特別企画

冬のイチオシ!! 「工場夜景」を撮影してみよう

縦横無尽に巡らされた配管が密集した部分をズームレンズで切り取ってまとめました。メタル感を出したかったので、反射で明るい部分と陰になっている部分のコントラストを画面に入れています。

 ここ数年、工場地帯の風景を撮影する人が増えました。各種写真集が出版されているだけではなく、工場地帯を巡るバスツアーや、海から工場を眺める船上ツアーなども組まれ、さらには「工場萌え」という言葉が生まれるくらい脚光を浴びています。

 工場は日中だけではなく、夜でも操業している不夜城です。夜間は作業灯などにより照らし出されることから、夜景撮影の被写体としても人気が高いようです。

 今回はその工場夜景の撮り方について解説していきましょう。

工場夜景に適した天気と時間帯

 大きな工場地帯は、海側に多く建設されています。また一般人が立ち入ることができない区画も多く、工場の間近からではなく、遠くから望遠レンズを使った撮影が多くなります。そのため望遠撮影でもキリッとクリアに撮影ができる、霞がない晴天が好ましい天候といえます。

 地域によって季節的な気象条件は変わってきますが、関東地方を例にすると、一般的に西高東低の冬型の気圧配置が、空気が乾燥し晴天になる確率が高い気象条件なります。冬場は晴天かつ乾燥した空気により、工場などの構造物の風景をクリアでシャープに撮影できることから、とても好条件な気象だといえます。

 しかし春が近づくと、低気圧が日本列島の太平洋側(南岸)を通過することが多くなり、関東地方などの太平洋側でも雨や雪などが降ることが多くなります。紅葉シーズンが終わる11月下旬くらいから桜が咲く前の3月中旬くらいまでの冬の時期が、クリアな夜景を撮影できる季節ということになります。

天気による写り方の違い

 異なる天候で同じ場所から同じ構図で撮影。露出も同じにしてあります。

晴天
曇天
曇天+霞

 空気が乾燥して霞がない晴天では空や、水面が暗くコントラストが高く、工場が闇夜に浮き出るような感じクッキリとシャープに写すことができました。

 曇り空では、雲に街の街の灯りが反射し空が明るくなり、また水面にも明るくなった空が反射するため写真全体が明るく写っています。

曇り空で霞がある天候では、曇り空の時よりも写真全体が明るく写るだけではなく、霞によりぼんやりと不鮮明な印象になりました。

 また、冬場は日没時間が夏場よりも早く、夜景撮影を早い時間帯から開始できるため、夜景撮影を長時間楽しめる季節でもあります。

 曇り空の場合、日没前から空は暗くなり始め、完全に暗くなるまでに時間もあまりかかりません。逆に雲がなく良く晴れた日だと、夕日が沈んでからもトワイライトタイムがあるので、空が暗くなり工場の照明や街の灯りなどが煌めき立つまでに時間がかかります。

 空の明るさは日が沈む西とは反対の東の空から暗くなっていきますが、西の空にはしばらく明るさが残るので、夕暮れ時からの撮影では時間帯とカメラを向ける方角によって、空の明るさや色にも違いがでます。

 夜景として工場の照明や街の灯りと一緒に空のディテールも残して撮影するには、東の空でおおむね日没後20分くらいまでの間、西の空で30〜40分くらいまでの間というところですが、夜景として工場の照明や街の灯りなどを強調して撮影するには、それ以降の時間帯からということになります。

時間帯による変化

 10階建ての建物の高さから西側と北側にカメラを向け、日没直前から約10分間隔で撮影。空と夜景の明るさの移り変わりを比較してみました。

※肉眼で見た雰囲気に近づけていますが、実際の空と若干異なるので参考程度にご覧下さい

 日没から約20分、西側では街の灯りよりも空の方がまだ明るいが、北側の空はかなり暗くなり空のディテールは残っているものの街の灯りが目立つ感じです。

西側の空(日没から約20分)
北側の空(日没から約20分)

 日没から約30分、西側は街の灯りが目立つようになってきたが空の明るい部分もまだ目立つが、北側の空は暗くなってきているので街の灯りが際だってきている。

西側の空(日没から約30分)
北側の空(日没から約30分)

