デジカメ Watchやデジタルカメラマガジンなどで活躍する写真家桃井一至氏が、グッドイヤーのオールシーズンタイヤを履いて四季の撮影に出かける

 クルマを仕事に使っている人にとって、冬が近づくと頭を悩ますのがタイヤだろう。ご承知のように近年、首都圏でも雪に見舞われることは多く、その都度、都市機能がマヒするのは恒例行事のようになってきている。筆者のように、日常的にクルマで現場に向かう仕事では、穴を開けないためにもスタッドレスタイヤの装着は必須だ。しかし首都圏は日常的に雪が降り積もることはなく、積もっても昼頃には解けるのが通例。それでも安心を得るために、スタッドレスタイヤに交換せざるを得なく、例年、年末を目安に交換している。

 特に首都圏では住宅事情として、マンション住まいだとなかなか保管する場所もなく、ディーラーやタイヤショップへ有料で預けている方も多いはず。幸い筆者の場合、自宅の軒先を保管場所にしているが、複数台所有のため、けっこうなスペースを占める。さらに盗難のリスクもあるので、なるべくならスッキリさせたいところだ。

 そこで今年はグッドイヤーのオールシーズンタイヤ「Vector 4Seasons Hybrid(ベクター フォーシーズンズ ハイブリッド)」をチョイスしてみることにした。オールシーズンタイヤと言うだけあって、タイヤ交換のタイミングを考慮せずに、年中使える手軽さや取り外したタイヤ保管に場所を取られることもない、非積雪地帯ユーザーには打ってつけの製品だと思う。写真家を生業にしている筆者も、このベクターフォーシーズンの名前のとおり、このタイヤを試しつつ、四季折々の写真撮影に出かけてみたいと思う。

グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「Vector 4Seasons Hybrid」。従来モデルより拡大したサイズラインアップはコチラ

オールウェザーシリカコンパウンドにより、気温が低くてもしなやかさを保ちグリップを確保する

センター部分の細かい溝が積雪路面に効き、ショルダー部は剛性を持たせることで夏タイヤの安定性を確保。

M+Sのマークはオールシーズンタイヤを表し、その横のスノーフレークマークが欧州で冬用タイヤとして認められていることを表す

こちらのSNOWの文字は、日本で冬用タイヤであることの証し。このタイヤならチェーン規制の道も走ることができる

ドイツ北部で圧倒的な装着率のベクター 4シーズンズ

 筆者はふだんこのサイトと同系列のデジタルカメラマガジン誌やデジカメWatchなど、カメラ関連の仕事が多いのだが、今秋、二年に一度ドイツ北部・ケルンにて開催される世界最大の映像用品ショー「フォトキナ」へ取材に行った。

 たまたま会場とホテルが近く、住宅街を歩いて通ったが、駐車しているクルマの足もとに目をやるとベクター装着率が高いことに驚かされる。日本ではまだまだ履いている人を見かけることは少ないが、ケルンではあちこちで見かけてビックリした。真面目で時間に厳しいなど、日本人と似ているとされるドイツ人のお眼鏡に叶うタイヤなら、けっこうよい製品でないかと、勝手な思い込みで俄然興味が湧いてきた(笑)

ホテルからフォトキナの会場まで向かう道中だけでも、こんなにもたくさんの車がベクターを装着していた

 例年、東京よりも秋の訪れを早く感じるケルンだが、冬場の気候を調べて見たら、降水量は東京と大差なく、降雪もドイツ南部に比べれば少なめ。その代わり冬場の平均最低気温は、5度以下で1~2月は氷点下が続き、東京よりもグッと寒い。さらにドイツには日本でも有名な高速道路「アウトバーン」があり、法定最高速度は無制限。一般道でも郊外では100km/hに設定されている。

 ということは、冬季のケルン周辺は、東京よりも寒くて雪は同等程度。高速走行は日常ということだ。

 フォトキナ取材終了後、作品の撮影のためにレンタカーを借り出した。車種はルノークリオワゴン。和名ではルーテシアとして、5ドアハッチバックが日本でも発売されている。なんとそのクリオの足もとにもベクターが装着されていたのである! もちろん、担当者が根回ししたわけでなく、走行距離から察するに新車装着されている様子。ドイツではベクターがポピュラーに利用されているのがわかる。

 期せずしてベクターの試乗をできることになったワケだが、さっそく乗り込んで目的地へと向かう。オールシーズンタイヤだからと言って、特別な運転方法があるわけでなく、いつもどおりに発進。筆者自身、クルマ移動は多く、運転も大好きだが、インプレッションを語るほどの専門家でないのはご容赦いただくとして、スタッドレスタイヤに有りがちな、柔らかいゴムに起因するコーナーでの不安感など一切なく、言われなければ夏冬兼用のオールシーズンタイヤと気づかない。

