【1st Shot】リコー「GR DIGITAL III」実写画像

Reported by山田久美夫

GR DIGITAL III

 本日発売の「GR DIGITAL III」の製品版が昨日届いた。私自身、歴代「GR」シリーズを持ち歩いていた期間があり、その進化ぶりが大いに気になったので、早速撮影してみた。

 パッと見たときの印象は、まさにGR。質感の高さもきちんと受け継がれている。サイズは先代の「GR DIGITAL II」より若干大きくなっているが、2台を並べない限り気がつかないレベルだ。外観上の違いも、レンズ以外は、GRロゴが凹凸のある彫りになっている程度で、正直、“新製品”という新鮮さはない。発表会のスピーチにもあったが、これなら先代を下取りに出して買い換えても、家内が気付くことはないだろう。

 使用感はとても軽快で、まさにGRそのもの。そのDNAは3世代目になってもきちんと受け継がれている。使ってすぐわかるのは、液晶モニターの表示品質が向上している点。色再現性もよく、実際に撮影される画像よりきれいにみえる点は賛否分かれるところだが、少なくとも、撮影時は気持ちがいい。

 液晶は高精細。メニュー表示は一覧性を重視して、小さめの文字で多くの機能が一度に見渡せる点はいい。ただ、徐々に老眼になりつつある筆者にとっては、表示が細かすぎる感じがした。できれば、メニュー文字のサイズを変更する機能が欲しいところ。

 GR DIGITAL IIIの最大の見所は、新開発の高感度CCDと新画像処理LSI。そして、F1.9の大口径レンズの搭載。それによる画質向上だ。今回は、大半のカットを出荷時設定で撮影した。画質モードは定点撮影以外、出荷時設定となる「N3648(10M)」。つまり、10Mモードで圧縮率はノーマルとなる。

 出荷設定時で電子水準器はON。シャッター一気押し時のスナップ時フォーカス距離は2.5mに設定されていた。なおこの距離は、1m、2.5m、5m、∞に簡単に設定変更できるので安心だ。

魅力的な大口径レンズ

 今回、GR DIGITAL IIIで約500枚ほど撮影した印象ではあるが、画質は先代よりも、明らかに向上していることが確認できた。とくに、GR DIGITAL IIで気になっていたノイズレベルとオートホワイトバランス制御は、明確に進化した感じだ。

 まず、新設計となるレンズは、F1.9に大口径化されたわけだが、単焦点レンズだけに、クリアで歪曲収差もよく抑えられている。また、マクロ時でも解像感の低下が感じられない点には好感が持てる。きわめて厳しい条件である、マクロ時に絞り開放F1.9で撮影しても、十分シャープな像が得られる点は大きな魅力。このときの背景のボケも自然で、コンパクトデジタルカメラとは思えないような立体感のある画像が得られる。ただ、夜景で周辺に点光源が入ったときのゴーストと、画面のごく四隅で解像感の低下はやや気になるところ。

 今回の新レンズにあわせて新開発された、21mm相当となるワイドコンバーター「GR-2」は、専用設計だけに画質低下もよく抑えられており、四隅まで十分な画質を実現している。おそらく、画像だけを見ていたら、よほど細部を見ない限り、ワイコンを使ったかどうかわからないだろう。

向上したノイズレベルともう一息の解像感

 高感度時のノイズは、コンパクトデジタルカメラのなかでも、よく抑えられている。ISO400まではほぼノイズを気にすることなく使えるレベル。ISO800になるとやや色ノイズが気になり、シャドー部の解像度が低下するが実用レベル。ISO1600では、さらに色ノイズが増えるが、コンパクトデジタルカメラとしては上々。現在主流の1/2.3型1,200万画素級モデルと比較すると、ISO感度で約1段分のノイズレベルの違いが感じられる。

 残念だったのは、今回のボディーではISO1600で撮影した一部で縞状のノイズが出たカットがあり、高感度CCDの実力をフルに生かし切れていない感じもあった。このあたりは、今後のファームアップで改善されることだろう。

 細部の解像感はもう一息といったところ。もともとGRシリーズは、キリキリとしたシャープ感よりも、自然さを追求した絵作りではあるが、それでも、現在のコンパクト機で主流になっている1/2.3型1200万画素機に比べ、解像感ではやや劣る感じもある。もちろん、実用上問題になるようなレベルではないが、A3超にプリントするような用途では気になることもあるだろう。これは画素数の違いではなく、それ以外の要因によるものといえそうだが、テスト機個体差の可能性も否めない。

