新製品レビュー

SONY α7 III(外観・機能編)

フルサイズミラーレスに強力すぎるベーシックモデルがお目見え

ソニーから新しく発売されたα7 IIIは、35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラである。

2013年11月に世界初となるフルサイズセンサー搭載のミラーレスカメラα7を発売して以来、高画素モデルのα7R、高感度モデルのα7Sとシリーズのラインナップを増築し、それぞれがα7 II、α7R II、α7S IIといったように世代を更新しながら着実に進化を遂げてきた。

昨年5月に、新機軸のスピードモデルα9が加わり、大いに話題を呼んだことは記憶に新しい。

すでに高画素モデルの兄弟機α7R IIIが2017年11月に登場した後となったが、このたび本機α7 IIIが発表され、ようやく第3世代にも不在となっていた“ベーシックモデル”が登場したわけである。

ベーシックモデルと位置付けられた最大の特長が、高画素モデルのα7R IIIが有効約4,240万画素なのに対し、有効約2,420万画素に抑えられていること。しかし、画素数がやや大人し目であることを除けば、第3世代の新型カメラに相応しい数々の高機能を搭載しているところが注目すべき点である。

ライバル

35mmフルサイズセンサーを小さなボディに搭載したのが、α7シリーズ最大の特徴である。したがって、シリーズ全体のライバルはフルサイズのデジタル一眼レフカメラということになる。

特にα7 IIIは、約2,420万画素というベーシックな画素数と価格がウリなので、直接的なライバルとしては、キヤノンのEOS 6D Mark IIや、ニコンのD750といったところになるだろう。

ただし、α7シリーズは、現時点でフルサイズセンサーを搭載した(日本メーカーとしては)唯一のミラーレスカメラなので、実際にはシリーズ内でスペックを比較して好みの1台を選択することになる場合が多い。その意味では、同シリーズ内の他モデルこそが最大のライバルだ。

ボディデザイン

上位機種のα7R IIIの新製品レビューでは「一見するとボディデザインは前モデル(α7R II)と変わっていないように見えるけど、よく見ると実はかなり違うよ」といった話をしたが、それは今回のα7 IIIでもほぼ同様だ。

装着レンズはFE 24-105mm F4 G OSS(以下同)。

一見するとボディデザインはα7 IIと変わっていないように見えるけどよく見ると随所に改良が施されている。というよりα7 IIIのボディデザインはα7R IIIとほとんど同じと言ったほうが分かりやすい。

α7 III(左)、α7 II(右)
α7 III(左)、α7 II(右)

α7 IIIはα7 IIに比べ、サイズ・質量はほとんど変わらない。奥行が10mm以上増えているのはホールディング性の高いα7R III同等のグリップに変更されたためであり、質量が50g以上増えているのは容量の大きなバッテリーに変更されたためである。

これらの変更によって、大型レンズ使用時でもしっかりカメラを構えられるようになり、バッテリーの持ちもよくなったのであるから歓迎すべきことだろう。

α7 IIIのように本気で写真を撮ろうというカメラは、やみくもに小型化を目指せば良いというものではないと思う。

コストの関係なのかどうか、ボディ背面のカバーは樹脂製であるが(α7R IIIはマグネシウム合金製)、単独で使っている限りは気づくこともないレベル。トップカバー、フロントカバー、 内部フレームは従来と同じくマグネシウム合金を採用しているため実用上まったく問題がなく、十分な剛性が確保されている。

操作部

一方で、ボタンやレバーなどには、一見してわかる大幅な変更が加えられており、それによって操作性は前モデルα7 IIより大きく向上している。

カメラ上面(カメラを構えた状態で)右側には、モードダイヤル、露出補正ダイヤル、前後ダイヤル、カスタムボタン1/2などが並ぶが、ここはα7 IIとほぼ同じ。

モードダイヤルの「パノラマ」モードが「S&Q」ポジション(スロー&クイックモーション動画)になった程度の小変更だ。

操作系で最も大きな変更があったのが、背面右側のボタン・ダイヤル類である。

α7シリーズが伝統的に備えていたAF/MF/AEL切換レバーは廃止され、代わりにAFエリアの選択などに便利なマルチセレクターが搭載された。

コントロールホイールは大きく、指がかりが大変よくなり、非常に操作しやすくなった。

α7 IIを含めた第2世代までのα7シリーズは、コントロールホイールが小さく浅かったため使いにくく、筆者の場合は親指でなく人差し指でチマチマと回していたくらいなので、まるで一眼レフカメラのように使いやすくなったα7 IIIは、もうこれだけで買っても良いとすら思ってしまう。

反対のカメラ上面左側は、α7 IIと同じくボタンやダイヤルの類は何も装備されていない。ただ、4K動画を撮影・記録できるようになったことで「SteadyShot INSIDE」の文字の上にやや大きく「4K」の文字がプリントされている。

