【インタビュー】リコー「GXR」後編―新規ユニットの可能性はあらゆる方向から検討


GR LENS A12 50mm F2.5 Macroを装着したGXR

 前編に引き続き、リコーのユニット交換式デジタルカメラ「GXR」のインタビュー(後編)をお届けする。

 お話を伺ったのは、リコーパーソナルマルチメディアカンパニー企画室 企画グループ 技術主担の福井良氏、同パーソナルマルチメディアカンパニーICS設計室 設計1グループ シニアスペシャリストの篠原純一氏、同パーソナルマルチメディアカンパニーICS設計室 設計2グループ シニアスペシャリストの清水隆好氏、同パーソナルマルチメディアカンパニーICS設計室 設計3グループ シニアスペシャリストの牧隆史氏、同パーソナルマルチメディアカンパニー企画室マーケティンググループ シニアスペシャリストの岡本明彦氏の5名。

 福井氏が商品企画、篠原氏がメカニズム関係、清水氏がエレクトロニクス関係、牧氏がソフトウェア関係、岡本氏がプロモーション関係をそれぞれリーダーとして担当した。

「GXユーザーは是非手にとって欲しい」

GX200(2008年8月発売)

――GXRはGX200の後継機とのことですが、GX200をブラッシュアップしたいわば「GX300」を希望しているユーザーも多いかと思います。

福井:GXRがこういう形になったので、これまでのGXユーザーの方は思い描いていたGXシリーズのイメージと違うと思ったかもしれません。しかし、RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VCを装着してただければ、GXと変わらなく使用していただけます。加えて、GX200で要望のあった高感度のノイズ耐性なども高めています。ですのでGXユーザーには、ぜひGXRを触って欲しいと思います。

――GX200の生産は続けるのですか?

福井:GX200に関しては生産を終了する予定は今のところありませんので、当面販売は続けます。

――RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VCは、GX200より画質が良くなっているのですか?

福井:センサーも画像処理エンジンも変わっていますので、その部分でかなり画質は良くなっています。

:高感度のノイズが飛躍的に良くなっています。

――起動時間もGX200より早くなっているのですか?

清水:GXR本体とユニットの両方にマイコンを積んでいますので、起動時間はGX200には勝てません。電源を入れたときにGXR本体がユニットと通信を行なうためです。しかしマイコンの動作周波数を上げていますので、操作のレスポンスはGX200より向上しています。

福井:起動時間の差は、体感できるほどの違いではないですね。僅かにGX200が早いですが、ほぼ同等と思っていただいても良いくらいです。

バッテリーは新型の「DB-90」を採用している

――バッテリーの持ちはどうでしょうか?

清水:CIPA準拠でGX200は約350枚です。対してGR LENS A12 50mm F2.5 Macroが約320枚、RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VCが410枚です。使用するバッテリーの容量が増えたこともありますが、省電力技術の地道な積み重ねによるものです。

福井:GXR本体とユニットの両方にエンジンを積んでいることを考えると、かなりがんばったのではないかと思います。

――RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VCでHD動画が撮影できない理由は何ですか?

福井:センサーからの信号読出速度の制限によるものです。

マクロ画質にもこだわった「GR LENS A12 50mm F2.5 Macro」

――次にGR LENS A12 50mm F2.5 Macroですが、なぜAPS-Cサイズで50mm相当というカメラユニットを企画したのでしょう?

福井:ユニット交換式という新しいシステムを考えたときに、要望のあったサイズの大きなセンサーを載せようというのがスタートでした。そこでAPS-Cサイズということが決まりました。やはり大きなセンサーを使うことの特徴の1つは“背景のボケを利用して立体感を出す”という使い方だと思います。そうした描写を活かすには望遠系のほうが良いだろうと、35mm相当と50mm相当の2つを考えました。50mmは昔で言う標準レンズです。使い方によってさまざまな撮り方ができることから、最初に出すレンズとしては有用性の高い50mm相当に決めました。

GR LENS A12 50mm F2.5 Macroでの最短撮影時

――マクロタイプという仕様は最初からあったのですか?

福井:我々リコーとしては、マクロ機能を非常に評価していただいています。ですから、マクロに強いという部分は活かしていきたいということでマクロタイプを選んでいます。

――マクロの最大撮影倍率は1/2倍ですが、もう少し上げることもできたのではないでしょうか?

