私はこれを買いました!

ずっと待ち望んでいた高画素・高速連写機 ニコンの真面目な設計を垣間見た

ニコンD850/井上六郎

2017年を締めくくるにあたり、本誌のレビュー系記事にご寄稿いただいた皆様に今年新品で購入したデジタルカメラ、レンズのうち、特に思い入れのある製品について語っていただきました。(敬称略)

今年もまた黒い(白も)塊を何の戸惑いも無く、いくつも買ってしまった。

カメラ2機種3台、レンズに至っては8本と必要最低限に収めない趣味要素満載の設備投資。この経営はいつまで続くのだろうか……。

ソニーα9のレビュー執筆でその先進性を感じ、局地的活躍を見込んで購入を決定。それに伴うGMレンズ群一式がその大半を占めるが、今回取り上げるのは一眼レフカメラの雄、ニコンD850だ。

α9での撮影はトライ&エラーを繰り返しつつ、「写真を撮る」という行為そのものに楽しんで臨め、局地性能もまずまず発揮できた……が、いざ、確実に押さえるべきシーンは使い慣れたニコンD5やキヤノンEOS-1D X Mark IIにスイッチしていた。

そんなシーンでも高画素主義の私が本当に使いたいのは、ニコンでいうD800番台。これに高速連写性能があれば……と常々思っていた。

発売早々にD800Eを使い始め、次ぐD810はD800Eと同画素であり、RAW現像ソフトのCapture NX 2が使えないので見送った。さすがに4年使用となるD800Eに2度目の重修理がそろそろかと迫る昨年、4,240万画素・約12コマ/秒で登場したα99 IIを羨ましく思っていた。

そして今年、ずっと待ち望んでいたFマウントの高画素高速連写機がようやく出現したのだった。あと1年、いや半年早く世に出て欲しかったが、熊本地震の影響か、と想像する。

発表日にバッテリーグリップと共に2台予約するも、発売日に入手したのは1台。それでも購入後、小躍りしながら金の箱を抱えてシェイクダウンのためにサーキットへ直行。オールマイティな実力を実感したのは夏の日差しがまだ残る初秋だった。

具体的には4,575万画素で約9コマ/秒(バッテリーグリップ使用時)という性能はもちろん、D5のパーカッシブな音とは違う落ち着いたシャッター音(煩いとは言わないけど、まだまだ小さくしてね)、動画撮影時の絞り、感度の制御アルゴリズムなどがお気に入り。使っていて、随所にニコンの真面目な設計・開発陣がこつこつと積み上げてきたものを感じる。

ただ、ミラースイングがD5より遅いのか、動体を連写で追う際の見え方が違う。ストロボのワイヤレス発光で、コマンダーとして役立つ内蔵ストロボが無いのも残念。Fマウント初の像面位相差AFも積んで欲しかった……。

いずれにしても、ミラーレスカメラの勢いが増す昨今だが、基本に忠実な一眼レフカメラがまだ必要と再認識させられ、ここ数年はこの実直なカメラが活躍してくれそう、と思うのでした。

これも今年、手に入れたタムロン100-400mmズームを装着してのカット。頭上通過をフォローするにはこれくらいの軽量レンズが重宝する。D850の高精細がしっかり反映できる出来映えで、財布にやさしい設備投資だった。D850 / 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD / 1/1,250秒 / F8 / -2EV / ISO64 / シャッター優先AE / 400mm

プロフィール & 近況報告:慣れないカメラを手懐けるなど、反抗期の子供を持つ親にすれば大した事ない、と思う46歳。2018年の飛行機カレンダー「美しき航路」の売れ行きがちらちら気になる忙しい師走を、口数少ない反抗期と共に過ごしています。

井上六郎

(いのうえろくろう)1971年東京生まれ。写真家アシスタントを経て、出版社のカメラマンとして自転車、モーターサイクルシーンなどに接する。後、出版社を退社しフリーランスに。マラソンなどスポーツイベント公式カメラマンも務める。自転車レース、ツール・ド・フランスの写真集「マイヨ・ジョーヌ」を講談社から、航空機・ボーイング747型機の写真集「747 ジャンボジェット 最後の日々」を文林堂から上梓。日本写真家協会、日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。