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ライブビュー時代の撮り方講座:滝を撮る

Reported by 西村春彦

D5100 / AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR / 約6.8MB / 3,264×4,928 / 1/3秒 / F16 / 0EV / ISO100 / 48mm

 四季折々の自然の表情をとらえることができるネイチャーフォトは、誰もがカメラを向ける撮影ジャンルの1つです。その雄大でダイナミックな風景は「大自然に分け入らないと撮影できない」と敬遠されがちですが、初心者でも撮影しやすい被写体の1つに“滝”があります。

 滝は観光地や景勝地、名所として周辺が整備され、駐車場を備えている場所もあります。公共交通機関の便が良い場所も多いため、誰でも気軽に行くことができ、かつダイナミックで作品性の高い写真を撮ることが可能な撮影スポットといえます。

 今回は、滝撮影の基本的な方法や、作品の印象をよりアップするための応用テクニック、ライブビュー機能を活用した便利なテクニックなどを解説していくことにしましょう。

必要なカメラ機材

 滝は、新緑のまぶしい春、暑さから涼を求める夏、色とりどりの紅葉が織りなす秋、厳しい寒さで凍てつく氷瀑の冬と季節によって表情が異なるため、1年を通して撮影を楽しむことができる魅力的な被写体です。

 滝撮影にはいくつかのポイントはありますが、実は基本的にはこれといって難しいテクニックがあるわけではありません。また撮影する滝によって撮影環境は変わりますが、晴れていても、曇り空でも、撮影条件が天候に左右されにくく、さらにとても絵にしやすいため、コツさえつかめば初心者の方でも素晴らしい写真を撮りやすい被写体でもあります。

 今回はニコン「D5100」のダブルズームキットをモデルに解説しますが、用意するカメラは一眼レフカメラでもミラーレスカメラどちらでも構いません。のちほど詳しく解説しますが、長時間露光やライブビュー撮影に加え動画撮影も行なうとすると、カメラの予備バッテリーはいくつかあると安心です。

D5100。標準ズームレンズ「AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR」を装着

 レンズは、滝の規模(落差や幅などを含めた大きさ)や、カメラから滝までの距離、また滝の全景や部分アップといった各シーンに対応することを考えると、極端にいえば超広角から超望遠まで……というところですが、まずは一般的な広角から望遠までカバーできるレンズ(ダブルズームキットや高倍率ズームレンズ)から始めてみると良いでしょう。基本的な撮影では絞りを絞り込んでの撮影になるため、レンズは開放絞り値が暗くても特に問題ありません。

 またそれぞれ使用するレンズごとにレンズフードも用意します。メーカーによってはレンズフードが別売になっているものもあるので、適合するものを用意します。

 ほかに、絞りを絞り込むことでスローシャッターの効果を使用した撮影が基本になるため、三脚は必須アイテムです。ケーブルレリーズも併せて用意すると良いでしょう。ケーブルレリーズがない場合は、2秒などの短い時間でシャッターが切れるセルフタイマーを活用してみましょう。

ダブルズームキットの望遠ズームレンズ「AF-S DX NIKKOR 55-300mm F4.5-5.6 G ED VR」に付属のフードを装着したところ カメラブレ防止のためケーブルレリーズを使用

 もっとも基本的な機材は以上になりますが、さらに滝をより印象深い表現で撮影するためにあると便利なアイテムとして、NDフィルターとPLフィルターがあります。使用レンズのフィルター径に合わせたものを用意すれば、写真の表現力をアップすることができます。これらのフィルターは滝以外のネイチャーフォトでも頻繁に使用される定番フィルターなので、今回の撮影に限らず、持っておいて損はないアイテムです。フィルターについては、後ほど解説します。

 あと、あると便利なのが、クリーニングクロスやタオル、ブロアーです。さらに虫除けスプレーや虫さされの薬もあるとよいでしょう。クリーニングクロスやタオルは、滝の近くでの撮影時にカメラやレンズに付着した水滴を拭いたり、カメラを水滴から守るためにカメラを覆ったりするのに使用します。ブロアーはクリーニングクロスなどで拭き取った後やレンズ交換時のホコリを取り払うメンテナンスに使用します。虫除けスプレーや虫さされの薬は、長時間同じ場所で撮影するネイチャーフォトにおいて、特に夏場は必須アイテムとなります。備えあれば憂いなし、より撮影に集中しやすい環境を作りましょう。

滝の全景を撮る

 滝は観光ポイントでもあるので、「記念写真なら撮ったことがある」という方も多いのではないでしょうか。しかし観光途中の通りすがりでは時間も限られているため、手持ちのフルオート撮影などスナップ的に撮ってしまいがちです。

