新製品レビュー

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark III(外観・機能編)

シンプルになった操作配置をMark IIと見比べる

初代OM-D E-M5が登場したのは2012年。OM-Dシリーズの1号機だ。かつてのフィルム一眼レフカメラOMシリーズを彷彿させるネーミングと、カメラの中央部分にEVFを内蔵した本格派のデザインは、それまでの"マイクロフォーサーズはビギナーや女性向け"という印象を払拭した。2015年に登場した後継機のOM-D E-M5 Mark IIはボディやダイヤルの質感が大きく高まり、5軸手ブレ補正の効果もE-M5の4段分から5段分にアップ。ミドルクラスながら5コマ/秒の連写やハイレゾショットなど、上位機E-M1に迫る性能を持つ。そして2019年、三代目となるOM-D E-M5 Mark IIIが登場した。

外観と操作レイアウト

高性能と小型化を両立させているE-M5シリーズは、まさにOMのDNAを受け継いでいるカメラだ。E-M5 Mark IIIもミドルクラスながら非常にコンパクトで軽い。しかしグリップはしっかり指に掛かり、E-M5 Mark IIよりホールド性は向上している。そのため小さくても持ちやすい。

ボディ正面は、これまでのE-M5シリーズを踏襲したデザインを採用。ハイエンドのE-M1シリーズのように大型のグリップは持たず、ボディが盛り上がるような控えめなグリップだ。シャッターボタンを本体上面に持つのもE-M5シリーズらしい。

しかし、その上面は大きく変わった。E-M5 Mark IIのシャッターボタン側には、ハイライト/シャドーボタン(Fn2)、ライブビューボタン(Fn3)、HDRボタン(Fn4)が配置されていて、個人的にはフィルムカメラのOM-4を思い出したのだが、E-M5 Mark IIIではハイライト/シャドーボタンとHDRボタンがなくなり、ライブビューボタンは電源レバー側に移った。そして露出補正ボタンとモードダイヤルが装備されている。

シャッターボタンと前後ダイヤル、動画ボタンのレイアウト同じだが、それ以外は大きく変更された。特にシャッターボタン側にモードダイヤルが設置されたことが大きい。他のOM-Dと同じになった。E-M5 Mark IIよりボタンが少なくなり、シンプルになった印象だ。

E-M5 Mark IIでは電源レバー側にモードダイヤルがあったが、その電源レバーのおかげでモードダイヤルの指標がボディ内側に付けられず、外側に合わせるというユニークなスタイルだった。慣れればあまり気にならず、E-M5 Mark IIの個性とも言えたが、それでもやはり不自然な印象は拭えない。E-M5 Mark IIIは他のOM-Dシリーズと同様にモードダイヤルがシャッターボタン側に移ったことで自然な操作ができると共に、他のOM-Dシリーズと併用しても同じ感覚で扱える操作レイアウトになった。

電源レバー側もモードダイヤルが移動したことで形が変わった。E-M1 Mark IIと同様に、巻き戻しクランクを連想させるデザインだ。ドライブボタンとライブビューボタンが設けられている。

背面はE-M5 Mark IIとほぼ同じレイアウトだ。できればE-M1Xのようにジョイスティック状のマルチセレクターがあると測距点の移動に便利なのだが、小さなボディなので入れるスペースがなかったのかもしれない。しかしタッチパネル式の背面モニターをなぞって測距点移動ができるタッチパッドAFが装備された。

背面はE-M5 Mark IIとほぼ同じレイアウト。E-M5 Mark IIではレバーと親指用の指当てのデザインが変わり、指当ての上にISOボタンが装備された。

背面モニターはE-M5 Mark IIやE-M1 Mark IIなどでお馴染みのバリアングルタイプだ。もちろんタッチパネル式で操作感も従来と変わらない。E-M5 Mark IIでは液晶画面の色がややグリーン寄りなのが気になっていたが、E-M5 Mark IIIでは自然な色に改善され、違和感なく扱える。また、EVFのパネルはE-M5 Mark IIの液晶からOLED(有機EL)になり、クリアでレスポンスに優れた視認性を実現している。

