交換レンズレビュー

LEICA DG NOCTICRON 42.5mm/F1.2 ASPH./POWER O.I.S

絞り開放から驚くべき解像力。美しいボケも

今回はLUMIX DMC-GX7で試用した。発売は2月。実勢価格は税込15万7,120円前後

 LEICA DG NOCTICRON 42.5mm F1.2は、マイクロフォーサーズ用のAFレンズとしては最も明るい開放F値1.2を実現したレンズだ。35mm判換算で85mm相当の中望遠レンズとして使用できる。本レンズはライカの厳しい光学基準をクリアしたLEICA DGシリーズのレンズだ。

 ライカレンズには開放F値がF1.0前後の最も明るいレンズに「NOCTILUX」 (ノクティルックス)、開放F1.4のレンズには「SUMMILUX」(ズミルックス)、開放F2.0のレンズには「SUMMICRON」(ズミクロン)など名前が付いている。本レンズは開放F1.2であり、新たに「NOCTILUX」と「SUMMICRON」を合わせたような「NOCTICRON」(ノクチクロン)という名称になっている。

 ライカブランドに相応しく洗練されたレンズに加え、高級感のある金属外装など細部まで高級感のあるレンズに仕上がっている1本だ。

デザインと操作性

 パナソニックのLEICA DGレンズはどれも高級感のあるものが多いが、本レンズの高級感は他のレンズと比べてもトップクラス。レンズ鏡筒は金属の外装を採用し、手に馴染む。付属のフードも金属製で鏡胴のデザインにマッチする。

レンズ鏡筒は金属製。絞りリングやフォーカスリングまで金属製のため高級感がある。絞りリングのクリック感やフォーカスリングのスムーズなフィーリングはLUMIX Gレンズの中でもトップクラスだ。レンズの側面には、AF/MFの切り替えスイッチや光学式手ブレ補正機構のON/OFFスイッチがある

 本体サイズは全長約76.8mmと開放F1.2の中望遠レンズと考えるとコンパクトではあるが、マイクロフォーサーズ機に装着するとずいぶん大きく感じるだろう。フードを装着すればさらに大きくなってしまう。また、重量は約425gとマイクロフォーサーズレンズとしてはヘビーな印象ではあるが、ある意味この重量感も高級感を際立ている。

 今回はDMC-GX7に装着して使用したが、重心がレンズ側になるため撮影する際はレンズをホールドするような印象になるだろう。

レンズのフィルター径は67mmとなっている。レンズには可視光域の全領域で光線の反射を低減するナノサーフェスコーティングが施されている

 操作感に関しては、非常に好印象。絞りリングのクリック感やフォーカスリングのスムーズな操作フィーリングは他のレンズと比べても上質。絞りリングは1/3EVステップになっており細かく調整が可能だ。

9枚羽根の円形絞りを採用しており、絞り込んだ際に玉ボケなどが綺麗な円状に近くなる

 また、MF時は適度な重さのあるスムーズなフォーカスリングのおかげで的確にピントを合わせることができた。AF/MFの切り替えスイッチや手ブレ補正の切り替えスイッチも操作しやすい場所にあり重宝した。

マウントは金属製。高級感がありしっかりとした造りのため安心だ

 本レンズは、240fpsの高速AFに対応しており高精度で高速なピント合わせが可能。静音性にも優れ静かなレストランや店内でも気兼ねなく撮影できた。AFは多くのシーンで迷うことなく、気持ちが良いくらい的確にピントを合わせてくれた。開放F1.2でもピントは思い通りの場所に合う確率が高く、スナップ、風景、動物、静物、人物すべてのシーンにおいてストレスなく撮影することができた。

レンズフードはレンズの鏡筒デザインに合わせて金属製を採用。深さもしっかりあるため効果が期待できる

遠景の描写は?