 日没から約40分、西側でも街の灯りがかなり目立つように見えるが空のグラデーションは残り、北側はほぼ暗くなりました。

西側の空(日没から約40分)
北側の空(日没から約40分)

 日没から約50分、西側もようやくほぼ暗くなり、街の灯りが冴えて見えるようになりました。

西側の空(日没から約50分)
北側の空(日没から約50分)

夜景撮影の準備

 工場夜景の撮影では、遠く離れた工場を望遠ズームレンズで狙ったり、長時間露光(長秒撮影)が基本になるなど、さまざまな条件に対応する必要があります。一眼レフカメラやミラーレス機など、レンズ交換式のカメラがよいでしょう。

 レンズは、ダブルズームキットに含まれる標準ズームレンズと望遠ズームレンズ、もしくは高倍率ズームレンズなどを用意したいところです。広角から望遠まで撮影できるため、いろいろな場所からの撮影や構図などが楽しめます。

 長時間露光になるため、三脚は必需品です。さらにきっちりと構図を決め、カメラブレを起こさずにシャープに撮影するには、ケーブルレリーズやワイヤレスリモコンも用意します。

 暗い撮影環境や被写体が暗い場合などでは、一眼レフでもライブビュー撮影を多用することが多くなりますし、また寒い撮影環境では通常の撮影時よりもカメラのバッテリーの消耗が激しくなるので、カメラの予備バッテリーも用意しておくと安心です。

 他にもあると便利なのは、足元や手元などを照らすための小型のライト。

 また冬場の撮影や撮影環境が海や運河などに近く風が冷たいため、暖かい服装や靴はもちろんのこと、手袋やカイロなどの防寒対策も万全にしましょう。

三脚を設置する

 カメラを固定するための三脚は、カメラと使用するレンズの重量をしっかり支えることができる物を用意します。

 三脚の設置はセンターポールが垂直になるように、設置する地形に合わせ3本の脚の長さを調整しましょう。地面が傾斜していたり段差や凹凸などがある場合などは、設置する地面の高さに合わせ、カメラを固定したい高さになるように1本1本の脚の長さを調整します。脚は太い脚の方から順に伸ばしてください。

 カメラを撮影するポジションにセッティングしたら、三脚の各可動部分のロックネジなど緩みが無いようにしっかり締めましょう。

傾斜のない平らな場所なら、3本の脚の長さを同じ長さにし、しっかりと脚を開いて設置するとセンターポールが垂直になります。三脚はベルボンのジオ・カルマーニュE645M。実施中のキャンペーン「ジオ・カルマーニュ(Geo Carmagne)カーボン三脚祭」対象製品のひとつ。

 センターポールの高さが調整可能な場合でも、できるだけ伸ばさずに低いポジションに設置するとカメラの安定感が増しカメラブレしにくくなります。

 センターポールを伸ばしすぎると重心が高くなりブレやすくなるため、風の影響やちょっとした振動でもカメラブレしやすくなるので注意しましょう。

センターポールを伸ばさず低い状態に保つと、カメラが一番安定した状態で撮影ができます。
センターポールを長く伸ばすほど重心が高くなり、ブレやすくなるので注意しましょう。

 また太い脚ををたたんだまま、細い部分だけ伸ばして使うと、バランスが悪くなります。カメラブレの原因になるので、注意が必要です。

カメラを三脚にセットする

 三脚にカメラを固定したい高さに伸ばしたら、カメラを三脚の雲台にセットします。

 今回の被写体である工場など建物や構造物を撮影する場合、意図的に画面を傾けた表現をする以外は、基本的にカメラを水平、つまり建物などを垂直にして撮影します。建築など構造物が傾いていると、落ち着かない印象の写真になりがちです。三脚を用いれば、じっくりと構図を調整できるので、カメラが傾かないようにすることも難しくありません。

 カメラによっては電子水準器が装備されているものがあり、それを用いると簡単に出すことができます。

ライブビュー撮影時の画面に電子水準器を表示できるカメラがある(写真はキヤノン EOS 5D MarkIII、以下同)
光学ファインダーでの撮影時に、電子水準器だけを液晶モニターに表示できる機種も。

