「EF135mm F2.8(ソフトフォーカス機構付き)」は、'87年10月の発売で、EOSシリーズの黎明期からある古参のレンズだ。
単焦点で、レンズ構成も6群7枚とシンプルだが、ソフトフォーカス撮影ができるため、独特の位置を占めて、長生きしているレンズだ。
価格は54,000円だが、たとえばヨドバシカメラでは42,500円のポイント10%還元で販売されている。購入したのは中古で、調整済みということで相場よりやや高く24,000円ぐらいだった。一部のレンズ交換と調整を行なったというキヤノンの修理票がついてきたのを覚えている。うまくすると2万円以下で購入できるレンズだ。
キヤノンのWebによると、ソフトフォーカス機構の原理は、「第4レンズに非球面レンズを配置し、このレンズを移動することにより球面収差をコントロールしてソフトフォーカス撮影を行なう」とされている。
操作は簡単で、レンズ鏡胴に設けられたリングで、ソフトフォーカスなしと、2段階のソフトフォーカスの3つが選択できる。ここではレベル0、1、2と呼んでおこう。リングにはストッパーが設けられており、意図せずにソフトフォーカス機構が有効にならないように配慮されている。
|
|
フィルター径52mmと小振りのレンズなので、Kissとのバランスもいい
|
レンズ操作部。左からソフトフォーカスリング、フォーカスリング、AF/MF切り替えスイッチ。フォーカスリングは、0から1に回すときだけストッパーを右に押しながら回す
|
AFモーターはUSMではないが、かなり静かな方で、下品な音はしない。
購入時は「ソフトフォーカス」だけでなく、球面収差の特殊効果で知られる「ベス単フードはずし」などの単語が頭をぐるぐるしていて、かなり期待して買った。
しかし、サービスサイズでプリントしているような使い方では、ソフトフォーカスのレベル1ではあまり“効き”がわからず、ガッカリした覚えがある。筆者のウデが悪いこともあって、手ぶれなどの画質悪化要因との区別も付きにくかったのだ。レベル2だと、ハッキリわかるほど効くのだが、こうなると用途がむずかしい。
そのうち「EF100-300mm F4.5-5.6 USM」などの出番が多くなって、しまいこんでいたというわけだ。
今回、EOS Kiss Digital N(以下Kiss)で使ってみると、PCの画面ではソフトフォーカス機構の効きがはっきりわかって面白い。撮っているときはKissの倍率の低いファインダーでは、あまりよくわからなかったショットでも、意外な表現になっていて面白かった。いまさらではあるけれど、デジタルになって撮影枚数をあまり気にせずに撮れるというのもありがたい。
レンズの焦点距離は135mmなので、Kissでは216mm相当の画角になる。つけっぱなしにするには、ちょっとテレ側すぎるのが残念だ。
ソフトフォーカス機構の効きは、絞りにかなり左右され、開放かF4ぐらいまでがいいようだ。というわけで絞り優先モードで撮るべきなのだが、今回は夜間撮影に引き続きだったため、シャッター優先モードのまま電子ダイヤルでF2.8を指定して撮ったカットがほとんどだが、お許しいただきたい。
ソフトフォーカスをレベル2にすると、球面収差がかなり大きくなり、海面の波など反射している被写体を撮ると思わぬ効果が出て面白かった。好き嫌いのある描写であるということは認めるが、個人的にはようやくこのレンズとまともなおつきあいが始まったという印象だ。
余談だが、デジタル一眼が35mm一眼の資産を継承する形になり、デジタルに最適化されていないことに対して批判する向きがある。それはその通りなのだが、こういう特殊なレンズが生き残っていて、その資産を継承し、使いこなすチャンスができたということは楽しいことだと思う。
また、ソフトフォーカス効果だけなら、画像処理ソフトのフィルターで真似ることもできるのだが、机の上で結果を確認しながら調整するのではなく、一発勝負で思わぬ写真が写っているというのも楽しいものだ。
※作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです(ファイル名のみ変更してあります)。クリックすると撮影した画像が別ウィンドウで表示されます。
※キャプション内の撮影データは、画像解像度(ピクセル)/露出プログラム/露出時間/絞り値(F)/ISO感度/露出補正値です。
※使用レンズはすべてEF135mm F2.8 SFです。
|
|
|
【レベル0】ソフトフォーカスレベル0の通常撮影状態
3,456×2,304 / シャッター速度優先AE / 1/4,000(秒) / 2.8 / 100 / 0
|
【レベル1】仏像のお顔や周辺の木々に効果が表われている
3,456×2,304 / シャッター速度優先AE / 1/4,000(秒) / 2.8 / 100 / 0
|
【レベル2】サムネールでもわかるほどの効果。ハイライト部の光りかたも特徴的
3,456×2,304 / シャッター速度優先AE / 1/4,000(秒) / 2.8 / 100 / 0
|
|
|
【レベル2】水彩画のような独特の描写
3,456×2,304 / シャッター速度優先AE / 1/4,000(秒) / 2.8 / 100 / 0
|
【レベル2】パラソルや波頭のハイライト部分の描写に注目
3,456×2,304 / シャッター速度優先AE / 1/4,000(秒) / 2.8 / 100 / -0.5
|
|
|
【レベル2】リング状のボケが面白い
3,456×2,304 / シャッター速度優先AE / 1/4,000(秒) / 2.8 / 100 / 0
|
【レベル2】逆光だと光が周りこんだような描写となる
3,456×2,304 / シャッター速度優先AE / 1/4,000(秒) / 2.8 / 100 / 0
|
|
|
【レベル2】ポートレート。ちょっと前ピン気味
3,456×2,304 / シャッター速度優先AE / 1/4,000(秒) / 2.8 / 100 / -0.5
|
【レベル2】フォーカスの合い方と光の当たり方で、独特の描写が表われる
3,456×2,304 / プログラムAE / 1/180(秒) / 3.5 / 100 / 0
|
■ URL
キヤノン
http://canon.jp
製品情報(EF135mm F2.8)
http://cweb.canon.jp/ef/lineup/telephoto/ef135_f28/
発売時のスペック(EF135mm F2.8)
http://web.canon.jp/Camera-muse/camera/lens/ef/data/ef_135_28.html
( 伊達 浩二 )
2005/05/02 00:00
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。
|
|