イベントレポート

日本カメラ博物館、大変革の時代を振り返る「平成のカメラ展」

フィルムからデジタルへ、一家に一台から一人一台へ

日本カメラ博物館は、特別展「平成のカメラ展」を2019年3月19日(火)〜6月30日(日)まで開催する。

2019(平成31)年4月30日をもって終了する「平成」の時代を振り返る趣旨で、平成に発売されたフィルムカメラ、デジタルカメラ、写真用品など約200点が並ぶ。平成は日本の社会にとって様々な出来事があり、またカメラや写真の世界においても歴史が始まって以来の大きな変化を遂げた時代としている。

1980年代後半から1990年代にかけて実用化された電子記録方式のカメラは急速に進化し、2002(平成14)年には生産数量でデジタルカメラがフィルムカメラを追い越すほどの飛躍を見せ、カメラは一家に一台から一人一台の存在となる。

やがてデジタルカメラもセンサーの高解像度化・大型化が進み、35mmフルサイズセンサーを搭載したカメラやミラーレスカメラの発売、カメラ付き携帯電話およびスマートフォンの普及など、写真撮影から鑑賞に至るまで、平成の時代には過去にない大きな変革があったという。

カシオQV-10(平成7/1995年)。当時としては低価格の6万5,000円で発売され、パソコンやデジタルフォトの普及とあわせて大ヒット製品になった。
シャープJ-SH04(平成12/2000年)。いわゆる"写メ"を広めた機種。
2011年東日本大震災における陸前高田の津波被災跡から発見されたカメラ。使用していた志田信一氏が自宅庭先の瓦礫から発見したもので、JPSを通じて日本カメラ博物館に寄贈された。

展示ケースには時代ごとに区分けされており、年ごとの出来事や、その年に登場した代表的なカメラ製品がパネルに記されている。その内容は図録にも収録されているので、後日改めてじっくり振り返るのもいいだろう。

