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「ブレ写真」を撮ってみよう

〜意図的にブレさせる不思議なイメージ
Reported by 上原ゼンジ

 「ブレ写真」が好きだ。像の流れた写真はちょっと不思議なイメージになる。ある時思い立って意図的にブレ写真を撮影するようになったのだが、気がつくとまた変テコな装置を作り出していた。今回はいろいろなブレ写真の方法を紹介しているが、別に「装置」なしでも簡単に撮影できるので、気になった方はぜひお試しを!

「手ブレ増幅装置」を使ってカメラを揺らしているところ。しかしてその正体は? これが「電動ドリルドライバーカメラ」だ。右手の人差し指を引けば何が起こるかは、賢明な読者にはすでにお分かりであろう

 ブレ写真には主に2つのパターンがある。カメラを持っている手が動いてしまう手ブレと、被写体の方が動いてしまう被写体ブレだ。手ブレの場合は像が全体的に流れ、被写体ブレでは動いている被写体だけが流れるわけだが、どちらもシャッタースピードが遅いと起こる現象だ。私は両方のやり方にトライしているが、メインは手ブレパターンなので、今回は全体に像が流れる写真の撮り方を紹介してみたいと思う。

 まずは普通に手ブレ写真を撮る方法。これは手に持ったカメラを動かしながら、シャッターを切ればいい。私はシャッタースピード1/8秒ぐらいを基準に、ブレ具合を確認しながら撮影をしている。このブレ具合というのは、シャッタースピード以外にもいくつかのファクターにより変化する。カメラの動きが速い場合。広角系より、望遠系。遠くのものより、近くのもの、といった感じでブレの度合いは大きくなる。

 シャッタースピードをマニュアルにするのはもちろんだが、絞りやISO感度もマニュアルの方がいい。まず静止した状態でピントや露出を決定しておくのがポイント。感度に関しては、シャッタースピードを落としたいのだから、なるべく低めに設定しておいたほうがいい。自動に設定しておくと、暗い場合に勝手に感度が上がってしまうので、これはうまくない。

 シャッタースピードを遅くしたいわけだが、快晴の屋外で撮影しようとすると、いくら絞り値を大きくしてもシャッタースピードが遅くならない場合がある。明るすぎて露出オーバーになってしまうのだ。そんな場合は「NDフィルター」を利用する。NDとは“ニュートラルデンシティー”のことで、色味を変えずに光量だけを落とすことができる。私が使っているのは、ND8というフィルターで、絞り3段分の減光ができる。

NDフィルターはレンズに合わせ、いろんなフィルター径の製品が用意されている
リコー「Caplio GX100」にて撮影。感度はISO80。シャッタースピードは1/2秒 ブレ写真は、画面内に発光しているものがあるとキレイだ
室内の照明用の傘。これは元々魚を捕獲するためのカゴ 金属のキラメキも、ブレるとラインになってキレイ

※カメラを輪ゴムで吊るしたり、ドリルドライバーに取り付けたり、放り投げたりしてカメラが壊れたとしても責任は負えませんので、試される方は自己責任でお願いします。

ゴムを使う

 しばらく手ブレを楽しんでいた私だが、やっているうちに気に入らない部分が出てきた。それはブレのラインというのが、私の手の動き方に依存するので、いまいち不自然であざとく思えてきたのだ。たとえば直線的に手を動かせばブレは直線的になる。手を振り回せば、弧を描くし、ハート型に動かせばハート型になる(やらないけど)。

 この自らの手の動きから解放され、自由な動きでカメラを操る方法はないだろうか? 私は一休さんのように知恵を絞り、ついに輪ゴムでカメラを吊るしながら撮影するという方法を思いついた。そしてすぐに詳細な設計図を作ると近所にホームセンターにカッ飛んで行った。そして作り上げたのが、コンパクトカメラ用の「ゴムブレカメラ」初号機だ。

これがゴムブレカメラの初号機だ。3mm幅の輪ゴム2本でカメラを吊り下げている。シャッターはケーブルレリーズを使って切る
ブレ方が山なりになっているが、これがゴムを使った場合のカメラの軌跡だ 色鮮やかな花を撮影するときれい。細かいラインを出すためには、きちんとピントが合っている必要がある
ふだん自分が撮影しないようなアングルの写真も撮影することができるのが面白いところ いつもテスト撮影に使われる愛犬。寝ている前でカメラをゆらゆら

