前回もSDメモリーカードLOVEな発言をしてしまった筆者だが、筆者にとって*ist Dsでの大きな改良点がSDカードの採用なのだからしょうがない。SDカードの採用についてペンタックスは、
- アクセス速度が安定して高速
- 小型軽量に有利
- コンパクトデジカメとの併用が可能、およびステップアップ時に流用可能
という3つの理由を挙げている。
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金色に輝くBN-SDDAP3。20MB/secのPRO HIGH SPEEDカードを利用するにはこのアダプタが必須
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アクセス速度についてSDカードは、最大20MB/secまで高速化している(パナソニックのPRO HIGH SPEED SDメモリーカード)。しかも、これは単なる理論値ではなく、パナソニック製のCard Bus対応PCカードアダプタ(BN-SDDAP3)を用いると、本当にこの速度で読み出すことが可能だ。現時点では最も高速なメディアの1つに違いない。
とはいっても、*ist Dsがこんな速度でSDカードに実際に読み書きできるわけではない。公称速度が6MB/secのカード、10MB/secのカード、20MB/secのカードで、連写性能の違いはほとんどない。*ist Dsの撮影バッファはJPEGで8コマ、RAWで5コマ、このバッファを使い切るとガックリと遅くなるが、その様子は上の3種類の速度グレードで特に変わるようには感じられなかった。少なくとも撮影するだけなら、そこそこの速度のカードを買っておけば、問題はないと思う。
違いが出るのは撮影したデータをPCに吸い上げる時だ。上述したように、PRO HIGH SPEEDカードと純正のアダプタ(BN-SDDAP3)、CardBusに対応したノートPCを組み合わせると20MB/secで読み出すことができる。1GBのメディアだとJPEGで300枚以上の撮影が可能なわけだが、100枚以上の写真を転送する時、この組合せはかなり強力だ。難点は、CardBusスロットを持つPCがほぼノートPCに限られること、それほど高価なものではないといえ、5,000円近くするBN-SDDAP3を別途買わねばならないことだ。
果たして5,000円を払うだけの価値はあるのか。特に*ist Dsは内蔵インターフェイスがUSB 2.0にアップデートされており、USB 1.1対応だった*ist Dに比べて高速化されている。それでも敢えて5,000円を投じる価値があるかどうかは、実際に試してみるしかないだろう。
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HPのnc4000は12.1型液晶を搭載したB5ファイルサイズのノートPC
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というわけで、*ist Dsで撮影したデータ112枚分、総計約289MBのデータ(6M Pixels、Super Fine JPEG)をPCに転送するテストを行なうことにした。ホストPCは、筆者所有のノートPCである日本HPのnc4000。ATIのRADEON IGP 350Mチップセットを用いたノートPCで、O2Micro製のCardBusコントローラ、NEC製のUSB 2.0ホストコントローラを備える。本来CPUはPentium M 1.4GHzだったが、筆者の方でPentium M 745(1.80GHz 2MB L2キャッシュ)に換装している。メモリも標準では256MBだが、512MBのSO DIMMを追加し768MBに増設済みだ。
nc4000はPCMCIA接続のSDカードリーダーを内蔵しているので、この内蔵リーダー、*ist Dsのケーブル接続、BN-SDDAP3の3種類で、112枚分の写真転送にどれくらいの時間がかかるかを計測してみた。
その結果は次の通り。
nc4000内蔵リーダー | 4分17秒 |
*ist Dsケーブル接続 | 59秒 |
BN-SDDAP3 | 23秒 |
何とも、笑ってしまうほどの差が出てしまった。これで1GBのSDカードの約3分の1程度のデータ量だから、カードを目いっぱい使いきると、この3倍の時間がかかることになる。
1GBのカードの場合、JPEGなら最高画質でも330枚程度撮影できるが、RAWで撮影すると90枚程度しか撮影できない。90枚というのは、36枚撮りフィルム換算で3本弱であり、普通の人でも1日で撮り切ってしまう数だろう。その転送に10分以上かかるのはちょっとフラストレーションが溜まるのではないかと思う。原因はPCMCIA接続がボトルネックになっているものと推測されるが、nc4000の内蔵リーダーはPDAや携帯電話との連携用に割り切った方がよさそうだ。