 そんな写真を見返してみると、どことなく印象が薄いような、何となく見たときの感動が伝わらない、表現しきれていないような写真になってしまったという経験があるのではないでしょうか。実はそこに今回の滝撮影の基本が隠されているのです。

 では、なぜ滝を手持ちでスナップ撮影すると印象が薄く表現力の浅い写真になってしまうのでしょうか。それは、滝撮影の主題が「水の流れ(動き)を表現する」ところにあるからです。

栃木県日光市にある華厳の滝で撮影。左から「フルオート」、「プログラムオート(P)」、NDフィルターを使用し「絞り優先オート(AまたはAv)」モードでスローシャッターに設定し撮影した

 今回訪れた華厳の滝は落差約97m。台風直後ということで水量が普段の約5倍(およそ1秒間に9トン)の水量だったため、フルオートやプログラムオートでもそこそこ迫力のある絵になっています。とはいえ、ごく普通に撮れてしまったという感じは拭えません。

 “ごく普通”と感じる理由は、どちらもカメラが1/125秒前後のシャッター速度を選択したため、水の流れが中途半端にぶれて写ったからです。スローシャッターで撮影した写真は水の流れが完全にぶれているため、淀みなく流れ落ちる水流として表現でき、水量の豊富さや豪快さも捉えることができています。

今度は華厳の滝よりも落差が低く、水量の少ない別の滝(神奈川県南足柄市・夕日の滝、落差約23m)で比較。左のフルオートではシャッター速度が1/60秒で撮れたため、水がまばらに落ちている感じだ。シャッター速度1秒で撮影した右の写真は、水の流れがシルキーで清涼感を感じる写真になった

 動く被写体の表現方法は、動きを“止める”か、“ぶらす”か、どちらかを選択しなければなりません。滝は上から下に水が落ちる豪快さという点では「水しぶきを止め、水を形として捉える」のがよいのですが、1/1,000秒以上の高速シャッターでないと水しぶきを止めることはできません。上の比較作例でもわかるように、多くの撮影条件では高速シャッターとスローシャッターの中間域になってしまうため、水を止めることができず中途半端なぶれになってしまいます。

 そこでまず滝の全景を撮影する場合、流れ落ちる水の流れとその勢いの両方を表現するテクニックとして「スローシャッターで水の動きを“ぶらす”」のが、水流の時間的な経過までをも写す写真的な表現方法として、最も効果的かつ基本的な撮影方法ということになります。

 これは滝の規模や水量などにもよりますが、多くの滝の場合はスローシャッターで水の流れをぶらし、その軌跡が重なり合うことで、流れの激しさや水量の多さや絶え間なく流れ落ちる水の流れの美しさといった写真的な表現効果を増し、印象をより高めることができます。そのため、カメラは手持ちでの撮影ではなく、三脚撮影が基本になるのです。

三脚にカメラを取り付け、じっくりアングルを決める

 撮影モードがフルオート(モードダイヤル上の緑のカメラマーク)などカメラに任せきった撮影では、カメラは手ブレを起こさないことを優先したシャッター速度域で露出を自動設定します。

 そのため、好天で周囲が開けた明るい状況ではシャッター速度が速くなり、水の流れが止まったように写ってしまい、水量も少なく見えます。そこまで明るくない状況でも、水の流れは中途半端なぶれになってしまい、どことなく迫力に欠けてしまいます。さらに暗いと、内蔵ストロボが勝手に光ってしまうこともあります。

 以上の理由から、滝を撮影する場合はスローシャッターでの撮影がしやすいモードを選ばなければならないのです。

周囲を木々に囲まれ光が射し込まない、やや暗い滝(栃木県日光市・竜頭の滝、下流部分)を撮影。フルオートではストロボが発光するため、「ストロボ発光禁止オート」(左)、「プログラムオート(P)」(中央)のカメラ任せと、「絞り優先オート(AまたはAv)」で絞り込んでスローシャッターで撮影した写真(右)を比べてみよう。発光禁止オートは自動的に感度がISO450に上がり、1/250秒というやや高速シャッターとなった。右の2枚はISO100に設定したが、プログラムオートはプログラムシフトを使わず撮影したため1/50秒で半端な印象。絞り優先オートではさらに絞りをF22に設定したため、1/2.5秒のスローシャッターを切ることができた

シャッター速度の見極めとNDフィルター

 スローシャッターで滝の水をぶらすと水の流れを軌跡で表現できますが、どのくらいのシャッター速度が良いかは、撮影する滝の規模や落差、水量、明るさなどの撮影条件によって異なります。速くても1/8秒前後を上限とし、それより遅いシャッター速度でないときれいな軌跡として写すことができません。

