新製品レビュー

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark III

Mark IIユーザーに嬉しい改善多数 進化した「顔/瞳優先AF」の使い心地もチェック

発売は2月28日。ボディ単体の実勢価格は税込21万7,800円前後。

オリンパスから、マイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラ「OM-D E-M1 Mark III」(以下E-M1 Mark III)が登場した。製品名の"Mark III"からも分かるように、2016年12月に発売された「OM-D E-M1 Mark II」の後継機にあたる。

オリンパスは、これらのE-M1シリーズを同社マイクロフォーサーズシステムのフラッグシップに位置づけている。オリンパスのフラッグシップカメラといえば、バッテリーグリップ一体型の「OM-D E-M1X」(以下E-M1X)も存在しているが、同じフラッグシップでもE-M1Xは「撮影時のホールディング性や操作性をより重視」したカメラであり、E-M1シリーズは「撮影時の携帯性や被写体に対する速写性をより重視」したカメラということになっている。

つまりE-M1 Mark IIIは、サイズを抑えながらもプロユースに耐えるだけの堅牢性と撮影性能を備えた、本格的ミラーレスカメラの最新機種というわけだ。価格や気軽さを考えれば、ユーザーフレンドリーな親しみやすいプロ機という貴重な存在であるとも言えるだろう。

今回は主に、前モデルのE-M1 Mark IIから、何が変わってどう進化したかを中心に紹介していきたい。

外観と操作性(主にMark IIとの違い)

左からE-M1 Mark II、E-M1 Mark III。

というわけで、今回の主役であるE-M1 Mark IIIと、筆者所有のE-M1 Mark IIを並べてみた。どうだろう? 違いが分かるだろうか? E-M1 Mark IIIは、製品名を示すロゴマークが正面から見て右下にあり、アクセサリーシューの色が異なる、といった間違え探しのような微妙な違い以外は、ほとんど同じに見えてしまうのではないだろうか。

実際、現物を並べてみてもパッと見では判断が難しいし、手に持ってみてもホールディング性などに特に違いを見出すことはできない。そう、E-M1 Mark IIとE-M1 Mark IIIのシルエットはまったく同じといっても差し支えないレベルでしか違いがないのだ。

しかし、ここが従来からのE-M1シリーズユーザーにとっての嬉しいポイントであり、初代「OM-D E-M1」から完成されていた優れた撮影スタイルを違和感なく引き継ぐことがことに繋がっている。ちなみに、E-M1 Mark IIのパワーバッテリーホルダー「HLD-9」は、E-M1 Mark IIIでもそのまま使える。

しかし、背面のダイヤルやボタン類のレイアウトには大幅な変更が加えられている。ここはよく見くらべてほしい。

E-M1 Mark IIIの背面
参考:E-M1 Mark IIの背面

マルチセレクター搭載、前後ダイヤルの感触調整など完成度アップ

特に、個人的に大いに歓迎したい変更点がマルチセレクターの新搭載。十字ボタンよりも素早く直感的にAFエリアを移動させることができ、プッシュすれば1アクションで中央復帰させることもできる。メニュー画面などの操作にもマルチセレクターを活用することが可能。あまりにも便利に使える大変有効性の高い機能であるため、もうこれがあるだけでE-M1 Mark IIからE-M1 Mark IIIへと買い換えたくなってしまう。

上面右側のレイアウトを比較。右がE-M1 Mark III(新)で左がE-M1 Mark II(旧)であるが、これもほとんど違いがないように見える。

外観からは違いが分からずとも、使って「おっ!」と思える進化が、フロント/リアダイヤルを回した時のトルクの違い。E-M1 Mark IIのリアダイヤルは「クリックリッ」と小気味よいクリック感であるのに対し、フロントダイヤルはどこか「ニュルッニュルッ」といった感触だった。しかし、E-M1 Mark IIIでは前後とも「クリックリッ」となり、トルクが統一されている。これは気持ちよくカメラを使う上で意外に大切なこと。筆者は自分が所有しているE-M1 Mark IIだけがフロントニュルニュルなのかと心配していただけに、とても嬉しい(羨ましい)変更点になっている。

