今、注目度の高いレンズ一体型デジタルカメラといえば、今回ご紹介するPowerShot G1 X(以下G1 X)ではないだろうか。PowerShotシリーズでは最上級機にあたるハイエンドコンパクトデジタルカメラだ。その注目すべき点は、レンズ一体型デジカメとしては大きめの1.5型のCMOSセンサーを採用している点だろう。キヤノンでは「キヤノンコンパクト史上最高画質」と、画質については自信たっぷりの広告展開を行なっている。
今回はG1 Xと一緒に香港〜マカオ〜中国への旅をしてきたので、「旅カメラ目線」でレポートしてみよう。
発売は3月9日。実勢価格は7万1,800円前後。
■重厚感のあるレンズ一体型ボディに一眼レフ並みの操作系
まずはスペックから見てみよう。撮像素子には18.7×14mmの1.5型、有効約1,430万画素の高感度CMOSセンサーを搭載している。この撮像素子の表面積は、マイクロフォーサーズの撮像素子よりも少し大きく、従来のG系の撮像素子の約6.3倍になっている。1画素あたりの受光面積は約4.5倍。その結果、高感度時の低ノイズ化に加え、低感度での高い描写力を実現しているという。
さらに画像処理エンジンには最新の「DIGIC 5」を採用。大きな撮像素子とDIGIC5の連携により、高感度時でもデジタル一眼レフカメラに負けないノイズ性能を実現しているとのことだ。
レンズは従来機に比べ、一目で大きくなった印象を受ける。35mm判換算で焦点距離28-112mm相当(35mm判換算、以下同)の光学4倍ズームを搭載。開放F値はF2.8-5.8となっている。
沈胴式の光学4倍ズームレンズを搭載。左が広角端(28mm相当)、右が望遠端(112mm相当) |
レンズ構成は、両面非球面レンズ1枚と両面非球面UAレンズ2枚を含む10群11枚。多層コーティングを施したことで、フレアやゴーストが発生しづらいという。
それらに加え、レンズ内に手ブレ補正機構「マルチシーンIS」を搭載。「静止画IS」、「流し撮りIS」、「ハイブリッドIS」、「三脚」、「パワードIS」、「ダイナミックIS」の6つのシーンに合わせ、最適なISに自動で切り替わる。補正効果は、シャッタースピード換算で公称約4段分。動画撮影でも効果を発揮してくれる。
外観に関しては、「モダン&クラシックデザイン」と呼ぶデザインコンセプトを採用。見た目も格好良く仕上がっている。フロントとリアカバーにそれぞれ金属素材を採用しており、手にした瞬間、金属の重厚な質感が感じられる。
グリップはやや深めで、ホールド感に優れている。モードダイヤルや露出補正ダイヤルも適度なクリック感があり、操作していて楽しくなる。ロック機構はないが、カメラバッグに入れていても、めったなことでモードダイヤルが動くことは無い。
指かかりの良いやや深めのグリップ |
電子ダイヤルも指にかかりやすく操作し易い。また、撮影に必要なボタン類は、従来のGシリーズ同様にまとめられており、こちらも操作に迷うことはなかった。さらに、ショートカットボタンを搭載しており、頻繁に使用する機能を15種類から割り当て可能だ。
グリップ前面に電子ダイヤルを装備 |
ショートカットボタン。15種類の機能からひとつを割り当てられる |
液晶モニターは3型の約92.2万ドットの高精細バリアングルモニターを採用。自由度の高いアングルでの撮影を容易に行なえる。また、液晶モニター画面上には水準器表示も可能だ。
バリアングル式の3型液晶モニターを搭載。ドット数は約92万 |
PowerShot Gシリーズの伝統もいえる実像式光学ズームファインダーを搭載しているので、ファインダーを使っての撮影も可能だ。アクセサリーシューも搭載しており、スピードライトなどのデジタル一眼レフカメラのアクセサリー類を使用できる。上級機だけあって、拡張性にも優れている。
ズームに連動する実像式光学ファインダーを搭載 | 鏡筒を覆うリングを外したところ。別売のマクロライトアダプターを取り付け可能。EOS用のマクロリングライトMR-14EXやマクロツインライトMT-24EXを装着できる |
撮影モードも充実している。基本的な32シーン認識の「こだわりオート」により初心者でもシャッターを押すだけで簡単に綺麗な写真が撮れる。ISOオート時はISO1600まで対応しており、高感度撮影も可能だ。
また、マルチシーンISの手ブレ補正と連動し静止画で78パターン、動画で69パターンの設定から最適な設定を選んでくれる。もちろん、マニュアルモードである「P」「Tv」「Av」「M」も搭載。近年のキヤノン機でおなじみのクリエイティブフィルターモードにより、アーティスティックな写真も撮影可能だ。ハイダイナミックレンジやジオラマ、ノスタルジック、トイカメラなど、旅先で使いたくなる機能も充実。また、手持ち夜景モードもある。実際に手持ちで夜景を撮影したが、ノイズも少なく満足できる夜景を撮影することができた。
モードダイヤルと露出補正ダイヤルを2段同軸に配置。2段ダイヤルは近年のGシリーズでお馴染みだろう | メニュー操作のメインとなるコントローラーホイール周り。AEロック、AFフレーム選択、測光の各ボタンも備えている |
