【新製品レビュー】ニコンCOOLPIX S1100pj

〜独自の魅力を持つプロジェクター搭載デジカメ第2弾
Reported by 清宮信志

 ニコンのコンパクトデジタルカメラ「COOLPIX S1100pj」は、2009年10月に発売された「COOLPIX S1000pj」の後継モデルだ。世界で初めてデジタルカメラにプロジェクターを内蔵したことで話題となった機種で、今回のモデルは主にプロジェクター機能の性能強化が図られたほか、液晶モニターがタッチパネルになるなど、より使い勝手が向上している。

 実勢価格は4万3,000円前後の見込み。ボディカラーはシルバーとブラックの2種が用意される。


すっきりとした外観に

 外観は前モデルから大幅に変更された。前モデルの外観的な特徴であった、カメラ前面中央部の突起が無くなりすっきりした印象となった。前面の向かって右側に配置されているのが撮影用レンズ。中央部はプロジェクター用レンズだ。カメラ上部にはボタン一体型のプロジェクター用フォーカスダイヤルを搭載。従来のプロジェクター用フォーカス調整はスライド式レバーであったが、プロジェクターのオン/オフボタンも兼ね備えるダイヤル式になったことで、より操作がしやすくなった。

 本体の底部には、約10度の角度がつけられるプロジェクター脚を装備。机の上に直接設置した場合などにプロジェクター投影時のケラレを低減するものだ。

 レンズは35mm判換算で焦点距離28-140mm相当、開放F3.9-5.8の5倍ズームを搭載。撮像素子は有効1,410万画素のCCD、レンズシフト式手ブレ補正機構を内蔵する。撮影距離は広角端で約30cmから、望遠端で50cmからとなり、マクロモード時は広角端で3cmから。画像処理エンジンは今季からニコンが搭載を始めた「EXPEED C2」。

 動画撮影機能は最大1,280×720ピクセルのHD撮影に対応し、この点も前モデル(最大640×480ピクセル)から強化された。

 記録メディアはSDXC/SDHC/SDメモリーカード。約79MBの内蔵メモリーも搭載。電源はリチウムイオン充電池「EN-EL12」。撮影可能枚数は約220コマ。プロジェクターの連続投影時間は約1時間。本体サイズは約100.8×62.7×24.1mm。重量は約180g(撮影時)。

 背面液晶モニターは、新たにタッチパネル式の3型約46万ドットとなった。感圧式のタッチパネルで、操作は付属のタッチペンなどで行なう。液晶画面にタッチすることでシャッターを切ったり、フォーカスを合わせたい箇所を液晶画面上で選び、タッチして撮影できるほか、再生モードでは画面を左右になでることで前後の写真を表示することが可能。ほとんどの操作はタッチパネル上で可能なため、物理的なボタン操作は少ない。

背面の操作部。タッチパネル式の液晶モニターを採用するため、物理的な操作部は少ない
バッテリーと記録メディア室バッテリーには、COOLPIX S710などと同じEN-EL12を採用

内蔵プロジェクターの明るさがアップ

 本機の最大の目玉となる内蔵プロジェクター機能は、明るさが前モデルの10ルーメンから14ルーメンに向上。さらに最長投影距離が約2m40cmとなり、最大で47型相当(従来は40型相当)の投影ができるようになるなど、大幅に機能が向上した。解像度はVGAだ。

 前モデルで世界初搭載となったこの機能は、家族旅行や友達同士での旅行など、多数の仲間で一緒に写真を見ることができるのがもっとも楽しい用途だろう。通常のデジタルカメラでももちろん撮影画像は液晶モニター上で見られるが、当然画面は小さく、2人、3人で同時に見るには少々窮屈だ。だが本機のプロジェクターなら、ホテルの壁などに気軽に写真を投影できる。みんなでワイワイと写真を見るにはうってつけだろう。昼間は観光地を巡りながら写真を撮り、夜は宿泊施設内でミニ上映会をするという使い方が考えられる。

投写用レンズ(左)と撮影用レンズ(右)底面にプロジェクター脚を備える
付属のリモコン
三脚に取り付けた状態でプロジェクターを投影テーブルの上にのせ、プロジェクター脚を出した状態。約10度上向きになる

 本体底部に折りたたみ式の簡単な「プロジェクター脚」を内蔵しており、これを使うことで三脚などが無くても本体を約10度上向きにして置くことができる。これにより、テーブルなどに置いたときでも映像がケラレるのを防ぐことができるのもポイントが高い。ただし、台形補正機能などは付いていないので、このあたりは割り切る必要がある。