 経験上、シャッター速度の設定範囲は1/8秒前後〜4秒程度を目安に撮影すると、白い糸を垂らしたような美しい水の流れとして撮ることができます。シャッターを開ける時間が長いほど軌跡を長く写すことができ、その軌跡が重なり合うことで絹の衣をまとったような、滑らかな水の流れとして写すことができます。

・シャッター速度ごとの比較
 1秒から1/250秒の間で2段ずつ変え、流れ落ちる水の写り方を比較してみました。

1秒(左)では完全に水の流れがぶれ、全体的に滑らかな水の流れだ。1/4秒(中央)では1秒よりも周囲の水しぶきのボリュームが少なく写ってしまったが、流れ全体のぶれ具合は途切れなく滑らかできれいだ。しかし1/15秒(右)になると、水のぶれる幅が少なくなるため、流れ落ちる水が一部途切れ途切れになり、水しぶきの形が見え始めた
さらに1/60秒(左)では、より水の流れが形としてがわかるようになったが、中途半端にぶれていることが見て取れる。1/250秒(右)は高速シャッターにかなり近いが、それでも水しぶきを完全に止められないことがわかる

 スローシャッターで撮影するには、まず感度設定をカメラの最低感度(ベース感度)に設定します。多くのカメラはISO100が常用の最低感度ですが、機種によってはそれ以下かそれ以上ということもあります。なので、ここでは「そのカメラの最低感度」ということにしておきます。

 撮影モードは、「絞り優先オート(AまたはAv)」で、絞りを最小絞り側に絞り込んで撮影すると、おのずとスローシャッターと呼ばれるシャッター速度域になるため簡単です。

 シャッター速度を意識して撮影するのに、なぜ「シャッター速度優先オート(SまたはTv)」に設定しないの? と思われるかもしれませんが、これには理由があります。それは撮影条件によって、必ずしも撮りたい(設定したい)シャッター速度で撮影することができないからです。

 特に被写体が明るい光線状態で過度にスローシャッターの設定をしてしまうと、絞りの最小絞り値の限界を超えてしまい、うっかり露出オーバーになってしまう危険性があるのです。露出補正を使用する場合、その補正量によりさらに露出オーバーになりやすい条件となり、その都度シャッター速度の設定を変更しなければならないため、設定操作に手間がかかってしまいます。

 そのため、「絞り優先オート」で「絞り込みながらシャッター速度にも気を配る」というのが初心者でも失敗が少なく、手間もかからない設定ということになるのです。

 ただし、ここで注意しなければいけないのは、単純に絞り優先モードで闇雲に絞り込めばスローシャッターになるという乱暴な捉え方ではいけないという点です。この撮影で重要なことは、常にどのくらいのシャッター速度で切ることができるかという露出値の確認をしながら撮影することがポイントになります。設定した絞り値と自動的に設定されたシャッター速度の数値を、必ず相互に確認しながら撮影しましょう。

 さらにちょっとだけ細かい話をすると、絞りを絞り込んだ撮影で注意しなければいけないこととして「小絞りぼけ」(回折現象)があります。絞り込んで絞りの穴が小さくなるほど通過する光が絞り羽根に巻き込まれて起こる現象で、それにより写真の解像度が低下してしまいます。

 最小絞りで起きやすいのはもちろん、レンズやカメラによって度合いは変わりますが、経験上、APS-CセンサーのカメラではおおむねF16以上に絞ると写真に現れます。そのためF16くらいまでに留めて撮影したほうが、シャープさを損なわずに撮ることができます。

 そうするとスローシャッターが切れない状況が多くなってしまいますが、そこで活躍するのが「ND(減光)フィルター」です。いわばカメラにサングラスをかけて光の明るさを抑えるというはたらきがあります。

 一般的には、露出値に置き換えて1段分(ND2)、2段分(ND4)、3段分(ND8)といった数種類があります。私のオススメとしては、3段分のND8がいろいろなシーンで活用しやすく便利だと思います。常にカメラバッグの中に入れておくと安心でしょう。同じく風景撮影の定番フィルターとしてはPL(偏光)フィルターもあり、こちらも後で解説します。

