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気泡や水滴をレンズにしてみよう

〜小さな玉の中に浮かんだ世界
Reported by 上原ゼンジ

 「宙玉レンズ」を始めとして、透明な丸いものをレンズ代わりに撮影する、という方法は今までにいろいろ試してきた。素材で言えばソーダガラス、クリスタルガラス、光学ガラス、天然水晶、練り水晶、それからアクリルや高分子ポリマー等々。それぞれで描写が変わるのが、やっていて面白い。そして今回は小さいから撮影がちょっと難しいが水滴をレンズにする方法にチャレンジしてみたい。

これは気泡に映った人形。それぞれで映る向きが微妙に違う点に注目 宙玉レンズを使った写真。中央に球が1つあるだけだが、これがたくさんになったらどうなるのか? というのを今回は見てみたい。ニコンD700+コシナ ディスタゴン T* 2.8/25+接写リング+宙玉レンズ
宙玉レンズを装着したリコーGR DIGITAL III。アダプター(GH-2)にステップアップリング(43mm→49mm)を付け、49mmのラバーフード(HOYAマルチレンズフード)の内側に宙玉レンズを装着した

 水滴をレンズにするといった場合にまず考えられるのは、横から撮るか上から撮るかということ。たとえば横から撮るのであれば、葉っぱの上の水滴を横から狙う、あるいは葉っぱの先からこぼれ落ちそうな雫を狙うという方法がある。さらに撮影は難しくなるが、雫がこぼれ落ち、空中に浮かんだ状態で撮影する方法もある。

 また上から撮影する場合はガラス板の上に水滴を散らし、ガラス板の下に被写体を置くという方法が考えられる。しかしこの場合は被写体がガラス板の下に入るようなものに限定されてしまうという問題がある。ということはやはり横か。でも葉っぱやガラス棒が画面の中に入り込んでしまうというのが気に食わない。ということで難易度は高いが、まずは空中に浮かんだ水滴をレンズ代わりにする方法を紹介してみたい。

 水滴を垂らすには、まずスポイトなどが必要になる。ただしなるべく同じ位置を通過するようにしないとピントが合わなかったり、画面の外を通過してしまったりするので、スポイトは固定しておいた方がいい。ただ、スポイトだと水が入る量が少ないので、何かいいものはないかと探していて次に試してみたのは蛇口付きの容器。これはアウトドアや非常時用のものがけっこう安く売っている。あるいは焼酎やワインを入れておく容器なんかにも蛇口付きのがありますね。

スポイト。と言っても石油ストーブ用なので、ちょっと大きい こんな感じのポリタンクはホームセンターや100円ショップで入手可能。これも手軽でいいと思う

 ただ、水がポタポタ落ちる量の調整がいまいち難しいなと思っていたら、このポタポタ量(滴下量)をコントロールできるものが存在していることを知った。点滴の時のアレです。看護婦さんが調整しているあの器具は「ローラークランプ」と言うそうだ。「ローラークランプ」で検索するとすぐにヒットするが、私はDIY店で入手した。

これが「ローラークランプ」。何に使用するものなのかは分からない。ペットボトルに接続して使っている

 撮影にはストロボを使用。暗い状態でシャッターを切り、ストロボが光る一瞬で水滴を止める。最近のカメラはかなりシャッタースピードが速いものがあるけど、シャッタースピードでコントロールするのではなく、ストロボ光を使うのがオススメ。ストロボを使った方が、水滴をカチッとした感じに写すことができる。

 その他のポイントとしては、フォーカスはマニュアルで、あらかじめ合わせておく。ポタポタ水滴を垂らしながら懐中電灯で照らすと点ではなく残像で線に見える。その線にフォーカスを合わせるのは意外と簡単。あとは水滴を垂らしながらとにかく連写。そして後からちゃんと写ってる写真をセレクトするという方法を採った。フィルムの時代だったら、お金もかかってしまうしちょっとできないやり方だが、下手な鉄砲も数打ちゃ当たる方式が採用できるのがデジカメのいいところだ。