これに対して*ist Dsのケーブル接続は、nc4000内蔵リーダーの4倍以上の速度が出ており、かなり快適だ。1GBのデータを約3分で転送できるという性能は、SDカードの最大容量が現時点で1GBという状況に見合っている。これがPRO HIGH SPEED対応のBN-SDDAP3になると、さらに性能は倍以上に向上し、1GBを使い切っても、そのデータ転送は1分あまりで終了する。これくらいの速度があれば、1GB以上の容量のSDカードがないという欠点をある程度カバーできるだろう。
ただ、このデータはnc4000という、それほどポピュラーではない(何せ店頭販売されてない)ノートPCによるもの。もう少し分かりやすい比較が必要かもしれない。そう考えて、nc4000も含めた様々な環境と、手持ちのSDカードによるベンチマークテスト(FDBench 1.01)を行なってみた。その結果をまとめたのが表だ。
まず表1は、ホストをnc4000のまま、内蔵リーダー、BN-SDDAP3に、エレコム製の外付けUSB 2.0対応SDカードリーダー(MR-DU2A7WH)を加えて計測した。BN-SDDAP3にPRO HIGH SPEED対応のSDカードを組み合わせた際の速度が際立っている。
●表1(クリックすると別ウィンドウで開きます)
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今回用いた4種のSDカード
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エレコムの外付けUSB 2.0カードリーダーMR-DU2A7WH
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表2はホストをIntelの925XEチップセットベースのデスクトップPCに変えて、同じテストを行ったもの。MR-DU2A7WHのテスト結果を表1と比べれば、ほぼ同等であることが分かる。USB 2.0の性能としてはnc4000も、ハイエンドクラスのデスクトップPCも大差ない(nc4000のUSB 2.0が遅いわけではない)ことが確認できる。この表2にあるロジテックのLMC-CA54U2Kは、USB 2.0接続だが内蔵タイプのカードリーダーで、性能はMR-DU2A7WHとほぼ同等。USB 2.0のカードリーダーの性能というのは、これくらいと考えて良いのだろう。
●表2(クリックすると別ウィンドウで開きます)
次のTDK URW01SDは、USB 1.1対応のカードリーダー。nc4000内蔵のリーダーよりさらに遅い。USB 1.1対応のリーダーで1GBのデータを転送するのは、忍耐を必要とするかもしれない。これに対して*ist Dsだが、USB 2.0のカードリーダーには及ばないとはいえ、明らかにUSB 1.1のリーダーとは段違いの性能を示した。USB 2.0のカードリーダーとの差がそれほど大きくないことを考えると、筆者の結論は次のようになる。
CardBusに対応したPCカードスロットのあるノートPCを持ち、1日の撮影枚数が100枚を超える*ist Dsユーザーは、パナソニックのPRO HIGH SPEEDコンビ(カードとアダプタ)の購入を検討する価値が十分ある。RAW以外で写真は撮らない、というユーザーならこの構成がほとんど必須だろう。いずれにしても、BN-SDDAP3を使える環境がなければ、*ist DsユーザーがPRO HIGH SPEED対応のカードを買う性能上のメリットはない。
デスクトップPCを含め、CardBusは利用できないがUSB 2.0には対応しているPCの場合は、6~10MB/secクラスの速度のSDカードを購入し、データ転送には*ist Dsをケーブル接続する。わざわざUSB 2.0対応のリーダーを別途購入しても、性能上のメリットは小さい。PCがUSB 2.0対応でない場合は、とりあえずUSB 2.0のホストアダプタを購入すべきだろう。USB 1.1のリーダー、あるいは*ist DsのUSB 1.1接続では、泣きたくなるかもしれない。とりあえず筆者はnc4000を入れるバッグにBN-SDDAP3を放り込んでおくことにした。
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「世田谷うめまつり」にて
タムロン AF28-300mm(撮影時180mm相当)
ISO200 絞り優先AE 1/45 F19 露出補正+1.0
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隣家でご飯をもらっているノラさん。性格はいたって温厚だが、鼻筋のキズや切れた耳に苦労がしのばれる
タムロン AF28-300mm(テレ端)
ISO200 オートピクチャー標準 1/500 F9.5
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■ URL
ペンタックス
http://www.pentax.co.jp/
製品情報(*ist Ds)
http://www.digital.pentax.co.jp/ja/35mm/ist-ds/
( 元麻布 春男 )
2005/03/01 00:02
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