カスタマイズ性向上や、USB Type-C給電対応など

また、よく見るとモードダイヤルの項目が異なっていることに気づく。E-M1 Mark IIにあった「iAUTO」および「ART」がなくなり、E-M1 Mark IIIでは「B」および「C4」が追加された。

長時間露光をする機会の多い撮影者にとって、「B」(バルブ)の新設は嬉しい。「ライブバルブ」、「ライブタイム」、「ライブコンポジット」といった、モニター画面で状況をリアルタイムで確認しながら長時間露光できる機能は、オリンパス機の特徴ともいえる優れた機能であるが、そうしたぜひ使いたい機能にダイレクトにアクセスできるようになった。

さらに、カスタムモード内での設定変更の「保持」と「不保持」が、モードごとに設定できるようになった。ちょっと何を言っているのか分かりづらいかもしれないけど、これは登録したカスタムモードを撮影中に変更した場合、その設定を維持したままにするのか、それとも最初の設定のままにするのかということ。それを4つに増えたC1~C4のそれぞれについて、個別設定ができるようになったということだ。これもプロ機たるフラッグシップモデルらしい、E-M1 Mark IIIのきめ細やかな進化点である。

ユーザーインターフェースとしては、必要な撮影設定を一目で読み取れる新コンパネ表示として「撮影情報表示」が追加されたことが目新しい。オリンパスのミラーレスカメラに慣れ親しんでいる人にとっては「そういえばいままでなかったな」くらいの感想かも知れないが、他社のデジタル一眼レフから移行した人にとってはかなり重要な情報表示となってくれそうだ。

インタフェースといえば、SDカードを装填するスロットはダブルで搭載しており、「指定したカードへの記録」、「自動切り換え」、「振り分け」、「同一書き込み」など撮影データの記録方法を安全・確実に行えるようになっている。E-M1 Mark IIと同様の仕様ではあるものの、E-M1シリーズがプロ機であるための必須要件を維持しているという点が素晴らしい。

バッテリーはE-M1 Mark IIやE-M1Xと同じ、リチウムイオン充電池BLH-1を使用する。OM-D E-M5 Mark II(以下E-M5 Mark II)などに採用されているBLN-1比で約37%増の電池容量がある。満充電で約420枚(CIPA試験基準)の撮影が可能だ。これもプロ機としては外せないところ。

また、USB Type-C端子は最大100WのUSB PDに対応しているため、移動中でもモバイルバッテリーを使用して、カメラのバッテリーを充電できる(充電はカメラの電源がOFF時のみ)。さらに、同じくモバイルバッテリーを使用したUSB給電(電池残量10%以上の場合のみ)によって、電源のない屋外撮影であっても長時間の撮影が可能となっている。

センサー&シャッターユニット

撮像センサーは有効約2,037万画素の4/3型Live MOS センサー。これは前モデルのE-M1 Mark IIと基本的に同等のものである。カメラがモデルチェンジした場合、それに伴う画素数や高感度性能の向上を期待するのが人情というものであるが、マイクロフォーサーズ規格カメラとしての画質は、現段階でE-M1 Mark IIですでに完成の域に達しているとも言えるので、これはこれで問題ないと思う。

それよりも、撮像センサーにはE-M1Xと同様、新たにゴミやホコリが付着しにくい新コーティングが施されていることの方が大きい。もともと、オリンパスはEシステム時代からセンサーのゴミ付着問題に対して、非常に熱心に取り組んでいたメーカーである。3万回/秒以上の超音波振動でゴミやホコリを強力にはじき飛ばすSSWF(スーパーソニックウェーブフィルター)と新コーティングの組み合わせで、フィールドでのレンズ交換に対してもより安心感が高くなった。

さらに、シャッターユニットは40万回の作動試験をクリアしている。E-M1 Mark IIは20万回だったので、シャッター耐久性は2倍にアップしたということである。見えないところであっても、地道に、かつ確実に性能を上げているところが実にプロ機らしい。