 標準で赤外線リモコンが付属し、プロジェクター投影中に遠隔操作が可能になっている点も便利だ。もちろんリモコン受光部は本体の前面背面それぞれにある。

 また今回は前モデルから要望が多かったというパソコン画面のスルー表示にも対応している。付属のユーティリティをインストールし、USBケーブルでノートパソコンなどと本機を接続することで、デスクトップ画面をそのままプロジェクターで投影できる機能だ。

 ただし制限もそれなりにあり、PC画面投影時の推奨解像度は1,280×800ピクセル以下。USB接続による画面表示のため若干表示が遅延するのはやむを得ないところだが、プレゼン資料の表示などの用途を考えればほぼ問題はないだろう。表示解像度も640×480ピクセルと低く、あまり細かい文字などの投影には適さない。アスペクト比も固定で、ワイド表示のデスクトップを投影すると強制的に4:3表示に補正されてしまい、表示が縦方向に伸びる。ユーザー側で適正な解像度に調整する必要がある。マイナス面ばかり書いてしまったが、パソコン画面の表示機能は今回初めての試みであり、この機能を実現したことを評価し、次期モデルではさらに機能向上することに期待したい。


多彩な撮影機能

 主な撮影モードは、「らくらくオート撮影」「オート撮影」「シーンモード」「ベストフェイスモード」の4つ。「らくらくオート撮影」は、被写体の状態をカメラが分析し、シーンモードの中から適切なモードを自動的に選んで撮影するモード。シャッターボタンを押すだけなのでほぼ手がかからない反面、撮影者の意図をある程度反映させたい場合、意図と異なる結果になることもある。そんなときは「オート撮影」に切替えることで、より多くの設定が可能になる。

 このほかカメラが被写体の動きを検出し、自動的にISO感度を上げてシャッター速度を上げる「モーション検知」も備える。

 また、撮影後に適用可能な6種類のフィルター効果も搭載。種類は、タッチした場所を中心に周囲をぼかす「ソフト」、タッチした特定の色域だけを残してそのほかをモノクロに変換する「セレクトカラー」、イルミネーションなど、光のある部分から放射状に光をのばし、キラキラとした雰囲気を作る「クロススクリーン」、魚眼レンズで撮影したような加工を施す「魚眼効果」、画面中央にピントを合わせてジオラマ風写真に加工する「ミニチュア効果」、画像の色調をビビッド、白黒、セピア、クールの4種類に変更する「ピクチャーカラー」の6種だ。

 再生モードでの画像編集機能も充実している。撮影した画像にペンで文字を書き込んだり、スタンプでイラストを追加することなどが可能だ。この機能はプロジェクター投影中でもリアルタイムで行なえるので、大きな画面に投影しながらお絵描きできて楽しい。

撮影モードの選択画面らくらくオート撮影を選んだところ
らくらくオート撮影の設定項目。変更可能な項目はシンプルオート撮影モードにすると、ISO感度やホワイトバランスなどが設定可能になる
シーンモード。17種類のシーンから最適なものを選べる再生モードではレーティングもできる
ペンを使って写真に絵を描く機能もスタンプ機能も搭載

まとめ

 本機は、世界で初めてプロジェクターを内蔵した前モデルからの正当進化と言える。前述のとおり、家族旅行やグループ旅行などで特に真価を発揮できるのではないかと思う。プロジェクターに投影した写真をタッチパネルで加工することも可能で、友達の写真に落書きをして遊ぶなど、パーティグッズ的な遊び方もできるだろう。

 また前モデルはビジネス用途で使うユーザーも多かったとのことで、そうしたユーザーにとってもプロジェクター機能の性能強化は心強い。さらに実用的になれば、ビジネスマンにとって心強い味方になるのではないだろうか。

 1点気になったのは、タッチパネルの操作性だ。本機のタッチパネルは感圧式のため、指の腹などではなく、付属のタッチペンや指の爪の先などで操作する。とりわけ、写真を撮影しながらタッチペンを持って操作するというスタイルは個人的には違和感を感じた。

 ただしこの手のインターフェイスでは、好みと慣れの要素も無視できないし、らくらくオート撮影を主体とするなら細かい操作は必要ないだろう。何よりも、プロジェクター搭載による他に類を見ない楽しみ方ができる点を大きく評価したい。


