新製品レビュー

ソニーQX1

「レンズ交換式レンズスタイルカメラ」の使い勝手は?

ガジェットファンを中心に話題となったソニーQXシリーズに、またもや話題となる製品「QX1」が登場した。発売は10月10日。実勢価格は3万8,330円前後。

2013年秋、1/2.3型センサーに10倍ズームを搭載した「QX10」と1型センサーにカールツァイス28-100mm相当レンズを搭載した「QX100」の2機種が登場。異色の筒型ボディをスマートフォン(スマホ)から操作する、“レンズスタイルカメラ”という新ジャンルの登場で色めき立ったのは記憶に新しいが、今回紹介するのはそれらの最高峰QX1だ。

QX1は、レンズスタイルの基本形状はそのままに、約2,010万画素のAPS-Cサイズセンサーを搭載。さらにソニーEマウントのレンズ交換式というから驚きだ。

ご覧のとおり筒状の本体で、QXシリーズを知らなければ、カメラには見えないかも。Eマウントは全レンズ対応、AマウントはマウントアダプターLA-EA4、同LA-EA3で装着可能
ガイドナンバー4(ISO100)の内蔵フラッシュを搭載。製品の性格上、なくていい気もするが、妙なところが親切でアンバランス。デザインをスポイルしない点も良い
右側面には液晶の小窓とアタッチメント解除用レバー、メインスイッチ、NFCマークなどが見える(編集部注:公開当初、αロゴの下にAF駆動用モーターがあるのでは?との推測を記載していましたが、ソニーによると正しくはシャッター駆動ユニットになります)
左下にはカバー内にmicroUSBを搭載。充電や転送はこちらから行う。いわゆるバッテリーの専用充電器は用意されないが、モバイル用バッテリーでの追加充電が可能
本体側のレリーズ用シャッターボタン。一般的なカメラと同様に半押し、全押しの二段階式。個人的には親指、人差し指、いずれも、なかなかしっくり持てず、アングル変更と共に指で探す感じだ
本体側面の液晶には、Wi-Fi接続や電池残量、記録カード用警告などが表示される。下のレバーはアタッチメント解除用

実はQX100と同10の登場時、担当者に冗談で「この勢いでAPSセンサーやフルサイズセンサーを搭載して出してよ!」と、なんとも無責任な発言をしていたのだが、まさか本当に出てくるとは思わなかった。

もちろん、気持ち的には出して欲しいのだが、正直なところ、奇抜なだけの製品では台数は見込めず、最初だけ盛り上がって下火になるのが通例。その半面、こんな奇抜な製品を出してくるのは、カメラメーカーの中でもソニーくらいしか期待できず、これまでのエポックメーキングな製品ブランドがあってこそ、受け入れられる基盤が整っているといえる。

そんな期待半分・冗談半分のそれがまさに現実となったわけだ。

もちろんQX登場から1年間の間にユーザーの意見を集約。たとえばQX10ユーザーから多かった、レスポンスや画質、レンズに対する要望については、高倍率モデル「QX30」を追加したり、アプリの見直しを図ったとのことだ。

カメラの基幹部はα5000と同等

QX1のカメラの基幹部は同社のミラーレスカメラ「α5000」と同等。センサーサイズはコンパクトデジタルカメラでポピュラーな1/2.3型と比べて、約13倍もの面積になるAPS-Cサイズ。約2,010万画素のExmor CMOSセンサーに、画像処理エンジンはBIONZ Xを採用する。

スマートフォンアタッチメントでスマホ(Xperia)を装着。この形だと、いわゆる馴染みのあるカメラふうに近づく。レンズはE 24mm F1.8 ZAを装着
アタッチメントは本体に爪を合わせて、回転して装着。スマホは上下から挟み込む方式。しっかり挟まれるが、あくまで本体側の支持が基本。レボルビングは不可
キットレンズの装着状態で裏側より。レンズが見えないと、ただ黒い筒状のものでしかない
中央に電源ボタンとパイロットランプ、左下にフラッシュボタン。そして左には撮像素子の位置を示すマークがある

基本的な使い方としては、スマートフォンに専用アプリ「PlayMemoriesMobile」(無料)を予めダウンロード。簡易接続可能なNFC対応スマホであれば、QX1側面のNFCマークとスマホ側のマークを合わせるだけで、起動とペアリングが開始。さほど待つこともなく、スマホにライブビュー画面が現れる。iPhoneはWi-Fi接続を手動で行う必要がある。