今回はマルミ光機の「DHGライトコントロール8」(左)と「ネオMC-ND4」(右)を使用 ND4フィルターを装着したところ

・NDフィルターの使用例

 明るい環境にある滝の流れで、絞りをF16にし、NDフィルターなし(左)と、ND8フィルターを装着した状態(右)で比べてみましょう。NDフィルターなしで撮影したときは雲間から太陽が出ていたので、部分的に直接光が射している状態です。撮影時に雲の動きがあったため厳密に同じ光線状態ではありません。この状態でISO100・絞りF16(-0.3補正)に設定すると、シャッター速度が1/40秒で切れました。このような光線状態でもスローシャッター撮影はできないことになります。つまり、順光で滝にもっと光が当たっている状態では、絞り込んでもこれ以上の高速シャッターになってしまうことになります。ぶれ具合のイメージは、上にあるシャッター速度ごとの比較写真をご参照ください。

NDフィルターなし ND8フィルター装着

 同じ光線状態で3段分減光できるND8を装着すると、1/5秒のスローシャッターで撮影することができる計算になります。この比較作例では、ND8フィルターを装着したところで太陽が雲に隠れて暗くなってしまい、同じ撮影条件ながらシャッター速度は1/1.3秒になりました。明るい環境ではちょっとした天候の違いでシャッター速度が変わることもおわかりいただけると思います。

PLフィルターで表現の幅を広げる

 偏光効果を持つPLフィルターは、風景写真において空の色を深くし、青空と雲とのコントラストを高めたり、水面やガラスなどの反射(写り込み)を抑えたり、木々の葉や岩場の余計な反射(照り)を抑え、被写体本来の色を再現したいときなどに使用します。

 PLフィルター(円偏光フィルター)はカメラに取り付ける後枠とクルクル回転する前枠に別れていて、ファインダーやライブビュー画面を見ながら前枠を回し、効果を確認しながら撮影します。その偏光の効果は光の向きや反射面の角度など、撮影条件によって必ずしもフルに発揮できるわけではありません。

今回はマルミ光機の「DHGスーパーサーキュラーP.L.D」を使用 同フィルターの使用例。前枠を回して効果を調節する

 最も効果が発揮される撮影条件は、青空を深い青にする場合で、被写体にカメラ向けた方向に対して90度の角度に太陽があるときです。また水面やガラスの反射を抑える場合は、反射面に対して30〜40度でカメラを向けたときに効果が発揮されます。

 PLフィルターは装着しただけで約2段ほど露出がアンダーになってしまうため、NDフィルターの代わりとしても用いられがちですが、本来は偏光効果のために使用するもの。どちらも用意しておきましょう。

 今回の比較では「反射の除去」というPLフィルターの用途のほんの一例を紹介していますが、これからの紅葉の季節、木々の葉の反射を抑えて紅葉の色を引き立てたり、青空の色を引き立てたり、岩肌の反射を抑えてコントラストを高めるなど、さまざまな効果を得られるお役立ちフィルターです。

・岩肌の反射を抑える

PLフィルターなし PLフィルター効果0%
PLフィルター効果50% PLフィルター効果100%

 PLフィルターを装着していない状態と、PLフィルターを装着して効果が0%、50%、100%の状態で、滝の岩肌がどのように写るか比較しました。フィルターなしでは岩肌の反射(照り)が確認できます。一方フィルターを装着し、効果0%では岩肌の反射(照り)が強く、50%ではやや抑えられ、100%では反射が除去できました。

・水面反射を抑える

 PLフィルターを装着していない状態と、PLフィルターを装着して効果が0%、50%、100%の状態で、今度は水面反射を比較しました。フィルターなしでは水面の反射が確認できます。一方フィルターを装着し、効果0%では水面の反射が強く、50%ではやや抑えられ、100%では反射が除去でき、全体的なコントラストが高くなりました。

PLフィルターなし PLフィルター効果0%
PLフィルター効果50% PLフィルター効果100%

三脚の選び方・使い方

 続いては三脚について解説します。滝撮影に必須の三脚は、撮影に使用するカメラとレンズの組み合わせで、いちばん重い時の総重量に耐えるものを用意します。三脚のスペックをよく確認してみましょう。

 取り付ける機材の総重量に見合わないものや、脚が細すぎるものは、ちょっとした振動でもカメラぶれを起こしてしまう原因になります。可搬性ばかりに気を取られず、しっかりとした三脚を選ぶのがポイントです。

 撮影時は、まず撮影しやすい高さに脚を伸ばし、しっかり脚部を広げ、センターポールが垂直になるようにセッティングします。ゴツゴツした岩場などの不安定な場所では、それぞれの脚の長さを調整してセンターポールが斜めにならないよう十分に注意してください。そのままでは三脚のバランスを崩す原因になり、ふとした拍子にカメラを倒してしまうことにつながります。

