特別企画

ニコンZシリーズに待望の瞳AFが搭載 ポートレート写真家に使用感を聞く

ポートレート撮影でのメリットやポイントとは?

去る5月16日、ニコンZシリーズにユーザー待望の瞳AF対応ファームウェアがリリースされました。瞳AFとは人物の顔や瞳を認識して自動でフォーカス位置を追尾する機能のことです。同種の機能には、35mm判センサーを搭載したミラーレスカメラ機では先んじてソニーやキヤノン、パナソニックが対応。ニコンZシリーズもCP+2019で瞳AF機能を実装したZシリーズの体験に多くの関心が集まるなど、対応が期待されていました。

ファームウェアアップデートのリリースにあわせて、はたしてその機能がどこまで実際の使用にたえられるのか、ポートレート分野で知られる河野英喜さんにさっそく試用してもらい、その使い勝手や機能の特徴を聞きしました。

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河野英喜
こうの ひでき
島根県浜田市出身。中学の頃に友人の持つカメラに強く惹かれカメラを手にして独自にポートレートを習得する。人物撮影のジャンルでは媒体を問わず幅広く活躍している。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。


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高い精度で、実用できる動作

――今回はZ 6、Z 7どちらもご使用いただいていますが、瞳AFの精度はどうでしょうか?

ふだんはZ 6を使用しているのですが、この瞳AFは直感的に操作できて、表示も見やすいのがとても素晴らしいですね。

元々ニコンは顔認識においても精度が高いんです。Zシリーズでもそれは同じで、動きのある撮影でコンティニュアスAF(AF-C)を使用した場合にカットや動きによってはわずかにピントが外れることもありましたが、シングルAFモード(AF-S)では、ほぼ外す事なく正確に捕捉しているように感じています。

――瞳AFはオートエリアAFで有効になりますが、このとき測距点の色は黄色になり、合焦すると緑に変わります。操作面でのご感想をお聞かせください。

まず瞳を検出した時の挙動ですが、認識している瞳の右側や左側に矢印型のアイコンが表示されるので、個々の瞳を認識していることがよくわかります。

撮影:河野英喜
Z 6 / AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G(マウントアダプター FTZ併用) / マニュアル露出(1/400秒・F1.4) / ISO 100

また、通常の撮影と同じように合焦すると緑に測距点の色が変わるのは、ユーザーにとってもわかりやすいのではないかと思います。また、シャッターを切る上でも、合焦していることがきちんと確認できるので安心感もありますね。

今までより合焦ポイントがよりピンポイント的に表示されて、かつ正確にピントが合っているので、都度背面モニターでのピント確認が不要にできるんですね。これも大きな利点だと思います。

――そういう意味でも撮影リズムをくずさない?

フォーカスが合っていることを意識してシャッターを切っていけるので、気持ちの面でも、これは大きいポイントだと感じています。

撮影:河野英喜
Z 6 / NIKKOR Z 50mm f/1.8 S / マニュアル露出(1/1,000秒・F1.8) / ISO 100

――ズバリ、今回の瞳AFは実用的?

状況にもよりますが、コントラストの強いものがモデルのすぐ後ろの位置にあって、モデルが大きく横を向いた時などに検出が外れて、奥にあるコントラストの強いものをとらえた事が何回かありましたが、すぐに再検出されるので実用上は問題ありません。

瞳という狭い範囲を正確に測距できる瞳AFの実用性は非常に高いと思います。

撮影:河野英喜
Z 6 / NIKKOR Z 50mm f/1.8 S / マニュアル露出(1/500秒・F1.8) / ISO 100
顔は横を向いているがAFフレームが追従・認識し、さらに瞳が検出されていることがよくわかる。
瞳AFは、オートエリアAF時で使用できる(画面はZ 7のメニュー)。

Fマウントレンズでも不安はない

――レンズによって瞳AFの挙動が変わることはありますか? または違っていると感じることはありますか?

僕が常用しているレンズ(例えばAF-S NIKKOR 58mm f/1.4G)では、レンズによる挙動の違いはほぼ感じていません。

この場面ではZ 6にマウントアダプターFTZを介してFマウントの58mm F1.4を使用していました。検出速度も河野さんとモデルの動きついてきており、撮影のテンポはきわめてスムーズ。モデルのArlyさんも「違和感は感じない」とのことでした。
撮影:河野英喜
Z 6 / AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G(マウントアダプター FTZ併用) / マニュアル露出(1/500秒・F1.4) / ISO 100

――瞳AFを利用したいシーンについてお聞かせください。

瞳AFは動きながらポーズの変化、フレーミングの変化、バリエーション数を膨らませる様な撮影で使用できますね。

撮影:河野英喜
Z 6 / NIKKOR Z 50mm f/1.8 S / マニュアル露出(1/800秒・F1.8) / ISO 100

まとめ

35mm判フルサイズミラーレス機における瞳AF機能の実装では他社を追いかける格好となったニコンZシリーズですが、その検出精度や完成度はかなりの高さに至っているとのことでした。

ポートレート撮影の現場で瞳AF機能をオンにした状態でのインタビューでしたが、撮影のリズム感は一眼レフカメラのD850使用時と大きく変化はないといいます。

また、撮影のテンポ感も「程よい」と河野さん。瞳AF機能のメリットとして、スムーズに瞳にAFが合うことで作画に集中できるメリットもあると、撮影者の期待にしっかりと応えてくれる機能であることを示してくれました。

モデル:Arly

本誌:宮澤孝周