福井:それはサイズの問題ですね。今回は、マクロ領域での画質を維持するために全体繰り出し型を採用しています。等倍まで対応させるには、今の倍くらいの繰り出し量が必要になります。そうなるとGXRの高い機動性といったコンセプトから外れてしまいます。1/2倍に抑えることで、倍率とコンパクトさの両立を図りました。もちろんやろうと思えば等倍も可能ですが、それが商品として良いのかと言えばそうではないという判断です。

:マクロはきちんと撮れるんだけれども、マクロ専用ではなくてどちらかというと一般撮影を主にしています。マクロ以外での使い勝手を犠牲にしたくなかったということです。

――GR LENS A12 50mm F2.5 Macroは「GRレンズ」を採用しています。改めて、GRレンズとはどういうものですか?

福井:画面周辺の画質まで含めて、弊社内の一定の基準を超えたものをGRレンズと呼んでいます。具体的な基準については公開はしていません。感覚的に申し上げると、画像の端まで直線性が保たれて解像力も維持しているレンズということになります。なおGR LENS A12 50mm F2.5 Macroは歪曲がほとんどありませんから、カメラで補正をする必要はありません。このユニットを装着した場合、メニューで歪曲補正をONに設定しても補正は行ないません。

GR LENS A12 50mm F2.5 Macroは「GRレンズ」を採用

――GR LENS A12 50mm F2.5 Macroは、AFの合焦速度が遅いという声が聞かれます。

福井:これはマクロ撮影でのことだと思いますが、このレンズは全体繰り出しなこともあってメカ的に動く量が多いというのが理由の1つです。また性能を取るために、GRやGXに比べると4倍くらいのフォーカス検出ポイントを持っているんですね。そこをチェックしながら合焦させるのでどうしても遅くなる場合があります。合焦位置と現在のフォーカスが近ければさほど時間は掛かりませんが、大きくずれた場合はフォーカスを全部スキャンするため時間が掛かります。

 AFの高速化は今後の技術課題ですね。ファームウェアのアップデートも含めて、さまざまな努力をしていきたいと考えています。例えば、単純に速くするだけではなくて、使い勝手の面でAFのスキャン領域をある程度ユーザーが制限して高速化できるようなものなども提案していきたいと考えています。

:我々が言っている“コンパクトデジタルカメラの延長”という部分からだと、コンパクト機に比べて遅いという印象があるかもしれません。しかし同等の単品マクロレンズから見れば、決して遅いわけではないと思います。それに、実焦点距離33mmで7cmまで近づけるマクロレンズはなかなかありませんよ。

GXRの商品企画を担当したリコーパーソナルマルチメディアカンパニー企画室 企画グループ 技術主担の福井良氏

福井:特にこのレンズは最初に出すレンズなので、まず画質にこだわっています。使い勝手も上げたいのですが、画質という部分が評価されないとGXR自体が評価されないと思いますので、今回は画質を一番重要視しています。

――GR LENS A12 50mm F2.5 Macroでは、手ブレ補正機構の搭載を見送っています。

福井:やはりサイズとの兼ね合いからですね。センサーシフト機構は、大きさ的に実装が難しいのです。

――レンズシフト式の手ブレ補正はどうでしょう?

福井:我々としてはこれまでセンサーシフト式を採用しているので、レンズシフト式を採用する方向性は無いですね。2つの方式を常に追いかけていけるかというと、それは厳しいですから。ただ、今後のカメラユニットには何らかの方式で手ブレ補正機構の搭載は進めて行きたいとは考えています。

:レンズシフト式にすれば、小さくなるというものでもないのです。レンズの光軸方向のサイズは有利になるかもしれませんが、筒が大きくなってしまうといった問題が出てくると思います。

――センサーのローパスフィルターがレンズに最適化してあるそうですが?

福井:ローパスフィルターはレンズの特性に合わせ込むことが必要です。レンズ交換式カメラではどんなレンズが来るかわかりませんから、ある程度想定内でローパスフィルターの特性を決めることになります。GXRはセンサーとレンズが一体化していますから、レンズの能力が最も発揮できるローパスフィルターを使うことができるのです。

篠原:レンズの透過率は個々のレンズによって異なりますから、例えば、画像処理エンジンと組み合わせて発色なども偏りがないようにすることができます。

Foveonセンサー採用の可能性も

様々なユニットを想定している(発表会の資料より)

――各ユニットの撮像素子メーカーは?

福井:それは公開していません。

――今後、例えば「Foveon X3ダイレクトセンサー」や「スーパーCCDハニカムセンサー」といった撮像素子を搭載したユニットの可能性はありますか?

