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矢内靖史写真展「棕櫚の日曜日」

(銀座ニコンサロン)

作者は福島県の新聞社で報道カメラマンとして働いて約20年になる。3.11東日本大震災、福島第一原発事故によって仕事の内容は激変した。被災地や避難所などで多くの悲しみや苦しみ、または希望に出会いシャッターを切った。しかし、同じ被災者として報道写真では伝えきれない思いも残った。

震災から1年過ぎたころ、不眠がきっかけで早朝の散歩をするようになった。出勤前や休日など、歩きながらよく撮ったものにシュロのある風景がある。庭木としてのシュロが流行したのは主に高度経済成長期、多くの日本人が科学技術の発達による「明るい未来と豊かな生活」を夢見た時代だ。福島県が原発を誘致し、運転を開始した時代でもある。散歩をしながら出会うシュロは、そんな時代の夢の名残のように見えた。

作者の自宅のある福島市は、放射能への不安から小さな子供をもつ家庭の県外への避難が続いている。環境放射能を測るモニタリングポスト、除染の除去物を覆うブルーシート、今やこれらは福島の風景の一部だ。原発事故は、何気ない風景の中にさえ不安の影を落としているように見える。モノクロ約60点。

(写真展情報より)

矢内靖史写真展「棕櫚の日曜日」

  • 会場:銀座ニコンサロン
  • 住所:東京都中央区銀座7-10-1 STRATA GINZA(ストラータ ギンザ)1・2階
  • 開催日:2013年1月16日~2013年1月29日
  • 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:武石修)