 特に不安定な場所では、3本の脚がしっかり開いた状態になっているか常に確認することが大事です。岩場では脚先の接地面が滑りやすい岩の頂上付近になっていないか、ちょっとした振動で接地面からズレてしまわないか、といった確認も重要です。

柵ギリギリまでカメラを寄せたい場合、2本の足を柵に乗せてセンターポールで支える方法もある もちろんこの場合もセンターポールの垂直が大事

 カメラを取り付ける際に重要なのは、画面の水平垂直をキッチリ合わせること。自然風景では都市のように人工的な構造物が少ないため、垂直線を合わせることが難しくなります。海のように水平線を合わせる対象物もありません。そこで活用したいのが水準器です。

 最近のデジタルカメラには電子水準器を搭載している機種もありますし、カメラのアクセサリーシューに取り付けるタイプの水準器も店で売っています。三脚によっては、雲台部分に水準器が搭載されている便利なものもあります。

 今回使用したベルボンの三脚「ジオ・カルマーニュE645」は、4段のカーボン三脚にしっかりと安定感があるクイックシュータイプの雲台がセットになっています。シュープレートを装着する部分には横位置用と縦位置用それぞれの水準器が付いており、その視認性も高く、画面の水平垂直を素早く出すことができ便利です。

ジオ・カルマーニュE645(10万4,790円)。全高169cm、重量2.37kgのカーボン三脚だ 雲台部の2軸水準器

 もし、水準器が用意できなかった場合は、ライブビュー撮影画面のグリッド線表示や、ファインダー内に表示されている測距点の配列などを活用しながら、画面の隅々まで広い眼で見て、自分の心の水平垂直(いわゆる感覚)で、画面の傾きを調整しましょう。

ライブビュー撮影時のグリッド表示を活用(D5100) D700の電子水準器を活用。この状態ではわずかに左へ傾いている

 また、三脚撮影時は、カメラやレンズの「手ブレ補正機能」を必ずオフにします。スローシャッターの撮影時に手ブレ補正機能がオンになっていると、ミラーショックや風の影響による微細な振動で手ブレ補正機構が誤作動し、逆にカメラブレを引き起こす原因になってしまいます。

 加えて一眼レフカメラの場合、機種によっては「ミラーアップ撮影」が可能な機種があります。ケーブルレリーズとミラーアップ撮影を併用することで、さらにカメラブレを抑えた撮影が可能になります。

ピント合わせと構図

 一眼レフカメラでは光学ファインダーとライブビュー撮影のどちらでも構図を決め、ピント合わせが可能です。しかし光学ファインダーは一部の高級機種を除いて視野率が100%未満になっており、ファインダーでは見えていなかった余計なものがわずかに写ってしまうことがあります。

 いっぽう撮像素子を使ったライブビュー撮影なら、実際に写る範囲をそのまま液晶モニターで確認できるため、画面全体をキッチリと構成して撮影することができます。ただ、撮像素子と液晶モニターを使いっぱなしで電力の消費が大きくなる傾向にあるため、じっくり撮影する場合は必ず予備バッテリーを用意しましょう。

ピント確認がしやすいライブビューだが、光学ファインダーでの撮影より電池は消費しやすい

 一眼レフカメラでは、光学ファインダーとライブビュー撮影を上手に使い分けることで電力消費を抑えた撮影ができます。まず光学ファインダーで構図とピントを合わせ、次にライブビューで画面の端々に余計なものが入っていないか確認し、もし入っている場合はズームリングを操作するなどして画面から排除します。

 同時に被写体にしっかりとピントが合っているか、拡大表示で確認します。手前にある木々や岩なども画面に入れ、双方にピントを合わせたいという場合でも、ライブビューで被写界深度(ピントが合っているように見える範囲)を確認すると便利です。

 滝を全景で撮影する場合は、ライブビューのAFで滝の流れにしっかりとピントを合わせた後、AFからMFに切り替えてピントを固定します。そして、光学ファインダーでの撮影に切り替えてシャッターを押すという流れで撮影すると、バッテリーの不要な電力消費を防ぐことができます。少々面倒な作業が続きますが、慌てずじっくりと滝を撮影するには、いちばん確実な方法といえます。

 光学ファインダーを持たないミラーレス機の場合は、背面モニターでの撮影よりも、電子ビューファインダーを使用した方が、表示画面が小さいため消費電力を少なくすることができます。

(参考)D5100のファインダー内(視野率約95%)をコンパクトデジカメで撮影 ライブビューに切り替えると、ファインダーではフレームアウトしていたはずの手前の柵などが見えた

