新製品レビュー

SONY FE 135mm F1.8 GM

ピント面のシャープさと柔らかさのあるボケ描写が魅力

CP+2019が開幕する前日、2月27日に発表された「FE 135mm F1.8 GM」。筆者はCP+2019の会期中タッチアンドトライのコーナーで実際に当レンズを触ってみて、その画質の良さに大きな期待を抱いた。その「FE 135mm F1.8 GM」がついに4月19日に発売となった。

G Master初の135mm

本レンズは、圧倒的な高解像と自然で美しいボケ描写を誇るプレミアムレンズシリーズ「G Master」の一員としてラインナップされている。焦点距離135mmは「G Master」シリーズ初登場だ。

レンズ構成は10群13枚。画面全域での高い解像性能を目指し、XA(extreme aspherical=超高度非球面)レンズを採用することで輪線ボケを低減。11枚羽根の円形絞りとともに美しいボケ描写を追求した一本に仕上がっている。

最短撮影距離は0.7m。最大撮影倍率は0.25倍。

今回は、本レンズをα7R IIIに装着してポートレートを中心に撮影を行なった。作例を見ながら、レンズの魅力を体感していただければと思う。

サイズ感・ボディとのバランス

鏡筒デザインは、G Masterレンズのものを踏襲。ボディとの一体感が感じられる、黒を基調としたデザインが採用されている。

フィルター径は82mm。最大径×長さは89.5×127mm。質量は950g。小ぶりなα7R IIIにフードをつけた状態で装着するとフロントヘビーな印象となる。ただ、普段から大口径の135mmレンズを使用している者からすると、この性能を考えれば納得のサイズである。手の大きな男性は縦位置グリップを付けた方が持ちやすくなるだろう。

鏡筒が太めにつくられているため手に馴染み、かなりホールドしやすい。また、持ってみると、見かけから想像する重量よりは軽く感じる。

絞りリング

本レンズには絞りリングが搭載されており、静止画・動画撮影で即時性の高い操作を実現している。

絞りリングのクリックのON/OFFはスイッチで切り替えが可能だ。ONにした場合、適度な引っかかりがあるので、勝手に絞りリングが動いてしまう心配はない。OFFにした場合は、絞りをシームレスに変化させられる。動画撮影の際はOFFにすると良いだろう。

フォーカスレンジリミッター/フォーカスモードスイッチ

フォーカスレンジリミッター(∞〜1.5m/2m〜0.7m/FULL)が搭載されており、あらかじめ合焦する範囲を限定することで不要な被写体への合焦を避け、迅速なフォーカシングを可能にしている。

ただ、このスイッチはかなり固く、もう少し切り替えやすくしていただけると助かると感じた。

AFとMFの切り替えをおこなうフォーカスモードスイッチは、フォーカスレンジリミッターの近傍に設けられている。ファインダーから目を離すことなくAF/MFを瞬時に切り替えられるスイッチで、最近のレンズは左手親指で切り替えられる位置に搭載されていることが多い。本レンズも例外ではなく、この位置に設けられていたため、いつもの調子で撮影することができた。

フォーカスホールドボタン

カスタマイズ可能なフォーカスホールドボタンが、鏡筒の側面と上面2箇所に配置されている。フォーカスホールドボタンは機能の割り当てを1つ選択できるが、私は瞳AFを割り当てた。ボタンが2箇所あることで、縦位置・横位置、どちらで構えた際も操作しやすい。

絞り開放時の描写

光がきれいなので高架下でポートレートを撮影することが多い。ただ、高架下はゴチャっとしてたいてい美しくない。そんなときこそ135mmの出番だ。

絞りを開放のF1.8にして背景をぼかし、モデルの上半身を撮影した。望遠らしい大きなボケは、丸みを帯びているような柔らかさがあり、画面全体を優しい感じでまとめてくれた。一方、ピント面は非常にシャープだ。繊細さを持ちながらキリリと描写してくれた。αシリーズの高精度な瞳AF機能と併せれば、絞り開放も臆することなく使える。

SONY α7R III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1/640秒・F1.8) / ISO 640

夏っぽいの道端の雰囲気が良かったので、その場を広く写し撮ろうと思った。ただし、電柱や電線など細かいところが現実的すぎるように感じたので、開放F1.8にして背景を大きくぼかし、モデルの全身をおさめた。

SONY α7R III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1/6,400秒・F1.8) / ISO 200