シャッター操作はスマホのライブビュー画面にて行う。

NFC対応スマホでの接続中画面。同時にQX1も自動で電源が入る仕様だ
撮影モード選択画面。おまかせオート2種とプログラムオート撮影、シャッタースピード優先撮影、絞り優先撮影の計5種類。マニュアル撮影は非搭載
カメラ内画像、表示画面。ボディ側のシャッターボタンで撮影した際は、レビュー画像が転送されないが、後ほどスマホからカメラ内画像が確認できる
設定画面1
設定画面2
タッチAF選択時。このときシャッター速度などはグレーアウトで、変更不可になる。(画面と表示は実際と異なります)
レビュー表示設定。標準では2秒だが、軽量であっても若干時間がかかる。煩わしい場合などは「切」がおすすめ

AF測距点の選択は自動選択だが、ライブビュー上の任意部分を押せばタッチAFが可能。またロックオンAFにも対応している。ただしタッチAF中は他の設定操作を受け付けず、露出補正すらできない仕様だ。

フォーカスモード設定画面。静体向けのAF-SとMFのみ。AF-Aは非対応だ
色や明るさの情報を画面から読み取り、被写体追従を行うロックオンAFに対応する

画像データはカメラ本体のmicroSDカード、もしくはメモリースティックマイクロに記録。基本設定では撮影直後に確認用で200万画素程度の軽量データもスマホ側に送りつつ、記録カードにオリジナルデータが保存される。

本体裏面にバッテリーパックを装填。同社のミラーレス機でおなじみのNP-FW50を使用。フタの裏面には手動接続用にSSIDとパスワードが表示されている
バッテリー部左側にmicroSD、メモリースティックマイクロ共用のカードスロットを備える。写真の表面内側が正しいが、裏面でも差し込めるのが難点。その場合、液晶部に警告が表示

メニュー内容も本機の性格に合わせて簡略化され、設定項目も見てもらえばわかるように至ってシンプルなもの。スイングパノラマなどお楽しみ機能も割愛されている。

スマホアプリはアップデートが容易なため、今後どのような展開をしていくのかも楽しみだ。

あえてスマホを使わずに撮影してみた

必要最小限の機能を搭載するが、使い方はユーザー次第。

小さな本体に交換レンズの自由度も増して、QXシリーズとして表現の幅は広がったものの、いかんせんWi-Fiでの一拍遅れる画像表示やシャッターレスポンスなど、一般的なデジタルカメラを知るものとしては不自由さが先にくる。動体撮影どころか、スナップで通過する人のタイミングを合わせるのですら至難の業だ。

そこで筆者の場合、割りきってスマホを捨てた。そう。構図の確認はしない!

画像確認をしなくても、本体横のシャッターボタンを押せば、撮影可能。これならば普通のカメラとほぼ同様のレスポンスで撮影を楽しめる。デフォルトではONのレビュー画像転送もなくなり、なにより構図確認がないぶん、スピーディだ(笑)。

画質設定画面。本格的カメラ同様に、RAWとJPEGの同時記録ほか、JPEGのファインとスタンダードから選べる
レビュー画像サイズ。スマホでのレビュー表示と保存時の画像サイズを選択

このときのレンズは望遠では構図やピントに不安が残るので選択肢から外し、ズームレンズも画角の見当をつけにくく、あまり適切でない。特にキットレンズの「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS」は外観から焦点距離がわからず、パワーズーム用レバーの誤操作も多くて扱いづらい。

そこで、ここぞとばかりに単焦点のワイド系レンズ、「E 16mm F2.8」を多用した。これなら薄くコンパクトでかさばらず、画角の見当もつけやすい。さらに被写界深度も深く、ピンぼけのリスク軽減にもなる。

余談ながら、その昔、フィルムカメラの広角レンズはアクセサリーシューなどに専用の外付け光学式ファインダーを装着して、おおまかな構図を確認。それで当時のベテランたちは、経験と勘も駆使して撮り続けてきた。まさにそれをデジタルで楽しもうというわけだ。

思いの外おもしろいノーファインダー撮影

当然、厳密な構図構成は難しく、筒状の本機の場合、その形状から水平を合わせるのも困難。あえて言うなら底面の三脚穴周辺が平らだが、そもそもホールディングに優れた形状でなく、諦めるほうが精神衛生上良い。