 コンパクトデジタルカメラでの撮影で好感触を得た私は、次に一眼レフカメラ向けの装置も開発した。最初はカメラ底部の三脚穴の部分に金具を取り付け、逆さま状態で撮影していた。しかし、熟慮の末、「まあ、いいか」という結論に達し、ストロボを取り付けるクイックシューの部分に金具を取り付けることにした。これをやると、当然クイックシューにカメラやレンズの重みが加わるため躊躇っていたのだ。しかしこの大英断により、逆さま宙吊り状態から解放されることになった。

デジタル一眼レフカメラ底部の三脚穴に金属部品を取り付け、ゴムで吊るせるうようにした。しかし、逆さまになってしまうのが問題
ニコン「D5000」にて撮影。シャッタースピード1/8秒。ショップの店頭にカラフルなTシャツが吊り下げられているところ これもブティック店頭の写真。色鮮やかな被写体はポップなイメージになる
渋谷の丸井前の交差点にて。東京を歩いている人は変なおじさんが撮影をしていても無視してくれる

手ブレ増幅装置の誕生

 さらに改良は続いていった。輪ゴム1本で撮影をしていると、カメラがアッチを向いたり、コッチを向いたりして、どこが写るのか分からないという問題があった。街中で撮影をする場合というのは、だいたい撮りたい場があり、その方向に向けてカメラをブラブラさせる。しかし、宙吊りにされたカメラが踊りまくって、全然関係ない方向が写ってしまうというのはちょっと問題だ。

 私が何をやろうとしているのかと言えば、自分の意図に偶然の要素を潜りこませようとしているのだ。だから意図がぶっ飛んでしまい、偶然だけになってしまうと、それはちょっと違う、という感じなのだ。つまり意図が崩れない程度にカメラのコントロールがしたい。意図と偶然のバランスが重要なのだ。そこでついに誕生したのが「手ブレ増幅装置」だ。

ホームセンターで買ってきたパイプを使ってフレームを工作。これが「手ブレ増幅装置」の初号機 結局一眼レフカメラ用も作ってしまった。カメラはD5000。液晶画面を上の方からライブビューで見ると、フレームも決めやすい

 手ブレ増幅装置は、カメラを支えるための枠を作り、3本の輪ゴムを使ってカメラを支持している。これだと撮りたい方向にカメラを向けるのに具合がいい。このやり方の場合も最初はコンパクトデジタルカメラで試していたのだが、デジタル一眼レフを使うようになった。露出やピントなどのマニュアルコントロールがしやすいし、画質もいい。難点としては撮っている姿がちょっと目立つということだ。もし街で見つけても石をぶつけたりせず、温かい目で見守ってやってください。「デジカメWatch見ましたよ」とか、声をかけなくていいからね。

これが最新の「手ブレ増幅装置」。持ち手を自転車のハンドルに替え、自転車用のグリップも装着。グリップ感が200%向上し(当社比)、カッコよくなったと評判 揺らすとこんな感じになる。やってみたいですか?

 それとこの「手ブレ増幅装置」に関しては、手ブレを増幅するのではなく、逆に吸収するんじゃないかという指摘もいただいた。よく考えてみればそうとも言えるかもしれない。私が無理やり揺らしているだけだからな。この点についてもぜひ温かい目で……。

ビルを下から撮影。フレームを付けると、下から撮ったり、上から撮ったりということができるようになる。 街中でのストリートスナップ。顔がよく分からないので、肖像権の問題で訴えられることもない。この作戦はいいんじゃない?
手ブレ増幅装置で撮影してもらって喜んでいる人形。そんなことはないですね、失礼しました

ゴムを使ってスチルルライフ

 つい最近やってみたのが、スチルライフにこの輪ゴムのブレを生かす方法だ。三脚に俯瞰撮影用のポールを付け、その先に輪ゴム付きにカメラを吊るす。まず吊るした状態でだいたいのフレーミングをし、ピント合わせも行なう。そしてカメラを揺らしながらライブビューで画面の確認をし、レリーズを使って連写する、という段取りだ。

