒) / 38 / 100 / 0
【F40 / トキナー100mmマクロ】
2,848×4,288 / 1(秒) / 40 / 100 / 0

【F43 / タムロン90mmマクロ】
2,848×4,288 / 1.5(秒) / 43 / 100 / 0
【F32 / シグマ105mmマクロ】
2,848×4,288 / 1.5(秒) / 32 / 100 / 0

 さきほどの結果にも表れていたが、被写界深度をより深く感じるのはシグマ105mmマクロだ。ほかの3本はほぼ同列に見える。

 100%まで拡大して花弁を観察すると、最もシャープで解像感を感じるのはトキナー100mmマクロ、次点がタムロン90mmマクロだ。以降、ニコンとシグマはほぼ同列に見える。

 続いて、各レンズとニコンD2Xとの操作性と装着感のマッチングを比較してみよう。



 ニコン105mmマクロは、「A-M切り換えリング」と「フォーカス制限切り換えスイッチ」がそれぞれ干渉せず、また至近にあるので、レンズ操作に迷いが生じないのがよい。AFとMFの切り替えはスイッチを回転させる方式で、フォーカス制限スイッチは前後に動かす方式だ。そもそも筆者が使いなれていることもあるが、この種のマクロレンズとしては使いやすいレンズだと思う。デザインはいちばんシンプルで素っ気ない。



 トキナー100mmマクロは、ピントリングそのものを前後することでAFとMFを切り替えるタイプだ。切り替え操作の感触は軽く、がたつきもなく良好だ。フォーカス制限スイッチは回転させて切り替えるタイプ。カメラを構えてレンズを保持したときにちょうど親指の部分にあたり具合がよい。特筆すべきはマニュアルフォーカス操作をする際のピントリングのほどよい重さだろう。ピント合わせがとてもしやすいのがいい。デザインは、シンプルで金文字やリング周りの金線も最小限だ。



 タムロン90mmマクロも、ピントリングそのものを前後することでAFとMFを切り替えるタイプだ。フォーカス制限スイッチは回転タイプで、親指で操作しやすい位置にある。ただし、フォーカスのマニュアル操作は、ピントリングにもう少し適度な重さがあったほうが使いやすい。筆者の感覚では軽すぎてピント位置からついついいき過ぎてしまう。感心するのは、青いMの文字のマニュアルフォーカスの位置へ操作すると、鏡胴先端にも青いリングが現れることだ。一瞬でマニュアルフォーカスであることが理解できるのがよい。



 シグマ105mmマクロも、ピントリングそのものを前後することでAFとMFを切り替えるタイプだ。しかし、このレンズはユーザー側がはっきりとオートフォーカス専用で使うか、マニュアル専用で使うかの意志を決めて使うレンズだ。

 シグマ105mmマクロは、レンズ側のAF-MF操作だけで、カメラ側のAF駆動系をカットできない。そのためD2X側のフォーカスをAF-Sなどにしたまま、レンズのフォーカスをマニアルに切り替えると、カメラのフォーカス駆動モーターと切断されないため、ピントリングが重くなる。もしも、このときシャッターボタンに触れるとピントリングが回転する。したがってレンズ側をマニュアルフォーカスにするときは、D2X側のフォーカスモードもマニュアルにする必要がある。

 いずれにしてもニコン、トキナー、タムロンのようにAF-MFをフレキシブルに切り替えて使うタイプとは異なる方式になっている。

 なおフォーカス制限スイッチはスライド方式で配置もよく、スイッチがきつめに調整してあるので不用意に切り替わらずに安心だ。

 最後になるが、筆者の独断と偏見によるマクロレンズ寸評でまとめたい。

 今回のテストをして一番気に入ったマクロレンズはトキナー100mmマクロだ。このレンズはフォーカスのマニュアル操作の感触もよく、豊かな階調、やわらかい描写、十分な先鋭感の三拍子揃った銘玉マクロレンズだ。筆者が読者におすすめしたいマクロレンズの1本だ。

 ニコン105mmマクロは、1993年12月に登場してから10年以上を経ている。近年はD2Xなどに対応するDXレンズシリーズも充実してきた。次世代のニコン105mmマクロとして、ぜひニコンAF DX Nikkor 105mmマクロ F2.8Dを発売してほしいと思う。軽量で高描写なニコン純正のデジタルマクロレンズがほしいと切に願う今日このごろだ。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報(D2X)
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/slr/d2x/
  製品情報(Ai AF Micro Nikkor 105mm F2.8D)
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/lens/af/singlefocal/telephoto/ai_af_micro_105mmf28d.htm
  シグマ
  http://www.sigma-photo.co.jp/
  製品情報(MACRO 105mm F2.8 EX DG)
  http://www.sigma-photo.co.jp/lens/macro/105_28.htm
  タムロン
  http://www.tamron.co.jp/
  製品情報(SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1)
  http://www.tamron.co.jp/data/af-lens/272e.html
  トキナー
  http://www.tokina.co.jp/
  製品情報(AT-X M100 PRO D 100mm F2.8)
  http://www.tokina.co.jp/atx/4961607633946.html


( 三浦 健司 )
2005/07/06 00:59
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