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APS-C専用単焦点レンズのススメ(ソニー編)

Reported by 吉住志穂

左が今回の主役「DT 30mm F2.8 Macro SAM」。α550(右)と組み合わせて撮りました
  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

 APS-Cサイズの撮像素子にあわせた設計のレンズがどんどん増えていますが、ペンタックスの製品を除くと、これまでそのほとんどがズームレンズでした。レンズメーカーの製品では、シグマとトキナーが頑張っているぐらい。デジタル一眼レフカメラの普及が進んだというのに、「単焦点レンズ=35mmフルサイズ用のレンズ」が基本だったのです。

 しかしニコンからAF-S DX NIKKOR 35mm F1.8 Gが、ソニーからはDT 50mm F1.8 SAMが発売されるなど、最近になって状況が変わってきました。中でもソニーのDT 50mm F1.8 SAMとDT 30mm F2.8 Macro SAMには「はじめてレンズ」という名前が付けられており、「ダブルズームレンズの次に買うはじめての交換レンズ」としてアピールしているようです。

 ここでは新製品のDT 30mm F2.8 Macro SAMをとりあげて、単焦点レンズの魅力を紹介したいと思います。

 

明るくて寄れる、小さなレンズ

 DT 30mm F2.8 Macro SAMは単焦点レンズなのですが、マクロレンズでもあるので、両方の良い点を持っています。それをふまえて、一般的な標準ズームレンズより優れている点をざっくり挙げてみましょう。

  • 開放F値が小さい(レンズが明るい)
  • 被写体を大きく写せる。被写体に近寄れる
  • 軽くて小さい

 まず、レンズが明るいということは、同じ感度でも速いシャッター速度で撮れるということ。手ブレや被写体ぶれに対して有利になります。APS-C用の標準ズームレンズの30mm前後(35mm判換算で45mm前後)はF4〜F5.6ぐらいになるので、開放F2.8のDT 30mm F2.8 Macro SAMは約1〜2段速いシャッターが切れることになります。最近は高感度の画質が良くなったとはいえ、屋内での撮影で威力を発揮してくれるはずです。またレンズが明るい方がファインダーが明るく見えるので、被写体が見やすくなるというメリットもあります。

 明るいレンズのメリットはもうひとつあり、それは被写体の前後にできるボケが大きくなることです。標準ズームレンズでも絞りを開けるとぼけますが、開放F2.8にはかないません。もちろん、携帯電話やコンパクトデジカメよりも断然ぼけが大きい(携帯電話はコンパクトデジカメは撮像素子の面積が小さいため)。ボケにあこがれてデジタル一眼レフカメラに入門する人が増えていますが、そんな人にも単焦点レンズは勧められます。

DT 30mm F2.8 Macro SAMの開放F2.8で撮影。背景が柔らかにボケています
α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.0MB / 4,592×3,056 / 1/125秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:曇天 / 30mm
こちらはコンパクトデジカメでの写真。絞りはF3.5。撮像素子が小さいことから、背景が思うようにボケてくれません
DSC-TX1 / 約2.5MB / 3,648×2,736 / 1/50秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO125 / WB:曇天 / 6.8mm

 次に近接性能です。単焦点レンズならどれでも被写体を大きく写せるわけではありません。しかしDT 30mm F2.8 Macro SAMはマクロレンズ(基本的にマクロレンズは単焦点レンズの一種)なので、標準ズームレンズより被写体に近づけます。近づけるということは、同じ画角の場合、被写体を大きく写せるわけですが、それよりもうれしいのは、被写体のすぐ前までレンズを近づけられることでしょう。

 最近は標準ズームレンズでもかなり被写体に近づけますが、DT 30mm F2.8 Macro SAMならほとんどぶつかりそうな位置(レンズ前2cm)まで近づけられます。ということは、最短撮影距離を気にすることなく撮影できるということ。好きなアングルや距離で被写体を狙えるため、最短撮影距離が長いレンズよりストレスが少なく、特にコンパクトデジカメのマクロモードに慣れた初心者におすすめだと思います。

 標準ズームレンズより、鏡胴がコンパクトで軽いのも単焦点レンズの特徴です。もっとも、ソニーの今の標準レンズ、DT 18-55mm F3.5-5.6 SAMは約210gなので、十分軽量なレンズといえます。さらにDT 30mm F2.8 Macro SAMになると、何と約150gしかありません。ボディにつけっぱなしにしておき、毎日持ち歩くような使い方には魅力的なレンズといえます。