福井:多くの方から要望を頂いており、企画としては考えています。当然、そういったセンサーも利用できるのがこのシステムの特徴ですから、十分可能な形になってはいます。ただ、いろいろな面での技術的制約はあると思いますので単純にすぐできるのか? と言うことになるとさまざまな検討が必要になってくると思います。

――GRシリーズ(28mm相当、1/1.7型センサー)と同じ構成のユニットもリリースするのでしょうか?

福井:そういう選択肢もあるとは思いますが、現時点でリリースを決めているものではないですね。

――中判サイズのセンサーを積んだユニットの可能性はどうでしょうか?

福井:可能性はありますね。プロカメラマンからも35mmフルサイズも含めて要望があります。最初にプロカメラマンにお見せしたときから、「ここまでできるなら35mmフルサイズでやってほしい」と言われていました。むしろ、中判サイズより35mmフルサイズユニットの希望が多いですね。

清水:35mmフルサイズセンサーは画素数も多いので処理速度や消費電力の面で制約が出る可能性はありますが、搭載できないわけではないです。

福井:また、「マウントアダプターでいろいろなレンズが使えるユニットが欲しい」という声も早いうちから聞かれました。こちらについても今後検討をしていきたいと考えています。

――そうした“レンズ交換可能なユニット”を作る上での課題は何でしょう?

福井:一番の問題はシャッターではないでしょうか? ユニットの中にどうやってシャッターを形成するかということですね。それとローパスフィルターに付着するゴミが問題になると思います。そもそも、レンズ交換のできるユニットはGXR本来のコンセプトに反することにはなりますが(笑)。ただ、我々としてコンセプトに反するから絶対にやらないと言うつもりはありません。市場からの要求があれば、それに応えていきたいと思っています。

――カメラユニットを本体から離して使用できるモックアップについて、製品発表会では技術的にはまだ難しいという説明でした。

福井:そうですね。GXR本体とユニット間で高速な通信を行なってますので、ケーブルで繋ぐと信号の減衰が問題になります。

発表会ではユニットをGXRから離して使用するユニット(左)やワイヤレスユニット(右)のモックアップを展示した

清水:データ化けが起こるのが一番怖いですね。メタルケーブルでそのまま延長するのは、現在の技術ではかなり厳しいです。解決策としては、光ファイバーで繋ぐという方向もあります。また、何らかのアダプターを使用して単純な信号に変換するという高速シリアル通信的な方法もあるでしょう。あるいはいっそのことワイヤレスで飛ばすという手もあります。今はいろいろと可能性を練っている段階ですね。

 ワイヤレスや光ファイバーだと、ユニット側にバッテリーを付けなければならなくなるといった新たな課題も出てきます。まだアイデアレベルですが、電源のみ有線にして「電源ライン2本+光ファイバー」というやり方も考えられますね。

GXRのメカニズムを担当したリコーパーソナルマルチメディアカンパニーICS設計室 設計1グループ シニアスペシャリストの篠原純一氏

――接続コネクタの耐久性はどうなっていますか?

篠原:公には1万5,000回の着脱を保証していますが、社内での試験では10万回でも機能的に問題が無いことを確認しています。

――コネクタはどういったものを使っているのですか?

篠原:PCで使われているベイコネクタと呼ばれる汎用品です。GXRのためのカスタム品というわけではないです。ただ、取付けに関しては、ユニット側は多少動くようになっており、メカ嵌合とコネクターとの位置関係が少しずれてもきちんと嵌るように工夫してあります。

GXRの基板。右側の細長いパーツが68ピンのベイコネクタ。中央の大きな部品はメモリーカードスロットGR LENS A12 50mm F2.5 Macroのメイン基板。最も大きな半導体が画像処理エンジン
GXRのエレクトロニクスを担当したリコーパーソナルマルチメディアカンパニーICS設計室 設計2グループ シニアスペシャリストの清水隆好氏

――GXR本体とユニット間の通信速度はどれくらいですか?

清水:理論値で言えば、最大で144MB/秒程度になります。今のところRAWデータの容量は20MB程度なので余裕で転送できます。実際には転送に0.2秒も掛かっていませんので、100MB/秒くらいのスピードは出ていることになります。おそらく実効速度的にも、理論値に近いところまでは出るのではないかと思います。

 今回、GXRとユニット間の通信速度を上げることは優先して行ないました。本音を言うと、実はこの通信システムは開発中に1度作り直しています。開発当初は40MB/秒程度を見込んでいたのですが、後で足りないことがわかりアーキテクチャーを大幅に変更したというエピソードがありました。

――ユニットの電源電圧は?