また、右側上部にAF-ONボタンが新設されたため、カスタムボタン3がこちら側に移設されたこともα7 IIとの違いである。

撮像素子と画像処理関連

撮像センサーは有効2,420万画素、35mmフルサイズの裏面照射型CMOSセンサーを搭載している。α7 IIは通常型のCMOSセンサーを搭載していたので、集光効率の高い裏面照射型センサーとなったのは大きな進化と言える。

また、従来比約1.8倍の高速処理を実現した新世代の画像処理エンジンBIONZ Xや、読み出し速度を約2倍に高速化する新世代のフロントエンドLSIなどを新搭載することで、低ノイズと高感度を両立し、最大1.5段分の画質向上を果たしていると言う。

こうしたことは、常用ISO感度がα7 IIではISO100-25600の範囲だったのに対し、α7 IIIではISO100-51200までに拡張されるなど、リアルなスペック上にも表れている。

画像処理エンジンなどの信号処理システムが一新されたためだろう、手ブレ補正アルゴリズムも最適化され、5軸ボディ内手ブレ補正機能はα7 IIの最高約4.5段分から、最高約5.0段分にまで補正効果が向上している。

AF

信号処理システムが一新されたことによってAF性能も確実に進化している。α9およびα7R IIIから引き継いだ新AFアルゴリズムを最適化することで、AF速度や動体追随性能はα7 II比の最大約2倍まで向上している。

425点に多分割化されたコントラスト検出方式AFに重ね、撮像エリアの約93%をカバーする範囲に693点の像面位相差検出AFセンサーが配置されている。

α7 IIはコントラスト検出方式の分割は25点、像面位相差検出AFセンサーは117点となっているので、α7 IIIのAFエリアがいかに広範囲かつ高密度かがわかるだろう。

ミラーレスカメラならではと言ってもよい「瞳AF」は、検出精度と速度がさらに向上し、AF-Cモードにも対応した。これによって、大口径レンズや望遠レンズ使用などの被写界深度が浅い条件でも、動く人物の瞳に連続して的確にピントを合わせ続けることができるようになった。

今回は瞳AFの性能を見るために、カメラの背面モニターを記録してみたが、人物が広い範囲を動いたり横を向いたりしても高精度に瞳を捕捉し続けている様子がわかると思う。人物が回転してカメラが瞳を見失っても、一瞬で再補足する検出精度の高さは驚くべき性能だ。

この高精度な瞳AFは、α7 IIやα9にも搭載されている機能であるが、「AF時の顔優先」を「入」にすると、シャッター半押しやAF-ONボタンを押すだけで自動的に瞳AFが作動するようになったところがα7 IIIの新しさである。

連写性能

連写速度はAE/AE追従で最高約10コマ/秒を達成している。α7R IIIが有効約4,240万画素で最高約10コマ/秒を達成した(もちろんこちらもAF/AE追従でだ)のには驚いたが、そのスペックをα7 IIIも引き継いだカタチである。

しかも、この連写性能はメカシャッター・電子シャッターどちらでも可である。連写速度と言えばα9の最高約20コマ/秒の超高速連写が何といっても至高であるが、α9の約20コマ/秒は電子シャッター使用時のみの話で、メカシャッター時は最高約5コマ/秒に制限されてしまう。

ただし、α7 IIIはα9のように、アンチディストーションシャッターには対応していないため、電子シャッター(サイレント撮影)使用時に動く被写体を連続撮影すると被写体が歪んで写ってしまう可能性があることに注意したい。

メカシャッター・電子シャッターの両方で約10コマ/秒の連写が可能になったというのは、条件によって撮影者がシャッター方式を切り換えられるようになったと考えた方が良いだろう。

また、高速な連続撮影モードには「Hi」と「Hi+」がある。「Hi」時は連写速度が約8コマ/秒となるが、EVFで被写体をリアルタイムで追い続けることができる。一方、「Hi+」時は連写速度が最高の10コマ/秒となるが、EVFで被写体をリアルタイムで追うことができない。

前述の最高約10コマ/秒はあくまで「Hi+」の時の話なので、ドライブモードも撮影条件によって上手く使い分けるようにしたいところである。

ファインダー

EVFには約236万ドットの有機ELパネルが採用されており、これは前モデルα7 IIと同じである。

上位機種のα7R IIIおよびα9は約369万ドットであるため、当然、解像感などの見え具合は劣ることになるが、試しに覗いてみた印象としては、正直それほど気になる程ではなかった。

α7 II時点で、ミラーレスカメラとして十分優秀なEVFを搭載していたと言うことだろう。

すでに、α7R IIIあるいはα9を所有している人にとっては物足りなさを感じるかもしれないが、新規光学系を採用することでファインダー倍率は0.78倍になっており(α7 IIは0.71倍)、α7シリーズ第2世代までのカメラで満足していた人にとっては十分納得できるのではないだろうか。