 カメラに電子水準器がない場合は、カメラのホットシューに装着できる別売の水準器や電子水準器を用意しておくと便利でしょう。

 また水準器が装備されている三脚もあります。今回メインで使用したベルボンのジオ・カルマーニュE645Mもそのひとつです。

ベルボンの三脚、ジオ・カルマーニュE645Mは水準器が装備されている。縦位置用の水準器もついています。

 他にも、光学ファインダーの格子線やライブビューのグリッド線を活用する方法があります。ファインダー内にあるAFフレーム(測距点)の縦配列を建物や構造物の垂直に重ねて、垂直を出す方法もあります。

カメラ電子水準器機能が無いカメラでも、ライブビュー撮影にグリッド線表示を活用できる。グリッド線の中央の線を被写体の垂直線に合わせると、被写体の垂直を出すことができます。
光学ファインダーなら、AFフレームの縦の配列を被写体の垂直線に合わせるやり方もあります。

ピントの合わせ方

 カメラが三脚にセットできたら、いざ撮影になります。

 一般的に被写体に明るいところがあれば、そこにAFフレーム(測距点)を合わせるとピントが合わせやすいものです。ただし工場夜景では、被写体に明るい部分が無い場合もあります。AFでピントが合いにくい場合は、カメラをライブビュー撮影に切り替えて、MFで撮影するとよいでしょう。ライブビュー撮影なら部分的に拡大できるので、しっかりとピントが合っているかチェックすることが可能です。

明るい部分ならピントが合いやすい。
ライブビュー撮影ならAF時でもMF時でもピントを合わせたい位置を拡大表示ができ、しっかりとピントが合っているか確認しやすい。

 構図を決め、ピント合わせにも細かい作業が必要になるため、特に夜景撮影では三脚は必需品ということになりますが、三脚を使用した撮影では、一般的にカメラやレンズの手ブレ補正機能はオフにします。微妙な振動で手ブレ機能が働くと、かえって写真がブレる原因になるからです。

カメラブレを起こさずにシャッターを切る

 夜景撮影では、1秒以上の長時間露光(長秒撮影)になることが多く、シャッターが開いている間にカメラに微妙な振動が伝わってしまうと写真がブレてしまい、シャープに写すことができません。

 特に望遠域での撮影は、微細なブレまでも拡大してしまうので、カメラを三脚で固定しての撮影でも、カメラブレを起こさないように細心の注意が必要になります。

 そこでシャッターを切るときは、カメラのシャッターボタンを直接押さずに、ケーブルレリーズやリモコンなどを利用してシャッターを切るとよいでしょう。

 ミラーレス機はミラーがないため、シャッターを切ったときのミラーのバタつきはありませんが、一眼レフは通常撮影時ではシャッターボタンを押すとミラーが稼働し、微妙な振動がボディに伝わってしまいます。

 カメラの機種によってはミラーアップ撮影が可能な機種ならミラーアップ撮影に設定するか、あらかじめミラーが上がっている状態のライブビューで撮影をすることをオススメします。

 またケーブルレリーズやリモコンなどが用意できなかった場合は、ライブビュー撮影でセルフタイマーを使用すると余計な振動を与えずにシャッターを切ることができます。

三脚を使用して、長時間露光(長秒撮影)するときはケーブルレリーズは必需品。
ミラーアップ撮影はレリーズを使い、レリーズのシャッターボタンを押すとミラーが上がり、再度押すとシャッターが切れるダブルアクションになっています。

レンズフードを必ず装着する

 他にあらかじめ用意しておくと良いものは、レンズフードです。

 カメラの間近に街灯などの強い光がある場合、その光がレンズの前玉に直接入ってしまうと、写真が全体的ににじんでしまったり、部分的に光の影響で明るく写ってしまったりします。明るい街灯の真下にカメラをセットする場合などは要注意です。

 レンズフードは、レンズに付ける帽子のツバの役目をするもので、カメラ周辺にある街灯などの余計な光をレンズの前玉に受けないように防止するものです。必ず装着して撮影しましょう。

レンズフードはレンズにとって帽子のツバのはたらきがあり、レンズの前玉に入る余計な光をカットしてくれます。

 カメラメーカーやレンズによっては、レンズフードが別売になっているものがあります。レンズフードは夜景撮影以外でも必需品なので、普段から準備しておくことをお勧めします。

