切り貼りデジカメ実験室

LYTRO ILLUM+合わせ鏡イチガン

世界初!? ピントが変わる合わせ鏡写真

「ピントが変えられる写真」が撮れるカメラとして知られるLYTRO ILLUMだが、前面に大きな鏡が付いている。実はこれはハーフミラーで、レンズ側からは透けて見えるのである。以前の連載で制作した「合わせ鏡イチガン」の改良型で、これを別の鏡に向けると「合わせ鏡写真」を撮ることができる。いやそれだけではなく、カメラがLYTRO ILLUMだけに「ピントが変えられる合わせ鏡写真」が撮れるという、恐らく世界初の実に画期的なシステムなのである

二つのテクノロジーの融合を試みる

LYTRO ILLUMは“ピントが変えられる写真”が撮れる画期的なカメラで、私も昨年「LYTRO ILLUMの不満をコンバージョンレンズで解消!」という記事を書いている。

そして今回は、このLYTRO ILLUMにさらなる新機能を付加させる、という実験を試みる事にした。それは同じく以前この連載で書いた「鏡のトンネルを写す『合わせ鏡イチガン』」と合体させるという事なのである。

この記事で製作した合わせ鏡イチガンは、卓上鏡の真ん中に穴を開け、そこからiPhoneのレンズを覗かせる、という構造をしていた。これを他の鏡に向けて撮影すると、鏡と鏡の反射が繰り返された「鏡のトンネル」を写すことができるという、これまた画期的な機能を持っていた。

しかしこの「合わせ鏡イチガン」には、鏡のトンネルの中心に「レンズの穴」が映り込んでしまう欠点があった。それと、使用できるのがiPhone内蔵カメラなど、極小レンズを搭載した機種に限られていた。

そこで改良案として、ハーフミラー(半透明鏡)を使うアイデアが閃いたのである。合わせ鏡イチガンにハーフミラーを使えば、鏡のトンネルに穴が写ることもなく、使用できるレンズ径の制限もなくなり、さまざまなカメラで使用可能になる。

「さまざまなカメラが使用可能になる」ということでさらに閃いたのが、LYTRO ILLUMと組み合わせるというアイデアである。LYTRO ILLUMのレンズ前面にハーフミラーを装着し、ズームと撮影距離とを調整すれば、“ピントが変えられる合わせ鏡写真”が撮れるはずだ。

実は、前回の「合わせ鏡イチガン」では静止画より動画の方が面白かったのだが、LYTRO ILLUMの“ピントが変えられる写真”は静止画と動画の特徴を兼ね備えたもので、だからこれで撮った「鏡のトンネル」もまた面白いものになるだろうと期待できるのだ。

まさに米LYTRO社による「ライトフィールドテクノロジー」と、私の思い付きである「ミラートンネルテクノロジー」の融合だが(笑)、果たして結果はどうなるか? 以下ご覧頂ければと思う。

―注意―
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カメラの改造

今回使用するハーフミラーはアクリル製で、東急ハンズで購入した。これをPカッターを使って適当な大きさにカットする。しかしこれだけではミラーが透けて見えやすく、レンズへの装着も難しい
そこでミラーの透過を防ぐため黒色ABS板を同サイズにカットし、さらにレンズを覗かせるための穴を開ける
さらにレンズへの装着を確実にするため、一回り小さな穴を開けたABS板を製作する
パーツの接着は両面テープで行う。案外丈夫で長持ちするし、万が一失敗した場合に剥がすことができる
すべてのパーツを接着し、さらにレンズ装着用の72mm→67mmステップダウンリング(マルミ製)を用意する
レンズの穴にステップダウンリングを接着すると、ハーフミラーのアダプターが完成する
LYTRO ILLUMのフィルターネジに、ハーフミラーアダプターを慎重にねじ込んで装着すると「LYTRO ILLUM+合わせ鏡イチガン」が完成する
実際の撮影状況はこんな感じ。路上で見つけた「鏡」にカメラを向けて撮影すると「鏡のトンネル」を撮影することが出来る。ハーフミラーを使ったぶん光量が落ちるため、三脚に固定して使用した