手ブレ補正機構の強化

撮像センサー関連では、オリンパスの誇る超強力な「5軸手ぶれ補正機能」が、E-M1 Mark IIの最大6.5段から7.5段に引き上げられたこともスゴイところ。

「最大」というのは、同社の交換レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」を使用した「5軸シンクロ手ぶれ補正」を活用した場合のことで、そのレンズ使用時以外では、E-M1 Mark IIにおいて5.5段だったものが6.5段となる。6.5段分の手ぶれ補正というだけでも十分驚異的なのだが……。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO ISO 200 F6.3 1.0秒

そして、その効果を確かめるために撮影したのが上の写真である。使用したレンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」なので「5軸シンクロ手ぶれ補正」は効かない。そのためボディ単体の補正効果のみを利用することになるが、それでも手持ち撮影で1秒というシャッター速度で見事ブレなく写し止めてくれていることが分かる。焦点距離40mmでの撮影なので、35mm判換算なら80mm相当。本来なら1/80秒がいわゆる手ぶれ限界(焦点距離分の1秒が目安)となるはずであるが、シャッター速度1秒という結果は、ほぼ公称通り、6.5段分の補正である。

実際に撮影していると、1秒の間ずっとブラックアウトしているわけであるから、「本当に止まるのかよ……」という不安に押しつぶされそうだった。しかし結果は三脚で撮ったかのようにシャープな画像! E-M1 Mark IIを超え、上位機種ともいえるE-M1Xに匹敵する強力な手ぶれ補正は、オリンパスが標榜する機動性を重視した撮影の心強い味方となってくれるはずだ。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO ISO 400 F9 1/2秒

この強力な手ぶれ補正機構は、他の撮影機能と組み合わせて応用することができる。上の写真は、E-M1Xに続きE-M1 Mark IIIにも搭載された「ライブND」(NDフィルターなしでスローシャッター効果が得られる機能)を使って噴水を撮影したもの。5段分に相当する効果を選択した結果、シャッター速度は1/2秒というスローシャッターになったが、この程度であれば手持ちで撮影可能だ。もちろん限度はあるが、本来なら三脚使用を前提とした特殊撮影であっても、E-M1 Mark IIIなら手持ちで行える幅が広いのである。

ハイレゾショットの進化

複数回連続撮影した画像を合成することで高解像度写真を生成するハイレゾショット機能も大進化を遂げた。E-M1 Mark IIでは三脚固定がデフォルトの撮影方式(三脚ハイレゾ)であったところ、三脚なし、つまり手持ちでカメラを構えたまま撮れる「手持ちハイレゾ」ができるようになった。画素数は約5,000万画素。これもまたE-M1Xで開発された機能を新たに採用したものだ。

手持ちハイレゾショット
E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO ISO 200 F4 1/50秒

手持ちハイレゾは一瞬の間に撮影した16枚の画像を合成するものであるが、手持ちゆえに発生するわずかな位置ズレを効率よく合成に利用しているところがポイント。これによって、ただ単に画素数を増やすだけでなく、ノイズを軽減して階調再現性を向上させるという画質的な効果を訴求している。

通常撮影
E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO ISO 200 F5.6 1/20秒

試しに、同じ被写体をハイレゾショットと通常撮影で捉えた。見くらべていただければ分かるとおり、約2,000万画素が約5,000万画素相当になったことによる解像感の向上だけでなく、耐ノイズ性や階調再現性も明確に向上している。

三脚ハイレゾショット
E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO ISO 200 F7 1/1,000秒

一方で、8枚の画像を合成する従来の「三脚ハイレゾ」は、画素数がE-M1 Mark II時の約5,000万画素記録から約8,000万画素記録に高解像度化した。あまりないとは思うが、少しでも画素数が多い方がよいという場合なら、こちらの三脚ハイレゾを使ってみるとよいだろう。

手持ちハイレゾショット
E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO ISO 200 F7 1/1,000秒