 アウトバーンの速度無制限区間では、流れに沿って120~150km/h程度で走行。レーンチェンジも幾度となく行ったが、こちらも難なくこなして拍子抜けするほどで、いわゆる夏用タイヤの感覚のままで走行可能だ。そんなベクターのウィークポイントをあえて挙げるとすれば、信号などの停車直前にスタッドレスタイヤ風のかすかに路面を叩く音がする程度。音に敏感でない人やオーディオ利用中ならば、恐らく気づかない些細なものだ。

 仕事柄、先入観でモノを評価してはいけないと肝に命じているが、ベクターに関しては専門外というのも手伝って、ここ数年テレビCMなどでその存在は知っていたものの、失礼ながらタイヤで一石二鳥はあり得ないだろうなと思っていた。ところがどうして、場所が変わればこんなにも普及しているし、実際にハンドルを握ってみても、一般道路から高速道路まで、普通にこなすではないか。なかなかあなどれないぞ、オールシーズンタイヤ!ベクターに目からうろこの感、大だ。

ドイツで借りたレンタカーにもベクターが装着されていて、期せずして試乗することができた。アウトバーンでも安心して走れる性能には驚き!

レンタカーに装着されていたのはスロベニア製のVector 4Seasons。ちなみに日本で今売られているVector 4Seasons Hybridは国内(日本)生産とのこと

愛車にベクターを装着し、秋を撮りに出かけよう

 そして、日本へ戻り、秋も深まったころ、いよいよ愛車マツダMPV(FFターボ)にベクターを装着。交換作業は新横浜にある神奈川ジー・ワイ商会で行った。

 最新製品が並ぶWatch誌上に、10年落ちのミニバンで申し訳ないが、これまで夏用タイヤは215/55-18のコンフォートタイプのミニバン用タイヤ。冬季はインチダウンして、215/60-17のスタッドレスタイヤを使用してきた。首都圏では年末の降雪はまずないので、いつも年末年始の帰省に合わせて、クリスマス前後に交換する。もちろん、もっと早い時期でもよいが、柔らかいスタッドレスタイヤで乾燥路を走ると摩耗しやすく、つい年末のドタバタの中でのタイミングになってしまう。

 しかし、みな考えることは同じなのか、この時期、カーショップやディーラーでのタイヤ交換に、数時間待ちはザラ。ひどいときには半日費やすこともあると耳にする。そんな時間的ロスとサヨナラできるのもベクターの利点と言えるだろう。今回、秋の交換となったが、摩耗しやすいスタッドレスタイヤと違い、オールシーズンタイヤなら、早めの交換も躊躇なく行えた。

我が家からほど近い新横浜の神奈川ジーワイ商会で取り付けをお願いした。お店の方曰く、ベクターは最近かなり人気だそうで、かなりの数を扱ったとか

 タイヤを替えたら早速走ってみたくなるというのが人情。早速、紅葉で秋が深まりつつある、栃木県日光へとハンドルを向けた。

ルノークリオとマツダMPVでは、車格は違うが同じように安定して淡々と走る。途中、強い雨にも見舞われ、バイパス道の大きな水たまりなども通過したが、ステアリングが取られることもなく、不安は一切感じない。

雪が舞う中でも安心の撮影ドライブ

 奇しくも撮影当日は東京に木枯らし1号が吹き荒れ、日光周辺は雪のちらつく天気。山並みには鉛色の雪雲も見られて、標高の高いエリアへ夏用タイヤで向かうのは心細い。そんなときもベクターなら、気分的な余裕ができるのもうれしい。高速道路の吹き流しが、横一直線に近い状態でも、車内は至って平穏だ。

高速道路を走って日光を目指す。その印象はアウトバーンを走ったときと同じで、レーンチェンジやカーブであってもしっかりしていて夏タイヤと遜色なく走ることができる

日光の二荒山神社の辺りがちょうど見頃を迎えていた。一般道も高速道もベクターは快適だ

人気の二荒山神社周辺には朝一番で向かったのでゆっくりと撮影を楽しむことができた。早朝から動けるのは車での撮影旅ならではだろう

紅葉と滝を一緒に撮ろうと裏見の滝にも足を伸ばした

撮影している腕に赤い紅葉が落ちる

 高速道路を抜けて、日光名物の峠道、いろは坂を登る。幾重にも続くカーブは緊張するものだが、特にスタッドレスタイヤでは、雪に食いつくようにトレッドのゴムが柔らかく、ステアリングを切ってから、ゴムがよれるようにワンテンポ遅れて反応するものだが、ベクターは至ってスマート。この挙動から、なかば無意識に行っている舵角の修正なども、ほとんど行うことなく、カーブを駆け上がる。