カメラの使用感と実写作品

今回の実験はアイデア先行で不安だったが、結果としてはこれまで見たことがないようなおもしろい映像ができ上がった。

下記に表示された「鏡のトンネル」写真をクリックすると、その部分のピントが合うのでぜひ試していただきたい。まさにこれまで味わったことのないような、実に奇妙な映像体験ができる。鏡の反射を繰り返すため画質は良いとは言えないが、それを補って余るおもしろさがある。

 ◇           ◇

街中に駐車してあったバイクのバックミラーを撮影してみた。写真の各部をクリックすると、鏡のトンネルの各面のほか、鏡の縁のそれぞれにピントが変わって見える。


上記と同じバイクに付いていた、もう1つのバックミラーを撮影。通りの反対側の風景画写っている。写真をクリックしてピントを移動させると「鏡のトンネル」の奥行きの深さが体験できる。


別の場所に止まっていたバイクのバックミラー。ピントを移動させると1番手前に同心円状の不思議な影が写っている。何かと思って考えたら、逆光で撮ったためLYTRO ILLUMのレンズの反射が写ってしまったことに気が付いた。


上記と同じバイクの反対側のバックミラーだが、フェンス越しに線路や踏切が写っている。このような立体的な風景は、もともとLYTRO ILLUMの被写体として適していると言える。


これは最初に撮ったバイクのバックミラーだが、どのミラーにも撮るに値する風景が写っているとは限らず苦労してしまった。これは車が通過する瞬間を狙って撮ってみたが、同じ車がそれぞれの鏡面に映っているのが面白い。


バックミラーの向こうに道行く人々の姿が見えるが、夕方のためシャッター速度が遅くブレて写っている。


室内にあった鏡台を使って、みんなで記念撮影をしてみた。バックミラーは凸面鏡だが、これは平面鏡で、視覚効果が異なっている(新宿の竹林閣で開催された「逆三角関係展Vol.6」会場にて)。


路上に停車していたトラックのバックミラーを撮影。「鏡のトンネル」としてはきれいに写っているが、被写界深度が深く写ってしまいピントの移動があまりできない。


丸形のカーブミラーを写してみたのだが、これも被写界深度が深くピント移動がほとんどできず、その意味では失敗作だ。LYTRO ILLUMの撮像素子は小型に属する1型で、凸面鏡の場合はある程度小さくないと「ピントが変えられる合わせ鏡写真」としての効果を得ることができないのだ。


 ◇           ◇

ただしこの撮影は非常に大変で、えらく苦労してしまった。

LYTRO ILLUMは前回の記事にも書いたとおり「ピントが変えられる写真」が撮れるという性質上、特殊な使いこなしを要するカメラだ。しかし今回は「ピントが変えられる合わせ鏡写真」というさらに特殊な撮影に挑むことになったのだ。

まず大型のハーフミラーを汚したり傷つけたりしないよう扱うのが大変で、カメラへの装着や取り外しにも気を遣わなければならない。

またハーフミラーを通して撮影するため光量が約1/10にまで低下し、三脚に固定して使用する必要がある(LYTRO ILLUMは高感度撮影でノイズが目立つ)。

さらに、街中で被写体となる「鏡」を見つけるのもけっこう大変で、たとえ鏡があったとしてもそこに撮るに値する風景が写っているとは限らない。

ようやく適切な鏡を見つけたとしても「ピントが変えられる合わせ鏡写真」として撮影するため、撮影距離、焦点距離、ピント位置、の各パラメーターを調整しなければならず、三脚も含めたセッティングは実に簡単ではないのである。

しかし以上のような苦労の甲斐があって、LYTRO ILLUMを開発したライトロ社も想定していなかったであろう映像表現の新境地が開拓できて、自分としては満足している。

なお、撮影データは専用ソフトLytro Desktopにより現像し、コントラストや色調などを調整している。

糸崎公朗

1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。主な受賞にキリンアートアワード1999優秀賞、2000年度コニカ フォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」(共にアートン)など。毎週土曜日、新宿三丁目の竹林閣にて「糸崎公朗主宰:非人称芸術博士課程」の講師を務める。メインブログはhttp://kimioitosaki.hatenablog.com/ Twitterは@itozaki