清水:リチウムイオン充電池の電圧(3.6V)がそのまま掛かるようになっています。ボディ側で電圧を作ることはせず、必要な電圧はそれぞれのユニットで作ってくださいね、ということです。ただ、GXRとユニット双方の電源管理はGXR本体が行なっています。

――今後出てくるユニットに画素数に制限などはあるのでしょうか?

:GXR本体側の処理能力の問題があるので、画素数が青天井にいくらでもというわけではありません。ですが、現在市場に出ているような画素数のものであれば大丈夫です。例えば1,800万画素くらいまでなら問題ありません。

・GXRの外装部品(マグネシウム合金製)

次のユニットは夏前のリリースを目指す

――機能拡張ファームウェアの公開については明言しています。どのような内容になるのでしょうか?

福井:具体的な内容については今後検討していくことになります。GRシリーズが定期的に機能拡張ファームウェアを行なっていますが、そうしたイメージになると思います。まずは、AF関係の使い勝手を向上させるようなことは優先順位を高めて行きたいと考えています。もちろんどれくらいのことができるようになるのかはまだお話しできませんが。

:あとは、GRで行なっているようなユーザーインタフェースの改善や機能追加などがあると思います。どういった形でのファームウェア提供になるのかはまだわかりませんが、GXR本体とユニットはそれぞれに個別のファームウェアを搭載しており、どちらもバージョンアップが可能になっています。

CX2(2009年9月発売)

――次に出るユニットは28~300mm相当という「CX2」と同じレンズと搭載したユニットになります。CX2と同じ部分、異なる部分はどこですか?

福井:基本的にレンズはCX2と同じものになります。撮像素子はその時点で最適なものを使う予定ですので、CX2のものとは変更になる可能性があります。

:CX2は完結したカメラなので絵作りもその中でチューニングしていますが、新ユニットはGXRに合わせた統一感のある絵作りになります。

――この新ユニットはいつ頃発売になりますか?

福井:2010年のできるだけ早い時期に出したいと思います。開発は順調です。夏前を目標にしています。

GXRのソフトウェアを担当したリコーパーソナルマルチメディアカンパニーICS設計室 設計3グループ シニアスペシャリストの牧隆史氏

――新ユニットを使う際には、GXR本体のファームウェアを更新する必要がありますか?

:新ユニットが持っている新しい機能に対応しなければなりませんので、そうなると思います。メニュー項目も増えるかもしれません。なるべくユーザーの手間にならないようにアップデートできる形を取りたいと考えています。

――今後リリースするユニットの方向性は?

福井:発表会で湯浅(リコー パーソナルマルチメディアカンパニー プレジデントの湯浅一弘氏)が申し上げましたが、カメラ系以外のユニットを含めて年に2~3個のユニットを展開していきます。カメラ系ユニットに関しては、レンズとセンサーサイズのバランスを考えながら準備していくことになります。具体的な仕様については、市場での要望を聞きながら選んでいきたいと考えています。

――現時点で多く挙がっている要望は何ですか?

福井:様々な要望をお聞きしています。APS-Cサイズのセンサーで広角系のユニット、24mmよりも短いような超広角レンズを積んだユニット、もっと望遠に強いユニットなどいろいろなご意見があります。

――発表会で展示したモックアップで人気のあったのはどれですか?

福井:わかりやすかったことがあると思いますが、延長ケーブルでユニットを離して使えるユニットの人気が高かったです。ワイヤレスタイプも割と人気がありました。プリンターなど出力系やストレージ系のユニットを展開していければ面白いと思います。

発表会で公開したモックアップの一部

プロジェクターユニットのモックアップストレージユニットのモックアップ
プリンターユニットのモックアップ

――3D画像が撮影できる2つのレンズを搭載したユニットはどうでしょうか?

福井:理屈上は、やればできると思います(笑)。ただ、立体視のできる液晶モニターという面では無理ですね。3Dはどうやって見せるかという部分が問題になって来ると思います。

――動画専用のユニットという可能性もあると聞きました。

福井:動画に特化したセンサーを積んだユニットというのも可能性としてはありますね。ただ我々は、まず静止画をしっかりやろうという考え方なので、静止画のユニットを広げていくという方向なのかなと思います。

――例えば4K×2K(4,096×2,160ピクセル)といった現行のHD以上の動画撮影は可能でしょうか?

