大山葉子写真展「メフィストの調べ 〜ブダペストから〜」(ギャラリー冬青)


かつてのオーストリア・ハンガリー帝国であり、リスト、コダーイ、バルトークなど、多くの音楽家を生み出したハンガリー。その首都ブダペストは、往時のコスモポリタン都市としての香りを、今なお色濃く残している。
20代にリスト音楽院に学び、7年の歳月を過ごしたブダペストは、私にとって特別な地である。数年後にリスト生誕200年を迎える事を知った2007年、当時の日々が瞬時に蘇り、14年振りの再訪を思い立った。
リストの楽の音に誘(いざな)われながら、彼が住居としていた場所にも足を踏み入れる。私が好きなリストの代表曲のひとつ「メフィスト・ワルツ」の悪魔的旋律に身を任せていると、21世紀の現在はどこかへ飛び去り、19世紀の空気が辺りを包み、全身を浸す。
さらに空想の中を漂っていると、祖先がアジア系であったハンガリー人(マジャル民族)と、どこかで呼応する自身を感ずることが出来る。
モザイクの様に積み重ねられた時間の堆積と、音楽の生まれ出づる国の気配を捉えよう、とレンズを向けたが、それは同時に自分がそこに居たことの記憶と、面影を求める自身の心の奥底への旅でもあった。

大山葉子(写真展情報より)

  • 名称:大山葉子写真展「メフィストの調べ 〜ブダペストから〜」
  • 会場:ギャラリー冬青
  • 住所:東京都中野区中央5-18-20
  • 会期:2012年4月6日〜2012年4月28日
  • 時間:11時〜19時
  • 休館:日曜・月曜・祝日

(本誌:折本幸治)

2012/3/23 00:00