銀一の「ステディカム」体験イベントレポート

〜国内でのカスタマーサポートも強化

 銀一は4日、米ティッフェン(Tiffen)のカメラスタビライザー「ステディカム」(STEADICAM)シリーズの体験会を都内のスタジオで開催した。

会場の様子。多くの来場者が操作を試していた。

 ステディカムの国内総代理店を務める銀一が、ステディカム製品のカスタマーサポート窓口を4日に開設するのに伴って実施したイベント。

 ステディカムは、手持ちで移動しながら動画を撮影する場合などに揺れを吸収して滑らかな映像を得るためのカメラスタビライザー。近年は、レンズ交換式デジタルカメラの動画機能で利用するユーザーが増えているという。

 同日開催した体験イベントは、銀一の直営店「スタジオショップ」隣の旧アサヒスタジオで実施。ステディカムのローエンドからハイエンドクラスの機種までが並び、放送やCMに携わるプロカメラマンのほかアマチュアカメラマンも来場し実機の操作を体験していた。

 銀一が取り扱うステディカムは10種類以上にのぼるが、今回はデジタルカメラでの撮影に適した3モデルを紹介する。こうしたカメラスタビライザーは、映画を始め旅番組、CM、ミュージックビデオなど動画の世界では広く使われている。最近では、ブライダル市場での需要も高まっているという。鉄道の動画を撮影するカメラマンにもユーザーが多いのだそうだ。

ステディカム・マーリン

 デジタル一眼レフカメラやミラーレス機での撮影に対応したモデル。価格は9万円。iPhone用の「スムージー」を除けば、ステディカムのローエンドモデルに当たる。対応重量は0.2〜2.2kg。3軸のジンバルを備える。アームは折り畳んで収納できる。

ステディカム・マーリン

 銀一が取り扱うステディカムで最も販売数が多いのがこのマーリン。「特にEOSムービー(キヤノン)とLUMIX DMC-GHシリーズ(パナソニック)で使っているユーザーが多いですね」(説明員)。

 マーリンは単体で使用する場合が多いが、専用ベストとアームもオプション(20万円)の設定がある。

ステディカム・パイロット

 マーリンの1つ上のモデル。対応重量は0.9〜4.5kgで価格は56万円。レンズ交換式デジタルカメラ1台のほか、EOS 5D Mark IIやLUMIX DMC-GH2を2台搭載してのステレオ撮影も可能という。カメラが1台であれば、比較的重量のあるレンズを搭載できる。

ステディカム・パイロット

 このモデルから上位の製品はオペレーターが専用のベストを着用し、ベストとステディカム本体をアームで接続して運用する。価格にはベストとアームも含まれている。ステディカム本体の下部にバッテリーと外部液晶モニターをウエイトもかねて搭載することができる。

ステディカム・スカウト

 パイロットの1つ上のモデル。対応重量は2.27〜8.2kg。価格は90万円。照明や外付けマイクなどのアクセサリーを装着したデジタル一眼レフカメラなどに対応する。また、マイクロフォーサーズマウントを採用したパナソニックのデジタルビデオカメラ「AG-AF105」などにもマッチするという。

ステディカム・スカウト

 本機は2010年に登場した比較的新しい機種で、グリップ部分を上位モデルと同様に太く仕上げているため操作性が良いとしている。また、カメラとバッテリーおよび外部液晶モニターを接続するケーブルが表に出ないように、カメラ台下の部分をクローズド構造にしている。

スカウトのベースプレートは配線が外に出ない構造になった。そのしたにあるグリップ部も太く、回転などがさせやすい

 会場には本機に合うデジタルスチルカメラの用意がなかったため、筆者もAG-AF105を搭載したスカウトを体験してみた。ベスト着用式のカメラスタビライザーを試用するのは初めてのことだ

 AG-AF105の本体重量は1.2kgほどだが、「LUMIX G VARIO 7-14mm F4 ASPH.」、マットボックス+ロッド、フォローフォーカス、映像を無線で伝送する装置、外部液晶モニター、大型バッテリー、ウエイトなどを積載するためそれなりの重さになっている。

 ベストの固定ベルトをきつめに締めたあと、アームを接続。その後アームにステディカム本体を装着して持ち上げる。かなりの重量のはずだが、さほど体に負担無く持ち上げることができた。説明員からは、カメラが体から離れると急激に重く感じるため、体に寄せて操作するといった使い方を教わった。それも、体の正面ではなく左斜め前にすると負担が最も少なくなる。「これがステディカムの基本姿勢です」(説明員)。

 歩く際はやや体を後に反るようにして、膝は過度に曲げずに普通に歩くのがよいのだそうだ。ステディカムに添えた手にはほとんど力を入れる必要はない。アーム部分にある強力なスプリングで本体の重量を支える仕組みになっているためだ。軽い力でカメラを上下に移動させることもできる。

 ステディカム・スカウトの振動吸収効果は大きく、初めて試用した割には滑らかに撮影できて驚いた。本体は水平に360度回転できるほか、前後にも360度回転できる。前後に回転した場合でも、どの位置でもバランスが保たれているので、真下、真上、真横に光軸を向けることも容易だ。

iPhone 4、iPhone 3G、iPod toughに対応する「ステディカム・スムージー」も展示。米国では発売済みだが、国内では3月に発売する。価格は未定こちらは、2010年に登場した高級モデル「ステディカム・ファントム」。最大対応重量は22kgで、デジタルシネマカメラや35mmカメラに対応。価格は300万円

ステディカムユーザーのコミュニティーを作りたい

 今回、本格的なステディカムのカスタマーサポートとしては初となる窓口を設けた背景を銀一代表取締役社長の丹羽寿成氏に伺った。

銀一代表取締役社長の丹羽寿成氏

 国内総代理店になった年のInterBEE 2010(国際放送機器展)にステディカムを出展したところ、ステディカムユーザーが数多く銀一ブースに来場した。中には、すでにサポートの期限が終了しているような古いステディカムのユーザーなどもいたのだという。「売るだけではなくサポートをしっかりとやらなければならないと感じたのです。そこで、ステディカム全体のサポートをしていきたいと考えました」(丹羽氏)。

 カスタマーサポート窓口では購入の相談から修理の受付までを行なっているが、丹羽氏は「ユーザーがサポートセンターに集まることでユーザーのコミュニティーにして欲しい」とも話す。ステディカムの運用に関するノウハウなどをユーザー同士で共有する場になって欲しいとの思いがあったためだ。

 サポート窓口にはTiffenのあるカリフォルニアで専門的な研修を受けたスタッフもいる。製品にはマニュアルも付いてはいるが、言葉では微妙なニュアンスが伝わりにくいため直接使い方を教わるほうが良いとのこと。そのため、銀一では月1回のペースでステディカムのセミナーも実施している。

 併せて、修理対応も強化している。これまでは簡単な修理でも米国送りになっていたとのことだが、今回から簡単な修理であれば国内でも対応可能になったという。また基本パーツは在庫しているため、ネジなどを紛失した場合でも対応できるようになった。各ウエイト類もストックしているという。「今まではこうしたサポートが無かったため、ステディカムは敷居が高かったのです」(説明員)。

 サポートセンターの所在地は、スタジオショップがある東京都中央区月島1-14-9。スタジオショップでは、ステディカムのデモ機も用意しているため事前に予約をしておけばユーザーが持ち込んだカメラで試すことが可能だ。また、マーリンとパイロットはレンタルも行なっている。

ステディカムのショールーム機能も設けるスタジオショップ




(本誌:武石修)

2011/2/7 00:00