実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・画角
広角端
COOLPIX S1100pj / 約3.0MB / 4,320×3,240 / 1/507秒 / F7.8 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 5mm
望遠端
COOLPIX S1100pj / 約2.8MB / 4,320×3,240 / 1/664秒 / F5.8 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 25mm

・歪曲収差
広角端
COOLPIX S1100pj / 約6.2MB / 4,320×3,240 / 1/121秒 / F3.9 / -1EV / ISO80 / WB:晴天 / 5mm
望遠端
COOLPIX S1100pj / 約6.1MB / 4,320×3,240 / 1/51秒 / F5.8 / -1EV / ISO80 / WB:晴天 / 25mm

・ISO感度

※筆者の不注意により、スロー側のシャッター速度が足りず、ISO80のサンプルのみ若干露出アンダーになっています。

ISO80
COOLPIX S1100pj / 約4.8MB / 4,320×3,240 / 1.0秒 / F4.8 / -1EV / WB:晴天 / 14.9mm
ISO100
COOLPIX S1100pj / 約5.1MB / 4,320×3,240 / 1.0秒 / F4.8 / -1EV / WB:晴天 / 14.9mm
ISO200
COOLPIX S1100pj / 約5.3MB / 4,320×3,240 / 1/1.7秒 / F4.8 / -1EV / WB:晴天 / 14.9mm
ISO400
COOLPIX S1100pj / 約4.6MB / 4,320×3,240 / 1/3秒 / F4.8 / -1EV / WB:晴天 / 14.9mm
ISO800
COOLPIX S1100pj / 約4.7MB / 4,320×3,240 / 1/7秒 / F4.8 / -1EV / WB:晴天 / 14.9mm
ISO1600
COOLPIX S1100pj / 約4.8MB / 4,320×3,240 / 1/14秒 / F4.8 / -1EV / WB:晴天 / 14.9mm
ISO3200
COOLPIX S1100pj / 約742K / 2,048×1,536 / 1/27秒 / F4.8 / -1EV / WB:晴天 / 14.9mm

・フィルター効果
ピクチャーカラー:ビビッド
COOLPIX S1100pj / 約3.0MB / 4,320×3,240 / 1/340秒 / F7.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
ピクチャーカラー:セピア
COOLPIX S1100pj / 約2.9MB / 4,320×3,240 / 1/340秒 / F7.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
ミニチュア効果
COOLPIX S1100pj / 約3.1MB / 4,320×3,240 / 1/839秒 / F4.2 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 9.9mm
ソフト
COOLPIX S1100pj / 約3.1MB / 3,240×4,320 / 1/472秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 6.9mm
クロススクリーン
COOLPIX S1100pj / 約3.0MB / 4,320×3,240 / 1/325秒 / F8.3 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 8.3mm

・シーンモード
シーンモード:風景
COOLPIX S1100pj / 約3.1MB / 3,240×4,320 / 1/190秒 / F3.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
シーンモード:夕焼け
COOLPIX S1100pj / 約3.1MB / 4,320×3,240 / 1/54秒 / F3.9 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
シーンモード:夕焼け
COOLPIX S1100pj / 約3.0MB / 4,320×3,240 / 1/28秒 / F5.8 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 25mm
シーンモード:ビーチ
COOLPIX S1100pj / 約2.9MB / 4,320×3,240 / 1/464秒 / F7.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm

・オート撮影
らくらくオート撮影
COOLPIX S1100pj / 約3.0MB / 3,240×4,320 / 1/598秒 / F3.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 6mm
らくらくオート撮影
COOLPIX S1100pj / 約3.1MB / 4,320×3,240 / 1/66秒 / F3.9 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
らくらくオート撮影
COOLPIX S1100pj / 約2.9MB / 4,320×3,240 / 1/399秒 / F7.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
オート撮影
COOLPIX S1100pj / 約3.1MB / 3,240×4,320 / 1/295秒 / F8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 6mm
オート撮影
COOLPIX S1100pj / 約3.1MB / 4,320×3,240 / 1/844秒 / F3.9 / -0.7EV / ISO80 / WB:オート / 5mm
オート撮影
COOLPIX S1100pj / 約2.9MB / 4,320×3,240 / 1/289秒 / F7.8 / -0.7EV / ISO80 / WB:晴天 / 5mm

・動画
  • サムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
1,280×720 / 約44.1MB /




清宮信志

2010/10/1 00:00