【新製品レビュー】ペンタックス「Optio W80」

〜防水デジカメ名門シリーズの新モデル
Reported by 小山安博

 ペンタックスから防水デジタルカメラ「Optio W80」が登場した。今年は、各社から防水デジカメがリリースされているが、ペンタックスはこの分野では古参メーカーだ。新製品の実力を見てみよう。

防水性能にタフネス性をプラス

 Optio Wシリーズといえば、オリンパスの「μTOUGH」シリーズと並ぶ防水デジカメの2大巨頭だ。長らく両社がこのジャンルを引っ張ってきたが、この春に多くのメーカーが参入したことで競争が激化。ユーザーにとっては選ぶ楽しみが増えたことになるが、そこにペンタックスの新モデルはなかった。しかし、夏を前にペンタックスはOptio W80を発表。老舗の面目躍如といったところだ。前モデルは2008年6月に発売したOptio W60だから、1年ぶりの新製品という形になる。

 外観の基本的なテイストは変わらず、横長ボディのほぼ中央にレンズが配置されている。ただしこれまでと違い、四隅に硬質ゴムが設置され、「タフネス」感が演出されている。

 機能的に大きな進化点はこのタフネスで、従来はなかった高さ1mからの耐落下衝撃性能を実現した。これはパナソニックの「DMC-FT1」などでも使われている米国防総省のMILスペックに準じたテストが行なわれたらしい。

横長のボディは変わらないが、四隅の硬質ゴムが特徴的。レンズカバーはないが、最前面の硬質ガラスがレンズを保護する。レンズ上部にあるのはAF補助光

 スペック上、対落下性能はライバルの「μTOUGH-8000」(2m)や「μTOUGH-6000」(1.5m)には及ばないが、ハードなシーンでの利用にも安心感が出る。

 防水性能は従来の水深4mから1m増えて水深5mまで耐えられるようになった。防塵防水性能はIP68相当で、海水浴などのアウトドアシーンで安心して利用できる。耐寒-10度は従来通りだ。

 タフネス性能は強化されたが、ボディサイズはほぼ同等といっていい。防水デジカメの中では小型軽量の部類に入る。気軽に持ち歩けるサイズだ。

充実したスペック

手ブレ補正はメニュー画面から設定する。気軽にオン・オフができないのは難点。ISO感度やホワイトバランスなどもメニューから設定するが、後述するグリーンボタンのカスタマイズで、十字キーに割り当てできる

 撮像素子は1/2.3型の有効画素数1,210万画素CCDを採用。レンズは35mm判換算で28〜140mmの光学5倍ズーム。広角から望遠までをカバーするので扱いやすいく、幅広いシーンに対応できる。

 ズーム域は限定されるが、最短で1cmまで近寄れる1cmマクロ機能もあり、ズーミング、AF速度とも高速で不満はない。

 唯一の不満は、手ブレ補正が電子式という点。前モデルのOptio W60にも静止画には手ブレ補正がなかったのでそれよりはまだマシだが、撮影時に画像処理することでブレを軽減するものなので、撮影時に補正時間がかかる。効果は感じられるが、普段はオフにして、必要ならばオンにする、という使い方の方が良さそう。

 手ブレを押さえる高感度撮影では、ISO64からISO6400までをサポート。ISO3200以上だと500万画素相当に押さえられるが、コンパクトデジカメとしては超高感度での撮影が可能。ただし、画質はそれなりなので緊急避難用といった印象だ。

 Optio W60でもHD動画撮影機能を備えていたが、これまでの1280×720/15fpsからフレームレートが30fpsに向上。より映像がなめらかに撮影できるようになったのはポイントだ。ちなみに、動画撮影時の手ブレ補正も電子式。ズーム音が録音されるのを嫌ってか、動画撮影中に光学ズームは使えない。

 撮影機能としては、基本的にオートで撮影するカメラ。「オートピクチャー」機能を備えており、ポートレート、花、夜景ポートレート、キャンドルライトなどの8種類のシーンを自動で認識し、最適な撮影設定をしてくれる。Pモードに設定すれば露出補正やホワイトバランス、ISO感度を設定することができる。

動画の設定画面。電子式手ブレ補正のMovie SRもオン・オフができる。豊富なシーンモードが用意されている。水中用のシーンモードが特徴的

 背面に顔検出ボタンを備えており、認識した顔に合わせてAFと露出を合わせる機能を搭載。「スマイルキャッチ」機能も備えており、笑顔を検出すると自動でシャッターが切られる。目をつぶってる顔を検出して文字で知らせてくれる「まばたき検出」も備えている。

 シーンモードでは、アウトドア系カメラらしく「マーメイド」、「マーメイドムービー」という水中用の静止画・動画の撮影モードが用意されている。海辺や雪山で便利なサーフ&スノーもある。