また基本的に測距点は自動選択のため、遠近混在の光景では手前の被写体にピントが合うのがネックだが、いちいち細かいことを考えても仕方なく、中景から遠景で偶発的な構図や、写る内容などの面白さに賭けて、ギャンブルのごとく楽しむのが正解。もちろん几帳面な人は正統派のスマホ経由での操作がいいだろう。

絞り値などの変更時は、円弧状になぞれば増減可能
Aモード時はISO感度、絞り値、露出補正が選べるのがわかる

前述のとおり、ワンテンポ操作が遅れるのさえ我慢できれば、タッチパネルタイプのサイバーショットで日常的に撮影するのと、さほど変わらず扱える。

また本体の軽さを活かして、アクションカメラふうにおもしろいアングルを探して固定するのも簡単。数メートル程度のリモート撮影で、フルHD動画を撮るのもいいだろう。

ミラーモード設定画面。近ごろ盛んな自分撮り用に左右反転を行い、鏡のような表示で直感的に撮影できる

とにかく、QX1は既存のカメラの尺度で価値を決めてはダメ。興味が湧いて購入に迷ったら、酒の勢いを借りてでもホットな精神状態のまま買うこと。――理詰めの冷静な判断ではまず買わない(笑)。

撮って楽しいのは間違いなく、使ったものでないとわからない楽しさを秘めた製品だ。先に使った人から、不便の先にある楽しさがきっと見えてくるはずだ。

 ◇           ◇

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

高感度画質

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:E 24mm F1.8 ZA / プログラム / 24mm
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO16000

作品集

ノーファインダーでは、使用レンズの画角を体に覚えさせるのがいちばん。写る範囲を予想しながら、シャッターを切る。露出補正などもできない。E16mm F2.8 / 1/640秒 / F4.5 / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
ローアングルでも、手元で画像確認できると構図は安定するが、新種のカメラゆえに、慣れないうちは手に持ったスマホだけを傾けてしまうことも。E16mm F2.8 / 1/320秒 / F4.5 / ISO400 / 絞り優先AE / 16mm
ハイアングルも自由自在。チルトモニターでも確認できないような高さや、手首を曲げた状態でも、構図を確認できる。E16mm F2.8 / 1/400秒 / F4.5 / ISO400 / 絞り優先AE / 16mm
ほかのQXシリーズと比較してセンサーサイズの大きな本機は、ボケをより効果的に使える。E16mm F2.8 / 1/400秒 / F3.2 / ISO400 / 絞り優先AE / 16mm
QX1を傍らに置いて、スマホを操作しつつ周囲を狙う。従来、ファインダーやモニターを覗き込むのが一般的な撮影行為だったが、リモート操作もWi-Fiなどの普及で身近になってきた。E16mm F2.8 / 1/100秒 / F2.8 / ISO100 / 絞り優先AE / 16mm
基礎部分はα5000とほぼ共通。解像や階調再現もそれらと同等なだけに特に不満はなく、その点は心配いらない。E16mm F2.8 / 1/800秒 / F6.3 / ISO400 / 絞り優先AE / 16mm
水面ギリギリなど、一般的なカメラと比較して、アングルの自由度の高さがうれしい。ただしスマホとカメラ部が離れているので、画面に夢中になると水没の危険も。非防水モデルなので要注意。E16mm F2.8 / 1/1,600秒 / F4 / ISO400 / 絞り優先AE / 16mm
隙間やクルマの下など、手先が入るスペースがあれば、どこでも撮れる。猫にすれば迷惑な話だが……。E16mm F2.8 / 1/100秒 / F7 / ISO100 / プログラム / 16mm
タッチAFでピントを合わせて、実際にシャッターが作動するまでの間は、お世辞にも速いとは言えない。よって、このように被写体が動けばピンぼけも起こりうるが、これはこれでおもしろい。E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS F2.8 / 1/250秒 / F5.6 / ISO100 / 絞り優先AE / 21mm

フルHD動画



桃井一至

(ももいかずし)写真家・長友健二氏に師事の後、フリーランスフォトグラファー。撮影は人物・海外風景を中心に、カメラ関係書籍の執筆も行なう。NHK「趣味悠々/デジタル一眼レフ撮影術入門(2006)」「趣味悠々/シーン別デジタルカメラ撮影術入門(2008)」 など、テレビ、イベント出演も多数。公益社団法人日本写真家協会会員。

http://www.gizmomo.com