ここで同様に同じ被写体を手持ちハイレゾでも撮影したので先の写真と比較してほしい。もちろん、5,000万画素と8,000万画素という解像度の違いはあるが、滑らかな階調性やノイズの少なさでは明らかに(そして意外にも)手持ちハイレゾの方が優れている。8回合成の三脚ハイレゾに比べ、16回合成でより多くの情報量を扱う手持ちハイレゾのほうが、結果的に画質の精度は高くなるということだろうか。

オリンパスのアナウンスによれば、三脚ハイレゾの方が動いている被写体の処理精度が高いということであるが、ゆるやかに動いている水面の表現を見る限りではそれも大差ないように見える。ハイレゾショット登場時に見られた、「少しでも被写体が動いていると不自然な縦縞になる」というマイナス要因は、三脚と手持ち、どちらのハイレゾショットにおいても、もはや過去のことなのだ。

圧倒的に手持ちハイレゾの優位性が示された今回の試写結果であったが、これは、手持ち撮影による機動性の高さを主要なコンセプトとするオリンパスのカメラにとって、非常に妥当な結果だといえるだろう。

星空AF

E-M1 Mark IIIならではの機能が、新しくドライブモードに追加された「星空AF」である。この機能を使えば、これまでMFで目を凝らしながら合わせていた星へのピント合わせが、AFで簡単かつ高精度に行える。

"MFだって無限遠にするだけだから簡単ではないか"、と思われるかもしれないが、実は手動でレンズのピントリングを無限遠側いっぱいに廻すと、無限遠を通り超えて全てがピンボケになってしまう。これは天体撮影をする人たちにとっては常識で、だからこそライブビュー画面を拡大してMFで慎重に合わせるという面倒な作業が、従来は必要だったわけである。

星空AFを作動させるためには、まずメニューの「星空AF設定」でモードを選択するところから始まる。

「速度優先」は、その名の通りAF速度を優先したモード。比較的短時間でAF動作が完了するため、広角レンズや魚眼レンズを使った手持ち撮影に向いている。ただ、デフォルトで設定されていることからも分かる通り、たいていの天体撮影はこちらのモードで十分高精度にピントを合わせることができる。

もうひとつの「精度優先」は、これも名前の通り精度を優先したモード。より細かいフォーカススキャンが実施されるため、AF動作の完了に時間を要するものの、さらに超高精度で本格的な天体撮影に使うことができる。なお、三脚の使用が前提である。

ちょっと広めのグループAFターゲットなどに設定して、天体以外の被写体が入らないようにするのがオススメ。

アングルを決めたら、ドライブモードを「星空AF」に設定する。注意したいのは、この時にAFが作動して、すでに星にピントが合ったかのように見えること。実はこれ、少しでも早くフォーカススキャンを完了するために、カメラがあらかじめピント位置を無限遠付近に移動しただけの状態だ。この状態ではまだ本当の意味で正確にピントが合っていないので、うっかりそのまま撮影に移らないように気をつけたい。

星空AFは背面の「AEL/AFLボタン」を押すと動作する。作動中はモニター上面に「星空AF動作中です」と表示される。その表示が消えたら星空AF完了。シャッターボタンを押せば露光が開始される。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO ISO 200 F2.8 1/6秒

そうして撮影した結果が上の画像である。日没後の西空にひとつだけポツンと輝く金星をジャスピンで捉えてくれた。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO ISO 200 F2.8 15秒

金星のように等級の高い天体なら当たり前だろうと思われるといけないので、首都圏では肉眼でやっと見える程度のオリオン座も撮影してみた。光害で夜空に締まりがなく、露光中に星が動いてしまってはいるが、筆者のような天体撮影のド素人でも、簡単確実に星にピントを合わせられることが分かっていただけるだろう。しかし、本当に大切なのは「星空AF」が超高精度な撮影を可能としていることである。

顔&瞳優先AFの進化

AF関連では、「顔/瞳優先AF」の大幅な進化が見逃せない。あまりイメージがないかもしれないが、オリンパスは2012年発売の初代「OM-D E-M5」から、ミラーレスカメラにおける顔/瞳優先AFの先駆者である。しかし、早期搭載にもかかわらず機能の進化は何故か置き去りにされたままだった。具体的には、「人物が画面内にかなり大きく入らないと顔や瞳を検出できない」「複数の顔を同時に検出できない」といった点で、後発他社に後れをとってしまっていた。