 乗り心地は夏タイヤとくらべて、少し固めに感じたが、劣るというよりもコシのある性格の違い程度の差で、夏タイヤに比べて遜色をほとんど感じさせず、むしろ乾燥路をこなすと同時に、積雪路にも対応できる守備範囲の広さに驚く。夏用タイヤとスタッドレスタイヤの相反するふたつの性格を持つ製品だが、少なくとも、一般走行において特に文句の付けどころは感じない。

日光の名物、いろは坂を駆け上がる

タイトなコーナーが連続するが、一般的な夏タイヤと遜色なく快適に走ることができた

静かな場所をゆっくりと走る時、少しタイヤのノイズが大きいように感じるが、ペースが上がると気にならなくなる。この辺は車種にもよるだろう

この日は木枯らしが吹き荒れ、中禅寺湖は日本海の様。写真には写らない程度だが、終始粉雪が舞っていた

この季節だからこそできる長い影。奥日光は紅葉時期が過ぎていたが、被写体となる物は多い

 ベクターのwebサイトにも書かれているが、冬季は雪に覆われる積雪地帯や毎週末のようにスキーへ行くようなユーザーならば、よりウインター性能に特化させたスタッドレスタイヤをおすすめするが、筆者のように年に数回の雪対策や積雪地へ行く保険的な意味合いでスタッドレスタイヤを装着していたユーザーに取って、ベクターはベストチョイスかも。

 たとえば、今回のように北関東へ撮影に出かけたら、急な雪に見舞われて肝を冷やすケースはあるし、逆に新潟のような豪雪地帯であっても、じつはそういった地域は除雪能力が高く、実際には雪が残るのは駐車場や路地だけということも少なくない。各地でクルマを走らせる機会も多いが、冬場に本格的に山あいに入っての撮影でない限り、ベクターで事足りるのが大半のように思われる。

今回は日光の紅葉が見頃の時期に向かったのだが、山の上にはまさかの雪雲が……

季節外れの雪であったがベクターを履いていれば安心だ

 たとえば、首都圏在住でたまにスキー行く人や、撮影でちょっと北へ足を伸ばしてみたいけど、夏タイヤ+チェーンでは心もとなく、しかしスタッドレスタイヤを買うほどでもないという人には、まさにちょうどよい選択だろう。

 タイヤの購入は、車格が大きくなるほど出費や労力もかさみ、MPVのタイヤは、純正ホイール付きで一本、約20kg。この脱着や保管の手間、スペースを考慮すれば、自分のライフスタイルでは一年通してベクターだけで過ごすのも十分ありだと感じている。

あとは肝心の雪道での性能だが、こちらは改めてレポートしたい。

日光で撮った秋模様

 最後に日光で撮影した作品をいくつか紹介したい。撮影テクニックも紹介しているので参照していただければ幸いだ。

朝の光に照らされた木々が、窓ガラスに映り込む様子を高倍率ズームレンズで切り取った。建物全体を入れて撮った場合、説明的になりすぎるため、いちばん伝えたいガラス部分を大きく撮るのがポイント。

真っ赤な壁面が目に飛び込む。下手な細工など考えず、力のある扉を中心に画面を構成。自身の立ち位置と水準器や罫線表示を駆使しながら傾きのないよう調整する。あとは人の動きのタイミングを見て、シャッターを切るだけだ。

紅葉を彩りよく見せるには、逆光の位置から、アングルを探すのが良い。太陽の光を紅葉が受けて、透けるような場所を探してみよう。シーン次第で、露出補正の増減で、明るい雰囲気、重厚な雰囲気を撮ってみるのもよし。

足を伸ばして裏見の滝へ。ハイシーズンとあって、展望台にはひっきりなしに観光客が訪れる。水流を印象的に見せるために、シャッター速度を1/4秒に設定。 手ぶれ補正機能の恩恵を受けながら、息を止めて優しくシャッターボタンを押した。

秋の日差しは低く、公園に並んだベンチの肘掛のデザインの影が伸びた。ピクチャーモードをモノトーンに変更し、あえて色の要素をなくして、陰影のみ光の表現を試みた。写真は平面だが、光を操って奥行きを盛り込むのが楽しい。

マクロレンズで紅葉のアップを狙う。葉っぱの大まかな構図を決めたら、少しずつカメラ位置を動かして、ボケとのバランスを調整する。小さなものを大きく撮るときほど、カメラの少しの動きでも画面は大きく変化するので注意したい。

いろは坂を登った先の中禅寺湖周辺は冬景色。突風のなか、小雪が舞い、海のような波が岸に寄せる。冬の厳しさや波の強さをモノトーンにして、ストレートに表現。幸い日差しは強く、ISO感度を上げることなく、速いシャッター速度が得られ、波の飛沫を止められた。

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(Reported by 桃井一至)