 少し広めに撮影しておき、後からトリミングするのが簡単でいいと思う。撮影範囲が広い方が水滴が写る確率も高くなる。ちょっと試してネットで見せたい、なんていう場合は解像度が高い必要もないし、被写体との距離を開けて撮影すればかなり簡単に撮れる。別にローラークランプなんて買わなくてもいいから、ぜひ手軽に試してみて欲しい。

こんな感じで柄のある紙や布地をバックにすると、それが水滴の中に映り込む。受け皿の方にはウォータークラウンができている
上に写っているのはスポイトの先。こんな感じで連続して水滴を垂らしながら、連写していく 左の写真をトリミング。ニコンD300+タムロンSP AF 90mm F2.8+ニコン スピードライトSB-800 / マニュアル露出 / 1/320秒 / F16
ニコンD300+タムロン SP AF 90mm F2.8+ニコン スピードライトSB-800 / マニュアル露出 / 1/320秒 / F16(撮影後にトリミング) ニコンD300+タムロン SP AF90mm F2.8+ニコン スピードライトSB-800 / マニュアル露出 / 1/250秒 / F8(撮影後にトリミング)

・ストロボ光の調整

 内蔵ストロボでうまく光が回らなかったり、影ができてしまうような場合は、外部ストロボを使ったり、内蔵スロトボの光を調整するといい。これはアルミ製のフレキシブルチューブを使った例。

 

 

水滴に近づいて撮るには?

 水滴に近づいてじっくり撮影したいという場合はマクロ撮影の必要がある。コンパクトデジタルカメラであればチューリップマークのマクロモードに。また一眼レフカメラの場合はマクロレンズ、クローズアップレンズ、接写リング、リバースアダプターなどを使うと近づいて撮ることができる。私の場合、基本はマクロレンズの使用が多いが、接写リングもよく使う。

 接写リングというのは、レンズとボディの間を開けるためのアダプターのことで、この距離を広げていくことで、より小さい被写体の撮影が可能になる。接写リングの代わりにベローズ(蛇腹)を入れると、さらにレンズとボディの距離を広くできるので、水滴を大きく写したい場合などにいい。

ニコンのオート接写リング。違う厚さの接写リングを組み合わせることで、撮影倍率の調整をする 3種のオート接写リングをボディとレンズの間に取り付けたところ
ニコンのベローズ(PB-6)。接写リングの場合は長さの違うリングを付けたり外したりするのが面倒だが、このベローズの場合は、長さが可変で調整できるのがいい。ただし、倍率は高くなり、かなり小さい被写体向けになる

 また、リバースアダプターはレンズを逆さまに取り付けるアダプターだ。ボディにアダプターを取り付けると、レンズの前側のフィルターネジをアダプターにねじこめるようになる。ということはレンズの前側がボディーに取り付けられるので、普段はボディーに隠れているマウント側が、ムキ出しになるという不思議な撮影法になる。

これらの製品はサードパーティー製だとけっこう安いものがあって手軽なのだが、レンズとボディの間が空いてしまうために絞りが連動しない場合がある。特に最近の絞りリングのないレンズの場合、絞りが効かないので注意が必要。

OLYMPUS PEN Lite E-PL1にサードパーティー製のリバースアダプターを取り付け、レンズを反対に付けてみた レンズが逆さまに取り付けられ、マウント側がムキ出しにになった状態。接写しているうちに被写体にぶつからないように注意!
E-PL1にリバースアダプターでM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8を逆付けした状態で10円玉を撮影。かなりの拡大率になるが、絞りは連動しないし、撮りやすいとは言えない
落下直前の水滴を撮影。ニコンD300+タムロン SP AF 90mm F2.8+ニコン スピードライトSB-800 / マニュアル露出 / 1/320秒 / F11 小皿の上に水滴を落としたところ。コンパクトなデジカメでもこんな感じで撮影可能。リコーCaplio GX100+ニコン スピードライトSB-800 / マニュアル露出 / 1/160秒 / F7.9
蛇腹を使うとこれだけ寄れる。ニコンD300+タムロン SP AF 90mm F2.8+ニコン オートベローズ これも蛇腹を使って撮影。ニコンD300+タムロン SP AF 90mm F2.8+ニコン オートベローズ