レンズフードを装着しない状態では、画面左側に街灯の影響が出て、部分的にムラが出ました
レンズフードを装着。側面からの光をカットしてくれたので、写真に影響は出ていません。

ガラス越しでの撮影

 室内から外を撮影する場合、ガラス越しでの撮影になることがあります。室内照明がついている明るい室内では、室内の様子がガラスに反射して映り込んでしまいます。

 そういう場合はレンズフードを外し、レンズをガラス面に対してできるだけ垂直方向に向け、レンズの先端をガラスにそっと密着させるようにします。少しでもレンズがガラスから離れてたり、またガラス面に対して斜めになると、映り込みが画面に入ってしまいます。

ガラス越しの撮影では、ガラス面に対してカメラをできるだけ垂直に向け、ガラスに密着させます。レンズが望遠側ほどガラスの写り込みが画面に入りにくくなります。

 レンズの画角が広角になるほど、映り込みが入りやすくなります。広角側よりも望遠側の方が写り込みは画面に入りにくくなります。

 室内を暗くすることができればそれに越したことはありませんが、黒い紙の中心にレンズ径の穴を開けたものを用意し、レンズの前側にはめると映り込みを押さえる効果があります。

 市販のもので同様のアイテムとしては、よしみカメラの「忍者レフ」という商品があります。丸形のレフ板の中央にレンズを差し込める穴がついていて、片面が黒、もう片面が白になっています。

よしみカメラの「忍者レフ」。片面が黒、片面が白で中央部にレンズを通す穴がついている。黒い面はガラス越しの撮影用
上の写真と異なり、実際にはガラス面に対し水平にしないと効果が無いので注意。黒い面がガラスの写り込みを防いでくれているのがわかるでしょう。
「忍者レフ」なし
「忍者レフ」あり

ガラス越しの撮影では、ガラスにキズか付くほど強く押さえつけたり、または密着する際にガツンとぶつけるようにしてしまうと、ガラスだけではなくカメラのレンズの方にも影響してしまいます。

 特にズーム操作やAFでピント合わせをする際に、レンズの前玉が繰り出すタイプのレンズは、レンズが繰り出す際にぶつけたり、無理に押さえつけるとレンズを破損することもありますので、慎重に撮影を行なうようにしてください。

 撮影の際はガラスに傷を付けないように、またカメラのレンズが壊れないように十分注意してください。

撮影モードと露出の設定

 撮影モードは、絞り優先オート(A/AV)で、絞り値を任意で設定するのが撮影が簡単なのでオススメです。ただし絞り優先オートで撮影していても、撮影時は常に自動で設定されるシャッター速度(露光時間)の表示を意識し、さらにISO感度にも気を配ります。

 露出値は、ISO感度、シャッター速度(露光時間)、絞り値の3つの光を調整する機能で成り立っています。

 撮影するレンズの焦点距離や被写体との距離によってシャープな画質で撮影する露出値は変わってきますが、仮に絞りを絞るほど露光時間は長くなります。

 しかし、露光時間が長くなるほど、風などの影響でカメラブレを起こす危険性は高くなりますし、またオートで対応できる露光時間は決まっています。バルブ(B/BULB)にすればオートの範囲外での長時間露光が可能になりますが、オートの範囲内で露光時間を調整するには、ISO感度を調整しなければなりません。

 そのため絞り優先オート(A/AV)で絞りを設定するだけではなく、同時に撮影情報表示を確認しながら、シャッター速度(露光時間)とISO感度にも意識を向けて撮影するようにしましょう。

 絞り、ISO感度、シャッター速度(露光時間)の設定やその効果については、それぞれ写真的な表現に違いがあるので、以下で解説していくことにしましょう。

絞り値による効果の違い

 絞りを絞るほど被写界深度(ピントが合っているようにみえる奥行きの範囲)が深くなりますが、望遠レンズを使用した撮影でも、遠景ならさほど意識する必要はありません。

 しかし絞りは被写界深度の他にも、夜景撮影では写真的な効果として利用できます。

 工場などの夜景では画面に強い点光源が写ります。このとき、点光源は絞りを開けると点として写りますが、絞りを絞るほど光芒が長く伸び、まるでクロスフィルターを使用したような効果を生み出すことができるのです。