というわけで、新しくなった顔/瞳優先AFの検出性能を確認してみたのが上の動画だ。画面上の顔の比率が小さくても正確に顔と瞳を検出し、人物が大きく動いても、横を向いたりうつむいたり、クルッと回って一瞬被写体を見失ったとしても、直ぐに検出が復帰して追従をつづけているのが分かると思う。

この優れた顔/瞳検出性能は、仮にAFターゲットを1点にしていたとしても、顔や瞳を認識できれば、縦75%×横80%をカバーする広い測距エリアでピントを合わせつづけられる。顔/瞳優先機能と併用すれば、人物が画面内にいる限りほぼ確実に顔や瞳にピントを合わせることができる。

また、複数人の顔を同時に検出できるようにもなった。これまでは、最初に検出した人(場合によっては人の顔に似た人以外のモノ)にAFが張り付いてしまい、ピントを合わせたい人にピントを合わせられず困ることがあったが、検出された複数の顔のなかから目的の人物をボタン/タッチ操作で簡単に選択できる。

個人的な筆者の意見としては、この顔/瞳優先AFの進化こそがE-M1 Mark IIIにおいて、最も評価したい"推し"の進化点だ。分野の違いこそあれ、写真を撮る上で人物の顔や瞳に正確にピントを合わせるという行為は誰であっても避けることができないであろうと思う。特に、F1.2シリーズのような大口径のマイクロフォーサーズレンズをラインナップするオリンパスであれば、なおさら必須の機能であるはずだ。

E-M1 Mark III M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO ISO 200 F1.2 1/80秒 モデル:川端紗也加

被写界深度の浅い「M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO」を絞り開放で使っても、上の作例のように簡単確実に被写体の瞳にピントを合わせることができたのは、非常にシメタものである。

まとめ

デジタルカメラの要ともいえる撮像センサー、そして外観デザインもほぼ変わらないままモデルチェンジしたOM-D E-M1 Mark III。そもそもOM-D E-M1 Mark IIの時点で基本的な画質やデザインはすでに完成の域に達していたのであるから、むしろいたずらに変更を加えてほしくないというのが本音だった。その意味で今回のモデルチェンジは、ユーザーサイドの要望をよく分かった変更をしてくれているといえるだろう。

ここで、オリンパスが推し進めるマイクロフォーサーズ規格システムカメラのメリットが何かを、いま一度まとめてみると、

1. レンズも含めて(重要)小型軽量なカメラシステムを構築しており、過酷で長時間に及ぶ撮影での負担を大幅に軽減できる。

2. フィールド撮影に求められる高度な防塵・防滴性などの堅牢性・信頼性を獲得している。

3. 従来は三脚が必須とされていた撮影領域に対し、さまざまな手持ち撮影をサポートする機能の開発に熱心で、かつ成功している。

他にもまだまだあるが、使ってすぐに実感できるメリットは以上の3つであろう。特に(3)はOM-D E-M1 Mark IIIの重要なポイントで、圧倒的な手ぶれ補正能力や手持ちハイレゾショット、速度優先の星空AFの新搭載などは、三脚に頼らずとも過酷な現場で高品質な写真をものにできるというマイクロフォーサーズ機の利点を明確に体現している。強力な手ぶれ補正機能を活用すれば、数秒に及ぶライブND撮影や星空AF撮影なども手持ちで実現できてしまう。

もちろん、三脚を活用すれば、ライブコンポジット撮影や深度合成機能、8,000万画素相当の三脚ハイレゾなどによって、さらに表現の世界を広げることだって可能だ。

マイクロフォーサーズカメラの良さを知り、これまでバリバリ使ってきたという人にとっては、「そう!ここがこうで、こんな機能がほしかったんだよ!」と思える進化を、OM-D E-M1 Mark IIIは実現してくれているのである。

モデル:川端紗也加

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。