水滴をレンズにして撮る方法

 以上のやり方は今までに試してきた方法なのだが、これから書くことは、今回初めての実験だ。水滴をガラスに付けるなら上か下、と思い込んでいたのだが、「垂れてもいいから、ガラスの側面に付けてみたらどうか」という発想で試してみることにした。ただしガラスだと重たいし、落として割れても嫌なので、アクリルの透明板を使うことにした。

 ようするに宙玉レンズの透明球の代わりに水滴をくっつけるイメージだ。宙玉レンズの場合、透明球にピントを合わせるためチップスターの筒を間に入れて距離を開けているが、同じように水滴にピントを合わせるためにレンズと少し離してアクリル板を取り付ける。また、水滴はスプレーを使ってアクリル板に付けるのだが、カメラが水浸しになるのは嫌なので、アクリル板は大きめにカットした。

 そして近いところにピントを合わせたいので、マクロ撮影のやり方で水滴にピントを合わせる。というか水滴自体ではなく、水滴に映りこんだ世界の方にピントを合わせる。で、撮ってみたのが以下のような写真。確かに大量に水を吹きつければ垂れてしまうが、けっこうくっついてるもんですね。この方法はありでしょう。もっと前にやってみれば良かった。

ケンコー製のマルチホルダー用アダプターリングに両面テープで透明アクリル板を取り付けた。レンズと板の間の距離を調整するために延長筒が入れてある。延長筒は「エクステンションチューブ」、「エクステンションアダプター」、「保護リング」などの名称で販売されている
アクリル製の板に水滴を付け、ストライプの布を撮影。ニコンD700+AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8 G ED / マニュアル露出 / 1/4秒 / F8 アクリル製の板に水滴を付け、花を撮影。ニコンD700+AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8 G ED / マニュアル露出 / 1/40秒 / F8
アクリル製の板に水滴を付け、人形を撮影。ニコンD700+AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8 G ED / マニュアル露出 / 1/50秒 / F8 これはアクリルではなくガラスの板に水滴を付けたのだが、きれいな形にならなかったという失敗例。撥水スプレーをかけるなど、きれいな水滴にするため方法は今後研究してみたい

気泡撮影に便利なものを発見!

 水滴ではなく、気泡をレンズにできないかと思って試してみたこともある。その時はウオッカのミニボトルに炭酸水を入れたものをレンズの前に取り付けたのだが、全然ボトルに気泡が付かずに挫折してしまった。気泡が付かなかったのはその前に入っていたアルコールのせいなのか、あるいはガラスという素材のせいだったのかは分からないが、今度は塩ビやアクリルの容器を使って再チャレンジしてみようと思い東急ハンズで物色していたら、大変なものを見つけてしまった。気泡の入ったアクリル板だ。

 「これって気泡じゃん!」(そうですよ)。これさえあれば私の野望は達成できるはずだ。世界のすべてを気泡の中に閉じ込めてしまうのだ(それはできないかも)。まあ良い、とりあえず本日は新たなる友を家に連れて帰ることにしよう(お金は払ってね)。と脳内で内なる自分と対話をしながらアクリル板を買って帰った。

 そのアクリル板というのは下の写真のようなもの。気泡はすごく小さなものだけど、その1つ1つにちゃんと像が映っている。そして不思議なのは水滴の場合は景色が逆さまに映るのに対し、気泡の場合は天地が逆転せずに映るということ。なぜでしょう?