状況がわかる程度に背景をぼかしつつも、モデルが浮き立ってくるような絵に仕上がった。背景のボケは、混ざり合うことなく、それぞれの輪郭を保ったまま、柔らかくなっている印象だ。135mmという焦点距離ゆえに、歪みがほとんどなく、電柱などの直線がまっすぐに表現されており気持ちが良い。

F4まで絞りこんだ時の描写

木漏れ日の街並みを歩くモデルの雰囲気が良かったので、振り返ったところでシャッターを押した。私は少し絞って状況を写すのが好きなので、絞りはF4にした。このくらいが、背景のボケ具合とモデルの立体感の調和がとれているようで、好みだ。F4時、玉ボケはきれいな円形で気持ちが良い。

SONY α7R III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1/320秒・F4.0) / ISO 200

ボケの描写

緑の中に咲く赤い花が綺麗な場所をみつけた。風が吹いてモデルの髪がふわりと動いた瞬間、絞り開放F1.8で寄って撮影した。

まず、赤の発色がとても良いと感じた。また、ピント合焦部の髪の毛が一本一本非常にシャープに描写されていて、その解像感にドキリとした。

SONY α7R III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1/2,500秒・F1.8) / ISO 200

絞り開放の場合、画面周辺部の玉ボケは流石にレモン型になるが、かえって動きが出て、絵としては悪くないと思う。ちなみに、1段ほど絞ると円形に近いきれいな玉ボケを楽しめる。

F2.8(1/320秒・ISO 200)
F4(1/160秒・ISO 200)
F2.8
F4

前ボケはクセのない描写

ピンク色のつつじがきれいだったので、モデルに花の背後に立ってもらい、開放F1.8で撮影した。つつじのピンク色は鮮やかに発色している。ピントが合焦しているモデルの黒い髪の毛は一本一本を確認できるほどシャープに描写されている。一方で、前ボケとなったつつじはまろやかでクセがなく、やさしい。本レンズの圧倒的な高解像と自然で美しいボケ描写を実感する一枚だ。

SONY α7R III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1/250秒・F1.8) / ISO 200

最短撮影距離での描写

最短撮影距離(70cm)でシャッターを切った。画面がモデルの顔でいっぱいになるくらいまで寄れる。高い解像性能を維持しつつ、135mmでここまで近づけるのは嬉しい。アップの撮影でも多用したくなる。

SONY α7R III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1/100秒・F1.8) / ISO 400

周辺部までシャープな解像

F11まで絞り、商店街に残されたアーケードの骨組みを撮影して周辺部の描写をみた。鉄の質感を含めて、中心から周辺まで非常にシャープに解像している。四隅を拡大して確認しても、流れたり波打ったりしていない。135mmは歪みが少ないので、こういった直線の多い景色を撮影するのに向いている。

SONY α7R III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1/160秒・F11) / ISO 100

逆光耐性

葉の間から覗く太陽を構図の中に入れ、かなり強い逆光状態で撮影をしてみた。逆光状態にもかかわらず、全体的にコントラストが高くヌケの良い絵が撮れて驚いた。

さまざまな角度から撮ってみたが、逆光耐性は極めて高く、ほとんどのカットでフレアやゴーストを確認できなかった。相当いじわるな状況を作り出して、フレアとゴーストを出現させたのがこのカットだ。

SONY α7R III / FE 135mm F1.8 GM / 135mm / マニュアル露出(1/125秒・F8) / ISO 100

まとめ

「G Master」ブランドにふさわしい、開放F値F1.8から実感できる高い解像力と美しく自然なボケ描写が、圧倒的なレベルで両立している本レンズ。どのシーンでも、その高いポテンシャルを感じざるを得なかった。

AF性能が優れているので、ポートレートだけではなく、ブライダル、スポーツ、ステージ撮影にも最適だ。また歪みが少ないので、街撮りなどにも積極的に使っていけると思う。

駆動系には、スポーツ撮影向けの超望遠レンズ「FE 400mm F2.8 GM OSS」で開発したXDリニアモーターを採用している。したがって、応答性、低振動性、静粛性に優れている。AFの合焦スピードはもはや「食い気味で合焦する」という印象であり、「さすがはG Master」と思わざるを得ない。

作動音が小さいリニアモーターを採用しているためか、静かな室内で使用した際も作動音は気にならない。

αと併せて使えば、その性能は最大限に発揮される。αユーザーで、大口径中望遠レンズをお探しの方は、間違いなく「買い」なレンズだと思う。

モデル:ひらく

大村祐里子

1983年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。有限会社ハーベストタイム所属。雑誌・書籍での執筆やアーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動。