カシオ、「EXILIM EX-TR100」の発売記念パーティを開催

~「ミラーレスカメラ参入は全く考えていない」

 カシオは4日、コンパクトデジタルカメラ「EXILIM EX-TR100」の発売記念パーティーを東京・恵比寿で開催した。

会場に特大のEXILIM EX-TR100模型が登場したEXILIM EX-TR100。ワインのボトルに掛けて撮影する提案をしていた

 メディア関係者やブロガーを招待したパーティーで、カシオではこれまでもタフネスデジタルカメラ「EXILIM EX-G1」などの発売時にも同様のパーティーを実施してきた。

EXILIM EX-TR100は、カメラの外周を覆うフレームが360度回転することでさまざまな持ち方や設置ができる新スタイルのデジタルカメラ。北米などでは「TRYX」の名前ですでに発売していたが、国内では7月22日に発売した。実勢価格は3万2,600円前後となっている。

写真を撮ることをエンターテイメントとして提案

 パーティーに先立ち、カシオ計算機 戦略統括部 SP戦略部長の田中秀和氏が挨拶した。

カシオ計算機 戦略統括部 SP戦略部長の田中秀和氏

 「スマートフォンが凄まじい勢いで勢力を伸ばしているのは周知の事実。極端な話だが、パソコンが無くなるのではないかという報道もあったくらい環境の変化はめまぐるしい。一方デジタルカメラ業界はというと、非常に厳しい状況。単価もどんどん下落している。早々に、全体の流れが好転することはないだろうが、カシオとしてどうやってデジタルカメラを元気にできるかが課題。ユーザーは、見えないものではなく、実際に見えているものを綺麗に撮りたいという要求が大きい」と述べた。

 これに対して、カシオではこれまで培ってきた「ハイスピードテクノロジー」でニーズに応えたいとする。高速連写合成を利用して、逆光や夜景をより綺麗に撮影するというものだ。ハイスピードテクノロジーは、カシオのコンパクトデジタルカメラのアイデンティティを確立するために注力する部分だという。さらに、サクサク撮れる“ストレスフリー性”も重視しており、今回のEX-TR100に盛り込んでいるとした。「従来無かった“写真を撮ることで得られるエンターテイメント”を提供することがEXILIMの存在価値になる」(田中氏)とした。

ハイスピードテクノロジーを利用した撮影モードの1つ「HDRアート」。会場では多くの来場者が撮影を試していた
連写合成による「ハイスピード夜景」モードもハイスピードテクノロジーを利用している

“自分撮り”から“仲間撮り”へ

 続いて、カシオ計算機 SP戦略部 QVSP室長の鈴木俊之氏がEX-TR100の概要を紹介した。

カシオ計算機 SP戦略部 QVSP室長の鈴木俊之氏

 EX-TR100コンセプトは、「“自由自在”を楽しむ」。デジタルカメラにおける「レンズ」、「液晶モニター」、「フレーム」という要素を分解して再構築した「エレメントデザイン」を採用した。これにより、ビデオカメラのように持つグリップスタイルや床にそのまま設置することなどが可能になった。またフレームを何かに引っかけて撮影することもできる。

持ち方の自由度が大きいのがEX-TR100の特徴。来場者は思い思いの持ち方で試していた

 35mm判換算で21mm相当の超広角レンズを搭載するのも、コンパクトデジタルカメラでは珍しい。“自分撮り”という言葉は広く使われているが、鈴木氏はEX-TR100での撮影を“仲間撮り”と表現している。カメラを手に持って自分たちを取る場合、これまで多くても2~3人しか画面に収まらなかったものが、超広角レンズにより3~4人でも撮影できるようになったためだ。こうした新しい付加価値を提供することで、スマートフォンや携帯電話では撮影できない楽しみを訴求する。

 田中氏も述べたように、コンパクトデジタルカメラの単価下落はメーカーにとっても深刻。「1万円や2万円のデジタルカメラでも写真は撮れるが、EX-TR100を“これおもしろいじゃん”と気に入って選んでもらえれば」と鈴木氏は話す。EX-TR100は売場で手にとって試してもらうと、購入に繋がることが多いのだという。それだけに、店頭でどのように特徴を見せられるかが販売の課題だとする。EX-TR100のターゲットは当初、デジタルガジェットが好きな男性とする。

超広角レンズにより比較的近距離でも4人程度はフレームに収まるモーションシャッターを動作させたところ。手を動かしたところからカウントダウンが表示される

 「女性に購入してもらううには、まだ時間がかかると考えている。例えば、今は女性のiPhoneユーザーも多くなったが、女性に普及したのはiPhone 3GSやiPhone 4が出てからではないか」(鈴木氏)。EX-TR100には、手を振るなどの動作でシャッターが切れる「モーションシャッター」機能も搭載した。これなどは、「写真を撮ることをゲームのように楽しむための機能でもあり、パーティーなどでの活用シーンも見込まれる」(鈴木氏)とする。こうしたアプローチが、ゆくゆくは女性層からの支持を得ることができるのかも注目といえそうだ。

Eye-Fiとのコラボレーションもアピール。EX-TR100をUSBでパソコンにつないでアップロードもできるさらに、別売のEye-Fiカードを使用すればデジカメからスマートフォンに画像を転送できる。そこからさまざまなSNSなどにアップロードすることも可能だ

ミラーレスカメラに迫る性能をコンパクトデジカメで提供したい

 ところで昨今は、特に国内市場でミラーレスカメラが盛り上がりを見せている。カシオは今のところミラーレス機はラインナップしていないが、鈴木氏は「参入は全く考えていない」とする。

 ミラーレスカメラによってコンパクトデジタルカメラ市場が侵食されているのでは? との問いには、「そうは思っていない。コンパクトデジタルカメラとデジタル一眼レフカメラのちょうど間に、新しい市場ができたイメージ。むしろ、ミラーレスカメラの宣伝によって、良い写真を撮ることに興味を持つ人が増えていて歓迎できる。そういった人には、ミラーレスカメラには及ばないものの、コンパクトデジタルカメラでもここまで撮れるという部分を訴求していきたい。レンズ交換式カメラでは接写をするにもマクロレンズが必要。コンパクトデジタルカメラでは、そのままでマクロ撮影ができる点などもメリットになる」と述べた。

 今後は、価格レンジが現在よりもよりも上に位置する“EXILIMの上位モデル”といった機種も検討していくという。

多くの来場者が詰めかけた



(本誌:武石修)

2011/8/5 16:22