 次に構図について解説します。滝の全体像を周辺の様子とともに風景的に撮影する場合は、横位置での撮影になりますが、そうすると画面内での滝の大きさは小さくなってしまいます。

滝を中心にして周囲の雰囲気を入れて撮影。極めて普通の構図になってしまった 縦位置にしてみても、横位置と同じ焦点距離では画面上の滝の大きさは変わらない

 滝自体を主題にする場合、縦方向に長い滝では縦位置にして、ズームを操作しながら画面の隅々に眼を配り、写し込む範囲を決めます。すると滝が画面に大きく写るため、より滝の迫力を増すことができます。

周囲の木々の緑を画面にできるだけ入れないようにして、滝の流れと周囲の岩場を大きく写すことで、荒々しさと迫力を増す表現ができた。

 同じ滝でも、同じ場所から部分アップを切り取ることで表情や印象が変わるので、いろいろ試してみるとバリエーションが増え、“組写真”的な表現もできます。

 アップで撮影する際に改めて重要になるのが、シャッター速度の設定です。最初に解説したのは、滝全体を撮影する上でのスローシャッター効果ですが、滝をアップで撮影すると、画面に水の流れが大きく写るため、流れの表現がさらに重要となります。

 ズームの望遠でアップすると画面に拡大されて写ることになるわけですが、そうすると被写体のブレも拡大されることになります。つまり、同じ画面サイズでの見かけ上のぶれの量が変わることになるのです。

 また迫力という意味では、全景のようにスローシャッターで水の流れを大きくぶらすよりも、高速シャッターで水しぶきの形をしっかり写し止める方が、画面が引き締まり表現しやすい場合があります。これらが、アップの撮影でよりシャッター速度への意識が求められる理由です。

流れ落ちる滝の下流と滝つぼから吹き上げる水しぶきをアップで撮影した。シャッター速度を1/2.5秒(左)、1/10秒(右)、1/500秒(下)で撮影し比較すると、1/2.5秒のスローシャッターも悪くはないが、1/500秒の高速シャッター側のほうが水の流れが形となって写り、迫力のある印象が表現できた。1/10秒は中途半端にぶれてしまい、パッとしない印象だ


上の作例よりもさらに望遠で、滝の上流付近をシャッター速度1/30秒(左)と1/1,000秒(右)で比較した。1/1,000秒では荒々しい水の流れが形として写ったが、1/30秒では中途半端なぶれになってしまった
画面の一部に滝の流れを入れつつ、周囲から流れ落ちる水の流れを撮影。画面隅で水の流れがぶれてしまうと単に白くなってしまうため、シャッター速度1/1,000秒で水の形を写した

 同じ滝でも撮影ポジションを変えると表情が変わります。たとえば、画面の手前に樹木などを入れると奥行きを表現することができます。この場合も、画面の中に写る滝の大きさによってシャッター速度を変えると流れの印象が変わるため、異なる表情として表現することができます。

手前に木々のシルエットを入れると、画面が引き締まり奥行き感も表現できる。画面に写る滝の大きさによって、ひっそりとたたずむ雰囲気を表現したり、豪快な印象を表現できる。写す大きさや表現したい印象によって撮影者がシャッター速度をコントロールすることが大事だ
縦位置で水の流れを大きく写し込んでみた

高速シャッターを使いこなす

 これまで解説したとおり、画面上での滝が写る大きさと、表現したい写真の印象によって、シャッター速度をコントロールすることが滝の水の流れを写すテクニックになります。

 滝の全景撮影や滝の水量が少ない場合、糸を垂らしたような滑らかな流れを表現するにはスローシャッターが基本になりますが、滝をアップにして水の豪快さや水を形として捉えたい場合などは高速シャッターで止める撮影も表現方法の1つです。

 ではここで水の流れを止めて写すためのシャッター速度について解説しましょう。

 画面に水の流れが画面に大きく拡大されるほど、ブレは拡大されて写ります。そのためしっかり止めて写すには高速シャッターで撮影しなければなりません。

 高速シャッターでの撮影は、スローシャッターでの撮影とは違い「シャッター速度優先オート(SまたはTv)」モードに設定して、シャッター速度を任意で設定した方が撮影しやすくなります。

 このとき、撮影環境(被写体)の明るさよって、またシャッター速度の設定によって感度を設定しなければなりません。撮影環境(被写体)の明るさが暗いほど、またシャッター速度が速くなるほど感度を高く設定することになります。

 感度設定に「オート」があるカメラの場合、設定したシャッター速度に応じて感度が自動的に高感度にシフトするように設定されている機種もありますが、感度「オート」がない場合は、カメラの露出表示を見ながら任意で感度設定をしましょう。

