新製品レビュー

FUJIFILM X-T100(実写編)

富士フイルムならではの色再現を気軽に楽しめる

富士フイルムから6月21日に発売となった「X-T100」は、エントリークラスに位置しながらもEVFを搭載する、本格的なミラーレスカメラだ。

X-T100の外観や主な機能については、外観・機能編で詳しく紹介しているので、そちらも参照していただくとして、ここでは主に実機を使用したインプレッションを中心に紹介していこうと思う。

具体的には、富士フイルムの強みである階調や色再現性をはじめ、高感度性能や連写、取り回しのしやすさなどについて紹介していきたい。

はじめに結論を言ってしまうと、X-T100はエントリー機として十分すぎる機能を有している。また、使い方にも難しいところがないため、とても楽しみながら撮影をおこなうことができた。

階調・色再現

富士フイルムの階調や色再現性の優秀さは、同社カメラのユーザーが口を揃えるポイントだ。私は普段、キヤノンやソニーのカメラをメインで使っているのだが、これは富士フイルムのカメラを使うと他社のカメラとの違いを大きく感じる点でもある。

もちろん、写真の仕上がりについては個人差が大きいとは思う。私の場合は他社のカメラを使う場合はRAWで撮影しておき、現像時に好みの仕上がりに追い込んでいくプロセスが多いのだが、X-T100をはじめとする富士フイルムのカメラではJPEG撮って出しのままでも、自分好みの仕上がりになることが多い。

太陽と青空を背景にビルを逆光で撮ってみた。かなりアンダーで撮影したのだが、ビルのシャドウ部の階調が潰れることなくしっかりと残っている。このような輝度差の大きなシーンでは、フィルムシミュレーションをPROVIAにすると暗部も潰れずにしっかりと残ってくれる。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 15.2mm(35mm判換算23mm相当) / 絞り優先AE(1/1,250秒・F13・-0.7EV) / ISO 200

フィルムシミュレーションVelviaにて撮影。一般的に、風景やビビッドといったモードに相当する色再現だ。青、緑、赤系の色が特に強く出るため、鮮やかで活力のある写真に仕上がりにしやすい。この向日葵もしっかりとした色が乗り、実に夏らしい雰囲気になった。メリハリのつく設定であるが、こちらも暗部の階調はしっかりと残っている。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 45mm(35mm判換算68mm相当) / 絞り優先AE(1/550秒・F5.6・±0.0EV) / ISO 200

3方向チルト式背面モニター

X-T100には一般的な横位置でのチルトに加え、自分撮りにも対応した縦方向のチルト機能も有している。縦方向チルトは自分撮り用で背面左側を軸に動く(X-T2やX-H1と逆方向)ためローアンブル撮影するにはシャッターボタンを下に向ける必要がある。やや体勢がキツくなるが、固定式モニターよりはずっと縦位置ローアングル撮影がしやすい。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 15.2mm(35mm判換算23mm相当) / 絞り優先AE(1/240秒・F14・+1.0EV) / ISO 200

高感度

常用感度はISO200〜12800となるX-T100だが、ISO12800ではかなり画質が荒れてくる。高感度側ではISO1600を過ぎたあたりから暗部でのノイズが気になり始めるが、ISO3200くらいまでなら普段使いするぶんには十分で、トリミングや引き延ばしをしないならISO6400くらいまでなら使えるかなといった印象だ。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 15mm(35mm判換算23mm相当) / 絞り優先AE(1/4秒・F5.6・-1.0EV) / ISO 3200

ISO3200で夜の街を撮影した。拡大するとややノイジーな部分もあるが建物や暗部のディティールなどはしっかりと保っている。ここからISO6400まで上げると細部や暗部のディティールが潰れてくる印象だ。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 39.6mm(35mm判換算59mm相当) / 絞り優先AE(1/4秒・F5.6・-1.3EV) / ISO 3200

今回使用したレンズ「XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ」は、明るいレンズだとはいいがたいが、手ブレ補正が付いているので、ISO3200でも夜にスナップするのにも十分に使える。

連写

連写コマ数は約6コマ/秒。入門機としては十分だろう。JPEG記録なら26コマまで連続撮影可能なので動きのあるシーンにも使える。今回は電車をAF-Cで追従しながら連写してみたが、この程度のサイズ感、かつ速度であれば十分使える連写とAF性能をもっている。