インターフェイスとしてUSB/AV、リモコン、HDMIの各端子を装備 | バッテリーおよび記録メディア室。SDXCメモリーカードにも対応する |
■文句なしの高画質。「画質を妥協したくない」ときのお供に
実際に旅先で使った印象は、「とにかくよくできたカメラ」。例えば、今までPowerShotやIXYシリーズを触ったことがあれば、何の問題も感じず操作できるだろう。
頻繁に変更しそうなモードや設定については、それぞれボタンやダイヤルに割り当てられており、画質や色などの設定はFUNC.SETボタンを押すことで設定を変更できる。中でも露出補正はダイヤル操作のため使い易い。ただし、いくつかのクリエイティブフィルターでは露出補正が利用できないのは残念だ。
撮影時の画面。電子水準器も利用できる | RAW記録にも対応 |
アスペクト比も選べる | 内蔵NDフィルターのオン/オフも可能 |
レンズは広角端で28mm相当、望遠端で112mmの望遠までカバーできるため、旅をする中で大きく不満を感じることは少ないだろう。一般的な風景撮影から記念写真のポートレート、スナップまですべてこなすことができる。
28mm相当でも画角が足りないと感じた場合は、スティッチアシストを利用できる。この機能で何枚か撮影しておけば、あとでパノラマを生成できるのだ。
望遠端の開放F値、F5.8はやや暗めに感じるかもしれない。そのときはISO感度を上げて対応すれば不満は無いだろう。高感度時の画質が良い上にマルチシーンISのお陰で、望遠撮影や暗い場所での撮影も楽々こなすことができた。
ただしG1 Xは、マクロ撮影をやや苦手とする。一般的なコンパクトデジタルカメラは広角側でのマクロ撮影に強い機種が多いが、マクロモードとオートモードにおけるG1 Xの最短撮影距離は、広角端で20cm、望遠端で85cmとなっている(いずれもレンズ先端から)。コンパクトデジタルカメラ気分で小物などに寄ると、思ったよりも寄れないためストレスを感じるかもしれない。
手ブレ補正はシーンにあわせて補正を変える | パワードISは動画時に有効 |
画質に関しては、明らかに他のコンパクトデジタルカメラと一線を画すクオリティ。低感度では被写体のディテールまでしっかりと写すことができ、デジタル一眼レフカメラに負けないほど描写力が高い。発色はマイカラーの設定にもよるが、初期設定では見た目に近いナチュラルな発色。鮮やかさが必要な場合はマイカラーをくっきりやポジフィルムにしてみるとよいだろう。
特に驚かされたのが高感度時の画質の良さだ。低感度からISO3200くらいまでは正直パソコンの画面に大きく表示するくらいであれば差が分からないほど高画質。等倍表示にしてみても、若干のシャープネスの低下くらいしか分からない。ISO3200までは問題なく実用できるといえる。ISO6400になるとノイズリダクションにより若干ふんわりとした印象になるが、風景などシャープさを求められるシーン以外は十分実用可能。高感度ノイズによるカラーノイズも良好に補正されており目立つことはない。ISO12800になるとノイズリダクションによりディテール部分は失われ、少しカラーノイズも見られるが2L位にプリントするのであれば何の問題もなく使用できそうなレベルだ。高感度に強いお陰で、夜市や屋台でのスナップや暗い路地での撮影も、三脚なしで楽々こなすことができた。荷物を減らしたい旅の途上、本当に心強いカメラだ。
今回、香港、マカオ、中国と旅を共にしたが、とても使い易くたくさんの写真を撮ることができた。他のコンパクトデジカメラは諦めていたシーンでも、G1 Xならば撮れるという安心感。それでいて、デジタル一眼レフカメラを一式持ち歩くよりずっとコンパクトに荷物がまとまる。また、クリエイティブフィルターでそのときのシーンや気分に浸れる点も、旅先で楽しめるカメラの要因だと感じた。
ただしバッテリーの持ちは、デジタル一眼レフカメラなどに比べるといまひとつ心細い。朝から晩まで撮影すると、晩には無くなることもあったので、ヘビーに使う場合は予備バッテリーを持っていった方が安心かもしれない。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
・画角
広角端(28mm相当) / PowerShot G1 X / 約2.2MB / 4,352×3,264 / 4秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO100 / WB:電球 / 15.1mm | 望遠端(112mm相当) / PowerShot G1 X / 約2.7MB / 4,352×3,264 / 4秒 / F7.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:電球 / 60.4mm |
・作例
・動画
- 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
約136.3MB / 1,920×1,080 / H.264 |
2012/3/8 00:00