RING CUBE写真展「Thai Photography NOW Part-II」参加者3名に聞く


「Thai Phtography NOW」の副題は「多様性と挑戦」

 リコーは、東京・銀座のフォトギャラリーRING CUBEにおいて、現代のタイ写真界で活躍する4名の写真家による写真展「Thai Photography NOW Part-II」を26日より開催している。

 6月1日の「写真の日」を中心に、社団法人日本写真協会が写真業界に呼びかけて催している写真イベント「東京写真月間」の一環として開催するもの。2010年は、RING CUBE、銀座ニコンサロン、フォトギャラリーPLACE Mのそれぞれ
で、タイの写真家による写真展を開催している。特別協賛として、タイ王国文化省とタイ国政府観光庁が後援する。


 RING CUBEでの開催概要は下記の通り。

  • 会場:RING CUBE
  • 住所:東京都中央区5-7-2 三愛ドリームセンター8・9階
  • 会期:2010年5月26日~6月6日
  • 開場時間:11時~20時(最終日17時)
  • 参加写真家:ダーオ・ワーシックシリ、マニット・スリワニチプーン、マイトリー・シリブーン、ウォラナン・チャッチャワンティパーコーン(敬称略)

 今回はRING CUBE出展作家のうち、ウォラナン氏、ダーオ氏、マニット氏の来日記者会見を行なった。展示作品の制作意図についてプレゼンする趣旨。

展示の様子左からマニット氏、ウォラナン氏、ダーオ氏

タイの美しい自然や文化を伝えたい

 ウォラナン氏は、タイ国政府観光庁発行のパンフレットやポストカードに使用されている写真の撮影を担当しているカメラマン。会場では、アユタヤ、カンチャナブリ、チェンマイ、カオヤイ国立公園といったタイ各地を撮影した写真作品を中心に展示している。

 「タイの美しい自然や文化を、世界の人々に伝えたい」との想いを語るウォラナン氏。写真はほぼフィルムカメラで撮影し、現像からプリントまで、すべて自分で行なっているという。

(c) Waranun Chutchawantipakorn

 「プリントに際しては、写真の発色に気をつけて撮影しています。写真表現としては、光線の表現を意識しています。フィルムカメラを使うことがほとんどなので、使うフィルムの特性に合わせた撮影を心掛けていますね」

(c) Waranun Chutchawantipakorn
(c) Waranun Chutchawantipakorn

完璧さを拒否するためのストリートスナップ

 コマーシャルフォトグラファーとして活動するダーオ氏は、「常に『完璧』を求められる商業写真が、つまらなくなってきている」と感じているという。

 「仕事を完璧に仕上げるためには多くの経験が必要です。若い頃はそれもチャレンジングでエキサイティングだったのですが、今ではもうわくわくしないのです。だから私は自分のプロジェクトとして、ストリートの写真を撮ることにしました。それは『完璧さ』を拒否するための手段なのです」

(c) Dow Wasiksiri

 ビビッドな色合いでとらえたストリートスナップ作品は、タイの水かけ祭り「ソンクラン」の様子や日常の中の奇妙な一瞬を捉えたもの。構図に背景を多くは入れず、あえて状況のすべてを捉えないことで、想像力をかきたてる作品制作を心がけた。

 「タイの人々の生の表情を、コミカルでユーモラスにとらえたい。色を強調するのも、『完璧さ』を拒否するための表現のひとつです」

(c) Dow Wasiksiri
(c) Dow Wasiksiri

タイの社会と人々を象徴する「Pink Man」

 マニット氏の作品は、ショッキングピンクのスーツを着た旅行者「Pink Man」が、空のショッピングカートを手に、タイの各地を旅するというもの。マニット氏によれば、Pink Manは現代のタイ社会と人々を象徴したものなのだという。

 「ピンクのスーツは『道化』を意味し、何も入っていないショッピングカートは、我々の中にある、いつも満たされない『渇望』を表現しています。彼が旅をしているのは、ツーリズムは商業主義のひとつの顕れだからです」

(c) Manit Sriwanichpoom

 「2002年10月、バリ島で爆弾テロ事件がありました。今回展示した作品は、バリの爆弾テロ事件から3カ月後の2003年から制作したものです。タイもバリのように観光に頼っている国ですが、我々はテロリズムに遭遇すると、どうすればいいのか分からなくなってしまいます。ですから今回Pink Manは、茫然と立ち尽くしているのです」

 そのうえで、タイ・バンコクで2010年3月から続いた反政府デモ隊と軍の衝突について言及し、「作品を通して、いかに観光が壊れやすいことか、観光に頼る生活のもとで、人々の心がいかに不安定になっているかについても表現したい」と述べた。

(c) Manit Sriwanichpoom
(c) Manit Sriwanichpoom


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2010/5/28 16:02