標準ズームレンズでの最短撮影距離で撮影。右が撮影した写真 α550 / DT 18-55mm F3.5-5.6 SAM / 約3.2MB / 4,592×3,056 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / WB:太陽光 / 55mm
同じ被写体をDT 30mm F2.8 Macro SAMの最短撮影で撮影。バラの花が大きく写りました α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約2.7MB / 4,592×3,056 / 1/40秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:太陽光 / 30mm



料理を撮る

 そんな近接撮影能力を味わえるのが、料理やデザートの撮影でしょう。最近、一眼レフカメラで料理を撮っている人をよく見かけます。こうした撮影の場合、被写体がすぐ前にあるので、最短撮影距離が短いレンズだと構図が限られたり、思った場所にピントを合わせられないこともあります。いすから立ち上がって撮ればピントが合うことがありますが、ちょっと気がひけますよね。

 ところがDT 30mm F2.8 Macro SAMなら、最短撮影距離が短いので、自由度の高いポジションで撮影できます。被写体までの距離をほとんど気にせず撮れるのは、料理に限らず便利なものです。

 料理を撮るコツはいろいろありますが、試して欲しいのは、奥に背景を入れるように横から撮る方法。柔らかい逆光で撮れば、記念撮影と違った立体的な写真になります。このとき、ファインダーをのぞかずに撮れるライブビュー撮影が便利です。また、露出補正は+方向にして明るめにすると、おいしそうな見た目になります。

α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.5MB / 4,592×3,056 / 1/13秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO200 / WB:蛍光灯 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.5MB / 4,592×3,056 / 1/30秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO400 / WB:太陽光 / 30mm
α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約2.8MB / 3,056×4,592 / 1/100秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:曇天 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.5MB / 4,592×3,056 / 1/30秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO400 / WB:太陽光 / 30mm

 前後をボカすことで、メインの料理を引き立てるのも良いでしょう。明るいレンズならではのボケが楽しめます。ボケを狙って絞りを開けると、シャッター速度が速くなり、手ブレの危険性が下がるのもメリットです。

 DT 30mm F2.8 Macro SAMの面白いところは、ほかの50mmや90mmなどのマクロレンズより画角が広く、背景を入れやすい点です。メインの料理に加えて背景にボケた脇役を添えることで、ただ料理が大きく写っているだけでなく、その場の雰囲気も写真に加えることができます。



花を撮る

 このレンズの出番はまだあります。今度は室内に飾られた花を撮って見ましょう。自分で活けた花なら、ライティングをしっかりとして三脚で構図を決めながらじっくり撮りたいものですが、友達の部屋にある花や、旅先で出あった素敵な花を撮りたいと思うことは良くあります。そんなときは手軽に撮れるレンズがあると便利です。

 DT 30mm F2.8 Macro SAMは標準ズームレンズよりも明るく、花に近寄れるので、比較的自由な構図を試せます。背景を大きく入れて部屋の雰囲気を見せたり、花の一部に思いっきり近付いたりと、色んなパターンで撮って見ましょう。ホワイトバランスを変えて、イメージ通りの色調を狙うのも面白いです。

 花を撮るときのコツは、シベにピントを合わせること。絞り開放にしてシベ以外をぼかします。シベが見えない場合は、花びらの手前に合わせます。引いて撮る場合は、ある程度絞って、花が置かれている場所の雰囲気を残すのも良いでしょう。花にはきれいに見れる角度があります。ズームレンズのズームリングをあれこれいじって考えるより、角度を変えて色々撮ってみてください。さらに背景にも気を配って撮ると、立派な作品になります。

α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約2.5MB / 4,592×3,056 / 1/2秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO200 / WB:日陰 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.2MB / 3,056×4,592 / 1/15秒 / F2.8 / +1.7EV / ISO200 / WB:太陽光 / 30mm
α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.2MB / 3,056×4,592 / 1/160秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:日陰 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.2MB / 4,592×3,056 / 1/100秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO200 / WB:太陽光 / 30mm
α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約4.5MB / 4,592×3,056 / 1/80秒 / F2.8 / +1EV / ISO400 / WB:電球 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.5MB / 3,056×4,592 / 1/15秒 / F2.8 / -1EV / ISO400 / WB:曇天 / 30mm
α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.8MB / 4,592×3,056 / 1/40秒 / F3.2 / -0.3EV / ISO800 / WB:蛍光灯 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.1MB / 3,056×4,592 / 1/160秒 / F2.8 / +1.7EV / ISO200 / WB:曇天 / 30mm