清水:今のところGR LENS A12 50mm F2.5 Macroで720pのHD動画を撮影可能ですが、この画像処理エンジンでは1080pの処理はできません。当然4Kの処理は無理ですが、今後4Kを処理できる新しいエンジンを開発すればそういったユニットを実現できる可能性はあります。

:どのようなフォーマット(圧縮形式)を採用するかで帯域の使い方はだいぶ違ってきますね。こうしたユニットを作るとすれば、通信バスの実力を見ながら検討していくことになると思います。

コネクタの通信規格は非公開

――GXRとユニット間の通信仕様は公開するのですか?

福井:規格化して公開するということは、現時点では考えていません。しかし、“一緒にやりましょう”というメーカーさんがあれば拒むものではないので、一緒に世界を広げていきたいですね。いくつかのメーカーさんにはGXRに興味を持っていただいており、リコーがどういった考えでやっているのかを知りたいとのことで打診は受けています。ただ、具体的な計画はまだ何もありません。

――ユーザーがユニットを自作できる可能性は?

福井:ユーザーの方に何かしていただくというのは、実質的にかなり困難だと思います。延長ケーブルのようなものを作ってみることは可能かもしれませんが、現実的には無理ではないかということです。

:まず、通信インターフェースの開示が必要なので難しいところですね。レンズ部分を変えてもらうといった、糸崎さん(美術家・写真家の糸崎公朗氏)系の改造ならばユーザーの責任で可能かもしれません。

――では、レンズ部分を自作するためのベースユニットのようなものも考えられますね。

福井:リコーとして、そういったものを積極的にやるということはないと思います。例えば、プロカメラマンの方が「こういうことをやってみたいんだけれど」という個人レベルでのご相談があればもしかしたら対応できることがあるかもしれませんが、現状ではやはり難しいですね。

――トイカメラ的なユニットはどうでしょうか。

福井:そういった要望も多いですね。ただ、GXRを提案していく上で本質はそういった部分ではないのかなと思っています。トイカメラのようなものが主軸に来るのかといえば、違うと考えています。まずしっかりした画像を作るという芯があって、余力の部分でそういう部分を揃えていくという形だと思います。当然トイカメラのようなユニットもあって良いと思っているので、出てくる可能性はありますね。

――ユニットのロードマップは公開しないのですか?

福井:次のユニットが出る辺りで、なんらかのものが必要になるのかなとは思っています。ただ我々としても、しっかりした計画と技術的な裏付けを取ってから発表させていただきたいのです。安易に発表して、結局できなかったということではいけません。ですから、この点に関しては少し時間を頂きたいというところです。また、初めて出すシステムですので「我々としては次はこうだ」という考えはありますが、それをユーザーに押しつけてしまうのも違うと思っています。市場の意見を聞きながら調整していきたいところです。

――最後に読者へのメッセージをお願いします。

GXRのプロモーションを担当したリコーパーソナルマルチメディアカンパニー企画室マーケティンググループ シニアスペシャリストの岡本明彦氏

篠原:メカ的には、非常に信頼できる着脱機構がうまく作り上げられたと思っています。強度や信頼性だけでなく“カシャン”という安心感があって、かつ心地よい装着感にもこだわりました。是非、店頭などで着脱を試して安心感を体験して欲しいですね。

清水:GXRをリリースするに当たって、EVFと外部ストロボを新規にリリースしています。さらにケーブルレリーズもありますし、HDMI端子も初搭載して周辺を充実させました。アクセサリーも是非揃えていただければと思います。GXRに関しては、将来どんなユニットが出るのかという楽しみを掴んで欲しいです。

:見た目は斬新ですが、メニューの構成や操作系はGRやGXを踏襲していますので使っていただければ違和感なく入っていけると思います。新しく搭載した機能にコントロールパネルが出る「ダイレクトボタン」があります。これは、相当時間を掛けて良いものに仕上げたつもりなので是非チェックしていただきたいです。

GXRのダイレクトボタンを押すと表示されるコントロールパネルを初搭載した外部ストロボ「GF1」もリリース

岡本:着脱の機能ばかりに注目が集まってしまいますが、GR LENS A12 50mm F2.5 Macroを付けて人物を撮ってみると今までと違った写真が撮れます。その辺りを是非味わって、自分の世界を広げて欲しいと思います。

福井:新しいシステムなので使ってみないとわからないというご意見もあるかと思いますが、気楽にユニットを交換して撮影できるのが特徴です。その場その場に応じてユニットを変えて撮影すれば、新しい写真の撮り方を見つけることができるのではないかと信じています。GXRを是非使って頂きたいですね。




(本誌:武石修)

2010/1/28 00:00