これが気泡入りのアクリル板。東急ハンズの新宿店で購入した。グレーの枠は弾力のあるテープ。保護のためにつけてある

 まず水滴の場合はすごく焦点距離が短いので、いったん焦点を結んでひっくり返った像が目に映る。光というのは、空中よりも水中やガラスの中の方が進むスピードが遅くなるから屈折するそうだけど、気泡の場合はたぶん屈折の方向が逆になるわけだな。たぶんそんなことだと思うけど、詳しくはおうちの人に聞いてみてください(笑)。オジさんは通りすがりの者なので、これで失敬します。

 で、工作はその気泡入りアクリル板をマジックテープでフィルターのアダプターに留めるという方式をとってみた。なぜこんなことをしたかと言うと、アクリル板を固定してしまうと、撮る写真のすべてで気泡の位置が同じになってしまい不自然だからだ。マジックテープだったら剥がして逆さまにしたりズラしたりということができる。

 マジックテープ以外にも磁石やゴムを使う方法を考えたのだが、コストや工作のしやすさからマジックテープ方式を採用。ただやってみたらわりとガッチリ着いてしまったので、もう少しテープの面積を減らすなどの改良が必要だ。

 写った感じは全然アクリルっぽくないですね。気泡なのか水滴なのかもよく分からない不思議な写真になった。気泡の方にピントを合わせるとバックがボケるのも宙玉と同じで良い感じ。この撮影法もありだな。ここに「泡玉レンズ」の誕生を宣言します!

 この泡玉レンズのいいとろこは、炭酸水を用意しなくてもいいところ。一度炭酸でやろうとして失敗しているが、やっぱり常に良い感じの気泡を発生させるにはスキルを要する。そういう意味では凄く楽だ。

 一方、先に紹介した水滴を使った撮影法にも魅力を感じている。いちいち水滴を付ける作業というのは面倒だし、街中でやる場合には多少人目も気になる。しかし、二度と同じような配置の水滴にはならないので、写真に偶然性を取り入れるという意味では、やっていて面白い。

 とりあえずまだ実験段階のものを発表してしまったが、今後とも気泡を使った「泡玉」、水滴を使った「水玉」、そして透明球を使った「宙玉」は「三大玉シリーズ」として、突き詰めていきたいと思う。

アクリル板の裏面にはマジックテープを付けた。マルチホルダー用アダプターリング(ケンコー)側にもマジックテープをつけてレンズと接続。気泡の位置が同じになってしまわないように、たまにズラしながら撮影
アクリル板をレンズに取り付けたところ。スプレーで水滴を吹きつけながら撮影をするよりは、ずっと楽。ただしホコリがついていたりすると映りこんでしまうので注意が必要 横から見るとこんな感じ。レンズとアクリル板の間はエクステンションチューブで空ける。接写リング使用
気泡入りアクリル板を使ってイルミネーションを撮影。宙玉と同じようにバックはかなりボケる。ニコンD700+コシナULTRON 40mm F2+接写リング / マニュアル露出 / 1/13秒 / F8 気泡入りアクリル板を使ってイルミネーションを撮影。ニコンD700+コシナULTRON 40mm F2+接写リング / マニュアル露出 / 1/5秒 / F8
気泡入りアクリル板を使って東京タワーを撮影。ニコンD700+コシナULTRON 40mm F2+接写リング / マニュアル露出 / 1/8秒 / F8 気泡入りアクリル板を使って鉢植えの花を撮影。ニコンD700+コシナULTRON 40mm F2+接写リング / マニュアル露出 / 1/20秒 / F8
気泡入りアクリル板を使ってライトアップされた建物を撮影。ニコンD700+コシナULTRON 40mm F2+接写リング / マニュアル露出 / 1/20秒 / F8

・作例写真はすべてRAWで撮影し、Photoshop Camera RAWを使って色調整。Web用にリサイズの後、適宜アンシャープマスク処理を施しています。

【告知】
 2011年末に、「写真の色補正・加工に強くなる 〜レタッチ&カラーマネージメント知っておきたい97の知識と技」(技術評論社)という本を出しました。印刷で思い通りの色にならない、と悩んでいるような人に向けた本です。製版の技などにも言及していて、実践で役立つものと自負しています。






実験写真家。色評価士。レンズを自作したり、さまざまな写真技法を試しながら、写真の可能性を 追求している。また、カラーマネージメントに関する執筆や講演も行っている。著作に「ボケ/ブレ不思議写真術―カメラプラス」、「うずらの惑星―身近に見 つけた小さな宇宙 カメラプラス」(ともに雷鳥社刊)などがある。
上原ゼンジ写真実験室
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2012/1/17 00:00