デジカメ Watch

Photokinaにはやっぱりかなわない!


 Photokinaをほぼ20年ぶりで訪れた。カメラ雑誌の取材を手伝うためだが、'80年代の前半に3回取材をして以来。つまり、浦島太郎状態なのだが、Photokina自体がそう大きく変化したわけではなかった。


Photokina

Photokinaの会場となるケルンメッセ。このような建物が10以上集められている
 そのスケールや、ブースの展示、アトラクションには、残念ながら日本のフォトエキスポは追いついていない。フォトエキスポも東京ビッグサイトに移って、規模はかなり大きくなった。だが、Photokinaの大規模なホールとその数の多さ、メインホールの各ブースの大きさ、どれをとってもまだ負けている。そして、次回の2006年からは新しい会場で、より規模が拡大されるのだ。PhotokinaはPMAショーよりもさらにスケールが大きい、世界最大の映像機器ショーである。


ひとつのホールを丸ごと使い切ったKodakブース
富士写真フイルムもKodakに負けない規模のブースを出展

 Photokinaにはなんでもある、と言えば言いすぎだろうか。デジカメや銀塩カメラ、さらにはムービーや撮影用品など、ありとあらゆる(は誇張だが)製品が展示されている。そして、あらゆることが許されるのかも知れない。


ヌードではないが、アグファブースの撮影会の様子
 本誌ですでにレポートされているが、アグファなどのブースではフルヌードの撮影イベントがあった。いや、正確にはあったようだ。開催前日を含めPhotokina会場には4日間いたが、結局アグファのブースなどには行っていない。いずれにしても、日本のフォトエキスポには真似ができないイベントである。ドイツ人は生真面目だと言われるが、そうではない一面もあるのだ。それはPhotokinaの後に撮影に行ったミュンヘンのオクトーバーフェスト(いわゆるビール祭り)でも感じたことだ。このヌード撮影イベント、'80年代からすでに行われていたという事実もある。

 Photokinaがフォトエキスポと大きくちがうのは、Photokinaは一般の来場者からは入場料金をとることだ。この売り上げだけでも相当な金額になるらしい。この点では、入場料無料、おまけに写真セミナーが聞けたり、あるいはコンパニオン撮り放題のフォトエキスポのほうがいいのかも知れない。


レーシングカーを展示するブースも目立った。これはカシオ
ヒューレット・パッカードはF1のシミュレータを体験させるアトラクションを用意

 ただ、この一般来場者のほかに、多数の無料客がいる。それはプレスカードを交付してもらった報道陣だけではない。ヨーロッパその他の地域のディーラーが多数来ているのだ。つまり、新製品を見せて商談をしたり、あるいはプロトタイプを見せて反応を見る、というようなことが行なわれているのだ。

 このように、Photokinaには別の顔がある。つまりディーラーショーであり、これはPMAショーなど映像関係のショーのほかに、電子製品のショーにも共通することだ。その商談のための部屋をブース内に置いてあるメーカーが多い。

 プレスセンターは西端と東端の2カ所に置いてある。そして、コンピュータがセットされた部屋もあり、LANでインターネットにつながっていた。LANは有線LANのほかに、無線LANも使用可能。ただし、速度は体感で128Kbpsぐらいの感じだ。自分のコンピュータを持ち込んで、イーサネットケーブルにつなぐだけだから、以前に比べると楽にはなったようだ。

 コンピュータルームはほとんどいつも満席状態。9時のオープンより前に入って、ともかく席を確保してしまわなければならない。さらに、報道用のコインロッカーもあるが、これも開催前日の早めに確保しておかなければふさがってしまう。プレスセンターはコンピュータもロッカーもまだまだ足りない感じだが、プレスに対してはフォトエキスポよりも断然充実している。

 こうして、Photokinaをフォトエキスポを比べてみると、まだドイツに学ぶところはありそうだ。


どこもかしこもデジカメだらけ

 さて、Photokinaの会場紹介だけでこの雑文を終わってしまっては、読んで下さる方々に怒られてしまう。少しはPhotokinaの展示製品に触れておかなければならないだろう。

 めぼしいデジタルカメラについては、本誌特派陣が怒濤の勢いで毎日レポートをし尽くしていて、いまさら細かいことを書いてもしょうがない。ただ、メイン商品であるデジタル一眼レフは、高画素化と低価格化の2つの大きな流れに、独自性を出した製品がいくつかあった、という傾向だ。

 高画素化はデジタル一眼レフの2大メーカーがふたたびPhotokinaを舞台に激突した。キヤノンはEOS-1Ds Mark II、ニコンはD2Xである。画素数の多さとフルサイズの有利さなら1Ds、連写性能とクロップによる高速連写という裏ワザならD2Xということになる。キヤノンはこのほかにEOS 20DもPhotokinaでは新製品である(カメラ店にも並んでいたが)。