 遠景の描写力は高く、絞り開放からF1.2とは思えないほど解像感は高い。

 今回遠景の描写を確認するために香港の高層マンションを撮影した。ベランダや窓、室外機、柵など細かい部分の描写力を見ていただきたい。開放から画像中央付近の解像感は高く、窓枠や手すり、壁のディテールまでしっかり確認できる。

 空との境界部分にある収差が出やすいマンションのエッジ部分を見ても、擬色などは確認できない。レンズ周辺は少し解像感は落ちるが、開放のF1.2だということを考えれば不満のない描写力だろう。

 周辺の解像感はF2.8まで絞ることで改善されるので、レンズ中央から周辺までパッキリとしたシャープな描写を堪能したい方は、F2.8からF8までがベスト。F11以降は回折の影響で解像感が全体的に失われてくる。

 また、絞り開放では画像周辺が暗くなるヴィネッティングが確認できる。F2.8からF4まで絞れば気になることはないだろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.2
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

【周辺部】

以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F1.2
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

※共通設定:DMC-GX7 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm

ボケ味は?

 開放F1.2の明るさに加え中望遠の圧縮効果によりマイクロフォーサーズとは思えないほど大きなボケを堪能できる。

 ボケは素直で、絞り開放ではピント位置のシャープな部分からなだらかにボケていくので気持ちよい。絞り開放では大口径レンズの宿命でもある口径食の影響によりレモン型のボケになってしまうが、F2.8まで絞れば真円に近くなる。

 また、玉ボケのエッジ部分の輪線などもほとんど気にならず、とても綺麗な印象。F4まで絞り込んでもボケの固さは気になるほどではなく好印象だ。

 最短撮影距離は50cmと、中望遠レンズとしては近接撮影に強い。最大撮影倍率は0.2倍で花や静物などもそれなりに大きく撮影できる。

絞り開放・最短撮影距離(約50cm)で撮影。DMC-GX7 / 1/1,600秒 / F1.2 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm
絞り開放・距離数mで撮影。DMC-GX7 / 1/200秒 / F1.2 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm
絞りF2.8・距離数mで撮影。DMC-GX7 / 1/400秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm
絞りF4・距離数mで撮影。DMC-GX7 / 1/400秒 / F4 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm

逆光耐性は?

 逆光耐性に定評のあるナノサーフェスコーティングのおかげでレンズフレアやゴースト、コントラストの低下も最小限となった。太陽が画面内にある作例を見てもわかるように、逆光耐性は高い。

 よく見てみると気にならない程度に少しフレアっぽくなっているが、角度によっては緑色のスポットのような物が発生する場合があるので注意。太陽を画面外に配置した作例でもわかるように、フレアやゴーストは発生していないようだ。コントラストの低下も最小限の印象だ。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。DMC-GX7 / 1/6,400秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。DMC-GX7 / 1/1,600秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm

作品

日陰でくつろいでいる猫を撮影した。絞り開放でもピント位置は驚くほどシャープ。毛の1本1本や猫の目の血管までもしっかり描写している。ボケは自然で柔らかく、ライカらしい写りが魅力的だ。DMC-GX7 / 1/1,600秒 / F1.4 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm
最短撮影距離付近で花を撮影した。F4まで絞って花全体にピントをしっかり合わせている。しべの部分など圧倒的な解像感に驚かされる。DMC-GX7 / 1/1,300秒 / F4 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm
お祭りで売っていた鮎の塩焼きを撮影した。F2.5まで絞り適度なボケ感と主被写体のディテールの見え方を調整した。最短撮影距離が50cmのためスナップ撮影にも役立つ印象だ。DMC-GX7 / 1/1,300秒 / F2.5 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm
空港の展望デッキから飛行機を撮影した。解像感が非常に高く飛行機の機体に書かれている細かい文字やネジのような細かい部品までしっかりと写っている。直射日光の当たる真っ白い機体にも関わらず収差などは確認できない。非常に優秀だ。DMC-GX7 / 1/3,200秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 42.5mm

まとめ

 本レンズは筆者も発売後から愛用しており、マイクロフォーサーズのカメラを使う際には必ず持って行くお気に入りレンズになっている。

 優秀なAFが使用でき、開放F1.2と非常に明るく、光学式手ブレ補正により夜のスナップなどでも活躍してくれる。さらに、解像感は作例を見ての通り圧倒的で不満は感じられない。確かに価格はマイクロフォーサーズのレンズとは思えないほど高価ではあるが、スペックを見てみると納得できるはずだ。

 このようなハイスペックなレンズを使用してみると、写真はレンズで大きく変わることを納得していただけると思う。また、金属外装を採用し、フォーカスリングや絞りリングなど細部にわたって精密に作られているので、操作する楽しみも味わえる。ワンランク上の世界を体感したい方にはオススメできるレンズといえるだろう。

上田晃司

(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/