 つまり、絞りを絞ることで光から伸びる光芒を長くし、夜景が煌めいた印象として表現することができ、さらに光が強い部分ほど光芒の直径は長く写ります。

 下の例では、絞りをF2.8からF22まで1段ずつ絞り値を変えて撮影しました。F2.8では、ほとんど光芒は出ていませんが、絞りを絞るほど光芒が長く伸びていくことがわかります(サムネイル画像をクリックすると、画像の全体を表示します。

F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

絞り羽根の枚数による光芒の数の違い

 光芒が伸びる本数は、絞り羽根の枚数によって変わってきます。

 絞り羽根が偶数の場合は、絞り羽根の枚数と同じ数の光芒になり、奇数枚の場合は絞り羽根の枚数の2倍の数の光芒を写すことができます。

 つまり絞り羽根が偶数の6枚絞りは6本の光芒、8枚絞りは8本の光芒が現れ、奇数の7枚では14本の光芒、9枚では18本の光芒を写真に写すことができるということになります。

6枚絞り
7枚絞り
8枚絞り

 絞りを絞るほど光芒の効果を写すことができますが、同じISO感度の場合絞った分だけシャッター速度(露光時間)が長くなるので、確認しながら撮影しましょう。

ISO感度とシャッター速度(露光時間)

 撮影する絞り値が同じ場合、ISO感度を変えることでシャッター速度(露光時間)を変えることができます。

 ISO感度は、一般的に低感度ほど画質が良く、高感度になるほどコントラストが高くなります。また高感度になるほどノイズが増える傾向にありますが、最新のカメラなら、あまり神経質に考えなくてもよくなりました。

 夜景撮影でいくら画質を優先といって低感度で撮影しても、シャッター速度(露光時間)が長くなってしまうことや、露光時間が長くなるほど今度は長秒撮影時のノイズも発生します。被写体の明るさや撮影意図や写真的表現な表現を考えながらISO感度を調整し、シャッター速度(露光時間)に反映させる考え方がよいでしょう。

 下の例ではEOS 5D Mark IIIで絞りをF11、露出補正を-1.7EVに設定し、ISO50から1段ずつISO感度を上げて撮影しました。感度が上がるほど運河の波のブレが少なくなり波の形がハッキリと写ることが分かります。

1/100秒・ISO65535・F11
1/50秒・ISO51200・F11
1/25秒・ISO25600・F11
1/13秒・ISO12800・F11
1/6秒・ISO6400・F11
0.3秒・ISO3200・F11
0.6秒・ISO1600・F11
1.3秒・ISO800・F11
2.5秒・ISO400・F11
5秒・ISO200・F11
10秒・ISO100・F11
20秒・ISO50・F11

 拡大してみると、ISO3200くらいからノイズが見えます。実用上ISO12800くらいまでなら問題のない画質だといえますが、きれいな画質で撮影するには、ISO3200くらいで止めておいた方がよいでしょう。

 ISO50では20秒の露光時間でしたが、ISO12800では1/13秒のシャッター速度で撮影されています。

 また、感度拡張のH2(ISO102400)では、さすがにノイズは目立つますが、この暗さで1/100秒のシャッター速度が切れてしまうのは驚きです。

 今度は絞りをF11、露出補正を-1.7EVに設定し、ISO感度拡張をしてISO50から1段ずつISO感度を上げ、対岸の煙突から上がる蒸気の様子を撮影しました。カメラは同じくEOS 5D Mark III。

1/60秒・ISO65535・F11
1/30秒・ISO51200・F11
1/15秒・ISO25600・F11
1/8秒・ISO12800・F11
1/4秒・ISO6400・F11
0.5秒・ISO3200・F11
1秒・ISO1600・F11
2秒・ISO800・F11
4秒・ISO400・F11
8秒・ISO200・F11
15秒・ISO100・F11
30秒・ISO50・F11

 ISO50では蒸気がブレて流れていますが、ISO感度を上げシャッター速度(露光時間)が速くなるほど、肉眼で見た蒸気の形が再現されています。

 波や蒸気など動く被写体は、長時間露光(長秒撮影)でが形がわからなくなってしまいます。いうなれば「肉眼では見ることができない写真的な表現」ともいえます。

 逆に、肉眼で見たときの印象に近づけるには、高感度でシャッター速度(露光時間)を速く切りつめることで、動く被写体の形を残すように撮影すると肉眼での印象が再現できます。