背面モニターはバリアングル式。横にモニターが開くのは好みが分かれるが、縦位置でもハイアングルやローアングルが撮りやすく、動画撮影時にも使いやすい。
EVFは236万ドットで、解像度だけ見ればE-M5 Mark IIと同じ。しかしパネルが液晶からOLED(有機EL)になったことで、クリアかつ視認性が高い。
ボディ前面には、E-M5 Mark IIと同じくプレビューボタンがある。
シルバーボディがE-M5 Mark II、ブラックがMark III。OMを連想させる全体的なスタイリングは踏襲しているが、よく見れば別物と言えるほど形が違う。グリップの形状やストラップの取り付け位置も異なる。またMark IIには装備されていたシンクロターミナルがMark IIでは省略された。ミドルクラスなので必要ないと判断したのだろうか。とはいえ外部ストロボもコマンダーによるワイヤレス発光が主流になってきているので、不便に思う人は少ないかもしれない。

E-M1 Mark II並みのAF機能。バッテリーはMark IIから変更

E-M5 Mark IIIは、上位機のE-M1 Mark IIと同じ2,037万画素のLive MOSセンサーを搭載。AFもコントラストAFのみだったE-M5 Mark IIと異なり、E-M1 Mark IIと同様に像面位相差AFが可能になり、動体撮影に強くなった。測距点も81点から121点になるなど、ミドルクラスながらE-M1 Mark IIと同じAF性能だ。ただし連写はE-M1 Mark IIが最高約15コマ/秒なのに対し、E-M5 Mark IIは約10コマ/秒に抑えられている。ボディ内手ブレ補正も、E-M5 Mark IIの5段から、E-M1 Mark IIと同じ5.5段にアップ。スローシャッターにより強くなった。

実は個人的にE-M5 Mark IIで気に入っていたことのひとつに、パワーバッテリーホルダーHLD-8の存在がある。その姿は、かつてのモータードライブを思わせるもの。しかもグリップ部とバッテリーホルダーの2階建てで、まるでOMシステムのモータードライブのようだ。グリップ側にもシャッターボタンがあり、ボディ側とシャッターボタンが2つになるのも当時を思い出させ、これだけでテンションが上がってしまう。

だがE-M5 Mark IIIは専用外付けグリップECG-5のみで、バッテリーホルダーは用意されていないのが残念。とはいえグリップ側とボディ側で2つのシャッターボタンが備わるのは変わっていない。E-M5シリーズの伝統であり、銀塩OMを知っている人には懐かしいスタイルが楽しめる。ただ、E-M5 Mark IIIは4KやCinema4Kの動画記録に対応している。頻繁に撮影する人には、ボディ内のバッテリー1個だけでは物足りないだろう。やはり長時間の動画撮影や大量の撮影に向け、バッテリーホルダーは用意してもらいたい。

バッテリーはグレーなのでE-M5 Mark IIと同じBLN-1かと思いきや、E-M10シリーズなどで使われているBLS-50を採用。BLN-1とは互換性がない。
バッテリーと充電器。充電器はBLS-50専用のBCS-5。やはりBLN-1用のBCN-1は使用できない。
左側面には端子類が並ぶ。上からマイク端子、リモートケーブル端子、HDMI端子(マイクロD)、USB端子(microUSB)だ。
USBケーブルによるUSB充電も可能。いちいちバッテリーを抜く必要がないので便利だ。
SDカードはUHS-IIに対応。E-M5 Mark IIではラベル側を反対にして差し込んでいたが、E-M5 Mark IIIは手前になった。なおE-M1 Mark IIやE-M1Xのようなダブルスロットではなくシングルスロットだ。

E-M5シリーズのコンパクトなボディサイズは継承しながら、ハイエンド機E-M1 Mark IIの撮影性能を継承したE-M5 Mark III。それでは実際に撮影した使い心地はどうなのか、次回の「実写編」でお届けする。

内蔵フラッシュは持たないものの、E-M1 Mark IIなどでお馴染みの小型フラッシュ、FL-LM3が付属する。小さくても左右と上方にバウンスが可能。補助光などに活躍する。
メニュー画面はE-M1 Mark IIと同じデザインになった。
動画は4Kを搭載。30pもしくはC4K(Cinema4K)では24pでの記録ができる。またフルHDでは120fpsのハイスピード撮影が可能。スローモーションが必要な際に有効だ。
スマホに専用アプリのOI.Shareを入れることで、E-M5 Mark IIとBluetoothを介したWi-Fi接続ができる。カメラ側でスマホに転送したい画像を選んでおくと、OI.Shareを起動すれば自動転送される。

藤井智弘

(ふじいともひろ)1968年、東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒業。1996年、コニカプラザで写真展「PEOPLE」を開催後フリー写真家になり、カメラ専門誌を中心に活動。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。