高速シャッターの1/1,000秒で撮影。曇り空であまり明るいとはいえない被写体の明るさだったので、ISO800で撮影した

 違う滝で水の流れだけを画面いっぱいにして撮影したものを拡大比較すると、1/1,000秒でも微妙にぶれていることがわかります。

画面いっぱいに水の流れを写す場合は1/1,000秒でもぶれてしまうので、キリッとシャープに写し止めるには、より高速シャッターで撮影しなければいけない(1/1,000秒で撮影) 画面いっぱいに水の流れがぶれてしまうと、写真全体が不鮮明で何が写っているのかわからない(1/40秒で撮影)

露出補正とブラケティングを活用する

 写真全体の明るさを調整する機能に「露出補正」があります。

 同じ被写体を同じ画角で撮影しても、カメラによって露出の測光方式の違いなどにより、微妙に露出値の出た目は変わってきます。また、同じカメラでも光学ファインダーでの撮影では測距点の選択位置で露出値は変わりますし、ライブビュー撮影でもピントを合わせる位置により微妙な露出値の変動があります。

 そのような理由から一概には言えませんが、標準設定になっている多分割測光で解説すると、画面の全体的に暗い色や明るさが暗い部分(陰)が多い場合、見た目や撮りたいイメージよりも写真が明るく写る傾向にあります。そのような明るく写り過ぎた場合は、露出補正をマイナス(−)側に補正します。

 また逆に、画面全体に白っぽいものや明るめの色、明るく光っている部分が多いと、写真は暗く写りがちです。写真が撮影したいイメージよりも暗くなってしまう場合は、露出補正をプラス(+)側に補正します。

 撮影直後は写真を必ず確認してみましょう。ライブビュー撮影では、露出シミュレーション機能を使って画面で明るさを確認しながら露出補正をすると、失敗を防ぐことができます。

 滝の撮影においては、樹木の葉の緑や日陰になっている部分、黒っぽい岩場などが画面に入ることが多く、若干明るく写ることがあります。どっしりとした大自然の雰囲気を強調したい場合は、露出補正をマイナス側にすることで、水の流れの白飛びを防ぐと同時に写真の重厚感を増すことができます。

日陰にある周囲が暗い岩肌の滝を撮影。露出補正なし(左)では全体的に明るく写ってしまったので、周囲の岩肌が乾いた印象に。そこで露出補正を-0.7に設定(右)して写真全体を暗く補正すると、濡れた岩肌のドッシリとした雰囲気が表現でき、締まりのある感じになった

 滝の白い流れが画面に多く入る場合は、写真全体が暗くなってしまうことが多いので、プラス側に補正するケースもあります。

太陽の光を浴びて白く輝く滝の流れを、画面に大きく入れ撮影した。露出補正なし(左)では水の流れのディテールがわかるが、全体的に暗く写ってしまった。そこで+0.7補正(右)で写真全体を明るく撮影した

 補正しすぎると水の流れが飛びすぎてしまい、わかりにくくなります。もし水の流れのディテールも残したいときは、微妙な露出補正が必要になる場合があります。写真全体の明るさのバランスもあるので、必ずしも白飛びを防ぐことが良いとは限りません。

 しかし、撮影中に現場で判断できない場合もあります。そのような時に便利な機能が、AEB(自動段階露出・オートブラケティング)機能です。

AEBは、撮影者がシャッター速度や絞り、露出補正をなど任意で設定した露出値を適正露出(0)とし、それを基準に、プラス側・マイナス側それぞれの露出補正を加えた写真も自動的に連続撮影してくれる機能です。そのプラス・マイナスの幅も任意で変えられます。

 AEBを設定すると、いちいち露出補正値を段階的に変える操作をせずに、一度シャッターボタンを押すだけで一気に露出補正を変えた段階露光ができるので便利です。機種によって、適正露出、プラス、マイナスの3カットの段階露光できるものや、5カットの段階露光ができるものなど、機能の違いがあるので確認してみましょう。

基準の露出を「露出補正+0.3」としたが、現場での判断がつかなかったためAEBを使って撮影しておき、帰宅後パソコンのモニターを見てセレクトしようと考えた。補正値の幅は0.3ステップに設定し、3カットを連続撮影した。左から基準露出、-0.3、+0.3

 AEB機能のほかにも、RAWデータで撮影しておくと撮影後に写真を細かく調整することができます。最近のカメラは単体でRAW現像ができる機種も増えてきたため、そうした機種であればパソコンを使用しなくてもRAW現像を行なえます。もちろん、パソコンでRAW現像ソフトを使用すれば、大きなモニターでじっくりと作り込むことが可能です。