スナップで使う

 単焦点レンズを使って楽しいのは、屋内だけではありません。街中での屋外スナップこそ、単焦点レンズの魅力が生きる場所といえます。自然の中だと立ち位置が限られるので、どうしてもズームレンズの出番が多くなります。しかし街中なら立ち位置の自由度が高く、撮りたい位置に移動しやすい。自分が動くと被写体の向きや大きさが変化し、写真も変わってきます。つまり、単焦点レンズはズームレンズと違い、自分が動いて画面内の被写体の大きさを決める必要があります。そのとき距離によって遠近感が変わったり、ボケが急に大きくなったりと、ズーム以上に大きな変化が得られるのです。

 そうして撮っていくうちに、使っているレンズの画角の感覚を自分のものにして、ファインダーをのぞかなくても移る範囲が想像できるようになったら、しめたものです。撮りたいものを見つけたら、より素早く構図を決めて撮れるようになるでしょう。ズームリングを動かすくせがついていると、こうした撮影方法を身につけるのは難しいものです。

 DT 30mm F2.8 Macro SAMの画角は標準レンズの50mmより少し広く、ちょっとあいまいな感じ。さらに被写体に迫れるので、面白いスナップが撮れます。街中の情景を収めるというよりは、気になるものに近づき、背景ごと切り取るような撮り方が楽しめました。

 画角に慣れた次は、被写界深度を身につけるとよりスナップが面白くなります。絞った方が良いシーンもあれば、ぼかした方が魅力的に感じるときもあります。このとき開放F値が小さいほうが、選べるF値の幅が広くなり、被写体深度の選択肢も増えることになります。ただし、F値が極端に小さいレンズは大きく、持っているだけ疲れる人も出てくると思います。まずはF2〜F2.8クラスで楽しんでから、F1.4やF1.2にステップアップするのもありでしょう。

α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約5.0MB / 3,056×4,592 / 1/100秒 / F3.2 / -0.3EV / ISO800 / WB:日陰 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約4.3MB / 4,592×3,056 / 1/50秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO500 / WB:曇天 / 30mm
α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約4.0MB / 4,592×3,056 / 1/60秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO400 / WB:蛍光灯 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.7MB / 3,056×4,592 / 1/20秒 / F2.8 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 30mm
α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.7MB / 3,056×4,592 / 1/15秒 / F2.8 / 0EV / ISO800 / WB:日陰 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約4.3MB / 3,056×4,592 / 1/20秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO800 / WB:日陰 / 30mm
α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約3.6MB / 4,592×3,056 / 1/100秒 / F3.2 / -0.3EV / ISO200 / WB:電球 / 30mm α550 / DT 30mm F2.8 Macro SAM / 約2.7MB / 4,592×3,056 / 1/1,000秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:オート / 30mm

まとめ

 今回使ったレンズは最短撮影距離が短かったので、それを活かした撮影を意識してみました。ただし最短撮影距離が短くても、よいことばかりありません。例えば、花のしべをアップで捉え、しべ以外がぼけているような作品を撮ろうとすると、花のすぐ前にレンズを持ってくる必要が出てきます。するとカメラの影が花にかぶって、肝心の花が暗くなることも。そういう写真は、焦点距離が100mmぐらいの中望遠マクロレンズのほうが向いています。その代わり中望遠マクロレンズは手ブレしやすくなるなど、レンズにはそれぞれ得手不得手があり、万能選手はあり得ません。

 単焦点ほどそうした個性が出やすいので、自分にあったレンズを探すのも、また楽しいものです。被写体に近寄るよりも、少し離れた被写体をボケを活かして撮りたいなら、ソニーならDT 50mm F1.8 SAMという選択肢もあります。ただし画角が30mmより狭くなります。どちらにしても軽くて小さいのがAPS-C専用単焦点レンズ共通の魅力。いつも持ち歩けば、写真も楽しくなるでしょう。





吉住志穂
(よしずみ しほ)1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、竹内敏信事務所に入社。 2005年4月に独立。自然の「こころ」をテーマに、花や風景の作品を撮り続けている。「デジタルフォト」などで連載中。日本自然科学写真協会(SSP)会員。

2009/12/3 00:00


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