 このことから、撮影意図や写真をどのように表現するか、もしくは再現するかを考えて露出を決め撮影してみましょう。

 夜景撮影では画面に暗い部分が多いため露出補正をマイナス側に設定することが多くなります。

 露出補正をマイナス側にするとISO感度が同じ状態でも補正した分だけシャッター速度(露光時間)は速くなります。

 逆にプラス補正をするとシャッター速度(露光時間)は長くなります。

 写真の明るさを調整する露出補正はカメラのライブビュー撮影の露出シュミレーション機能を使うとわかりやすいので確認しながら露出補正してみましょう。

ホワイトバランスで光の色を変える

 工場の光源として用いられる光源は、暖色系のナトリウム灯や青白い水銀灯などさまざまで、光線状態の色によって写真の印象も変わってきます。

 基本はオートホワイトバランス(WB:オート)なら、画面全体の光線の中間色くらいに写る傾向が多く、無難な色味で撮影できます。しかしあえて、撮影意図や写真をどのように表現するかによって意図的にホワイトバランス(WB)を変えて撮影みるのもよいでしょう。

 太陽光や曇り、日陰など色温度の高いWBを設定すると、写真全体が暖色系になります。

 逆に、白熱電球やケルビン(K)を2500Kなどの低い色温度のWBなら、青っぽいクールなイメージで撮影することができます。

 それぞれの撮影環境で光線状態が違うため、いろいろ試してみると面白い印象の写真を写すことができます。

 下の例では、ホワイトバランス(WB)を変えて撮影してみました。写真の色味が変わると、印象も変ります。

WB:オート
WB:太陽光
WB:曇り
WB:日陰
WB:電球
WB:蛍光灯

 また、あえて色のないモノクロで撮影すると、重厚感や渋さなどが表現できます。

通常
モノクロ

 撮影データをJPEGだけではなく、RAWデータも同時記録しておくことで、撮影後にホワイトバランス(WB)などの色味、仕上がりのテイストなどさまざまな微調整が可能になります。調整は自宅のPCやカメラ内現像機能で行なえます。

 寒風吹きすさぶ冬場の長時間におよぶ撮影は辛いですし、何カットも長時間露光(長秒撮影)をしていると、撮影の待ち時間も多くなります。RAWデータを上手に活用すると短時間でテンポよく撮影ができますので活用してみてはいかがでしょうか。

作品

工場の配管や階段などがおりなすさまざまな線を画面に点光源が入らないように望遠で切り取りました。あえて暗めに露出補正しISO6400の高感度で背後にある蒸気の形も再現。
画面右上がちょうど空港から出発する航路だったので、飛行機の軌跡を一緒に写し込みました。EOS 5D MarkVの多重露光機能を利用し、同じ場所で11回露光を重ねています。
巨大なダクトから立ち上る蒸気を露光時間8秒で流し、肉眼には見えない写真的な表現で撮影しました。
引き込み線のレールと踏切が画面に入る位置に三脚をセットし撮影。背後にある蒸気が広がる感じで流れています。露出補正をせずに明るい印象で撮影できました。
間近にあるタンクを見上げ撮影。タンクの脇や斜め後ろから照明があたり、メタルでできたタンクの光沢が美しい。
煙突から立ち上る煙をISO6400の高感度で撮影。肉眼で見たときの蒸気の印象を再現しました。
フェンス越しに配管が大きくうねっていたのが印象的だったので、近くまで寄って撮影。迫力を表現できました。

(協力:ベルボン株式会社)

西村春彦

(にしむら はるひこ)1969年秋田県由利本荘市出身。日本写真芸術専門学校卒業後、朝日新聞社出版写真部委託カメラマンを経てフリーに。雑誌・出版系や広告、WEBなど各メディアで活動中。カメラ雑誌などでは撮影テクニック解説なども手掛ける。写真にならないモノでも写真にする意気込みで写真職人を目指し、プロフェッショナルとして日々精進している。ブログ:http://n-haruhiko.sblo.jp/