オリンパスブースで行なわれたE-300の発表会
 低価格化ということでは、ペンタックス*ist DsがキヤノンEOS 300D(日本でのEOS Kiss DIGITAL)をさらに下回る価格設定をしている。また、オリンパスE-300は価格未定だが、これも*ist Dsと同じゾーンか、あるいはそれ以下になる可能性もある。E-300はポロミラー光学系により、一眼レフにはおなじみの三角屋根をなくした、フラットな上面のデザインに特長がある。もちろん、現在のところ唯一無二のダストリダクション機構をE-1から受け継いでいる。いちばん独創的なデジタル一眼レフはコニカミノルタDynax 7D(日本名α-7 DIGITAL)だ。CCDシフト方式の手ブレ補正機構を組み込んでいて、いよいよ製品化間近を感じさせた。

 メーカーによる画素数のちがいにも注目すべきだ。α-7 DIGITALは中級機の価格帯だが6.1メガ、対してEOS 20Dは8メガ(と5コマ連写)。普及機では*ist Dsが6.1メガなのに対して、E-300はフォーサーズながら8メガだ。ハイエンド機ではEOS-1Ds Mark IIの16.7メガ(4コマ連写)に対し、D2Xは12.4メガ(5コマ連写)。画素数競争の第2ラウンドが始まったようだ。

 コンパクトデジカメはあちこちのブースにいやというほど並んでいる。ここでもまた高画素レースが始まっていて、いまは7メガでのせめぎあいだ。しかし、撮像素子が1/1.8型で7メガだと、画素ピッチとしてはそうとう厳しいのではないだろうか。ただ、2/3型8メガ機が各社ともいまひとつ人気が出ないということがあり、ひと回り小さいイメージセンサーで高画素化を、ということなのだろう。そんな中でちょっと気になったコンパクトデジカメは京セラの超コンパクト機「CONTAX i4R」。IXY Digital Lよりもさらに小さく、薄い。超小型のデジカメは韓国のメーカーなどからも出品されていた。


マミヤZD
 今回のPhotokina 2004で初公開されたのが既報のマミヤZDだ。撮像素子は645判よりはひと回り小さいが、それでも従来よりは大きい。そして、なによりも圧倒的な約22メガの画素数と、デジタル専用ボディーに徹した操作性の良さやローパスフィルター着脱式というのが注目される。デジタルバック方式よりも、やはり専用ボディーにすべきだと思う。

 また、個人的には興味をなくしてしまったデジカメ付き携帯電話だが、これも日本ばかりではなく、海外メーカーからも出品されていた。オモチャデジカメもあるし、ともかくどこを向いてもデジカメだらけだ。ヘソ曲がりとしては、フィルムカメラも出たほうがPhotokinaらしい、などと思ってしまった。


銀塩カメラは対照的な2つの製品

 その密やかな? 期待に応えてくれたのか、ニコンがハイエンド銀塩一眼レフ、F6を出した。すでに発売後1年近く経つD2Hや来年1月発売のD2Xと部品の共通化を図った上で、フィルム巻き上げ速度やシャッター材質にこだわった。キヤノンEOS-1Vへの対抗意識か、あるいはニコン独自の戦略があるのだろうか。

 いずれにしても、ボディー単体(リチウム電池使用)で、毎秒5.5コマを叩き出す。単3型乾電池使用のバッテリーパックを使うと毎秒8コマにアップする。単体ではEOS-1Vを上回り、バッテリーパック(ブースター)付きでは、一歩譲る(1Vは毎秒10コマ)。フィルムを使う機会がほんとうに少なくなってしまったが、まだこういうカメラを出してくれるメーカーも貴重である。

 もうひとつは、Zeiss Ikonのレンジファインダー銀塩カメラである。Carl Zeissがレンズ、ボディーがコシナ、そして販売がHasselbladという三重奏だ。ライカMマウントと互換性があり、Mマウントはレンジファインダーのディファクトスタンダードになった。このカメラはボディーもライカM7などより長い有効基線長などの特長を持つが、やはり魅力はレンズだ。個人的に興味があるのは、ディスタゴンT*15mmF2.8とゾナーT*85mmF2というラインアップの両端だ。


ニコンはF6の実機とともにカットモデルを展示
Zeiss Ikonのレンジファインダーカメラ

 このほか、中国製の銀塩一眼レフが並んでいたり、デジタル一色に近い中で、まで銀塩カメラへの需要はある。ただし、プロが使うと言うよりは、写真を趣味とする人々が使うカメラになりつつあるようだ。やはり、主流がデジカメであることに間違いはない。あまりに多くのデジカメを見てしまったので、食傷気味になっているが、それでもデジカメがメインとなっていくのは時代の趨勢だ。

(写真は編集部が撮影)




那和 秀峻
(なわ ひでたか)写真家およびテクニカルライター。1976年以来、カメラ雑誌を中心に活動。現在はほとんどデジカメ関係の仕事が多い。PC Watchに「那和秀峻の最新デジカメレビュー」を2003年より不定期連載。PCは自作Pentium 4機が主力だが、Mac G4もときどき使用。モバイルはInterlinkだが、そろそろ電池がだめになってきた。1989年よりMS-DOS 3.3CでPC入門。趣味のウェブサイトもあります( http://www.nawa-jp.com )。

2004/10/08 19:20
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