“プロはこう使う。キヤノン EOS 7D Mark II”より

鉄道を前ボケ流しで撮る

AF設定の“被写体追従特性”に注目

この連載は、インプレス刊デジタルカメラマガジン別冊ムック「プロはこう使う。キヤノン EOS 7D Mark II」から抜粋しています。3回にわたり、同書の柱である「航空機」、「野鳥」、「鉄道」の撮り方からシチュエーションを1つずつ紹介します。どうぞお楽しみに!

デジタルカメラマガジン別冊ムック「プロはこう使う。キヤノン EOS 7D Mark II」(インプレス刊。税別2,000円、電子版税別1,800円)
キヤノンEOS 7D Mark II
山崎友也氏。同書で鉄道撮影のテーマを担当

手前にボケとなるものを入れて流すことで疾走感を強調させる。より低速シャッターを使うと、前ボケを長く薄く画面に取り入れることができる(小田急小田原線渋沢~新松田)

200mm(320mm相当)/ EF70-200mm F2.8L IS II USM / マニュアル露出(F10、1/10秒)/ ISO100 / WB:太陽光

超低速+前ボケを利用して疾走感を表現する

  • 難易度:5(最高5)
  • レンズ:望遠
  • 光:逆光
  • 季節:春〜秋
  • シャッター速度:超低速
  • 絞り:閉じる

スピード感を表現するときに「流し撮り」という手法がよく用いられる。流し撮りとは被写体の動きに合わせてカメラを振りながら撮影するというテクニック。この技を利用すると、被写体は止まっているように写るが背景は流れるので、実際に走っているように見える。

今回はそれを応用して、手前に木々の葉っぱを取り入れての流し撮りである。流し撮り自体がそれなりの技術を要する撮影手法なのだが、前ボケとなるものを入れることによって、被写体となるロマンスカーそのものが見えづらくなるため、動きに合わせるのがかなり難しくなる。加えて超低速シャッターで流さないと、前ボケが淡くならないので難易度は相当高めだ。

成功する確率を上げるためにはAFカスタム設定ガイド機能を利用しよう。プリセットされているCase 2を選択すれば、手前に葉っぱが横切ってもピントはロマンスカーに合わせ続けてくれる。ただし、ロマンスカーの動きとカメラの振り方が合っていないと流し撮り自体が決まらないので、そこは自分の技術に頼るしかないだろう。

AFセッティング

手前に障害物が入るのでロマンスカーのノーズにあたる部分を複数のAFフレームでとらえたい。そのため、上下左右の領域拡大AFを選択した
AIサーボAF時、手前に葉っぱなどの障害物が入っても被写体にピントを合わせ続けるという設定のCase 2を選択。領域拡大AF:上下左右で列車のノーズを捕捉する

NG Cut:Case 2以外では前ボケにピントが移行してしまう

前ボケ流しをする際のAFカスタム設定ガイド機能をCase 2以外に設定すると、左の作例のように手前に葉っぱが横切ったとき、そちらのほうにピントが移行してしまう。しかし、Case 2のプリセットは被写体追従特性が[-1]に設定されているため、被写体との間に障害物が入ってきても、しばらくはピントが移り変わることがない。このような状況にピッタリの機能といえる。

200mm(320mm相当)/ EF70-200mm F2.8L IS II USM / マニュアル露出(F10、1/10秒)/ ISO100 / WB:太陽光

カスタマイズして障害物の影響をより排除

スピード感をより強調させたいならば、手前のボケ量を増やすことが大事。しかし、そうすると障害物が入る時間が長くなってしまう。そんな撮影でもピント位置をずらさずに、確実に列車にピントを合わせ続けるため、[Case 2]の設定をカスタマイズしよう。[被写体追従特性]の設定を、初期設定の[-1]から[-2]に切り替え、より被写体に粘る選択を行うと良いだろう。

[Case 2]の被写体追従特性を[-2]に設定しておけば、障害物の影響をより排除できる

※山崎友也氏の「崎」は本来異なる文字ですが、環境により表示できないため代用しています。