 RAWデータは露出の補正だけでなく、ホワイトバランスや色調、コントラスト、ノイズ処理の設定といった、撮影時のさまざまな設定項目を撮影後に調整できるデータなので、後作業でより作品性を高める調整が行なえます。

(参考)D5100で撮影したRAWデータのサンプル(NEF形式)

動画も撮ってみよう

 近年は一眼レフカメラにもハイビジョン動画対応機種が増え、手軽に高画質なムービー撮影が可能になりました。

 写真的な撮影術では、水の流れをぶれで表現したり、写し止めて1カットとして表現しますが、流れや水音を臨場感たっぷりに記録できる動画撮影の被写体としても滝は魅力的です。三脚撮影が基本の滝ですから、そのまま動画を撮るのにも適しています。

 写真と動画の撮影表現では違いがありますが、まずは「動く写真」といった感覚で気楽に撮影してみることをオススメします。

静止画撮影のセッティングのまま、動画撮影も試してみた ニコン純正のステレオマイクロホン「ME-1」を装着

・動画サンプル
 いずれも再生時間は10秒前後。録音には外付けマイク「ME-1」(を使用しています。なお、再生に関するお問い合わせにはお答えしかねます。ご了承ください。

H.264 / 1,920×1,080 / 29.97fps / 約29MB H.264 / 1,920×1,080 / 29.97fps / 約26.9MB
H.264 / 1,920×1,080 / 29.97fps / 約26MB

さいごに

 流れる水音を聞きながらの撮影はとても心地よく、落ち着いた時間と空間に身を置くことができます。ファインダーやライブビュー画面を見ながら、目の前の滝をどのように表現するかじっくり考えて撮影してみましょう。

 水の流れを表現する大事なポイントは、表現したいイメージをシャッター速度に上手く変換し、写すことです。画面構成や構図も整理しながら、自分の感じたイメージに近づくようトライしてみましょう。

 最後に、いくつか撮影上の注意点にも触れておきたいと思います。滝や川などの水辺には、急な増水などの危険もはらんでいます。豪雨や台風などの直後は十分注意しましょう。

 また、滝つぼ付近での撮影は舞い上がる水滴で機材が濡れてしまったり、レンズに水滴が付いてしまうことが多くあります。カメラが濡れてしまうと故障の原因にもなりかねます。レンズの前玉に水滴が付いてしまうと、水滴が写ってしまい失敗写真の原因にもなります。こまめに機材が濡れていないか確認しましょう。レンズ交換時も、レンズの後玉やミラーボックス内、撮像素子を濡らさないように注意が必要です。

エレベーターで華厳の滝の滝つぼ近くに降りたが、大増水の影響でほどなくずぶ濡れに。カメラ本体はタオルで守ったものの、レンズ前面への水滴付着は避けられなかった

 ほかにも地面や岩などが濡れていて足元が滑りやすかったり、観瀑台に隣接した急な斜面や崖もありますので、機材をうっかり落としたり転んだりしないよう、無理せず細心の注意を払いながら撮影を楽しんでください。

 最後に、私がこれまでに撮影した滝写真の中からいくつかを紹介します。みなさんがお気に入りの1枚を撮る参考になれば幸いです。これからの季節ですと、紅葉と滝の素晴らしい組み合わせを写すこともできるでしょう。

EOS Kiss X2 / EF 24-70mm F2.8 L USM / 約4.9MB / 2,848×4,272 / 0秒 / F22 / +1EV / ISO100 / 55mm EOS 5D Mark II/ EF 70-200mm F2.8 L IS USM / 約7.1MB / 5,616×3,744 / 1/13秒 / F16 / -0.7EV / ISO50(拡張) / 70mm
EOS 40D / EF 17-35mm F2.8 L USM / 約3.3MB / 3,888×2,592 / 6秒 / F11 / 0EV / ISO200 / 17mm EOS Kiss X2 / EF 24-70mm F2.8 L USM / 約6.5MB / 2,848×4,272 / 1/60秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / 70mm




(にしむら はるひこ)1969年秋田県由利本荘市出身。日本写真芸術専門学校卒業後、朝日新聞社出版写真部委託カメラマンを経てフリーに。雑誌・出版系や広告、WEBなど各メディアで活動中。カメラ雑誌などでは撮影テクニック解説なども手掛ける。写真にならないモノでも写真にする意気込みで写真職人を目指し、プロフェッショナルとして日々精進している。ブログ:http://n-haruhiko.sblo.jp/

2011/9/27 12:52