液晶モニター

液晶モニターには約92万ドットの3型液晶が採用されており、こちらも前モデルα7 IIと同じ……と思いきや、α7 IIの液晶モニターは約123万ドットの3型液晶なので、驚いたことにスペックがダウンされていた。これはいけない。

と、言いたいところであるが、本稿執筆のためにスペックシートを見比べるまで気づいていなかったというのが正直なところ。

α7R IIIやα9の約144万ドットに比べて、精細感が落ちるのはやむを得ないが、α7 IIに比べて実用上見劣りするかどうかは次回の「実写編」で確認したい。

なお、上下チルト式の可動モニターで、上に約107度、下に約41度まで動かすことができる点は同じ。α7R IIIやα9と同様に、新たにタッチフォーカス・タッチパッドにも対応した。

動画機能

4K動画(3,840×2,160ピクセル、30fps)の撮影、記録に対応している。画素加算のない全画素読み出しにより、4K映像に必要な画素数に対して最大で約2.4倍の豊富な情報量を凝縮して出力するため、モアレやジャギーの少ない高解像な4K動画画質を得ることが可能だ。

4Kの記録フォーマットには、業務用映像制作に使用するXAVCを民生用に拡張したXAVC Sを採用しており、最大100Mbpsの高ビットレートで記録が可能となっている。

通信機能

Wi-Fi機能を内蔵しており、「PlayMemories Mobile」アプリをインストールすれば、NFC対応のスマートフォンやタブレットをカメラにタッチするだけで、静止画や動画を転送したり、リモコンとして使用することができる。

さらに、新しくBluetooth機能も搭載されたため、モバイル端末から位置情報を取得し、撮影した画像に付加できるようになった。

端子類

端子類はボディ左側にまとめられており、マイク端子、ヘッドフォン端子、HDMIマイクロ端子、USB Type-C端子、マルチ/マイクロUSB端子が備えられている。

従来のマイクロUSB端子に加えSuperSpeed USB(USB 3.1 Gen 1)対応USB Type-C端子も装備されたことで、Imaging Edgeを使ったPCリモート撮影時に大容量ファイルを高速転送することができる。

ただ、α7R IIIやα9にはあったシンクロターミナルは、本機α7 IIIでは見送られており、該当箇所(マイク端子の下部分)が空地となってしまっているのが寂しくもある。

記録メディアスロット

記録メディアスロットはボディ右側にある。α7R III、α9と同じくデュアルスロットを搭載しており、下段(SLOT 1)がSDカード専用、上段(SLOT 2)がSDカードおよびメモリースティックPROデュオに対応している。SDカードは下段のみUHS-II対応である。

2枚の記録メディア間では、リレー記録(片方のメディアがいっぱいになると、自動切り替えでもう片方のメディアに記録先を変更)や同時記録、振り分け記録、メディア間コピーなどが可能だ。

バッテリー

バッテリー室はボディ底面に独立して備えられている。電池はリチウムイオン充電池NP-FZ100を1個使用。

第2世代α7シリーズまで使用されていたNP-FW50に対して容量が2倍になったことで、撮影可能枚数はミラーレスカメラとしては最大の約710枚(液晶モニター使用時)となった。

しかし、α7R IIIやα9には付属していたバッテリーチャージャーBC-QZ1(急速充電可能)は別売の扱いになってしまった。USB接続でカメラ本体に入れた大容量バッテリーを充電するのは、充電に時間を要したり、充電中は自由にカメラを使えなかったりなど、正直辛いものがある。

バッテリーチャージャーを別途購入すれば済む話ではあるが、できればパッケージングを再考してもらいたいところでもある。

まとめ

ソニーが開拓したフルサイズミラーレスカメラの市場は、いま最も注目されているカテゴリーの1つとなっていることは間違いないだろう。それはプロが使うカメラとしても同じことで、一眼レフからミラーレスへと乗り換えを考えている人も多いはずだ。

第3世代となったα7R IIIおよびα9はその最たるものであるが、いかんせん、スペックと価格が高すぎることがネックだった(もちろんスペックが高いのは歓迎すべきことであるが)。

α7 IIIは2,420万画素に約10コマ/秒というスペックと妥当な価格で登場したことによって、プロのみならず多くのカメラファンにとっても扱いやすく、手の届きやすいカメラとなった。ベーシックモデルの名の通り、α7シリーズの真打は本機だと言えるだろう。

シンクロターミナルが非搭載であったり、バッテリーチャージャーが別売であるなど、細かなところでは、やや意図的なコストダウン(差別化)もみられるが、そうした部分を特に必要としない撮影スタイルであるなら、絶対的にオススメできる高画質ミラーレスカメラであることは間違いない。

それにしても、第1世代、第2世代の時とは異なり、事実上の上位機種の後にベーシックモデルを後出ししてくるとは実に心憎い。だが、何はともあれ待ちに待った“僕らのフルサイズミラーレスカメラ”が登場したのである。

モデル:いのうえのぞみ

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。