 画質面で一番向上したのは、オートホワイトバランス。GRシリーズは、以前からやや意地悪なシーンを撮影すると、AWBが誤判定をするケースがあった。だが、今回使った限り、よほど特殊な条件でもない限り、そのような傾向は皆無で、安心して使えるレベルになった。ただ、露出には若干のクセがあり、シーンによっては露出がややオーバーになる傾向が見受けられ、ハイライトが飛びやすい傾向もあった。

正常進化を遂げた最新「GR」

 AFは従来から比較的高速な部類であり、それがGRシリーズの軽快感に大きく貢献していた。今回のモデルも、その伝統はきちんと受け継がれている。

 今回は出荷時設定のマルチAF機能で撮影したが、ほぼ意図にあったエリアの測距点がきちんと選ばれており、安心して使えるレベルといえる。

 さらに、シャッター一気押し時に、あらかじめ指定した距離にピントがあう「フルプレス スナップ」機能を搭載。出荷時設定は2.5mであり、通常のスナップであれば、ほぼピントのあった画像が得られるので安心だ。ただ、急いで撮影すると、簡単にフルプレスモードに入ってしまうことがあり、不用意にピントの甘い写真を作ってしまうこともあった。その場合は、同機能をメニューでOFFにすることもできるので、使ってみて判断したい。

 ただ、今回の実写では、点光源の入る夜景でかなりの確率で、ピントを逃す傾向がみられた。そのため、今回掲載した夜景画像の多くはMFに切り替えて撮影したもの。しかも、ピントを逃す量は少ないため、液晶モニター上ではピントがあったようにみえるので、撮影時にミスに気付きにくい。

 もともと、コントラスト検出AFは点光源に弱いという欠点があるが、近年はかなり解消されつつある。そのなかで本機は少々残念な結果となってしまった。

 GR DIGITAL IIIは、従来からのGR DIGITALシリーズのDNAをきちんと受け継ぎながら正常進化したモデルといえる。画質面でも大きな進化を遂げており、より安心して使えるモデルになった感じだ。ただ、今回のテスト機を使う限り、まだいくつかの欠点が見受けられたのが残念だ。とはいえ、GR DIGITALシリーズはファームアップにより進化するのが大きな特徴であり、今後のファームアップで画質がさらに改善されることを期待したい。


※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

定点作例

GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,320秒 / F4 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm

ISO感度別

GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/2秒 / F1.9 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/2秒 / F1.9 / 0EV / ISO100 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/5秒 / F1.9 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/9秒 / F1.9 / 0EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/17秒 / F1.9 / 0EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/34秒 / F1.9 / 0EV / ISO1600 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm

一般作例

GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/143秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/810秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/125秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,520秒 / F4 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,230秒 / F3.2 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/189秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/79秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 8秒 / F4.5 / 0EV / ISO64 / シャッター速度優先AE / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/2,000秒 / F1.9 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/90秒 / F1.9 / 0EV / ISO1600 / プログラム / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/84秒 / F1.9 / 0EV / ISO1600 / プログラム / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 2,736×3,648 / 1秒 / F1.9 / 0EV / ISO154 / プログラム / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/16秒 / F1.9 / 0EV / ISO1600 / プログラム / WB:オート / 6mm

マクロモード

GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/217秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 / プログラム(マクロ) / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/350秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 / プログラム(マクロ) / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/104秒 / F2.5 / 0EV / ISO64 / プログラム(マクロ) / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/410秒 / F1.9 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE(マクロ) / WB:オート / 6mm
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/870秒 / F1.9 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE(マクロ) / WB:オート / 6mmGR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/217秒 / F1.9 / 0EV / ISO64 / 絞り優先AE(マクロ) / WB:オート / 6mm

ワイドコンバージョンレンズ「GW-2」(0.75倍)

※GW-2使用時の35mm判換算の画角は21mm相当です。

GW-2未使用
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,320秒 / F4 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
GW-2使用
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,150秒 / F4 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.5mm
GW-2未使用
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,230秒 / F3.2 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
GW-2使用
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,070秒 / F3.2 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.5mm
GW-2未使用
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/620秒 / F3.2 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 6mm
GW-2使用
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/870秒 / F3.2 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.5mm
GW-2使用
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,230秒 / F8 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.5mm
GW-2使用
GR DIGITAL III / 3,648×2,736 / 1/1,230秒 / F4 / 0EV / ISO64 / プログラム / WB:オート / 4.5mm




1961年横浜生まれ。1979年よりフリーカメラマンに。1983年よりカメラ専門誌「アサヒカメラ」で執筆開始。日本カメラグランプリ選考委員。「電塾」運営委員。作品集「Natural」(1994年)、「ドイツ・色と光」(2000年)などを出版。1999年より「DigitalCamera.jp」を運営。

2009/8/5 21:25