1989(平成元)年の関連展示。
当時の雑誌。
同じ場所に並ぶ「ニコンF4」「同F4S」。ともに1988(昭和63)年のカメラ。

以下は約200点のうちごくわずかだが、展示品を年代順に紹介する。

コンタックスRTS III(平成2/1990年)。フィルム圧板に真空吸引方式を採用し、平面性を向上させた。
オリンパスLT-1(平成6/1994年)。ボディ外装に合成皮革を用い、個性的な外観と独特の質感を兼ね備えたモデル。
リコーXRソーラー(平成6/1994年)。ソーラーバッテリーを電源として露出表示を行う。
コンタックスG1(平成6/1994年)。初のレンズ交換式AF透視ファインダーカメラ。
アップル QuickTake 100(平成6/1994年)。Macintoshと直接接続できるデジタルカメラ。
マミヤ7(平成7/1995年)。43mmレンズを使用するために工夫された、6×7判のレンズ交換式距離計連動カメラ。
ソニーDSC-F1(平成8/1996年)。サイバーショットの名前がついたソニー初の普及型デジタルカメラ。IrDA方式の赤外線通信を備える。
リコーR1ゴールド(平成8/1996年)。リコーR1が世界各国で5つの賞を受賞したことを記念して少量生産したモデル。24金のメッキが施されている。
キヤノンIXY創業60周年ゴールドモデル(平成9/1997年)。キヤノン創業60周年を記念した、国内1万台限定のゴールドモデル。
東芝アレグレットPDR-2(平成9/1997年)。CMOSセンサーを採用するなどの省電力設計で、電池1本で500枚以上を撮影可能。世界初のCMOSセンサー採用デジタルカメラとして、2016年に未来技術遺産へ登録された。
ミノルタ ディマージュV(平成9/1997年)。レンズ部分がユニット方式になっており、着脱・回転・延伸により自由なアングルで撮影可能とした。
ニコンCOOLPIX100(平成9/1997年)。バッテリーユニットを外して本体一体型のPCカードをパソコンに差し込むだけでデータ転送が可能。
ペンタックス645N(平成9/1997年)。レンズ交換式中判一眼レフカメラとして初めてのAFカメラ。
ニコンD1(平成11/1999年)。270万画素CCDを採用したデジタル一眼レフカメラ。ニコンF5/F100の操作性を踏襲。プロカメラマンがデジタルカメラを使い始めるきっかけになったと言われている。
ミノルタα-9(平成10/1998年)。α-9xi後継の最上位機種で、ミノルタ製一眼レフカメラとして初めてファインダー視野率100%を達成。
富士フイルム FinePix PR21 プリンカム(平成11/1999年)。インスタントフィルムプリンターを内蔵し、撮影したその場で複数のプリントを作成できるデジタルカメラ。
フォクトレンダー ベッサL(平成11/1999年)。ライカ式スクリューマウントを採用した目測式のカメラ。
コニカ ヘキサーRF(平成11/1999年)。絞り優先AEとワインダーを内蔵したレンジファインダーカメラ。
パナソニックLK-RQ132S スーパーDカム(平成12/2000年)。2HDフロッピーディスク約33枚分の記憶容量を持つ「スーパーディスク」を採用したデジタルカメラ。USB端子からパソコンに接続できる。
パイオニアDF-S2(平成13/2001年)。4×5判カメラに装着するスキャンタイプのデジタルバック。1億8,507万画素。PCとの接続はSCSI-2。
ペンタックス 撮ってもEG(平成13/2001年)。レンズ付きフィルムとほぼ同様に、撮影済みのカメラを写真店に持ち込んでプリントのみを受け取るシステムのデジタルカメラ。
最近寄贈されたものを展示するケース内に、パッケージ付きの個体があった。
ミノルタ ディマージュX(平成14/2002年)。撮影光学系にプリズムを使用。光軸を90度曲げることでボディ内部に37-111mm相当のズームレンズと196万画素のCCDを縦に配置。薄型化を実現した。
カシオ エクシリムEX-S1(平成14/2002年)。11.3mmの薄型ボディを実現した"カード型デジカメ"。起動時間が約1秒と短いのも特徴。
オリンパスE-1(平成15/2003年)。デジタル一眼レフカメラ用に開発したフォーサーズシステムを採用する初のデジタルカメラ。
エプソンレンジファインダーデジタルカメラR-D1(平成16/2004年)。ライカMマウント互換のEMマウントを採用。世界初の距離計連動レンズ交換式デジタルカメラ。
コニカミノルタα-7デジタル(平成16/2004年)。CCDシフト式の手ブレ補正機構を搭載。ほぼ全てのαシリーズ交換レンズで手ブレ補正を実現した。
ソニーα100(平成18/2006年)。ソニーブランド初のデジタル一眼レフカメラ。
ニコンD3(平成19/2007年)。35mmフルサイズで毎秒9コマの高速連写が可能。ニコン初の35mmフルサイズセンサー搭載のデジタル一眼レフカメラでもある。
オリンパスE-410(平成19/2007年)。デジタル一眼レフカメラとして当時世界最小・最軽量だったモデル。
キヤノンEOS 5D Mark II(平成20/2008年)。約36×24mmのCMOSセンサーを搭載し、フルHD動画記録も可能なデジタル一眼レフカメラ。
オリンパスペン E-P1(平成21/2009年)。オリンパス初のマイクロフォーサーズ機。6種類の「アートフィルター」を搭載し、動画撮影も可能。
リコーGXR(平成21/2009年)。レンズと撮像素子を一体化して交換可能としたユニット交換式のデジタルカメラ。
カシオEX-TR100 TRYX(平成23/2011年)。35mm判換算21mmレンズを搭載し、枠部分が360度、モニター部が270度回転するデジタルカメラ。日本名はEXILIM。

カメラ以外では、その時代に関連する写真集やゲームソフトの展示もあった。

各時代に関連する写真集が並んでいる。
ゲームボーイソフト「ポケットモンスター 赤」(1996年)。テレビアニメによるピカチュウ人気やポリゴンショックを経て、現在人気のスマホゲーム「Pokémon GO」にまで繋がる"ポケモン"の原点。昭和61年生まれの筆者は当時小学生で、赤を買った。

こうして見学していると、切り口はあくまで学術的だが、カメラ好きの手による展示であることに加えて遊び心が感じ取れるのが楽しい。パネルにはその時代のアイコンとして、カメラグランプリ受賞機種とともに日本カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた自動車も紹介されている。カメラとクルマの両方に詳しい方なら、関連性を見出せるかも?

同じシリーズ名で、フィルム機とデジタル機が存在するカメラ。
レンズ付きフィルム「写ルンです」のリサイクルについて。このシステムを構築し、業界にもアピールしたため、"使い捨てカメラ"と呼ばれることは少なくなった。
コニカの「撮りっきりMiNi」も展示されている。
さまざまな記録メディア。

日本カメラ博物館の所在地は東京都千代田区一番町25番地 JCII一番町ビル 地下1階。開館時間は10時〜17時。休館日は毎週月曜(祝日の場合は翌日火曜)。なお、ゴールデンウィーク期間中の4月27日〜5月6日は休まず開館するという。入館料は一般300円、中学生以下無料。

本誌:鈴木誠