 でもよく考えてみたら、“スチル”は静止の意味だから、被写体がいくら静止していても、カメラの方が動いてたんじゃ、スチルライフとは言えないか? かと言ってムービーじゃあないしなあ。

こんな感じでカメラを吊り下げた。うまくフレームに被写体が収まるように撮影するのはけっこう大変。もうちょっと改造したいな
玄関脇に生えていたシダを摘んできて撮影
可動式の液晶画面はこういう撮影をするのに向いている
「可愛く撮れたでしょ?」と、人形の持ち主に聞いてみたが、頷いてもらえなかった

ブレ写真撮影のポイント

 ブレ写真を撮影する場合のポイントとしては、やはりそのブレ加減のコントロールだ。デジタルカメラであれば、逐次確認ができるので、シャッタースピードや手首のスナップの効かせ方で調整すればいい。それとピントはしっかりと合っていたほうがいい。ブレてるんだからどうでも良さそうだが、カチッとピントが合った部分が流れるときれいな細いラインができる。ピントが合っていないと、このラインが出てこないので、いまいち面白くないのだ。

 そして被写体には明暗差や色のコントラストがあったほうが面白い。像が流れた場合にコントラストのある部分にラインができてきれいなのだ。だからシャッタースピードを遅くしたいからといって薄暗いところで撮影するのではなく、明るい陽の下で撮影したり、定常光で強い光を当てたりしながら撮った方が、ブレ写真的には面白くなる。わざわざNDフィルターを使って減光して撮る、というのもおかしな方法ではないということだ。

 最後に重要なこと。それはカメラやレンズの手ブレ補正機能をOFFにしておくこと。手ブレ補正機能というのは、手ブレをキャンセルして、ブレていないように処理する機能のこと。わざとブレ写真を撮ろうとしているのにこの機能がONになっていると、カメラやレンズが妙に頑張ってしまう。

手ブレ補正機能をONにした時の像の流れ方。ギザギザになって美しくない。揺らされたカメラは「ヤメテクレー!」と思ってるだろうね。ゴメン!

 私がいいブレを作ろうと思っても、「どしたんや? どしたんや? どしたんや?」といいながら、一生懸命ブレを打ち消そうとする。その結果、きれいな軌跡の写真を撮ろうとしていたのに、ギザギザのラインになってしまうのだ。たまにこの機能をオフにするのを忘れて撮影してしまうのだが、そうすると軌跡がギザギザになり、がっかりすることになってしまう。

バネでブラすと

 カメラをゴムでブラす以外にも、いろんな方法を考えた。1つは金属のバネを使う方法だ。これは三脚ネジの部分にバネを取り付けて、カメラを揺らすのだ。ゆっくりと、ユラーっとした感じで揺れるのだが、その感触はなんとも言えず、ぜひあなたにも持たせてあげたい。

わりと大きなバネに取り付けたので、動きがゆっくりでおかしい
「ボケ/ブレ不思議写真術」(雷鳥社刊)の著者近影用に撮影した写真。セルフポートレイト用に製品化しても面白いかもしれない

iPhoneを使ってカメラトス

 カメラトスというのはカメラを空中に放り投げて撮影する方法だ。シャッタースピードを遅くすることにより、像が流れるのだが、クリスマスのイルミネーションなど、発光しているものを撮影すると、なかなか美しい軌跡を撮影することができる。これはカメラが自由に空中遊泳をしているおかげだろう。海外の写真共有サイトを中心に広まった方法で、私も何度かやったことがある。

 iPhoneではデフォルトではスローシャッターは切れないのだが、「SlowShutter」というアプリを使えばスローシャッターによる撮影ができるようになるので、カメラトスを試してみた。撮った写真は下のようなもの。

赤や緑の小さな電球だが、カメラの方が動いているためにライン状になっている iPhoneを投げるたびに違う模様になる。2度と同じに写ることはない

 iPhoneでも無事カメラトスができた。ちなみに撮り方としては、まず壁にクリスマスのイルミネーションを飾って点灯させる。セルフタイマーを3秒に設定して、空中でシャッターが切れるように放り投げる。シャッタースピードは2秒にしておいて、キャッチしたらレンズから光が入らないように塞ぐ。こんな感じだ。