セルフタイマー

3方向チルトモニターでセルフィに対応している本機はセルフタイマー機能も豊富だ。顔がカメラの方を向いていることを自動認識してシャッターを切ってくれるフェイスオートシャッターで子供と自撮りしてみた。

カメラの方を向いてとお願いしてもまったく聞く耳を持たない年頃の我が子であるが、フェイスオートシャッターならシャッターを自分で押す必要がなく、子供をカメラの方に向かせることに集中できるため便利であった。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 16.6mm(35mm判換算24mm相当) / 絞り優先AE(1/280秒・F3.6・±0.0EV) / ISO 200

4K動画

入門機ながら4K動画まで対応しており、同じ入門機のX-A5よりも動画機能が強化されている。ただし、4Kの場合は15pまでの対応となり、動きのあるシーンには向かないかもしれない。また、15pとなると日中の晴れた日にはNDフィルターを使わずにシャッター速度を落とすのが難しくなり動きがカクカクしてしまうというデメリットもある。

日中に4K/15pを使って撮影するならNDフィルターは用意しておきたい(作例はあえてNDフィルターを使わず撮影)。また、動きのある被写体だとローリングシャッター歪みがかなり気になってしまう点もチェックしておきたい。

作品

個人的に富士フイルムのVelviaの色味と階調がとても好みで、特に晴れた日との相性が良いと感じている。ややオーバー気味の露出で撮ると柔らかな階調とメリハリのある色合いで表現可能だ。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 45mm(35mm判換算68mm相当) / 絞り優先AE(1/600秒・F5.6・+1.0EV) / ISO 200

Velviaはアンダー気味に使っても暗部の階調を残しながら濃い色をしっかり出してくれる。階段を抜けた先の夏らしい空をバックに、-1.3EVに露出補正して人物をシルエットにして撮影した。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 45mm(35mm判換算68mm相当) / 絞り優先AE(1/1,250秒・F8.0・-1.3EV) / ISO 200

高彩度系だけでなく、彩度を落としたクラシッククロームやモノクロの完成度が高いのもX-T100の強みだ。高架下のトンネルの輝度差が大きなシーンでモノクロを使用して撮影したが、暗部の微妙な階調がしっかりと表現されている。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 15mm(35mm判換算23mm相当) / 絞り優先AE(1/480秒・F8.0・-1.0EV) / ISO 200

フィルムシミュレーションだけでなく、アドバンストフィルターモードを使うと、トイカメラやミニチュア、ポップカラーなど多くのフィルター機能を使えるのも楽しい。トイカメラを使えば何気ないシーンも味のある、オシャレな1枚になってくれる。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 32.3mm(35mm判換算48mm相当) / ノーマルプログラムAE(1/140秒・F4.9・±0.0EV) / ISO 200

アドバンストフィルター ポップカラーで撮影。通常よりもかなり彩度の上がるフィルターのため使えるシーンを選ぶがこのような被写体に使えば夏らしい元気の出る1枚に仕上げることが可能だ。

X-T100 / XC15-45mmF3.5-5.6 OIS PZ / 33.3mm(35mm判換算50mm相当) / ノーマルプログラムAE(1/320秒・F5.6・±0.0EV) / ISO 200

まとめ

X-T100を実際に使い、作例と共に紹介した。今回紹介した写真はすべてJPEGの撮って出しだが、撮影後に編集することなく自分好みの写真を作りやすいと言う点で、入門者にも使いやすいカメラだと感じた。メニューの並びやボタン操作なども迷うことなく快適に使用できた点も嬉しい。

一方で、使用していて少し物足りないと思ったのが暗所でのAF機能だ。明るいシーンでは快適にAFを使用できるが、陰にある被写体や夜間になるとAFが迷ったり、後ろに抜けてしまうということがよく生じた。暗いシーンで速写性を求める用途では注意が必要かもしれない(より明るいレンズを使えば暗所のAF性能も上がるはずだが)。

冒頭でふれたように、これから写真をはじめる入門者にとっては十分な機能を有したカメラであり、サブとしてミラーレスカメラを使おうと考えている一眼レフカメラのユーザーにも向いていると感じた。

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワーク ショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主催 。