デジカメ Watch
最新ニュース

ニコン D2X【第1回】
D2Xを実際に使ってみた

Reported by 三浦 健司


 D2Xがよくできたカメラであることは、数々の識者やデジタルカメラ雑誌の評価の通りだ。筆者もよくできた「カメラ」だと久々に感心している。

 なぜここで「カメラ」にこだわるかというと、それは多くにデジタル一眼レフが画素競争に明け暮れて肝心のカメラとしての使いやすさを見落としがちだからだ。

 とりわけフィルム一眼レフのボディをデジタルカメラに置き換えセットアップしているメーカーのハイエンドモデルでは、ファインダーの見づらさやタル型ひずみが際立ち、とても写真を撮る気になれない。

 とくにタル型歪みが顕著なファインダーでは、水平垂直をきわめて取りにくく、建築写真などでは難儀する。またそれらの機種は、機能の多くを液晶モニターの階層メニューに依存する傾向が強い。身体で覚えて、身体が自然と使いこなすような、古くからのカメラ本来の使命を否定している。要するにこのようなデジタルカメラでは写真を撮る道具としては不向きと思えるのだ。

 その点D2Xは、まず写真を撮る道具としてのファインダーが見やすく、像に歪みを感じさせない。まずこのポイントが決定的な部分で、ライバルのデジタル一眼レフのファインダーと一線を画している。

 これもD2HからAPS-Cサイズの撮像素子に合わせ新開発したボディのなせる業だ。撮影は「よいファインダー」があってこそだ。ファインダーがよければ「よい写真が撮りやすい」ともいえる。


F6をはじめD2Xなど、現行の一眼レフでは奇妙とも思えるほどペンタプリズム部が巨大だがこれはファインダーの歪みを減らして、精度を上げるためには必要なスペースだ。合わせてアイピース部も大きい。アイピースシャッターレバーと連動して、アイピースが固定されるなど、扱いが荒くなりがちなプロ向きの仕様になっている。これも撮影者に合わせたインターフェイスを考えるニコンの姿勢だろう
「寸止め」がハッキリ確認できるシャッターボタン。その周辺には人差し指だけで電源のオン・オフとパネルを照明する「イルミネーター」スイッチが配置されている。さらにその上には、撮影モードの切り替えと露出補正ボタンが配置されている。このレイアウトは、ファインダーから目を離さずに集中操作できるので撮影に専念できる

 次にシャッターボタンの感触だ。これもかなりの優れもの。シャッターボタンは「ただ押す」と思われがちだ。感触のよいシャッターボタンとは「半押し」までがやわらかいこと。半押しから全押しするまでに、いったん抵抗があるポイントが明瞭にあること。そしてそのポイントで「寸止め」できることが重要になる。

 そして、シャッターチャンスが訪れたら、適度の反発力を感じながら「寸止め」を越えた瞬間に一気にシャッターが作動しなくてならない。D2Xのレリーズタイムラグ「37ms」は、まさにフィルム一眼レフカメラに比べても遜色のないシャッターのキレを実現している。

 D2Xのシャッターボタンは、まさに前述の理想をまじめに具現化したもので「寸止め」のポイントが的確かつ、はっきりとわかる、心地よい操作感を持っている。撮影者がシャッターを切る瞬間を明確にコントロールできるので、人物や動きの速い被写体でも「ここだ」と思った瞬間に必ずシャッターが切れる。まさにドンピシャの写真が確実に撮れるわけだ。

 またD2Xでは確実な動作で定評のある往年のメカニカルシャッターから続く歴史のある「レンズ絞りピン」を残している。これもニコンのメカに対する自信がなせる技だろう。

 ほかにも、「レンズ取り外しボタン」や、「AF-L AE-L / AF-ONボタン」などのディティールにもカメラマンへの気遣いが見える。ニコンは「撮影者の立場や気持ちを汲んだ」ていねいな作りを具現化できるメーカーともいえるだろう。


Fマウントの内部には、レンズの絞りを絞り込む「レンズ絞りピン」を動作させるカメラ側のレバーがある。デジタル一眼レフカメラになっても普遍のFマウントと同様に、このレンズ絞りピンのシステムも普遍である。電気信号で動作させるカメラに較べ、機械的に動作するので確実だ。反面、使いすぎれば故障が多発するポイントでもある
ニコンのカメラを操作して気がつくのがいずれのボタンも大きく操作しやすいことだ。これは手の大きい外国人にも配慮したワールドワイドの仕様のためだろう。この「レンズ取り外しボタン」も大きいので、なれれば小指か薬指でロックを解除しレンズ交換ができる。F5やD1Xより操作性が向上している部分だろう

AFやAEをロックするためのボタンと、AFをオンにするボタンには、あえて段差がつけられている。このため指先の感覚のみで操作ができる。これも誤操作を防止する工夫だ バードウォッチングをかねて、D2XとAi AF VR Zoom Nikkor ED 80~400mm F4.5~5.6Dで撮影した。小鳥のすばやくて細かい動きのある被写体は難易度が高い。このような撮影でも高速・高精度なD2XのAFはピントを合わせることができる

 ニコンはデジタルカメラになった現在でもこのような目立たぬところに、人間の鋭敏な感覚を大切にしている。そして、この一事こそが、ニコンの「カメラ」の真骨頂といえるだろう。

 これを「カメラ」といわずして何を「カメラ」というのだろうか?



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/digital/slr/d2x/index.htm


( 三浦 健司 )
2005/06/01 01:21
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.