 カメラやiPhoneを放り投げるというとビックリする人もいるが、ベッドの上で投げているので大丈夫。それにそんなに高く放り投げているわけではない。60cmぐらいかな。ただし、投げる時にヒネリを加えたりするのがポイント。面白いイメージを捉えるまで、何度でも放り投げればいい。

電動ドリルドライバーカメラ

 さらにいろいろと知恵を絞っている時に思いついたのが、カメラを電動ドリルの先っちょに付けたらどうなるだろうか? ということだ。想像を働かせてみると、なんか同心円状のものが撮れるだろうな、という予測が付いた。そして、それはけっして面白い絵にはならないだろうという予測もついた。しかし、思いついてしまったので、期待感ゼロのまま一応工作してみたのだが、撮れた写真はやはり想像を裏切ることはなかった。

 これはまあくだらないネタとして葬り去ろうとしていたのだが、回転している最中にストロボを発光させたらどうなるだろうか? というアイディアを思いついた。そこで早速実験してみることにした。最初に試したのはコンパクトカメラだった。しかしやってみるとストロボの光量が調整できずになかなか思い通りに撮れない。

 イメージとしては、シャッタースピードを遅くしながら回転させると、グルグルのイメージになる。そしてストロボを一瞬発光させることにより、静止したイメージも撮影でき、その両方が合成写真のように1つのイメージに重なるというつもりだった。しかし、ストロボの発光が強すぎて、グルグルのイメージが消えてしまう。発光部にトレペを付けたりしてコントロールしようとするのだが、うまくいかない。

 カメラを替えるしかないか、と思いながら手持ちのカメラを物色していた時に目についたのがオリンパスの「PEN」だ。そういえば君って身軽だったよね。しかも、ストロボ光の調整なんかお茶の子さいさいなんじゃない? まさか君を電動ドリルで回転させる日がくるとは思ってなかったけど、ちょっとの間だけ我慢しておくれ。

オリンパス「E-PL1」+「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」をリョービ「BD-120」に装着 うわあああああ、やっちゃったー。PEN君すまん!
こんなL字の金具とボルト、ナットを使いカメラを固定している。割と簡単な仕組で取り付けることができた
マリメッコの布地で作ったクッションを撮影。元の柄がきれいなので、写真もきれい? これは何を撮影したかわからん。本人にも思い出せない(笑)。でも可能性は感じるな。この線でも、もしかしたらいけるかもしれない
ストロボをシンクロさせたもの。バックにクリスマスのイルミネーションがあり、その電球が円形の軌跡を描いている ドリルドライバーの渦に巻き込まれそうになっている少女(演技)。これもストロボを発光させているので、回転した状態と静止した状態がミックスしている

・作例写真はすべてRAWで撮影し、Photoshop Camera RAWを使って色調整。Web用にリサイズの後、適宜アンシャープマスク処理を施しています。

告知

ARTALK2

 デザイン・フェスタ・ギャラリー原宿で行われるアートイベント「ARTALK2」に「上原ゼンジ写真実験室」として参加します。新作・旧作の写真とともに機材の展示などもします。なるべく会場に詰めるつもりなので、ぜひお越しください。期間は、2011年9月2日〜2011年9月4日。会場は、デザイン・フェスタ・ギャラリー原宿WEST/全館。

【ゼンラボ・ワークショップ】

 渋谷のstyle355にて全4回のワークショップを行ないます。10月8日、29日、11月12日、26日の13時〜15時。詳細は決まり次第、ホームページおよびゼンラボ通信にて発表。






実験写真家。色評価士。レンズを自作したり、さまざまな写真技法を試しながら、写真の可能性を追求している。また、カラーマネージメントに関する執筆や講演も行っている。著作に「ボケ/ブレ不思議写真術―カメラプラス」、「うずらの惑星―身近に見つけた小さな宇宙 カメラプラス」(ともに雷鳥社刊)、「すぐにわかる! 使える!! カラーマネージメントの本―仕事で役立つ色あわせの理論と実践マニュアル」(毎日コミュニケーションズ刊)などがある。
上原ゼンジ写真実験室
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2011/9/2 11:46