権二郎写真展「インドの南」

インド最南端のカニャクマリ（コモリン岬）から北へ向かった。いつものように徒歩旅行である。1日 30kmくらい歩く。冬場とはいえ、そこは熱帯。1時間もすると汗まみれとなり、午後は地面からの熱気で朦朧となった。しかも撮影もしなければならない。背中には荷物も背負っている。正直言って楽な旅じゃない。

「バスに乗らないの？」と現地の人たちによくきかれた。しかし、歩けばこそ、見えてくる景色がある。愉快な光景にも出くわす。いつでも思った瞬間に立ち止まり、パチリとシャッターを押すのがわたしの撮影スタイルである。

インド旅行というと「騙された」「ボられた」の話が多い。でも、それは北部のことか。南部はいたって気楽なもの。ボられるどころか、茶店でチャイを奢られたことは数え切れず、昼ご飯も何度かご馳走になった。南には、おおらかで、のんびりした感じの人が多く、擦れたところがない。道をたずねるとたいてい正確に教えてくれるのもありがたかった。

今回はコーチ（コーチン）を経てニルギリ紅茶の産地ムナールまで約 550km歩いた。あと何回かかるかわからないし、そのすべてを歩くのはさすがに躊躇するが、何年か先、北部ラダックかネパールのカトマンドゥーまでたどり着きたいと思っている。

出展作品数：カラー　約50点

（写真展情報より）