 撮影機能としては、白黒やセピア、フィッシュアイ、トイカメラ、レトロ、カラーエンハンサーといった「デジタルフィルタ」機能を搭載するほか、ハイライトとシャドーを補正する「D-Range設定」も備えている。

D-Range設定はハイライトまたはシャドーのオンオフのみ

 従来通りカスタマイズ性は高く、ISO感度オート時に上限をどこに設定するか、電源オフ時に記憶する設定などがカスタマイズできる。「グリーンボタン」では、デフォルトで簡単撮影モードの「グリーンモード」が設定されているが、カスタマイズで音声録音機能、Fn(ファンクション)設定に変更可能。

 Fn設定は、グリーンボタンと十字キーの組み合わせに機能を割り当てられるというもの。ISO感度や露出補正、ホワイトバランスなどのさまざまな機能が割り当てられる。Pモードで設定を変えながら撮影したいときはぜひ使いたい機能だ。

電源オフ時に現在の設定を記憶するかどうか選べるモードメモリ。意外に便利な機能グリーンボタンの設定画面。撮影時によく使う機能を割り当てるといい。グリーンボタンを押してから十字キーの上下左右を押すため、1ステップ余計に手間がかかるが、メニューから操作するよりははるかに簡単

まとめ

 Optio W80は、とにかくコンパクトながら高い防水性能とタフネス性能を誇り、広角から望遠までカバーするレンズなど、幅広いシーンに対応できる防水デジカメだ。タフネス性能ではμTOUGH-8000など他社の上位種に劣るが、レンズスペックを含めれば、どんなシーンでも撮影できる万能選手に仕上がっている。

 一般的なコンパクトデジカメと比べても十分コンパクトで持ち歩きや撮影時にも邪魔にならず、普段使いにも適している。デジタルカメラは精密機器だが、さまざまな場所で使われるため、簡単に壊れるようでは困る。ハードな使い方が多いユーザーだけでなく、気軽にアウトドアに持ち出したい人にも有効なカメラだ。

作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

歪曲収差

広角端
Optio W80 / 約3.7MB / 4,000×3,000 / 1/80秒 / F3.8 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 6.1mm
望遠端
Optio W80 / 約4.2MB / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.5 / 0EV / ISO320 / WB:オート / 25mm

ISO感度

ISO64
Optio W80 / 約3.9MB / 4,000×3,000 / 1/50秒 / F4.8 / 0EV / WB:オート / 13.7mm
ISO100
Optio W80 / 約3.8MB / 4,000×3,000 / 1/80秒 / F4.8 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 13.7mm
ISO200
Optio W80 / 約4.1MB / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F4.8 / 0EV / WB:オート / 13.7mm
ISO400
Optio W80 / 約4.1MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F4.8 / 0EV / WB:オート / 13.7mm
ISO800
Optio W80 / 約4.0MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F5.8 / 0EV / IWB:オート / 13.7mm
ISO1600
Optio W80 / 約4.0MB / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F5.8 / 0EV / WB:オート / 13.7mm
ISO3200
Optio W80 / 約2.1MB / 2592x1944 / 1/1500秒 / F5.8 / 0EV / WB:オート / 13.7mm

一般作例

Optio W80 / 約3.8MB / 4,000×3,000 / 1/1,000秒 / F4.2 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmOptio W80 / 約4.0MB / 4,000×3,000 / 1/640秒 / F4.2 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mm
Optio W80 / 約4.0MB / 3,000×4,000 / 1/800秒 / F5.3 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 9.1mmOptio W80 / 約3.7MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F5 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 7.5mm
Optio W80 / 約4.0MB / 3,000×4,000 / 1/500秒 / F5.5 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 25mmOptio W80 / 約4.1MB / 3,000×4,000 / 1/500秒 / F5.8 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 13.7mm
Optio W80 / 約4.0MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F4.2 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 5mmOptio W80 / 約4.0MB / 4,000×3,000 / 1/250秒 / F5.5 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 25mm
Optio W80 / 約4.1MB / 3,000×4,000 / 1/250秒 / F5.5 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 25mmOptio W80 / 約4.0MB / 3,000×4,000 / 1/250秒 / F5.5 / +0.3EV / ISO100 / WB:オート / 25mm
Optio W80 / 約3.8MB / 4,000×3,000 / 1/200秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 6.1mmOptio W80 / 約3.8MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F4.2 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 5mm
Optio W80 / 約4.1MB / 3,000×4,000 / 1/250秒 / F5.5 / +0.3EV / ISO64 / WB:オート / 25mmOptio W80 / 約4.0MB / 3,000×4,000 / 1/250秒 / F5.5 / -0.3EV / ISO64 / WB:オート / 25mm




小山安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2009/7/21 00:09